更年期症状への補完代替医療の最新知見|プラセンタ/漢方薬/エクオール/DHEA/ビタミン剤/ハーブ他旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2025年5月号

更年期症状への補完代替医療の最新知見

女子は更年期になると、血管運動性の症状、精神神経症状、泌尿生殖期症状(美容通信2021年7月号)等を含めた多彩な症状がパノラマの様に同時に出現します。更には、その数年から10年後には、動脈硬化、骨粗鬆症、認知機能障害等が出現し、閉経後の大人女子の生活の質を著しく脅かす事になります。これらの症状は、ホルモン補充療法でその改善が期待出来ます。しかし、Women’s Health Initiative(美容通信2005年10月号)報道にみられる副作用の懸念の為に、ホルモン補充療法を望まない女子も多く、我が国でのホルモン補充療法の普及率は欧米に比して低くなっています。また、更年期症状には個人差があり、更年期を迎える女性自身に於いても、多様な価値観・人生観があり、どの様な方法で更年期以降のヘルスケアと向き合うのかは、個人の判断に委ねられています。こうした女性に対しては、ホルモン補充療法に代替となる有効な療法が求められています。また、ホルモン補充療法で十分な効果が得られず、更年期の不定愁訴を依然として訴える症例も少なくありません。この様な症例に対しては、ホルモン補充療法を補完する療法が望まれます。

 更年期障害に対する第一選択は、何と言っても、原因を補うホルモン補充療法です。しかしながら、乳癌や子宮体癌術後、血栓既往等のホルモン補充療法の禁忌症例や、ホルモン補充療法を希望しない、又は、ホルモン補充療法だけでは不十分な症例に対しては、プラセンタやDHEA等の補充代替医療を行います。大人女子が、より良い生活を生活を送る為のノウハウ、あります。

ホルモン補充療法以外の、更年期症状に対する補完代替医療

 補完代替医療とは、一般的に従来の通常医療とみなされていない、様々な医学・ヘルスケアシステム、施術、生成物質等と定義されており、通常治療と併用したり、代って用いられたりする医療の事です。更年期障害は、単なるエストロゲンの欠落症状だけでなく、加齢に伴う身体的変化、精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子が複合的に影響する事により発生します。

 補完代替医療は、乳癌や子宮体癌術後、血栓既往等のホルモン補充療法の禁忌症例に対しての対応方法としても、行われています。

更年期症状とは

 更年期とは、日本産科婦人科学会の定義では、生殖期(性成熟期)と非生殖期(老年期)の間の移行期を言い、卵巣機能が減弱し始め、消失するまでの期間とされています。日本人の平均閉経年齢は50.5歳であり、更年期とは通常その前後5年間、45歳から55歳頃までを指します。その更年期に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と言い、日常生活に支障を来す病態を更年期障害と定義しています。

 主たる原因は、卵巣機能の低下であり、これに加齢に伴う身体的変化、精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子が複合的に影響する事により、症状が発現します。その症状は以下の通り。

  1. 血管運動神経系症状:のぼせ、汗、寒気、冷え性、動悸、胸痛、息苦しさ、疲れやすい、頭痛、肩こり、眩暈
  2. 精神症状:イライラや怒りっぽい等の情緒不安定、抑うつ気分
  3. その他の症状:腰痛や関節痛、嘔気や食欲不振、皮膚の乾燥感や痒み、尿が近く外陰部に不快感がある

 我が国の50歳前後の女性を取り巻く状況を考えると、単に女性ホルモンが欠落するだけでなく、子供の自立に伴う子育ての消失、親等の近親者との死別、夫との死別や不和等により、社会や家族からの疎外感、孤独感を感じる事が重なって発生するものと推測されます。つまり、多種多様な不定愁訴の背景には、これ等の心理社会的因子が存在しています。

 

英国の国民健康サービス

 英国の国民健康サービスでは、更年期症状がある女子で、ホルモン補充療法以外の治療を希望する場合、更年期症状を軽減する為の生活習慣対策として以下を挙げています。

  1. 定期的な運動
  2. 健康的な食事(美容通信2023年3月号
  3. 夜間を涼しく過ごす
  4. カフェイン、アルコール、刺激物の摂取を減らす
  5. ストレスレベルを下げる(具体的には、ヨガや太極拳等を提案)
  6. 喫煙者なら、禁煙
  7. 膣の乾燥感に対して、膣潤滑剤等を使用

   クリニックで取り扱っているHygeena(美容通信2025年2月号)は、膣萎縮、膣乾燥、性交痛を経験している女性に推奨の、100% 天然成分配合の膣錠です。エストロゲン、プロゲステロン、化学物質、薬物は一切含まれていないので、ホルモン剤を避けたい女性に最適です。

補完代替医療

 我が国で行われている補完代替医療としては、下記が代表的なものになります。

  1. 漢方薬
  2. 植物性エストロゲン
  3. エクオール
  4. プラセンタ療法
  5. ブラックコホシュ
  6. DHEA
  7. ヨガ
  8. 鍼治療

ホルモン補充療法の禁忌症例に対しての対応方法

 補完代替医療は、乳癌や子宮体癌術後、血栓既往等のホルモン補充療法の禁忌症例に対しての対応方法としても、行われています。

禁忌症例

■乳癌

 日本の乳癌の好発年齢は40~50歳台であり、この治療の為に、GnRHa、アロマターゼ阻害薬、性腺摘除等の、エストロゲンを低下させる治療を受けているケースが多いとされています。

 乳癌に罹患している患者さんやその既往がある場合に、ホルモン補充療法を受けた場合、相対危険度(RR)3.3と再発リスクが高まったり、はたまた低下したり、関係しなかったりと、一致した見解はありません。HISAKOのクリニックでは、「もう、治療が終了して5年経っても再発もないから、follow upも終了ね。卒業!」と主治医に治癒宣言された患者さんに対し、半年に一回程度の検査(美容通信2015年7月号)(美容通信2010年12月号)等を行いながら、ホルモン補充療法(美容通信2015年9月号)を行う事があります。しかし、乳癌の既往を有する患者さんには、ルーチンでホルモン補充療法を薦めるものではありません。

■血栓症

  • 急性血栓性静脈炎又は静脈血栓塞栓症とその既往

   静脈血栓塞栓症の既往がある閉経女子に、経口エストラジオールと酢酸ノルエチステロン(美容通信2025年4月号)の併用を行うと、静脈血栓塞栓症の再発が約4.7倍に増加するとの報告があります。血栓症の既往を有する症例には、ホルモン補充療法は、禁忌と考えられています。

  • 心筋梗塞及び冠動脈に動脈硬化性病変の既往

   HERSⅡの報告では、結合型エストロゲン+酢酸メドロキシプロゲステロン投与によって、冠動脈疾患の発症が投与開始後1年以内に多発したそうです。心筋梗塞及び冠動脈に、動脈硬化性病変の既往を有する患者さんでは、経口エストロゲン製剤は禁忌です。経皮エストロゲン製剤については、現時点ではランダム化比較試験(RCT)データではないものの、日本で販売されている製剤は全てエストロゲン製剤として一括りに論じられており、禁忌とされています。欧米では、60歳を過ぎて初めてアンチエイジング目的にホルモン補充療法を行う場合は、既往がなくても、潜在的な病変の可能性が否定出来ない為、経口ではなく経皮がお約束とされています。

  • 脳卒中の既往

   脳卒中既往患者に対する経口エストロゲン投与により、虚血性脳卒中の再発を増加させたとの報告があります、現時点では、経皮エストロゲン製剤のランダム化比較試験(RCT)のデータ自体、ありません。

■子宮体癌

 現在、子宮体癌の新規患者数は、子宮頸癌とほぼ同数まで増加しており、子宮摘出に加え、性腺摘除を受ける事が多い為、必然的に低エストロゲン環境に曝されます。

 子宮体癌手術では、若いギャル子であっても、卵巣温存によって卵巣転移の評価を見逃す可能性が高く、卵巣摘除が行われる事があります。しかし、この卵巣摘除による外科的閉経に伴う更年期障害や精神障害は、自然閉経よりも程度が重い事が知られており、治療後の更年期症状への対応は、QOLの維持・改善に重要です。45歳以下での卵巣摘出は、対照群と比較して死亡リスクが有意に高くなるとされています。HISAKOは、腺扁平上皮癌と言う、腺癌と扁平上皮癌の両方の良い?悪い?ところ取りの欲張りな性格の子宮癌で、挙句拳大にまで育ってしまっていたので、原発が頸癌だったんだか体癌だったんだか分からない状態でした。当然、術前術後の化学療法に、子宮も卵巣もリンパ節も全部摘出して、締めは放射線療法と、ほぼフルコースの治療で叩きに叩いたんですが、「3年以内に再発して、死ぬと思うよ」と、能天気な主治医に宣告されてしまいました。まあ、それから30年以上、腰から上!だけは元気で医者続けてますから、まあ、あんま医者のHISAKOが言うのもなんですが、医者の言う事なんて当てになりません。HISAKOは、術後、とっとと主治医がホルモン補充療法をGOしてくれたので、更年期症状は殆どありませんでしたが…。

 因みに、フランスに於ける2011年の子宮内膜癌治療に対するガイドラインでは、治療後50歳未満の女子に対する、術後の卵巣欠落症状の治療としてのエストロゲン単独療法は禁忌ではありません。50歳以上では、一般健常人に於ける適応と禁忌に従う事と記載されています。

 子宮体癌、特に子宮内膜癌治療後のホルモン補充療法と再発のリスクに関しては、これまで旧進行期分類Ⅲ期までの症例に施行した報告では、少なくともホルモン補充療法によって再発率が上昇したと言う報告はありません。6報告のうち、5つは症例対照研究です。Gynecologic Oncology Group 137試験は、旧Ⅰ~Ⅱ期の子宮内膜癌を対象としたエストロゲン単独療法群・プラセボ群夫々618例でのランダム化二重盲検試験であり、再発リスクはエストロゲン単独療法群に於いてRR1.27(80%CI0.916-1.77)とプラセボ群との有意差はありませんでした。6つの報告から子宮内膜癌治療後のホルモン補充療法の再発リスクを検討したメタ解析によれば、オッズ比は0.534(95%CI0.297-0.960)と、子宮内膜癌治療後のホルモン補充療法は、再発を有意に低下させると言う結果でした。現在までのデータからは、ホルモン補充療法による子宮内膜癌の再発リスクの上昇は認められていません。

 但し、現在進行中の子宮内膜癌、低悪性度子宮内膜間質肉腫については、ホルモン補充療法は禁忌とされています。

プラセンタ

 プラセンタは、中国では、秦の始皇帝が不老不死の妙薬として愛飲していたんだそうです。唐の時代には漢方医学書「本草拾遺」の中で紹介されており、明の時代には「本草網目」にて「紫河車」の名前で紹介され、肉体的及び精神的な疲れや衰えに対して効用のある滋養強壮の漢方薬として珍重されていたんだそうです。 楊貴妃も「紫河車」を服用していたのだとか。

 現代のプラセンタ療法の基礎は、以前もプラセンタ(美容通信2009年2月号の歴史でも触れましたが、稗田憲太郎博士(戦後の役職・満州医大教授/久留米大学医学部長)が、満州で旧ソ連のフィラートフ博士の「組織療法」に出会った事から始まります。731部隊は、満洲に拠点を置き、感染症予防や衛生的な給水体制の研究を行っていた一方で、人体実験や生物兵器の研究・開発も行っていました。その悪名高い731部隊との関連から、ある意味、プラセンタの暗黒史として語られる事も多いですが、経口プラセンタは、更年期の諸症状に対して有効で且つ安全なサプリメントであり、ホルモン補充療法の補完・代替として期待されています。プラセンタの投与により、顔の皮脂量や水分量を増加させ、目じりの皺の幅を減少させる事から、見た目のアンチエイジング効果も期待出来ます。また、閉経女子の末梢血単球細胞中の樹状細胞数を増加させ、閉経女子での免疫調節効果(美容通信2024年3月号)が期待出来る可能性があります。

更年期症状に於ける経口プラセンタ製剤の役割

 プラセンタの製剤には、従来から人のプラセンタを用いた注射製剤があります。近年は、人間(←逆輸入!なので、少々ハードルが高い…。HISAKOのクリニックでは、3回連続で税関からNOと言われ、輸入が出来なかった苦い過去があり、ちょっと以上に…完全に?後ろ向き。普通は、3回に1回程度の却下と言われていて、「たまたま運が悪かった」と輸入業者には慰められました(笑))や豚から抽出された経口プラセンタ製剤が、注射と同等の効果が期待出来るにも拘らず、そのお手軽さから人気の補完代替療法です。

 更年期症状を有する76名を対象に、当帰芍薬散投与群若しくは経口プラセンタ(豚)製剤(JBPポーサイン100:350mg/カプセル)群の2群に無作為的に割り付けた後、24週間夫々を投与し、症状の改善状況を観察しました。当帰芍薬散投与群は7.5g/日連日投与。経口プラセンタ(豚)製剤群は、最初の12週間は3カプセル/日、後の12週間は6カプセル/日投与しました。経口プラセンタ(豚)製剤群は、当帰芍薬散投与群に比べて、12週間後並びに24週間後の簡易更年期指数を有意に軽減させました。更に、簡易更年期指数を構成する各症状群に対するサブ解析を「のぼせ・ほてり」「うつ」「疲労感」「不眠」「イライラ」「関節痛」等について行ったところ、同様の効果が示されました。

 同様の方法で、経口プラセンタ(豚)製剤群の「肩こり」に対する有効性をVASスケールにて評価したところ、当帰芍薬散投与群に比較して、有意に「肩こり」の程度を改善させました。また、更年期症状を有する女子20名を対象に、眼精疲労に対する有効性を同様の方法でVASスケールで評価したところ、同様の効果が示されました。

 一方、ホルモン補充療法に抵抗を示す症例に対する経口プラセンタ(豚)製剤群の併用効果を探る目的で、膝関節痛を訴える症例に対して検討を行いました。ホルモン補充療法を6ヶ月以上行っている症例で、膝関節痛を訴える閉経女子48人に対し、乳酸カルシウム投与群(260mg/日)或いは経口プラセンタ(豚)製剤群(9カプセル/日)の2群に無作為的に割り付けて、12週間に亘って両群間での改善をVASスケールにて比較観察を行いました。その結果、12週間の経口プラセンタ(豚)製剤の併用により、膝関節痛はコントロール群に比べて優位に軽減しました。また、ホルモン補充療法に抵抗を示す「肩こり」の症状に対しても、経口プラセンタ(豚)製剤の併用投与は有効でした。

 なお、6ヶ月に亘る経口プラセンタ(豚)製剤の投与前後で、血液生化学、血清脂質、高感度CRP、HbA1c、PAⅠ-1、甲状腺ホルモン、エストラジオール等を測定しましたが、経口プラセンタ(豚)製剤投与による変動は認められませんでした。

 

皮膚症状に於ける経口プラセンタ製剤の役割

 女子のお肌の状態は、年齢を重ねるに従ってとは言いますが、閉経を境に、急降下する事が知られています。経口プラセンタ(豚)製剤の服用により、顔の皮脂量や水分量がが増加し、目尻のカラスの足跡の幅を減少したとの報告があります。更に、ヒト皮膚線維芽細胞の培養系を用いた実験では、経口プラセンタ(豚)製剤により皮膚線維芽細胞の増殖が促進され、これによりコラーゲンの産生が増加するだけでなく、線維芽細胞内でのコラーゲン分解を促すMMP-9の産生を抑制する事が分かっています。

 

免疫機能に及ぼす経口プラセンタ製剤の効果

 ヒト骨髄由来単球セルライン(THP-1)を用いて、経口プラセンタ(豚)製剤がサイトカインの産生に影響を及ぼすかどうかを検討したところ、lipopolysaccharide存在下で、interferon-γ(IFN-γ)や、tumor necrosis factor-α、interleukin-6の分泌を促進したそうです。更には、経口プラセンタ(豚)製剤は、IFN-γ刺激下で、THP-1細胞の表面抗原であるCD11bやCD80を増加させ、樹状細胞へと分化誘導させる事が分かったそうです。そこで、閉経女子11人に経口プラセンタ(豚)製剤(6カプセル/日)を1ヶ月間内服してもらい、末梢血単球細胞中の樹状細胞数が増えるかどうかを、フローサイトメトリーによる分析を用いて検討したところ、骨髄系DCサブユニット(CD14、CD16、CD33、CD85)の比率を増加させたそうです。また、ホルモン補充療法を1年以上行っても改善のなかった「手のこわばり、膝関節痛」を訴える抗核抗体陽性の閉経女子に、経口プラセンタ(豚)製剤を服用してもらい、投与前後の関節痛の痛みをVASスケールで評価したところ、投与前に比べて、投与6ヶ月後、1年後で、共に有意(p<0.01)に関節痛の程度が改善しました。

漢方

 漢方とは、古代中国(漢)から伝来した医学論理や治療技術を、日本の風土・国民性に倣って、日本固有の医学体系に発展させたものであり、江戸時代にオランダから伝来した西洋医術である蘭方と区別する為に付けられた名称です。

 漢方等の東洋医学は、西洋医学とは異なる独自の理論からなります。その基本概念は、八網と呼ばれる陰陽・虚実・寒熱・表裏と、気血水、六病位、五行説・五臓です。また、漢方的病態を証と言い、これが治療の根拠となります。証に従って治療を行う事を随証治療と言います。

漢方と女性医療

■女子のライフサイクル

 東洋医学では、中国の古典「黄帝内経素問」(紀元前206年~後220年頃)の記載の基づき、「女性は7の倍数で身体の変調が起こる」と考えられています。ここに記載されている天癸とは、現代西洋医学の性腺ホルモンと似た概念であり、成長・発育・生殖・老化等を主ります。更に、この天癸は、五臓の腎によって支配されます。その為、加齢により腎の機能が衰える(腎虚)と、身体のバランスが崩れ、様々な不調が現れます。

■血の道症と更年期障害

 女子特有の生理現象、つまり、月経や妊娠、出産、産褥或いは更年期に関連する様々な症状を、日本では血の道症(美容通信2016年10月号と呼び、古くから漢方治療が行われて来ました。血の道症とは、更年期障害をも含む概念です。日本では、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸が、婦人科三大処方美容通信2005年6月号)と称され、婦人科領域、特に更年期障害に対して広く処方されています。温経湯や五積散等の漢方も、良く用いられる処方です。

■更年期障害と漢方治療

 東洋医学や漢方医学では、望・聞・問・切と呼ばれる漢方医学的診察を行った上で、証に基づき、治療方針が決まります。つまり、漢方医学は、個々人の証に合わせた治療を行う為、個人差が大きく多彩な症状が認められる更年期の治療に於いては、適した医療と言えます。ホルモン治療禁忌やホルモン治療を希望しない症例は勿論、西洋医学的治療とも併用可能で、西洋医学的治療のみで改善出来ない症状に有効です。

 

漢方に於ける科学的根拠に基づく医療

■臨床応用が先行した東洋医学

 漢方を始めとする東洋医学は、紀元前から私達人間を対象とした臨床使用経験の蓄積がある一方で、古典の記述や口訣による伝承が主であり、医療者の臨床経験に基づいて実践されて来ました。その為、個々の生薬の薬理的作用機序の解明や二重盲検ランダム化比較試験と言った、近代の西洋医学的な観点からの効果の証明が、臨床使用開始後2000年以上経った今、漸く行われつつあります。

■更年期症状に対する婦人科三大処方

  • 加味逍遙散

   加味逍遙散は、比較的華奢な体格で、様々な自律神経症状(眩暈、動悸、頭痛、頭重、不安、不眠、いらだち、のぼせ、肩こり、発作性に起こる発汗、便秘と下痢を繰り返す等)に対して用います。構成生薬は、当帰・芍薬・白尤・茯苓・柴胡・甘草・薄荷・生姜・牡丹皮・山梔子であり、気、血、水全てに均等に配慮されたバランスの良い方剤です。

   Hidakaらの報告によれば、ホルモン補充療法で改善が不十分であった患者を対象にした症例集積研究で、更年期症状にホルモン補充療法の効果が不十分であった患者に対し、加味逍遙散エキスを処方したところ、73.3%に効果があり、視覚的アナログ尺度スコアの有意な減少を確認したそうです。特に、不眠・抑うつ・眩暈等の症状に有効だったと報告しています。

  • 桂枝茯苓丸

   体格中等度で、瘀血と呼ばれる微小血管障害に対する代表的な処方の一つ。頭痛や肩こり、上半身はのぼせるが足は冷えると言った症状に効果的。構成生薬は、桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬であり、瘀血を散じ、気を降ろす方剤です。

   Ushiroyamaらの報告によれば、火照りのある閉経女子の末梢血流に対するRCTであり、閉経後の火照りのある女子では、顎下の血流が高い事が知られています。ホルモン補充療法群と桂枝茯苓丸投与群で比較検討したところ、加療により両群共にこの顎下の血流は有意に減少しました。しかし、下肢の血流もホルモン補充群では減少してしまったのに対し、桂枝茯苓丸投与群では有意に増加したそうです。

   しかし、Plontnikoffらによれば、米国閉経後の女子を対象にした無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、桂枝茯苓丸投与によって、火照りの有意な改善はなかったそうです。つまり、火照りのみの治療目的には適さない!漢方です。

  • 当帰芍薬散

   比較的虚弱で、血色が悪く、冷え性や眩暈、頭痛、頭重、腹痛等がある場合に用いられる処方です。構成生薬は、当帰・芍薬・川芎・沢瀉・茯苓で、水と血を和する処方です。

   Terauchiらの報告によれば、閉経期(40~59歳)の女子患者の横断研究及び後ろ向きコホート研究で、閉経期で頭痛のある女性に対し、ホルモン補充療法或いは当帰芍薬散で治療したところ、頭痛の有意な要因として年齢と抑うつ状態があり、当帰芍薬散による治療により、ホルモン補充療法と比較して、頭痛及び抑うつ症状が有意に軽快したそうです。

 

婦人科三大処方だけじゃない!漢方薬2種

■半夏厚朴湯

 古くから、咽中炙臠と呼ばれる咽喉頭異常感を訴える場合に良く処方されて来ました。構成生薬は、半夏・厚朴・紫蘇葉・茯苓・生姜であり、主に気滞及び水滞に対する方剤です。

■香蘇散

 胃腸虚弱で抑うつ、疲れやすい、風邪を引きやすいと言った症状や、種々のアレルギーのある場合に処方されます。構成生薬は、香附子・陳皮・紫蘇葉・甘草・生姜。半夏厚朴湯よりも虚証の人向き。

大豆イソフラボン

 ホットフラッシュに対するイソフラボンの効果は、全般的には有効な結果が示されていますが、必ずしも全会一致と言う訳ではありません。エストロゲン受容体βに対する親和性が強く、結合してエストロゲン様作用を発揮します。イソフラボンサプリメントの服用は、1日30mgまでとされています。

 唯、ホルモン補充療法を受ける程でもないと思っている女子にとって、ホットフラッシュが酷くなる前に、大豆イソフラボン摂取を考えてみるのは悪くない選択と思われます。バランス良く、豆腐や納豆、味噌、豆乳を食べる習慣は、ホットフラッシュの軽減に効果的かも知れません。

イソフラボンの種類

 大豆イソフラボンとは、主に大豆の胚芽に多く含まれているフラボノイドの一種であり、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシチンの3種類の非配糖体(イソフラボンアグリコン)と夫々の配糖体(ゲ二スチン、ダイジン、グリシチン)、配糖体のアセチル化体、及びマロニル化体が知られています。糖部分が分離したものを非配糖体(アグリコン)と言い、味噌や納豆等の大豆発酵食品中には、大豆イソフラボン非配糖体が多く含まれています。しかし、食品中では、殆どが、大豆イソフラボン配糖体として存在しています。ゲニステイン、ダイゼイン、グリシチン及びそれらの配糖体の割合は、総イソフラボン量の約50%、40%、10%です。

 

大豆イソフラボンが着目された歴史的背景

 マメ科の植物には多くのイソフラボン誘導体が含まれ、エストロゲン様作用を有する事は古くから知られていました。アジア人女性は白人女性に比べ、ホットフラッシュが少ない事から、その要因の1つに大豆食品の摂取量が挙げられていました。更に、1990年に実施された癌予防食品に関するデザイナーフーズプログラム(植物性食品による癌予防計画)によって、大豆イソフラボンが注目されるようになりました。日本人女性の乳癌による死亡率は米国女性に比べて低く、また、日本人の心臓病にによる死亡率も欧米に比して非常に低くなっています。更には、日本人の骨粗鬆症による大腿骨骨折率も米国に比して低い等々の疫学的事実から、大豆や大豆イソフラボンについての研究が精力的に進められるようになりました。成人の平均イソフラボン摂取量は、日本では約30~50mg/日に対し、米国、カナダ、ヨーロッパでは3mg/日と報告されています。

 

大豆イソフラボンの作用機序

■エストロゲン受容体βに高い親和性を持って結合する

 大豆は、エストロゲンと構造が酷似しているイソフラボンを多く含みます。摂取された大豆イソフラボンは、腸内細菌等の作用で大豆イソフラボンアグリコンとなり、腸管から吸収されます。大豆イソフラボンのうちダイゼインは、腸内細菌によって代謝され、エクオール(美容通信2016年8月号)が産生され、これがエストロゲン受容体と結合して、エストロゲン様作用を発揮します。エクオールには光学異性体としてS体とR体が存在し、私達人間の血液やおしっこで検出されるのはS体です。エストロゲンはエストロゲン受容体αとβに等しく結合しますが、S体のエクオールはエストロゲン受容体β(骨や血管等に分布)への親和性が高く、α(主に生殖器に分布)への親和性が低いとされています。この様な結合の違いや転写因子の活性化の違いが、生体内でのエストロゲンとエクオールの作用の違いに関係します。

■イソフラボン摂取によるエストロゲン濃度の変化は極く僅かである

 大豆イソフラボンによってみられるE2濃度の増加は、下記の通り、極く僅かです。

  • 大豆食品摂取とエストロゲン濃度

   本邦で、女性看護師を対象とした前向きコホート調査であるJapan Nurses’ Health Studyによる検討から、閉経女子に於いて、尿中イソフラボン濃度が高い群では、豆腐、納豆、味噌汁、豆乳等の大豆イソフラボンの摂取頻度が高かったそうです。更に、尿中イソフラボン濃度が高い群は、尿中エストラジオール(E2)濃度も高い傾向だったそうです。しかしながら、その値は1.0~1.4ng/mg creatinineであり、ホルモン補充療法を受けている女子の尿中E2濃度(6.9ng/mg creatinine)と比較すると、極く僅かな増加に過ぎませんでした。

  • イソフラボン投与によるエストロゲン濃度

   閉経女子に於いて、低イソフラボン群(平均65mg/日)、高イソフラボン群(平均132mg/日)の何れに於いても、E2の有意な増加は認められません。しかし、47研究のシステマティックレビューとメタ解析から、統計学的には有意とは言えないレベルではありますが、E2の若干の増加はあったそうです。

 

更年期症状の改善についての科学的根拠

■大豆食品の摂取量とホットフラッシュとの関係

 Goldらの報告によれば、1995~1997年にかけて行われたThe Study of Women’s Health Across the Nation(SWAN)に於いて、43~52歳の女子を対象に、大豆イソフラボンの一つであるゲニステイン量と血管運動神経症状との間に有意な関連はなかったそうです。しかし、Nagataらが1992~1998年にかけて行った調査からは、日本人女性(平均43歳)に於いて、中等度から高度のレベルのホットフラッシュと、大豆製品摂取量や総イソフラボン含有量との間には有意な負の関連が認められ、一致した結果はありません。

■大豆イソフラボン投与によるホットフラッシュへの効果

 イソフラボンを含有した大豆のプラセボ効果が避けられないとする報告がある一方で、イソフラボン(60mg)12週以上摂取でホットフラッシュの頻度や程度が57%減少した報告や、イソフラボン(72mg)の6ヶ月以上の摂取でホットフラッシュに有意な効果が見られた報告等があります。システマティックレビューとメタ解析の結果からは、全体的にはホットフラッシュに有効な結果が示されています。

■ホルモン補充療法とイソフラボンの比較

 E2(1mg)とノルエチステロン酢酸エステル(0.5mg)によるホルモン補充療法群20例、大豆サプリメント群(イソフラボン90mg/日)20例、プラセボ群20例のRCTによって、ホットフラッシュ等の身体症状は、ホルモン補充療法群(-45.6%)、大豆サプリメント群(-49.8%)と、プラセボ群(-28.6%)に比較して、有意な改善傾向が報告されました。また、システマティックレビューとメタ解析からは、大豆抽出物群とホルモン補充療法群は、プラセボ群に比較して、ホットフラッシュに改善傾向を示しました。直接比較ではありませんが、ホルモン補充療法群と大豆抽出物群の間には、統計学的有意差が認められています。

 しかし、Menopause-Specific Quality of Lifeを用いたRCTからは、イソフラボンが閉経女子のQOLに効果が認められず、イソフラボンがホルモン補充療法の役割を完全に取って代わるなんて芸当は不可能と記載されています。

■エクオール

 大豆イソフラボン摂取によるホットフラッシュへの効果については、全会一致 には至っていません。これは、大豆イソフラボンの代謝物であるエクオールの産生が生体内での作用の差の原因と考えられています。

 エクオールは、ダイゼインが腸内細菌により代謝された活性代謝産物であり、ダイゼインよりも強いエストロゲン活性を発揮します。詳細については、後述のエクオールの章をご参照下さい。日本人女子の約半数が体内でエクオールを産生出来ますが、残り半分の女子では産生出来ません。欧米人の女子では、エクオール産生者の割合は約30%との報告があります。エクオールの産生は、豆腐、納豆、味噌汁、豆乳等の大豆食品を摂取する習慣が多いほど高いとされ、エクオール産生者と非産生者では、生体内での作用に差が認められています。

 

大豆イソフラボンの安全性

 2006年に食品安全委員会は、日常の食事に加えて、大豆イソフラボンを含む特定保健用食品を長期・継続的に上乗せして摂取する場合の、安全性を評価しています。

 大豆イソフラボンの安全な1日摂取量目安量の上限値は、大豆イソフラボンアグリコンとして、70~75mg/日と設定されています。日常摂取量の70~85%を40~45mg/日として、食品摂取に上乗せする安全な大豆イソフラボンの摂取量は、アグリコン換算で30mg/日までとされています。しかしながら、これまでの研究の大半はこんな少量ではなく…結果の解釈は要注意。唯、妊婦さんや乳幼児、小児については、安全性の点から日常の食生活に上乗せして摂取する事は推奨されていません。

 1食当たりの大豆イソフラボンアグリコン含有量は、豆腐30.45mg/150g、納豆36.8mg/50g、味噌8.9mg(味噌汁1杯分=18gあたり)、豆乳26.05mg/100mlであり、味噌汁1食分の味噌の大豆イソフラボン含有量は、豆腐や納豆に比べて可なり少なくなっています。1994~1996年に実施された、日本人を対象にした大規模コホート調査によると、豆腐、納豆、味噌汁で、総イソフラボン摂取量の80%以上がカバーされていたと報告されています。

 

乳癌及び子宮内膜癌と大豆イソフラボン

 疫学研究から、伝統的な大豆食品の摂取は、乳癌や子宮内膜癌のリスクを低下させる可能性が報告されています。

 「乳癌診察ガイドライン2022年版」によれば、大豆食品やイソフラボン摂取は、乳癌発症リスクを軽減させる可能性がある事が記載されています。また、メタ解析から、大豆摂取は、閉経女子の乳腺濃度に影響せず。乳腺細胞増殖に於ける研究から、イソフラボンはプラセボに比べて、乳腺細胞増殖の増加が認められなかったそうです。Nechutaらは、乳癌サバイバーに於いて、大豆イソフラボン高摂取群(10mg/日以上)は、低摂取群(4mg/日未満)と比較して、総死亡は13%、乳癌による死亡は17%、乳癌再発は25%と、いずれも有意に減少したと報告しています。また、タモキシフェン使用の既往のある場合にも、大豆イソフラボンはより有益とされ、アメリカ癌協会では、大豆製品は、乳癌サイバーにとっても安全な補完代替療法のひとつであるとしています。

 子宮内膜癌に関連して、子宮内膜肥厚に与える影響を検討したメタ解析では、植物エストロゲンはプラセボと有意差はなかったそうです。

エクオールの最新知見

 大豆イソフラボンの一つである、ダイゼインの最終産物であるエクオールは、前述の様に、特定の腸内細菌によって、大豆イソフラボンより代謝され、エストロゲン様作用を示します。エクオールを産生出来るかは、尿中のエクオール濃度を測定する事で判定出来ますが、個々の産生能は経時的に変化する事が明らかになっています。唯、このエクオールの産生の変化は、エクオール産生菌の有無や大豆製品の摂取量だけでは説明が出来ず、他の要因が関与しているのではないかと推測されています。

 エストロゲン類似作用を有するエクオールは、サプリメントとしてお手軽に補充が出来、更年期症状の緩和だけでなく、動脈硬化を基盤とする心血管疾患等の病気の予防が期待されています。

エクオールの歴史及び作用機序

 1932年にMarrianとHaslewoodが妊娠した雌馬の尿から抽出したジヒドロキシフェノール化合物を「エクオール」と呼んだのが、エクオールの起源とされています。1980年代には、Axelsonらによって、エクオールが大豆の成分であるダイゼインから生成される事や、腸内のバクテリアによって産生される事が明らかになりました。その後、エクオールが分離され、2005年にSetchellらが、S-enantiomerとして、人間や動物で産生される事を示しました。

 大豆イソフラボンの1つであるダイゼインの代謝産物であるエクオールは、特定の腸内細菌叢によって変換され、小腸の遠位部位及び結腸で吸収されます。このエクオールは、全ての大豆イソフラボンとその代謝産物の中でも、最も生物活性が高いエストロゲン受容体β選択的アゴニストですが、その他にも抗アンドロゲン作用や抗酸化作用を示す事が知られています。

 

エクオール産生者・産生能の疫学

 image191大豆イソフラボンの摂取量は、東アジアと欧米では大きく異なります。日本及び東アジア諸国では25~50mg/日であるのに対して、欧米では1日あたり2mgしかありません。日本を含む東アジアではエクオール産生者は約50%いますが、欧米では20~30%と、産生者の割合も大きく異なっています。また、年齢にみると、エクオールの産生者は年齢が上がるに従って多く、ダイゼイン摂取量も同様に年齢と共に上昇しており、ダイゼイン摂取量がエクオール産生能に影響している可能性が示唆されました。

 エクオール産生者と非産生者は多様性の解析にて、α及びβ多様性のどちらについても、有意に異なっていました。α多様性は菌種構成の複雑さや豊富さを表しており、エクオール産生者が非産生者に比べて、菌種の多様性が高い事が知られています。しかし、興味深い事に、エクオール非産生者も、その殆どがエクオール産生菌を有しており、殆どの菌種で存在量に差がなかったそうです。また、エクオール産生者に有意に多かったSlackia isoflavoniconvertesは、高齢になるほど産生者に存在する割合が増しており、エクオールを産生出来る菌種の中でも、個々のエクオール産生能の状態に影響を与えている可能性があると思われます。

 エクオール産生能を長期的に観察した疫学的研究結果はまだ限られていますが、生産能が変化する群と安定している群に、はっきりと分かれるようです。しかし、どの様な要因がエクオール産生能に影響を与えるのかは、既存の情報では説明が難しく、まだ分かっていません。

 

健康・病気とエクオール

■更年期症状

 エクオールがエストロゲン類似作用を示す事により、サプリメント(「エクエル」(美容通信2016年8月号))として、お手軽にドラッグストアでも入手可能な事もあり、更年期症状に対する効果が期待されて来ました。実際に、プラセボを用いた介入試験では、火照りを軽減する効果が報告されています。また、Oyamaらの報告では、閉経女子に対する介入試験で、皺の面積と深さが減少したんだそうです。

■骨折

 エクオールが骨に与える影響を前向き介入試験で評価した研究では、Yoshikataらがエクオールを12ヶ月間投与後、骨吸収マーカーが有意に低下する事を報告しています。

■心血管疾患

 大豆摂取量が多いと、冠動脈性心疾患の発症が少ない事が、疫学研究で示されています。

 冠動脈性心疾患のマーカーである頸動脈の内膜中膜厚に対する、大豆イソフラボンの効果を実証するランダム化臨床試験が米国で実施されましたが、大豆イソフラボンの有効性は示されませんでした。しかし、一方、北東アジアで実施されたランダム化臨床試験では、イソフラボンやエクオールの投与により、動脈硬化が改善されたとの報告があり、前述の通り、エクオール産生者の割合が、欧米よりアジア諸国に多い為だとされています。

 心血管疾患リスクを評価したエクオールの介入試験では、動脈硬化の指標であるbaPWVやCAVIを減少させたり、LDLコレステロールを下げる事が示されています。エクオールはこれらの心血管疾患リスクを下げる事で、動脈硬化を基盤とする疾患を予防する事が期待されています。また、エクオールは、動脈硬化が主な原因である脳血管性認知症の発症予防に効果があるとされています。

■肝疾患

 非アルコール性脂肪性肝疾患は、アルコールやウィルス等を原因としない脂肪肝の総称であり、世界で最も一般的な肝障害です。世界人口の約25%にみられ、米国等の先進国では非常に一般的であり、2017年には約7500万から1億人の米国人に影響を及ぼしたとされています。日本人の約3000万人が罹患しているとも言われています。 肥満の90%以上、糖尿病の60%、そして正常体重の人でも最大20%が発症します。無症状ですが、非アルコール性脂肪肝炎を経て、肝硬変、肝癌の原因となります。

 エクオールは、非アルコール性脂肪性肝疾患の一因であるメタボリックシンドロームに対して、防御的に働く可能性が示唆されています。肥満型の非アルコール性脂肪性肝疾患とは代謝機序が異なる、痩せ型の非アルコール性脂肪性肝疾患の男性では、エクオールの産生者が極めて少なく、また、腸内細菌叢の解析でもSlackiaが有意に減少しており、発症にエクオール産生能が関与していると考えられています。その為、エクオールの摂取により、脂肪肝の発症や改善が認められる可能性が指摘されています。

■抗腫瘍効果

 イソフラボンは、アポトーシス(美容通信2024年4月号に関与するGSK3β及びp53(美容通信2022年7月号)(美容通信2017年7月号を活性化し、腫瘍細胞の増殖を調節するβ‐カテニン、プロテインキナーゼB、アンドロゲン受容体の発現を阻害する事で、抗腫瘍効果を示す事が知られています。エクオールの抗腫瘍効果について、近年、乳癌や前立腺癌、結腸癌等の癌疾患に於いて検証する研究報告が多数報告されています。

レッドクローバー・ブラックコホシュ・ザクロ・ロイヤルゼリー・薬用ハーブ

 更年期治療の第一選択は、ホルモン補充療法です。しかしながら、静脈血栓症、心筋梗塞及び脳梗塞等の血栓性疾患がある場合や、ホルモン依存性疾患(美容通信2015年9月号)、特に乳癌を発症した場合は、前述の通り、原則ホルモン補充療法の適応がありません。その為、更年期症状の治療としては漢方治療が良く行われますが、如何に漢方薬ゼリーを多用しようとも、あの独特な風味に屈してしまい(←ゴキブリホイホイみたいな匂い…。そして味)、懐かしい顔文字で表現すると、(。_。`)チーン状態から、脱落してしまう人が多いのも事実。継続可能なハーブやロイヤルゼリー等で、多少とも更年期症状が改善すれば、それはそれで○と考えてあげましょう。

レッドクローバー

 「レッド・オクトーバーを追え」は、1984年に出版されたトム・クランシーによるアメリカ合衆国の小説です。著者の処女作であり、ジャック・ライアンシリーズの第1作目で、特に当時の米国大統領ロナルド・レーガンが本書を読んで楽しんだと発言した事で、クランシーの小説家として出世する切っ掛けになりました。因みに、レッド・オクトーバーは、ソ連海軍!の超静音航行システム「キャタピラー・ドライブ」を搭載した改良型タイフーン級原子力潜水艦で、レッドクローバーとは何の関係もありません。

 レッドクローバー(紫詰草、学名: Trifolium pratense)は、シャジクソウ属の一種です。和名ではアカツメクサとも呼ばれますが、これはシロツメクサ(白詰草)に対するもので、花色が紅紫色なので赤詰草、あるいは紫詰草とも言います。ツメクサは詰め草の意味で、昔オランダから日本へ輸入したガラス製品等の緩衝材に使われていたのがその語源です。

 レッドクローバーには、フォルモノネチンとビオカニンA等のイソフラボン、ダイゼイン、ゲニステインが含まれており、この中で更年期症状の改善に特に関連するのはイソフラボンです。イソフラボンは葉っぱに7割、茎に2割、花に1割含まれており、フィトエストロゲンとして作用し、エストロゲン受容体β(530アミノ酸残基からなり、前立腺等で発現)への高い親和性と、エストロゲン受容体α(595アミノ酸残基からなり、主に子宮、卵巣、乳腺、骨、心臓、脳下垂体等の器官で発現)への親和性を有しています。Kandadysらによるレッドクローバーの更年期症状改善効果についてのメタ解析では、1日40~80mgのレッドクローバーイソフラボン抽出物を服用すると、ホットフラッシュの頻度が1日当たり1.73回減少し、効果的だったとされています。

 しかしながら、レッドクローバーに含まれるクマリンが血小板凝集に影響を与える可能性がある為、抗凝固薬との併用は要注意とされています。また、弱いエストロゲン活性があるので、ホルモン補充療法又は経口避妊薬を服用中、ホルモン依存性の腫瘍の病歴がある場合も、注意が必要とされています。

 

ブラックコホシュ

 キンポウゲ科の多年草で、米国東部とカナダの固有種です。肥沃な広々とした林地にみられ、約150 cmくらいの高さに育ち、盛夏に香りの良い白い花を咲かせ、秋に繁殖します。ブラックコホシュという名前はその根茎が黒味が掛っている事に由来していますが、この根茎の薬草製剤は、のぼせ等の更年期症状の緩和に使用されています。

 ブラックコホシュの薬理作用は、フェノール化合物、シクロアルタントリテルペングリコシド、及びフェニルプロパノイドの化合物により、体温調節、気分、及び睡眠の為の主要な中枢神経系受容体に作用し、脳の代謝とその全体的な活動の改善にも影響します。また、体温調節に関連するセロトニン受容体の部分アゴニストとして作用します。Castelo-Brancoらによるレビューでは、35の臨床試験と43759人の女子を含む1つのメタ解析で、ブラックコホシュのイソプロパノール抽出液を使用した場合、対照群グループよりも、精神的な更年期症状が有意に減少しました。特に、後述のセントジョーンズワートと組み合わせると、より効果的だったそうです。

 ブラックコホシュ摂取による肝障害が報告されており、使用の際は定期的な肝機能のチェックが推奨されます。

 

ザクロ

 左図はWikipediaから拝借した画像ですが、ザクロの実は、銅鏡の曇りを防止する為に磨く材料として用いられたそうです。江戸時代の銭湯は湯船の熱気を逃さないよう、背の低い出入口を設けており、この出入口は「石榴口」と呼ばれていたが、これは「屈み入る」と「鏡鋳る」(鏡を磨くこと)とを掛けたものなんだそうです。

 ザクロは、エストロゲン様作用を持つ植物で、ホルモンバランスの乱れを整える伝統的な治療法として使用されて来ました。この果実には、ポリフェノール、タンニン、アントシアニン等の抗酸化物質が豊富に含まれており、またザクロの果汁、種子、皮の混合物には、フィトエストロゲン、ゲニステイン、ステロイドホルモンが豊富に含まれています。

 更年期女子78人を対象としたザクロサプリメントを用いた無作為化二重盲検試験では、ザクロ内服群に於いて、クッパーマン指数及びThe menopausal Quality of Life Questionnaireスコアの平均が改善し、内服終了後でも閉経女子の生活の質を改善したそうです。

 鬼子母神は、天女のような姿をし、子供を1人抱き、右手には吉祥果を持っています。吉祥果をザクロで表現するのは中国文化での影響であり、これは仏典が漢訳された時は吉祥果の正体が分からなかった為に、代用表現したからなんだそうです。因みに、鬼子母神が人間の子を食べるのを止めさせる為に、人肉の味がするザクロを食するようにと釈迦が勧められたたと言うのは、日本で作られた俗説に過ぎません。

 

ローヤルゼリー

 ローヤルゼリーとは、ミツバチの若い働き蜂が花粉や蜂蜜を食べ、体内で分解・合成し、上顎と下顎の咽頭腺や大腮腺から分泌する乳白色のクリーム状の物質です。女王蜂となる幼虫や、成虫となった女王蜂に給餌される食物です。 女王蜂が働き蜂に比べ長寿で体も大きくなれるのは、この特別食の賜物。広義には、働き蜂となる若齢幼虫に給餌される食物である、ローヤルゼリーより栄養価の低い「ワーカーゼリー」も含みます

 ローヤルゼリーは、水(50~60%)、蛋白質(18%)、炭水化物(15%)、脂質(3~6%)、ミネラル塩(1.5%)、及びビタミンで構成されています。様々な慢性疾患改善の食事栄養物質として広く使用されており、抗腫瘍、抗アレルギー、抗菌、抗炎症、免疫調節効果等の様々な薬理的効果があるとされています。

 更年期症状に対しては、Asamaらによるローヤルゼリー(800mg/日)服用研究では、閉経女子の不安、腰痛等の更年期症状の緩和に有効である事が示されました。ローヤルゼリーが更年期症状をどの様に改善するのかは明らかではありませんが、エストロゲン受容体の活性、エストロゲンサブタイプの分布への影響等、様々なメカニズムを通じて、エストロゲンシグナル伝達を調節する可能性があるとされています。更に、10‐ヒドロキシ‐トランス‐2‐デセン酸、10-ヒドロキシデカン酸、及びトランス-2-デセン酸を含有しており、それらのエストロゲン作用により、更年期症状が緩和された可能性があります。

 

その他の薬用ハーブ

 ハーブは、一般的に植物の花部や葉部を用いられる事が多く、その殆どは食品に分類されています。一方で漢方薬も植物を用いる事が多いですが、動物や鉱物等も含まれた医薬品で、ハーブとは区別されています。ハーブによる血管運動症状等の更年期症状に対する研究は様々あり、フィトエストロゲン成分を含む300以上の植物が特定されています。フィトエストロゲンは、構造と機能がエストロゲンに似ており、アジア人女子は食事でこのフィトエストロゲンを定期的に摂取しているので、更年期症状が軽いと考えられています。

■サルビア・オフィシナリス(コモンセージ)

 ローマではセージに邪気を払う力があると信じられていた為、「聖なるハーブ」として宗教儀式等で用いられて来た経緯があります。一般的にセージと呼ぶ場合は、このサルビア・オフィキナリスを指し、丈夫で育てやすいので、家庭菜園初心者に人気のハーブです。

 脳内のGABA/ベンゾジアゼピン受容体に結合する作用機序があり、神経系に対しては記憶力や鎮静の改善にも効果的とされています。又、エストロゲン様の作用もある事から、のぼせや発汗の治療効果があります。一般的な量では問題はありませんが、過剰に使用により、暖かさ、眩暈、頻脈、癲癇用の発作を引き起こしたり、糖尿病や血圧の薬との交差反応がある為、注意が必要です。

■メリッサ・オフィシナリス(レモンバーム)

 和名は、コウスイハッカ(香水薄荷)。葉の形はミントにも似ており、シトラール等の製油成分を含み、レモンを思わせる香りがします。夏の終わりに、蜜を持った小さな白い花もしくは黄色い花を付けます。繁殖力が非常に強く、嘗ては人間より長生きすると考えられていいました。

 フェノール化合物とトコフェロールの含有量が高い事から、抗不安、抗酸化、抗うつ、抗炎症、抗ウィルス等の多様な生物学的、及び健康上の特性が分かっています。また、誘導体の一つにカフェ酸がある為、更年期の神経刺激や睡眠障害に効果があります。

■ヴァレリアン(セイヨウカノコソウ)

 ドイツでは、不眠症、精神不安への使用が承認されていますが、日本では非医薬品に分類されています。古くから薬草として利用され、中世では修道院の薬草園で盛んに栽培されていました。

 再取り込みの阻害によるシナプス間隙でのGABAの増加、神経伝達物質の分泌増加、及び植物抽出物中のグルタミンにより、鎮静効果が期待出来ます。更年期の火照りの治療にも使用されます。

■トリゴネラ・フォエナム・グラエクム(フェヌグリーク)

 インド料理に欠かせないスパイスですが、粘液、蛋白質、ステロイドサポニン等の化合物が含まれており、サポニン化合物による脂質低下効果が証明されています。また、更年期症状、特に火照りに対しての治療効果があります。このハーブの治療用量の摂取による副作用は報告されていませんが、繰り返し皮膚に塗るとカブレる人がいるんだそうです。

■フォニクルム・ブルガレ(ウイキョウ/フェンネル)

 中国植物名は茴香(ういきょう)と書き、その由来は、腐った魚に使うと香りが回復するから名付けられたそうです。

 パルミチン酸とベータ-シトステロールが含まれている為、抗アンドロゲン効果と抗炎症効果があります。また、植物性エストロゲンも含有されているので、閉経後の火照りと膣の萎縮に効果があります。

■イチョウ

 「精子が、泳ぐ!」事で有名なイチョウですが、これまでに約50の化合物が分離されており、生物学的活性に最も関連するのは、フラボノイドトテルペントリラクトンで、抗炎症作用と抗酸化作用があります。注意障害や閉経後の記憶障害の治療に効果があるとされています。副作用には、軽度の胃腸障害、アレルギー反応、頭痛、筋肉の痙攣、動悸、不整脈、眩暈等があります。

■アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)

 ウサギの餌として、アルファルファの呼称でペットショップで販売されていますが、人間界では、これをスプラウトの状態でサラダ等で食します。

 葉の抽出物に植物性ホルモンである、クメステロールが含まれており、火照りと寝汗に効果があります。一方で、種子由来の製品を摂取すると、サルモネラ菌、大腸菌、リステリア菌の感染によって、低カリウム血症や消化器障害が誘発される事も。

■セントジョーンズワート(セイヨウオトギリ)

 軽度から中等度のうつ病と不安の治療に用いられる他、性欲、膣の乾燥(美容通信2022年3月号)(美容通信2018年12月号)、尿路の問題(美容通信2022年4月号美容通信2025年2月号)、及び更年期によって引き起こされる精神的合併症に有効性があるとされています。副作用としては、胃腸の不快感、光過敏、落ち着きのなさ、疲労等が挙げられます。CYP3A4を誘導する為、ジゴキシン・シクロスポリン(美容通信2016年1月号)・テオフィリン・ワルファリン・経口避妊薬(美容通信2007年11月号)等と併用すると、医薬品の血中濃度が低下してしまいます。

■オタネニンジン(高麗人参)

 高麗人参(美容通信2023年7月号)はウコギ科の多年草で、野菜のニンジンはセリ科であり、同じ人参、人参と称されはしますが、近縁種ではありません。悪しからず。

 抗炎症作用があり、栄養価の高い物質として、疲労、衰弱の治療、及び集中力の向上に効果があります。閉経後の女子の健康に関するシステマティックレビューでは、火照り、更年期症状、生活の質の低下を大幅に改善させる事が示されました。副作用は、低血圧、不眠症、頭痛、神経過敏、胃腸障害、ニキビです。

■パンションフラワー(チャボトケイソウ)

 パッションフラワーは、その独特な形状から、16世紀、この植物の原産地である中南米に派遣されたイエズス会の宣教師らによって、嘗てアッシジの聖フランチェスコが夢に見たという「十字架上の花」であると信じられ、キリスト教の布教に大いに利用されました。左図の如く、この花の形状は、キリストの受難を象徴する形をしており、花の子房柱は十字架、3つに分裂した雌蕊が釘、副冠は茨の冠、5枚の花弁と萼は合わせて10人の使徒、巻きひげは鞭、葉は槍を表しているんだそうです。確かに言われてみれば、そう見えなくもないですが…、日本ではその機械的な花の形状から、単にトケイソウ(時計草)と呼ばれています。 

 フラボノイドを含み、植物性プロゲステロン作用があり、抗不安及び抗不眠効果があります。更年期障害に伴う、神経学的症状や火照りに対する有効性が報告されています。

ビタミン剤

各種ビタミン剤の作用機序と効果

■ビタミンA

  脂溶性で、動物性食品に含まれるビタミンA、緑黄色野菜に含まれるβカロチンがあります。βカロチンは過剰症ってものがそもそもないので、サプリメントとして安心して使用可能です。皮膚、粘膜の機能維持、免疫機能、生殖機能の維持、夜盲症、ドライアイの予防等に適応があります(美容通信2009年12月号)。

■ビタミンB1

 水溶性で糖代謝促進、神経機能維持に有効。不足により、末梢神経障害、食欲減退等と共に、脚気の原因となる事も。一般的には、皮膚粘膜の健康維持に貢献(美容通信2017年9月号

■ビタミンB2

 水溶性で、皮膚や粘膜の機能維持に関与。欠乏により口角炎、口内炎、舌炎、脂漏性皮膚炎等を生じます(美容通信2024年10月号

■ビタミンB6

 水溶性で、アミノ酸代謝、糖質代謝に関与。蛋白質からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持に有効。葉酸(美容通信2017年8月号)と併用する事で、ホモシステインを低下させ、心血管系の機能改善効果も期待出来ます(美容通信2009年11月号)。

■ビタミンB12

 水溶性で、造血に関与しています。動脈硬化、神経性疾患の予防に有効とされています。血管系への効果を期待する場合は、ビタミンB6、葉酸と併用する事が多いかな。

■ビタミンC

 水溶性で、皮膚や粘膜の健康を保ち、抗酸化作用が認められる栄養素として知られています(美容通信2016年6月号。免疫力増進、抗動脈硬化作用、抗癌作用(美容通信2016年11月号)(美容通信2008年11月号)についても注目されています。ビタミンCは、感染、運動、ストレス、喫煙等により必要量が増加し、更年期世代の女子の日常生活に大きな影響を与えています。

■ビタミンD

 脂溶性で、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)と分類される事もあります。腸管でカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を促す効果が良く知られています。動物性食品(魚肝油、卵、肉、牛乳等)の摂取により、ビタミンD3が生成され、脂肪組織や筋肉にに貯蔵されます。近年、骨の形成以外のビタミンDの効果として、免疫力増強、抗肥満効果、心臓血管系への有効性等が発表され、予防、健康増進の見地から服用者は増加の一途なんだそうな(美容通信2013年3月号)(美容通信2023年3月号)。

■ビタミンE

 脂溶性で、強い抗酸化作用を有しています。8種類のビタミンEが存在していますが、α‐トコフェロールがサプリメントとしては良く用いられています。免疫調節作用、加齢黄斑変性の予防、抗癌作用、アルツハイマー病の予防等が知られています(美容通信2023年3月号)。

■ビタミンK

 脂溶性で、血液凝固系、骨代謝に関係しています。欠乏症は発生し難いですが、新生児は腸内細菌叢が未発達の為、ビタミンK欠乏による出血性疾患が発生する事があります。

DHEA

 DHEA(美容通信2025年2月号)(美容通信2015年11月号)(美容通信2017年5月号)(美容通信2010年9月号)は、アメリカでは栄養補助食品との位置付けの為、スーパーやドラッグストア等で購入が可能ですが、日本では、その弱い男性ホルモン作用が故に、医薬品として分類されているので、近所のマルエツや福太郎では買えません。

 ホットフラッシュや動悸・息切れ、寝汗・発汗、浮腫み等の更年期の血管運動神経症状と、閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)(美容通信2021年7月号)に対する第一選択はホルモン補充療法です。しかし、難治性のGSMに対しては、DHEA膣剤も推奨されます。閉経後女性の性的欲求低下障害美容通信2025年2月号)に対しては、DHEA経口補充も効果はありますが、テストステロン補充が王道です。因みに、バイアグラが性的欲求低下障害に効果があるとされ、発売当初、好奇心旺盛のHISAKOも作用機序が良く分からないままに試し飲みもしましたが、バイアグラに含まれている微量の男性ホルモン(←製薬会社は正式には認めてません!)位では、効果は?でしたが(笑)。

DHEAとは?

 人間に於いて、最も多く存在するステロイドホルモンです。生体内では、硫酸化体のDHEA-Sとして99%が存在し、相互に変換されます。体内のDHEA濃度は、血清DHEA-Sを測定します。

 左図の如くに、DHEAは、副腎皮質網状層でコレステロールから合成(30%)されると共に、卵巣の莢膜細胞(20%)や末梢組織(30%)で、DHEA-Sから変換されて作られます。DHEAは、更に、精巣や卵巣等の末梢組織で、テストステロンや作用の弱いエストロゲンに変換されます。また、テストステロンは、脂肪組織・筋肉・肝臓などに広く存在するアロマターゼにより、エストラジオールに変換されます。

 アンドロゲンは、男性ホルモン作用を有するホルモンの総称で、DHEA、アンドロステンジオン、テストステロン等を指します。エストロゲンは、女性ホルモン作用を有するホルモンの総称で、エストロン、エストラジオール、エストリオール等を指し、私達人様!ではエストラジオールの活性が最も高いとされています。

■卵巣でも、DHEAとテストステロンは産生される!

 女子の卵巣では、お馴染みのエストロゲンやプロゲステロンだけでなく、DHEAやテストステロンも産生されています。閉経(閉店?)後は、卵巣からのエストロゲン・プロゲステロン・DHEAの産生は当然なくなりますから、エストロゲンの供給の90%は副腎からのDHEAに由来します。しかしながら、閉経後も、卵巣からのテストステロン分泌は長い間たらたら続く事が知られていますが、テストステロンの40~75%は副腎由来です。

■DHEA-Sは加齢と共に減少

 DHEA-Sは20歳前後でピークに達し、その後、直線的に減少します。女子の腋毛や陰毛は、100%DHEAに支配されているので、DHEAの低下が著しいと、腋毛や陰毛が疎らになり、ある日、「あら!婆臭い!!」と気付いて、愕然とする事も。軽度の場合は、精々性欲が落ちる位で、自他覚的に気付かれ難い…。

■DHEAの作用

 DHEAは、テストステロンの1/10~1/100程度の弱い男性ホルモン作用があります。DHEAの作用の本質は、変換されたテストステロンやエストロゲンによるものですが、DHEA固有の作用もあるようです。でも、DHEA固有の受容体の存在も含め、未だ詳細不明のままです。

 

DHEA経口投与

■DHEA経口投与で、血中DHEA・テストステロン・エストラジオールは増加

 血中のDHEA-S濃度が若造よりも遥に低い、閉経後女子とお爺ちゃん(高齢男子)に、1日50~100mgのDHEAを3~24ヶ月間服用してもらうと、血中濃度DHEA-S濃度は若造レベルに増加します。血中テストステロンとエストラジオールの濃度も、女子では僅かながらですが増加します。

■DHEA経口投与の副作用

 女子では、テストステロンの過剰により、ニキビや多毛症、生理不順(無月経)、通称・ザビエル禿若しくは河童禿(=頭頂部の脱毛)、声の低音化、体形の男性化等、おっさん化してしまいます。

 DHEAの副作用として、1日50mg以上の用量では、ニキビだけじゃなく、毛深くなり、脂性肌(脂ギッシュ!)等のアンドロゲン作用が報告されていますが、所謂、重大な有害事象はありません。

 因みに、思春期のニキビは、思春期のDHEAの生理的増加と関連しています。DHEAは、皮脂腺でDHTに変換されるので、これがニキビの原因になります。

 

更年期の血管運動神経症状と閉経関連泌尿生殖器症候群に対する第一選択は、ホルモン補充療法だが…

 2022年の北米閉経学会では、ホルモン補充療法は、更年期のホットフラッシュや動悸・息切れ、寝汗・発汗、浮腫み等の血管運動神経症状と、閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)(美容通信2021年7月号)に対する最も有効な治療方法であり、骨量の減少と骨折を予防するとの見解を公表しました。

 この声明の中で、ホルモン補充療法の適応がない女子では、市販の治療薬では緩和されないGSMの症状に対しては、低用量のエストロゲン膣剤又は他の療法(DHEA膣剤、ospemifeneの経口投与、膣剤・Hygeena(美容通信2025年2月号)等)が推奨されるとし、GSMに対してDHEA膣剤の使用を容認しています。

■閉経関連泌尿生殖器症候群とは

 閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)とは、2014年に北米閉経学会とinternational Society for the Study of Women’s Sexual Healthが提唱したもので、閉経に伴うエストロゲン低下で生じる泌尿生殖器系の多くの症状を含む概念です。従来の、外陰膣萎縮症や萎縮性膣炎、尿失禁等も含まれます。

 GSMの症状は、性器症状(乾燥、灼熱、刺激)、性交症状(潤滑不足、不快感又は痛み、性機能障害)及び泌尿器症状(切迫、排尿困難、再発性尿路感染症)等です。性機能とは、性交回数、性的満足度、性欲等を指します。

 GSMは、閉経女子の約84%が罹患しているとされており、4000人以上の更年期女子を対象にした国際調査では、GSMの約半数が生活の質の低下が報告されています。50万人の女子を対象にした最近のケースコントロール研究では、GSMでない女子に比べて、GSM女子は、抑鬱と不安のリスクが有意に高いそうです。

 更年期症状のうち、ほてりやのぼせ、ホットフラッシュ、発汗等の血管の拡張と放熱に関する症状は、一般的に時間と共に軽快します。しかし、GSMは、治療しなければ、低エストロゲン状態が続く限りは症状は持続するものですし、最悪の場合は悪化もあり得ます。GSMが女性の生活に悪影響を及ぼす可能性があるにも拘らず、多くの女子では未治療のまま放置されています。

■ポーランドの更年期医学会専門家会議の見解

 2020年にポーランド男性女性更年期医学会専門家会議は、閉経前と閉経後のDHEA補充についての見解を発表しました。

 2020年の時点で報告されている臨床試験やメタアナリシスの論文をレビューし、DHEA補充は以下の状態に有効としています。

  1. 副腎機能不全(美容通信2017年5月号)(美容通信2015年4月号)を有する女子
  2. 副腎皮質ステロイドホルモン製剤によって、慢性的に治療を受けている女子
  3. 低骨密度や骨粗鬆症の閉経後女子
  4. 性機能障害や性欲減退に悩む閉経前女子
  5. 閉経による外陰膣萎縮症、或いはGSMに悩む女子

 また、最近の臨床試験によってDHEA補充が恐らく効果的である状態としては、以下があります。

  1. 性機能障害や性欲減退に悩む閉経後女子
  2. 卵巣予備機能の低下した不妊女子
  3. 鬱や不安に悩む女子
  4. 肥満やインスリン抵抗性を有する女子 等

 そして、重要な点として強調されるのが、今までの臨床試験に於いて重篤な副作用の報告が皆無って事でしょうか。

■GSMに対するスイスの学術的なコンサイス会議の見解

 2022年、スイスでは、様々な医療分野から専門家を集め、GSMに対する治療の選択肢を科学的根拠に基づいて公表しました。Hygeena(美容通信2025年2月号)の様な非ホルモン性膣剤、エストロゲン膣剤、膣レーザー療法(美容通信2022年1月号)(美容通信2022年4月号)、オスペミフェン経口剤等と共に、DHEA膣剤を選択肢の一つとして挙げています。

■DHEA膣剤によるGSM治療

 近年、膣内レーザー治療やDHEA膣剤等が、GSM治療の選択肢として追加されました。

 血中DHEA-S濃度は、血中テストステロン及びエストラジオールの濃度よりも遥に高い値です。しかし、寄る年波には勝てず、DHEA-Sとテストステロンの濃度は減少し、閉経前後では、若いギャルだった頃の約半分の値に減ってしまいます。

 DHEA膣剤(商品名・イントラローザIntrarosa)(6.5mg/日)は、2016年に外陰膣萎縮症による性交痛の治療薬としてとしてFDA(米国食品医薬品局)で承認されています。しかしながら、現在アメリカ国内の医療施設にのみに提供しているだけで、日本では入手が不可な現状です( ;∀;)。GMS治療の為のDHEA製剤は、エストロゲン膣剤と異なり、末梢の標的器官の細胞に入り込み、細胞内に局在する酵素によってテストステロンに、更にはエストラジオールに変換されます。つまり、DHEA、テストステロン、エストラジオールは、細胞の中でのみ作用を発揮し、細胞の中で不活性化される、謂わば細胞内完結型なので、全身への影響を考慮する必要がありません。それにもかかわらず、エストロゲン膣剤と対照的に、膣上皮だけでなく、その下の細胞層にも有益な影響を与えているようです。米国臨床腫瘍学会のガイドラインでは、アロマターゼ阻害薬を使用していて、GSMに対して従来の治療が奏功しなかった乳癌患者さんに、推奨と記載されています。実際、パイロット研究でも、アロマターゼ阻害薬による治療を受けた乳癌患者さんに対し、DHEA膣剤を使用しても、血中エストロゲン濃度は増加しなかったそうです。

■性機能障害や性欲減退に悩む閉経前後女子に対するDHEA経口補充

 女子の性欲とリビドーにも、性ホルモンが関与しています。副腎のアンドロゲンは正常な性機能に必要であり、アンドロゲン不足では性行為の頻度が低いとされています。横断的及び縦断的な研究により、血中テストステロンレベルと性機能は直接的な相関がありませんが、性欲に関してはテストステロンが主要な役割を担っている事が分かっています。閉経前後の女子では、血中DHEA-Sが低値だと、性機能が低下します。

 DHEA経口補充は、性機能改善に有効ではありますが、閉経後女子の性欲に関するDHEA経口補充の有効性は、未だ一致した見解には達してはいません。

 最新の研究では、閉経後早期の女子に1日10mgのDHEAを12ヶ月間飲んでもらって評価したところ。性機能の改善と性交回数の有意な増加が認められたそうです。

 また、閉経前の女子の性機能に対するDHEA経口投与の効果についての観察研究では、平均年齢41歳の不妊女子に対して、DHEA25mgを1日3回服用してもらったところ、DHEA補充群ではFSFIスコア(女性性機能質問紙)は7%、性欲スコアは17%、性的興奮スコアは12%増加したそうです。しかし、オーガニズムと性的満足度スコアには差がなかったそうです。FSFIスコアが最低四分位置でDHEA補充をスタートした女子でも、34%スコアが増加し、性欲(40%)、性的興奮(46%)、潤滑(33%)、オーガニズム(54%)、性的満足度(24%)等で改善が認められました。FSFIスコアが低い閉経前女子に於いても、DHEA経口補充は性機能を改善するようです。

 また、閉経前の生理的な範囲内でのテストステロン補充は、閉経後女子の性機能改善に有用とされています。

アロマセラピー

 アロマセラピーに使用される精油は、抗ストレス作用を始めとして、多くの生理・薬理作用を有します。その為、近年、補完代替医療として注目されており、更年期障害の改善や月経困難症による痛み緩和に有効です。

精油の薬理的作用

 精油とは、天然植物の様々な部位に存在する揮発性の芳香物質を抽出・濃縮したものです。その主成分には、アルコール、アルデヒド、エステル、ケトン、炭化水素、更にはフェノール類等があり、精油はこれら様々な構成成分からなります。しかしながら、植物の産地や抽出法等により、同じ学名の精油であっても、精油の成分(ケモタイプ)は異なり、作用や効果も違ってきます。

 

精油の違いによる生理作用

 精油吸入の生理作用は、精油の種類の違いにより、大きく異なります。安全性は勿論の事、主要成分がきちんと表示された精油を使用する事が重要で、日本アロマセラピー学会では、メディカルアロマセラピーに推奨される信頼性の高い精油が公開されています。

 

アロマセラピーの様々な更年期症状に対する効果

 別名・大和撫子って名前の日本人女子の24.5%が、更年期障害の一つであるほてりや発汗を感じるとされていますが、この血管運動神経症状であるホットフラッシュの作用機序の一つとして、エストロゲンの減少による視床下部の体温センサー閾値の乱れが考えられています。ラベンダー吸入により、ホットフラッシュの改善のみならず、性的欲求の向上や睡眠の質の向上が報告されています。

 また、別のグループの報告では、50歳代の更年期女子にクラリセージ精油の吸入をしてもらったところ、コルチゾール、セロトニン濃度の有意な減少、更には甲状腺刺激ホルモンの減少傾向等から、更年期障害によるうつの改善効果が示唆されました。その他にも、精油(ラベンダー、ネロリ、ジャスミン・アブソリュート、ローマンカモミール、クラリセージ、インディアン・サンダルウッド)の吸入で、オキシトシンの分泌増加等が認められています。つまり、アロマセラピーによる更年期症状の緩和は、精油がもたらすホルモンの分泌作用によるものと推測されています。

その他

心理療法・精神療法

 更年期症状でも日常生活への支障が低い場合は、必ずしも薬物療法は必要ありません。ホットフラッシュを中心とした血管運動神経には、薬物療法の中でもホルモン補充療法が有効である事は周知の事実ではありますが、それ以外の症状については…微妙。万能ではありませんので、悪しからず。精神・心理・社会的要因が強い場合には、心理療法・精神療法が有効な事もあります。また、薬物療法に、心理療法・精神療法を組み合わせると、効果が上がる事も。

 

食事療法・運動療法

■食事療法

 更年期は、エストロゲンの分泌低下に伴い、脂質代謝や糖代謝等の変化が生じ、メタボリックシンドロームの発症と関連があります。この代謝変化を予防するには、低エネルギー食が推奨されており、4984名の韓国女子の横断研究では、魚・海藻・乳製品・穀物・野菜や果物を高用量摂取し、ファーストフード・動物性脂質を豊富に含んだ食事・揚げ物・菓子を控えた伝統的な食事を摂る事で、脂質代謝異常が予防される可能性があります。

 エストロゲンには抗酸化作用があり、閉経後女子では抗酸化能が低下してしまいます。酸化ストレスは、心血管疾患、糖尿病、骨粗鬆症、鬱病等の様々な病気の発症に関与している事が知られており、閉経後女子では抗酸化作用を有するビタミン類(ビタミンA、βカロテン、ビタミンC、ビタミンE等)、植物フラボノイド、大豆イソフラボン等の外因性抗酸化物質をより多く摂る様に心掛ける事が推奨されています。これらの栄養素は、果物、野菜、大豆、カカオ、茶葉の抽出物等に豊富に含まれています。

  • 大豆食品

   大豆食品は、蛋白質、ミネラル、食物繊維の優れた供給源であり、他の食品に比してイソフラボンを豊富に含んでいます。イソフラボンは前述の通り、エストラジオールに似た化学構造を持ち、更年期症状に対する効果が期待されています。日本では、豆腐、味噌、大豆、油揚げ、納豆などの大豆製品が、全大豆消費量の約90%を占めています。

 Namaziらによる大豆食品の摂取と全死因の死亡率、心血管疾患及び癌による死亡率に関する3つの日本の研究を含む7つのコホート研究のメタアナリシスでは、大豆の食品の高用量摂取は、全死因の死亡率及び心血管疾患及び癌による死亡率と関連はありませんでした。しかし、発酵大豆の摂取が多いと、心血管疾患による死亡率は有意に低下したそうです。最近の日本のコホート研究からも、発酵大豆や納豆の高い摂取量が心血管疾患の死亡率減少に寄与していると推測されています。

 大豆食品の生物学的効果は、種類によって異なると考えられています。大豆摂取と骨粗鬆症又は大腿骨近位部骨折の発生に関する研究は殆どなく、1417名の閉経女子による日本コホート研究では、豆腐や他の大豆食品ではなく、習慣的な納豆の摂取が、骨粗鬆症性骨折のリスク低下との関係が認められました。6年間に亘る高山コホート研究でも、大豆食品を良く食べる人はほてりの発生率が低い事が分かっています。大豆イソフラボンと認知機能の関連を調査したランダム化比較試験のメタアナリシスでも、大豆イソフラボンの摂取が認知機能・記憶を改善する事が示されています。

  • 地中海式食事法

   地中海食とは、スペイン、イタリア、ギリシャ等の地中海沿岸諸国の食事様式で、心血管疾患、糖尿病、肥満、認知症等のリスクを軽減すると考えられており、注目の食事療法の一つです。オリーブオイル、ナッツ、野菜、果物、シリアルを豊富に摂取し、魚や魚介類は適量、乳製品、赤味肉、加工肉、お菓子はあんまり食べない。つまり、飽和脂肪酸を多く含む肉やお菓子を控え、不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルやナッツを多く摂取し、抗酸化作用があり、ビタミンや食物繊維を豊富に含む野菜や果物の高い摂取量等が、健康に良い理由と考えられています。

 油脂類、種実類、青魚等に豊富に含まれるω3不飽和脂肪酸(美容通信2010年6月号)は、更年期女子の不安・うつ症状を軽減し、認知機能を改善すると言う報告もあります。EMASのポジションステートメントでも、更年期女子に於ける長期間に亘る地中海式食事法は、心血管疾患のリスクだけでなく発症率と死亡率を減らし、骨密度を維持しより良い体組成に導く、骨粗鬆症の女子の骨密度を改善する、認知機能の低下を予防する、乳癌のリスクを減らす、全死因の死亡リスクを減らす可能性があるとされています。また、短期間の地中海式食事法でも、血管運動神経症状については改善が認められるそうです。

 地中海式食事法と日本食は、野菜や豆類、魚を多く食べ、穀物を主食とするところは同じですが、オリーブオイルを多用している点が異なり、日本食の塩分過多と言った欠点を改善する意味でも、オリーブオイルやハーブやスパイスによる味付けをいいとこどりしてしまうのがお勧めです。

■運動療法

 更年期はエストロゲン欠乏に関連し、身体的、精神的な健康問題が出現し、QOLを低下させます。また、加齢による運動量の低下や筋力低下、相対的な男性ホルモンの高値、エネルギー摂取量が消費量よりも大きい等の要因が関与して、内臓脂肪が増え、生活習慣病と関連します。

 運動の短期的な効果として、持久力、基礎代謝、エネルギー消費量の増加、筋肉・関節・骨の健康向上、ストレスの軽減、睡眠の質の改善等が挙げられます。定期的な運動は健康増進だけでなく、降圧・抗炎症・抗酸化作用、血管内皮機能・インスリン抵抗性・脂質代謝異常の改善等を介し、心血管疾患、高血圧、Ⅱ型糖尿病、肥満、骨粗鬆症、認知症、癌(乳癌、大腸癌等)、鬱病等のリスクを軽減し、病気の予防にも重要です。


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

*使用中や使用後、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等の異常が現れた場合、使用を中止し、医師に相談してください。

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重症のアトピー性皮膚炎には、ヤヌスキナーゼ阻害薬と言う選択がある。

<リンヴォック>