HISAKOの美容通信2023年7月号
アンチエイジングに効果的な漢方薬とサプリ|人参栄養湯/NMN/NR/プロバイオティクス他
アンチエイジング医学とは、健康増進や未病管理を目指した投資医療です。漢方薬やサプリメントは、栄養療法、運動療法に並んで、アンチエイジング医療に於ける介入法の柱と位置付けられています。漢方薬で抗老化作用が期待出来るものとしては、補剤・人参栄養湯です。フレイルに対してでだけでなく、カロリー制限模倣薬(CRM)としての効果も注目されています。また、サプリメントとしては、CRMの他、老化細胞除去剤としての可能性のあるサプリメントや、プロバイオティクスサプリメントが有効とされています。
医療の分野では、寝たきりを含む生物寿命と健康寿命の10年内外の相違が、克服すべき緊急の課題と言われて、久しくなります。健康寿命を短縮する大きな要因としては、フレイル(虚弱)が挙げられます。フレイルとは要介護状態で、65歳を超えると5%、80歳を超えると30%程度の人が相当するとされています。フレイルは、歩行速度の低下(例・青信号で四条の本通りの旭川信金と北洋銀行交差点を渡り切れない)等、骨格筋機能の低下を中心としながらも、心と身体の両面にわたる機能低下がみられやすい事が知られています。
老化って、一体何なんでしょうか? 確かに、私達人間は老化します。しかし、老化しない動物もいます。ハダカデバネズミや亀、魚の一部は、老化しません。ハダカデバネズミは、人間に換算すると600歳くらいまでは長生きしますし、勿論、その歳で(!)も子供を産みます。…進化の長い歴史の中では、老化は必須ではなかったと考えるのが、実は妥当なのかも知れません。癌もそうです。象さんは、癌の抑制遺伝子を余分にGETしたので、癌になかなかなれないんだそうです。
人参栄養湯
多成分系の漢方薬は、フレイルの良い適応であり、その予防や治療に威力を発揮するものと期待されています。最近になり、人参栄養湯によるフレイル改善効果の報告が散見されるようになって来ました。また、人参栄養湯を始めとする漢方薬の作用メカニズムに、抗老化薬としての側面がある事も明らかになっています。今まで、老化動物モデルで若返りが認められている漢方薬は、人参栄養湯や六君子湯を中心とした補剤です。老化を腎虚と捉える伝統的な考え方もあり、八味地黄丸、牛車腎気丸と言う補腎剤も効果的と考えられています。
漢方薬補剤は、副作用が少なく、未病から使用出来、現代医学が求める抗フレイル薬としての応用だけでなく、アンチエイジング薬としても期待出来るのではないかと注目されています。
西欧薬では、抗癌剤のラパマイシンやその誘導体、抗糖尿病薬メトホルミン等が、これに該当します。成長ホルモン(美容通信2018年9月号)とDHEA(美容通信2017年5月号)、メトホルミンを1年間人間に投与した報告によれば、遺伝子のアセチル化で評価した年齢が2.5年逆転し、同時に、胸腺を始めとした免疫系や臓器機能の若返りが認められたそうです。更には、その効果は薬剤中止後も継続したそうです。
補剤・人参栄養湯の歴史的適応
人参は、生薬の中でも古来より重宝されてきました。秦の始皇帝が求めた不老不死の生薬は、高麗人参とも伝えられています。
日本では、聖武天皇の時代に伝えられ、江戸時代前から重篤な病気の回復に、人参栄養湯が盛んに用いられていました。人参ができて看病ひとり減り。病気の親の人参の為に娘が身売りするのが、時代劇の定番中の定番の設定なのは、時代劇ファンならずとも常識!なのではないかと思います(笑)。因みに、左図は、落語で有名な幾代餅。花魁幾代太夫の前歴は分かりませんが、身売りされた娘達も、年季が明ければ自由の身。幾代太夫も年季が明けると、搗き米屋(精米業者)に勤める清蔵と夫婦になり、両国橋で小松屋と言う餅屋を開きました。遊女時代の源氏名を冠した幾代餅(今なら伝説のキャバ嬢・エリンケ餅ってところでしょうか?)は、美人餅としてあっという間に評判になり、店は大繁盛。三人の子宝にも恵まれ、維新の世まで幸せに暮らしたそうです。脱線ついでですが、この幾代餅、大岡越前守が大岡裁きを下したことでも有名です。焼いた丸餅の上に餡をのせた幾世(代)餅は、当時の大人気のお菓子だったそうで、元祖は浅草寺門内の藤屋とされています。しかし、後発の小松屋の躍進を面白く思わない藤屋は、商売妨害として奉行所に訴え出ました。根岸鎮衛の『耳嚢』にも記載がありますが、判決は、藤屋が元祖であることを認めつつも、小松屋の事情も斟酌して、藤屋は四谷内藤新宿(新宿区)、小松屋は葛西新宿(葛飾区)に移ることを命じるものだったそうです。どちらも江戸のはずれ、とても商売になりません。双方示談の上、訴えを取り下げたんだそうな。
補剤には、いずれも人参が含まれています。しかし、補中益気湯が補気作用を示すのに対し、人参栄養湯、十全大補湯は気血両虚の病態を改善します。更に、その強さに於いては、十全大補湯よりも人参栄養湯の方が優れるとされています。人参栄養湯は、芍薬、当帰、陳皮、黄耆、桂皮、人参、白尤、甘草、地黄、五味子、茯苓、遠志の12種類の生薬より構成されています。
足利将軍家や織田信長、豊臣秀吉等の錚々たる面々の治療を行っていた事で知られる、医聖・曲直瀬道三は、その著書「衆方規則矩」で、「按ずるに気血虚して、諸症に変ずる者は、証を問わず、脈を論ぜず、但、此の湯を用いて諸症悉く退く、その効、甚だ多し。」と記しています。また、その書の中で、数年来のフレイルと思われた症例に、人参栄養湯投与1ヶ月前後で、完全に回復した症例報告が記載されています。
また、江戸時代の名医・津田玄仙もその著書「療治経験筆記」で、①毛髪脱落(毛髪の脱落)、②顔色無沢(顔色に艶がない)、③怱々喜忘(集中力がなくなり、健忘する)、④只淡不食(口が不味く、味がせず、食欲がない)、⑤心悸不眠(動悸がして眠れない)、⑥周身枯渋(全身の皮膚がかさつく)、⑦爪枯筋涸(爪が固くなって割れる/筋肉に潤いがなくなって攣る)が、人参栄養湯の適応として列挙しています。正に、アンチエイジングを含めた多彩な症状に用いられていた事が分かります。
漢方薬補剤の若返り効果~老化モデル動物
人参栄養湯は、私達人間の老化やフレイル病態を反映するクロトー欠損マウスに於いて、30%近い寿命延長効果を齎します。この作用は、六君子湯、補中益気湯や十全大補湯よりも強力で、人参栄養湯は全身の老化徴候を改善します。例えば、クロトー欠損マウスの骨格筋や骨の強化、消化管の幹細胞増加、肺気腫(肺胞腔の拡大)や小脳萎縮(原因不明)の改善、精巣重量の増加、心重量の増加抑制(心不全改善)、免疫機能の強化(胸腺・二次リンパ組織の萎縮軽減やT細胞、NK細胞、B細胞の増加)等です。これらの多くの臓器、組織への人参栄養湯の作用は、テロメアの短縮を有意に抑制する事からも、若返りの効果と考えられます。テロメアについては、以前美容通信(美容通信2022年7月号)で特集しました。テロメアは、スニーカーの紐の先端に付いてるシューレースパイプみたいなもので、染色体末端に存在し、染色体DNAを保護する作用があります。テロメアが短縮すると、心血管系や呼吸器系、消化器系、骨格筋系、コロナ死亡率を始め、全死亡率が上昇します。また、テロメアの長い家系は、10年近く長生きする事も知られています。
別の老化モデルであるサム(SAMP8)マウス及び正常老化(ICR)マウスに於いても、六君子湯による寿命の延長効果が認められています。しかし、サムマウスでは、老化に伴う小腸絨毛の短縮やオリーブ油移送機能の低下は、中年期以降は、人参栄養湯のみに改善が認められたそうです。また、補剤の構成生薬のうち、人参で、サムマウスの老化速度(徴候)の減弱が認められています。正常老齢マウスでは、人参栄養湯の他、補中益気湯でも精巣重量が増加したそうです。
補腎剤としては、八味地黄丸にサムマウスの老化速度の減少が報告されています。牛車腎気丸は、マウスやクロトー欠損マウスの話ではありますが、骨萎縮を改善します。
しかしながら、ビビビのねずみ男は、半妖怪とは言え、約360歳と結構な長寿。三百年生きているが、まだ一度も風呂に入ったことがないと豪語する日本一不潔な男ですが、もしかすると…これが長寿の秘訣だったりして(笑)。大学病院で勤務医していた頃、浮浪者が何人となく救急車で運ばれて来ましたが、看護婦さんが風呂に入れて綺麗にすると、皆悉くに風邪を引き、体調を崩してしまった…。
漢方薬補剤の若返り効果~ヒト幹細胞
人参栄養湯及びその構成生薬成分は、造血系幹細胞や神経幹細胞を始め、色々な臓器・組織の幹細胞を刺激する事が知られています。人参栄養湯や十全大補湯は、造血幹細胞に作用し、赤血球、白血球、血小板の増殖・分化を促して、貧血や抗癌際の投与等による血球減少を改善してくれます。特に、人参栄養湯の遠志、五味子、人参等には、骨髄間葉系幹細胞の増殖と分化を促進する効果があります。人参の主成分であるギンセノシド(Rb1)は、骨髄由来間葉系幹細胞の分化を促し、神経細胞や接合部位(シナプス)のマーカーを発現させ、神経細胞に変化させます。
更には、人参栄養湯が、私達人間様の脂肪や臍帯由来間葉系幹細胞の増殖を促し、その老化を抑制するそうです。ヒト脂肪由来幹細胞では、老化因子(p21)や炎症因子(IL-6)等を抑制し、老化を遅らせます。論文によれば、この幹細胞に有効な生薬は、人参栄養湯を構成する生薬のうち、茯苓、白尤、甘草、黄耆等と考えられています。
早老症として知られるウェルナー症候群では、テロメアの短縮が起こっていますが、人参栄養湯には、皮膚線維芽細胞のDNAの合成促進、寿命延長効果があると報告されています。人参栄養湯は、多彩な生薬により、臓器・組織の再生を促し、アンチエイジング効果が期待出来ます。
カロリー制限と健康長寿~カロリー制限模倣薬としての漢方薬補剤
下図は、アンチ・エイジング医学2022年12月号に掲載されていた「漢方薬によるアンチエイジング」(乾明夫他)から抜粋したものです。
人参栄養湯や六君子湯等は、グレリンー神経ペプチドY(NPY)空腹系を強力に駆動します。この空腹系は、老化と共に低下し、フレイル発症の引き金ともなります。グレリンは胃から放出され、様々な臓器・組織保護作用を示します。神経ペプチドYは、脳の視床下部に存在し、健康寿命延長、腫瘍抑制、ストレス耐性を担っています。六君子湯の作用がグレリンを介する経路のみなのに対し、人参栄養湯はグレリンを介する経路と介さない経路の2つを有し、神経ペプチドYを強力に活性化します。この作用が、クロトーマウスを始めとする老化モデル動物で、若返りを齎した要因と推測されています。グレリン-神経ペプチドYの経路には、若返りに関与するサーチュイン1(Sirt1)(美容通信2022年6月号)、AMP活性プロテアーゼ(AMPK)(美容通信2023年2月号)、mTOR(美容通信2022年7月号)、オートファジー(美容通信2017年7月号)や幹細胞調節機構(美容通信2023年3月号)等が存在します。抗老化薬として、カロリー制限の効果を模倣する薬の開発が、様々な企業で進められているようです。因みに、カロリー制限を行ったお猿さんの若々しいお姿!(笑)
近年、健康寿命の延長を叶える実践的な方法として、カロリー制限が注目されています。飽食・過食を避けて、腹八分目で生きるというものであり、江戸時代の貝原益軒の養生訓にも出てきます。カロリー制限により、線虫から蝿、蜘蛛、魚、マウス、猿に至るまで、多くの動物種に於いて、健康寿命が延長する事が確認されています。アカゲザルを用いた研究では、カロリー制限で寿命が延びたって報告がある一方で、延長を認めなかったと言う真逆の報告もなされてはいますが、癌や糖尿病、心血管疾患の発症を遅らせる等、健康寿命の延長に寄与したという点では一致しています。私達人間に於いても、15%程度のカロリー制限により、代謝異常や炎症反応、酸化ストレスの軽減作用等が認められています。
食欲の調節には、食べたい!って果てしない食欲が掻き立てられる空腹系と、もうお腹がいっぱい!enough!!って満腹系があります。カロリー制限を行えば、当然ですが、食べたいモードの空腹系に傾き、グレリン-神経ペプチドY(NPY)がその根幹にあります。進化の長い歴史の中では、満腹よりも、腹減った!って飢餓状態をどう乗り切って生き延びるかって方が断然重要です。つまり、空腹系は種の維持に深く関わってきたとも言えます。グレリン-神経ペプチドY空腹系経路には、サーチュイン1が存在し、カロリー制限による健康寿命延長作用に深く関わっています。サーチュイン1は、細胞の生存やDNA修復に係るNAD+依存性蛋白脱アセチル化酵素です。赤ワインの機能性成分であるレスベラトロールと同様に、六君子湯や人参栄養湯は、グレリンを介して、脳内視床下部のサーチュイン1に作用すると考えられています。適量!って奴が大事なのですが、赤ワインを適量嗜むと、5年は長生きするなんて話もあります。唯、嘗て、「私の血はワインでできている」という名言を残した女優の川島なお美は、54歳と言う若さで早逝しました。ワインのお陰で54まで生き延びれたのか、それとも寿命を縮めてしまったのかは分かりませんが…。因みに、左図は、彼女がプレゼントワインとしても良く利用していた、お気に入りのサン・タムール(聖なる愛)の赤。
グレリンが作用する神経ペプチドYニューロン(神経細胞)は、グレリンに応答するものが半数を占めますが、残りの半分は反応しません。六君子湯は、グレリンに応答する神経ペプチドYニューロンのみを活性化するのに対し、人参栄養湯はグレリンに応答するものもしないものも、どちらもOK。活性化します。神経ペプチドYは、カロリー制限による健康長寿・腫瘍(癌)抑制・ストレス耐性(抵抗力)を担っています。神経ペプチドYノックアウト(欠損)マウスは、カロリー制限を行っても、寿命延長・腫瘍(癌)抑制・ストレス耐性(抵抗力)作用が悉く喪失してしまったままで、人参栄養湯を飲ませても、食欲を抑える事が出来ません。反対に、神経ペプチドY過剰発現マウスでは、普通のご飯を食べさせていても、カロリー制限を行ったのと同様に長生きするんだそうです。
神経ペプチドY、人参栄養湯は、この様にカロリー制限の根幹に位置し、Nutriet sensing(栄養素感知)の改善に係っています。神経ペプチドYは、また、骨髄や神経を始めとする臓器・組織の幹細胞調節や老化細胞(ゾンビ細胞)の抑制、ミトコンドリア機能の回復、蛋白構造の保持、細胞間連絡等、多彩な抗老化機能に係っています。人参栄養湯は、テロメア短縮を改善します。しかし、神経ペプチドY、人参栄養湯による、ゲノム(遺伝子)不安定、エピゲノムや腸内細菌叢の変化等の抗老化機構の全貌までは、まだ解明されていません。更なる検討が期待されるところです。
サプリメント
カロリー制限模倣薬(CRM)
健康寿命を延ばす!方法として、現時点で一番エビデンスが蓄積されているのが、十分な栄養を維持しつつ行うカロリー制限です。しかしながら、長期間に亘ってカロリー制限を続けるのは、至難の業。青島幸男のハンガー・ストライキを例に取るまでもなく、彼は30時間以上が経過したところで脱水症状に陥った為に緊急入院せざるを得なくなり、中断を余儀なくされましたしね。そうなると、カロリー制限模倣薬で目的を遂行する!という、安直な方法を選択せざる得ません(笑)。
現在、アンチエイジング効果が期待出来るカロリー模倣薬としては、①スペルミジン、②ラパマイシン、③NAD関連代謝物、④レスベラトロールの4つが知られています。これらのカロリー制限模倣薬により活性化されるSirt1は、概日リズム(美容通信2019年10月号)と関わりがあるとされています。マウス試験に於いてですが、Sirt1活性が最大値となる明期の中央6時間目にカロリー制限模倣薬を投与すると、Sirt1活性ピークが増加したそうです。カロリー模倣薬も、栄養や運動同様(美容通信2022年5月号)に、適切な時刻に服用する事で更なる効果が見込まれます。
■スペルミジン
小麦発芽、ナッツ、大豆、納豆等の発酵食品に含まれており、マウスを始めとして、様々な種の寿命を延ばし、腫瘍形成抑制や骨格筋再生を改善する事は良く知られています。カロリー制限の効果の一つとされる、オートファジーの促進がその機序と考えられています。私達人間に於いても、高齢者の認知機能の改善が認められています。しかしながら、効果の実感には、7~25mg/日と高用量の摂取が必要とされています。
■ラパマイシン
ラパマイシンによるmTORシグナル伝達の阻害により、マウスは単に長生きになるのではなく、健康寿命も延びます。ラパマイシンはご存じの通り、免疫抑制剤として広く処方されていますが、高血糖、高インスリン血症等の副作用があり、アンチエイジングサプリメントとしては使い勝手が悪いのは事実。最近は、ラパマイシンの変異体の開発が進み、副作用リスクの低減が試みられているようです。
■NAD関連代謝物:NRとNMN
NADは酸化還元反応の補酵素で、ミトコンドリア(美容通信2017年7月号)機能の維持を通してアンチエイジングに寄与しますが、細胞には取り込まれません。そこで、その前駆体であるニコチンアミドリボシド(NR)(美容通信2021年12月号)やニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)(美容通信2022年6月号)(美容通信2022年7月号)が開発され、これらを摂取(若しくは点滴/点鼻)する事で、NAD合成を促進し、老化を遅らせると考えられています。NRは、老化マウスに於いて、筋肉、肝臓、褐色脂肪組織中のNAD/NADH比と循環脂肪酸レベルを上昇させる事により、酸化代謝を改善し、筋肉と心機能を増強しました。NMNは、老化マウスに於いて、サーチュイン1(Sirt1)を活性化させる事で、酸化ストレス及び炎症が減弱し、血管保護や抗アテローム誘発効果が示唆されました。
サーチュインは、寿命に関する蛋白質の活性を調節します。サーチュインはカロリー制限で活性化され、オートファジーを刺激する事によって寿命を延ばしたり、抗酸化作用を介したミトコンドリア機能改善により、アンチエイジング効果を誘発する事が分かっています。
■レスベラトロール
ブドウや赤ワインに含まれるポリフェノールで、Sirt1のアゴニストとして作用するレスベラトロールは、サーチュイン活性化化合物の一つです。レスベラトロールによる寿命の効果は、酵母、ショウジョウバエ、線虫で報告されていますが、他の動物モデルでの寿命延長効果は明らかになっていません。しかし、報告によれば、レスベラトロールは、運動能力や骨の健康を改善し、心不全やパーキンソン病、アルツハイマー病を軽減します。更には高齢者の記憶を改善し、2型糖尿病及び肥満な成人のグルコース・脂質代謝も調節します。
天然の老化細胞除去剤
老化した細胞は、DNA損傷やアポトーシス耐性、炎症性サイトカイン(美容通信2021年8月号)(美容通信2021年1月号)の過剰産生を誘導し、細胞周期が停止した状態です。この様な老化細胞の除去剤としては、ナビトクラクス(骨髄線維症の治療薬)及びダサチニブ(慢性骨髄性白血病の治療薬)+ケルセチンが知られていますが、未だ、安全性や薬剤耐性の改善途上君の状態。近年、フィセチンとプロシアニジンCIが老化を遅延させ、加齢性疾患を制御するのでは?と注目されています。
■フィセチン
リンゴやブドウ、玉ねぎ等の様々な植物に存在する、天然フラボノイドです。高齢マウスに投与すると、加齢に伴う症状が軽減し、健康寿命が延びたんだそうです。
■プロシアニジンCI
ぶどうの種子から抽出されるポリフェノール。老化マウスに投与したところ、老化細胞をアポトーシスによって除去しただけでなく、全身毒性なしに身体機能障害を有意に改善し、生存期間を延長させたそうです。従来の、ナビトクラクス及びダサチニブ+ケルセチンと比べ、安全に老化細胞の除去が出来る可能性があります。
プロバイオティクス
近年、プロバイオティクス(美容通信2020年9月号)(美容通信2020年6月号)を用いて、腸内フローラを調節する事が、アンチエイジングの有望なアプローチとの認識が広まって来ました。
■加齢により減少するプロバイオティクスの補給
Bifidobacterium、Lactobacillus、Akkermansia muciniphila、Christensenellaceaeは、老化と共に減少しますが、これらを補給する事で、加齢関連症状を軽減出来るという報告があります。
■健康な百寿者に濃縮されるプロバイオティクスの補給
百寿者の腸内では、Firmicutes門の腸内細菌が豊富で、Pseudomonadotaが増加しています。
また、健康な百寿者のうんこから、L. fermentum SX-0718、L. casei SX-1107、B. longum SX-1326、B. animalis SX-0582を単離し、アンチエイジング効果を検討したところ、4つのプロバイオティクスを含むカクテルは、腸内細菌叢を調節し、Toll様受容体4/核内因子κB誘発炎症を抑制し、高齢マウスの記憶と行動を改善したそうです。
日本の健康な百寿者では、腸内細菌代謝物である二次胆汁酸のイソアロ-リトコール酸(isoallo-LCA)の増加が認められたそうです。isoallo-LCAは、Odoribacteraceaseにより生成され、大腸炎等を引き起こす腸内細菌Clostridium difficileを排除し、腸内の恒常性を促進・維持すると考えられています。その為、Odoribacteraceaseの様な胆汁酸組成を制御する系のサプリメントの開発が、期待されています。
■抗加齢に関連する機能を有するプロバイオティクスの補給
アンチエイジングに関連するプロバイオティクスは、複数報告されています。線虫に於けるL. gasseri LG2055の経口投与は、酸化ストレス耐性を増強し、自然免疫応答シグナル伝達を刺激する事で、線虫の寿命を延長しました。B. animals subsp. Lactis LKM512は、結腸内のポリアミンレベルを上昇させ、慢性的な低悪性度の炎症を抑制する事で、腸の健康を改善し、寿命を延長しました。
食事やサプリメント同士の併用による相乗効果
サプリメント単体摂取は、一つの経路に作用する事で効果を発揮する事が多いとされています。したがって、異なる経路に作用するサプリメントの組み合わせや、食事との組み合わせ次第では、アンチエイジングに対してより効果を期待出来る可能性があります。
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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