HISAKOの美容通信2015年7月号
ホルモンとその代謝物(尿検査)
ホルモン補充療法とは、加齢等で減少するホルモン分泌を補う事で、若い頃と同じ様にアクティブに快適な生活をエンジョイする為の、まあ、謂わば必須アイテム♪
定期的に検査(血液・唾液・尿)を行いながら、投与するホルモン量を調整する必要があります。
中でも、尿検査は、活性を有する非結合型のホルモンとその代謝産物を測定するのに非常に優れた方法です。
ホルモンの代謝物を評価する事で、ストレスから肥満、ハゲ(AGA)、ホルモン依存性の癌の発症のリスク等々が明らかとなり、予防策を講じる事が可能になります。
アメリカのホルモン補充療法の実態をまざまざと見せつけてくれちゃうのが、『セックス・アンド・ザ・シティ2』(Sex and the City 2)。人気の連続TVドラマの映画版なんですが、そこで注目すべきは52歳となったサマンサ(キム・キャトラル)。更年期障害と戦っており、ホルモン剤が手放せないって設定で、まるで香水かなんかみたいに、手慣れた雰囲気でクリーム製剤を手首に塗り込む姿が印象的でした。勿論、彼女が使ってるのは、”天然”の生物学的同一ホルモン(ヒト固有ホルモン=天然(ナチュラル)ホルモン)。
そして、そのアメリカのアンチエイジング医療の頂点(広告塔)に立つのが、女優(いや、正しくは美容タレント?)のスーザン・サマーズ(1946年10月16日生まれ)でしょうか。まあ、日本で言うなら、今は亡き森光子と鈴木その子を足して2で割った様な強烈な存在です。御年67歳と、もうれっきとした年金世代の彼女が書いたのが、『I’m too young for this!』です。いやぁ~、若いですねえ。思わず、(色んな意味でですが(笑))見惚れてしまいます。この本、アマゾン(←HISAKOは根っからのアマゾン派です。去年はクリスマスのターキーもアマゾン♪)で面白半分に買ったんですが、中身までは…まだ読んでません、悪しからず。
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ホルモンバランスが崩れると、ロクな事がない。
スーザン・サマーズならずとも、ホルモンバランスが崩れると、ロクな事が起こらないのは明白な事実。例えば、性欲が低下します。これ、ホルモンバランスの崩れている7/10の大人女子が訴える症状。火照り。これについては、これ、ホルモンバランスの崩れている8/10の大人女子が訴える症状。うつは、ホルモンバランスの崩れている2/3の大人女子が訴える症状。易興奮性も、ホルモンバランスの崩れている7/10の大人女子が訴える症状なんです。
ホルモンバランスが崩れてるかどうかは、そりゃあ、調べて見なきゃ分んないでしょう(笑)。
以前、検査方法については特集を組んで詳しく説明したので、今更の感はありますが、さらっと復習しときましょう。検査に使う材料は、大きく分けると3つ。血液(美容通信2010年12月号)(美容通信2015年3月号)と唾液(美容通信2010年12月号)(美容通信2015年4月号)とおしっこ(美容通信2010年8月号)です。唯一無二の鉄板の検査方法がある訳ではなく、夫々が良いところも悪いところもあるので、上手に組み合わせて使うのが基本です。しかしながら、注意をしなければならないのは、ホルモン補充療法は一度始めたら、途中で主たる検査方法を変えてはいけないって事かな。主軸はブレちゃ困るんです。副菜は幾ら増やしても構いませんが、ね。
血液と唾液とおしっこ~汁物勝負!?
私達の人間社会と同じで、ホルモンには、蛋白質とつるんでない非結合型(遊離若しくはFreeとも言う)って名前の活性のあるホルモンと、蛋白質とべったりバカップル状態の結合型って名の使えないホルモンの2種類があります。
血液
[測定出来るホルモン] エストラジオール・エストロン・エストリオール・プロゲステロン・テストステロン・DHEA-S・コルチゾール・TSH・FT4・FT3
[測定できる代謝ホルモン] 2-OHE1・16α-OHE1のみ
血液は、基本、味噌も糞も一緒(笑)。テストステロン(美容通信2015年6月号)と、甲状腺ホルモン(美容通信2015年3月号)であるT3、T4については、味噌も、つまり非結合型のホルモンも測定出来ますが、他は一緒くた。
当然ですが、スナップショット的な検査にならざるえません。と言っても、唾液みたいな、パンク魂の塊的エッジ―さには欠けますがね。
又、ホルモン補充療法の際に、天然ホルモン製剤でも、経皮クリーム剤を使用している場合は、左図の様に血中濃度が上がり難いのが欠点かな。つまり、薬の過剰投与になりかねない。
合成ホルモン製剤については…、血液のみならず、唾液でも、おしっこでも評価方法としては使えない。例えば、プレマリン(抱合型馬エストロゲン)は、エストロンと硫酸エストロンの合計として、部分的にしかカウントされませんし、プロべラ(酢酸メドロキシプロゲステロン)に至っては、完全に測定外! つまり、自然界には存在し得ない合成ホルモンなんぞの効果を、そもそも測定して評価するなんて考え自体がナンセンスなのかも知れません。
唾液
[測定出来るホルモン] エストラジオール・プロゲステロン・テストステロン・DHEA・コルチゾール・メラトニン
[測定できる代謝ホルモン] 無!
味噌だけ(笑)。活性のある非結合型だけを測定出来るって事です。但し、ステロイドホルモン類に限定されるので、甲状腺ホルモンやペプチド(FSH)ホルモンを評価出来ないし、当たり前だけどと言うか、それがウリなんだけど(笑)、結合型(抱合型)の評価が出来ない事かな。
スナップショット的な検査って言葉は、唾液検査の為にある様なもの。兎に角、鋭敏さ がウリなので、日内変動を見るには、正に打って付け。それ故、副腎疲労の診断の際に測定されるコルチゾールの測定(美容通信2015年4月号)は、唾液オンリーとなります。
但し、歯肉からの出血があると、例えば、中高年のお友達である歯周病とかでねって意味なんですが、それが極々微量のものであっても、テストステロンとDHEA濃度は、偽性に上昇します。
血液検査同様、如何に天然型ホルモンとは言え、経皮クリームの効果を評価するには、唾液検査はあまり適切な方法とは言えません。経皮クリームは唾液腺に選択的に輸送されるので、血液とは反対に、値が高めに出ちゃうんです。ですから、クリームに飽いて塗るのを止めたとしても、中止後3~12ヶ月に渡り、偽性の上昇が継続する事が知られています(←それじゃ、嘘っこ値じゃ~ん)。
おしっこ
[測定出来るホルモン] エストラジオール・エストロン・エストリオール・テストステロン・DHEA
[測定できる代謝ホルモン] 2-OHE1・4-OHE1・16α-OHE1・2-MeOE1・4-MeOE1・プレグナンジオール・アンドロスタンジオール・アロテトラヒドロコルチゾール(a-THF)・プレグナントリオール・テトラヒドロコルチゾール(THF)・テトラヒドロコルチゾン(THE)・テトラハイドロデオキシコルチゾール(THS)・17-ヒドロキシコルチコステロイド群(Total)・アンドロステロン・エチオコラノロン・11-ヒドロキシアンドロステロン・11-ヒドロキシエチオコラノロン・11-ケトアルドステロン・11-ケトエチオコラノロン・17-ケトステロイド群(Total)
おしっこで測定出来るのは、活性を有する非結合型のホルモンとその代謝産物です。
検体の採取方法は、実は2つの方法があります。24時間おしっこを容器に只管溜める方法と、朝一番のおしっこで勝負する方法です。24時間の蓄尿方法は、血液や唾液の様に些細な変動に惑わされず、ど~んと丸一日の収支決算、つまりホルモンの産生量とその使い道(代謝産物)が評価出来ます。それに対し、朝一番のおしっこを採るって検査方法は、一回のおしっこで用が足りるので、兎に角楽ちんと言えば楽ちんですが、あくまでも睡眠中の数時間の間に溜まったおしっこから、ピーク時(←多くのホルモンが早朝にピークを迎える!)の排出量と総排出量の両方を推し量る!るって代物です。類推(笑)。
ちょっと考えれば分るとは思いますが、尿検査では、下流の代謝物しか評価は出来ません。例えば、プロゲステロン。ホルモンの代謝経路を見て頂くと分ると思いますが、プロゲステロンの直接的な評価は無理なので、その下流に位置するプレグナンジオールとプレグナントリオールの値から類推する事にはなります。つまり、プレグナンジオールは、プロゲステロンから直接代謝されますし、プレグナントリオールは、糖質コルチコイド経路に流入するプロゲステロンの量の目安になります。
勿論、利尿剤を使用していたり、腎機能に問題がある人には向かない検査方法です。
以下は、おしっこ検査の醍醐味を語る(←本題)。
ホルモンの代謝経路の図を見ながらじゃないと、HISAKOも頭が混乱してしまいますゥ(笑)。
プロゲステロン
繰り返しになりますが、実際のプロゲステロンは尿検査では評価出来ません。プロゲステロンの下流の代謝物をもって類推します。つまり、プレグナンジオールは、プロゲステロンから直接代謝されますし、プレグナントリオールは、糖質コルチコイド経路に流入するプロゲステロンの量の目安になります。
糖質コルチコイドの代謝
[測定項目]
- 17-水酸化ステロイド群
- プレグナントリオール
- アロテトラヒドロコルチゾール(α-THF)
- テトレヒドロデオキシコルチゾール(THE)
- テトレヒドロコルチゾール(THF)
- 17-水酸化ステロイド群(全部分の合計値)
副腎疲労(美容通信2015年4月号)でもお馴染みのホルモンである、コルチゾールですが、この代謝産物が17-水酸化ステロイド群です。これらの代謝物は、謂わばレシートの明細書みたいなもんですから、これ等を詳細に検討する事で、体がどれ位のストレスを受けて、それに対し処理を行っているのかが類推出来ます。
例えば、臨床的には、以下の評価に有用とされています。
- 精神的ストレスや生理的ストレス
- 月経不順と閉経前の症状
- 血糖値のアンバランス(低血糖や高血糖、インスリン抵抗性、T2DM)
- 骨減少症と骨粗鬆症
- 組織の消耗
- 慢性疲労
- 免疫失調
- 低血圧や高血圧
17-水酸化ステロイド群↑ならば、当たり前ですが、コルチゾール産生↑って事を意味し、激しいストレスや炎症、感染症、低血糖、インスリン抵抗性、甲状腺機能低下(美容通信2015年3月号)、腸管浸漏と腸内毒素症(美容通信2014年1月号)、アレルギー等が疑われます。
反対に、17-水酸化ステロイド群↓の時は、コルチゾール産生↓となり、プレドニゾロンの様な糖質コルチコイド(薬剤)が投与されているとか、副腎疲労、慢性ストレス、線維筋痛、CFS、下垂体不全等の状態が疑われます。
11β-水酸化ステロイドインデックス~ホルモン代謝物の比から考察する
「ホルモンの代謝経路」ってデカい図を見て頂くと分ると思います(と言うかぁ…デカい図じゃないと何処の話なんだか、全然分んない(笑))が、11β-水酸化ステロイド脱水素酵素(11β-HSD)の働き次第によって、ビア樽みたいな体型、つまり腹の周りに醜い脂肪がど~んと蓄積した街角のカーネル・サンダース!って容赦ない陰口を叩かれるかどうかが決まります。因みに、11β-水酸化ステロイド脱水素酵素(11β-HSD)は、脂肪組織だけでなく、肝臓や生殖腺、脳みそ等の臓器に於いても、コルチゾールとコルチゾン、そしてそれらの代謝物(THE・THF・α-THF)との間の絶妙な均衡状態を保つ調整役として暗躍しております。
つまり、11β-水酸化ステロイド脱水素酵素(11β-HSD)の活性が、箍が外れた好色老人みたいにお盛んだと、腹の脂肪細胞で、コルチゾン→コルチゾールへの変換がぐぐぐ~んと進み、ポニョどころか、二段、三段と段腹の中心性肥満になります。コルチゾールは、御存知の通り、脂肪細胞の分化になくてはならない存在です。メタボ検診で有名な腹回りの測定ですが、実は、中心部の脂肪分布の増加と、11β-HSDインデックス(=(α-THF+THF)/THE)の間には、明白過ぎる相関関係が認められています。
11β-HSDインデックス↓はコルチゾール活性減少を反映し、反対に、↑はコルチゾール活性増加を意味しています。
唯、世の中、目晦ましってモノがあります。11β-HSDインデックスに一喜一憂する前に、きちんと除外診断は行っておくべきです。11β-HSDインデックス↓の場合に除外診断すべき疾患としては、甲状腺機能亢進、薬物投与(例:水虫の薬であるケトコナゾール、Ⅱ型糖尿病薬のロシグリタゾン)があります。11β-HSDインデックス↑の場合に除外診断すべき疾患としては、甲状腺機能低下、インスリン抵抗性、炎症、低酸素症、ナトリウム摂取過剰、成長ホルモン欠乏が挙げられます。
ハゲ(AGA)のオジサン必見!E/A:5β/5α比~ホルモン代謝物の比から考察する
女子はそんなもんど~だって良いじゃ~んと思うかも知れません。だって、女子にとって大事なのは、連れ歩く男がしょぼくれて見えて、それが気恥ずかしく感じるかどうかであって、それ以外のオジサンの頭なんて、そもそも興味関心なんてありませんから。ところが、女子の無関心と反比例するが如くに、ハゲ(AGA)は、オジサンにとって、存在意義すら左右しかねない程の、重大問題です。髪の毛がちょっと抜ければ、AGAを疑って遺伝子検査(美容通信2008年9月号)をし、必死に諸悪の根源であるジヒドロテストステロン(DHT)(←本当はそんなに目の敵にするもんじゃないんだがぁ…(美容通信2014年7月号))への転換を阻む為に、プロペシア(美容通信2005年12月号)やアボルブ(美容通信2013年2月号)を飲んで足掻き、まあ、一緒にミノキシジル併用(美容通信2006年6月号)する事は多いけど、それでも駄目なら潔く植毛(美容通信2005年9月号)するか、スキンヘッド(美容通信2013年9月号)。あ、その前に成長因子(美容通信2012年6月号)をメソセラピーって方法もあるけど。
5α還元酵素によって、テストステロンは、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。ハゲ(AGA)のみならず、前立腺肥大や前立腺癌のリスク、インスリン抵抗性、肥満等の疾患と関連があるので、世の中の多くの男性と、少数のニキビ、毛深い、PCOSに悩む乙女に忌み嫌われる酵素です。それに対し、5β還元酵素は、テストステロンを不活性な代謝物に転換する酵素です。
ですから、その比であるE/A:5β/5α比は両者の活性の比較指標になり、値が上昇すれば、それは即ち5α還元酵素活性の増加を意味し、ハゲのオジサンにとってはプロペシアやアボルブの服用を強く勧める根拠となります。
アンドロゲン類
[測定項目]17-ケトステロイド群
- DHEA
- アンドロステロン
- エチオコラノロン
- 11-ケト-アンドロステロン
- 11-ケト-エチオコラノロン
- 11-ヒドロキシ-アンドロステロン
- 11-ヒドロキシ-エチオコラノロン
- 17-ケトステロイド群(全部分の合計値)
- テストステロン
- アンドロスタンジオール
下記の症状がある際には、アンドロゲン評価を一度行ってみる価値はありです。
- リビドーの低下
- 満足感の低下
- 骨量減少と骨粗鬆症
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 男性更年期(美容通信2014年7月号)(美容通信2015年6月号)
筋量減少、中心性肥満の増加、性欲とリビドーの減少
アンドロゲン類(アンドロステロンとテストステロン)からの主要な代謝物が、17-ケトステロイド群です。
17-ケトステロイド群の濃度が↑の場合に考えられる原因としては、高蛋白質高カロリー食(←HISAKOの食生活!)、PCOS(←ニキビ、肥満、多毛は?)、甲状腺機能低下、副腎腫瘍とか卵巣腫瘍、精巣腫瘍があるとか…。後は、DHEAかテストステロンの経口投与がなされていて、SHBG濃度が低下しているとかぁ。TSH↑、FT4↓、FT3↓。アロマターゼ抑制剤で活性が下がっちゃってるなんかが考えられます。
17-ケトステロイド群の濃度が↓の場合は、急性若しくは慢性のストレスの他、爺婆になった、DHEA欠乏、Ⅱ型糖尿病、慢性のアルコール摂取、喫煙、薬剤投与(例・経口糖尿病治療薬であるメトフォルミンやトログリタゾン(←日本では現在発売中止!)、水虫のお薬であるケトコナゾール)何かが原因と考えられます。他には、総17-ヒドロキシコルチコステロイド群の濃度が上昇しちゃってるとか、アンドロゲン類のエストロゲンへの転換過剰でアロマターゼ活性が上昇しちゃってるとか、SHBG濃度上昇(←エストロゲンの濃度を確認!)とかが考えられます。
ちょっとアロマターゼ(芳香化酵素)について、補足しておきましょう。その方が、ホルモン治療が何故トータルで行われるのかって所以、つまり、家系図(代謝経路)が理解出来ると思います。
メンズヘルス外来(美容通信2014年7月号)やってると、前立腺肥大、肥満、リビドー低下を訴えて受診する紳士諸君に多いのが、実は高エストロゲン型なんです。以前のメンズヘルスケア特集でも載せたので、下図、覚えてるか知らん?
このグループの紳士諸君の多くは、肥満を気にして、その改善策としてのテストステロン補充を希望して、HISAKOのところを始めとするクリニックを受診すると相場が決まってるんですが、実は彼らに男性ホルモンの補充のみしか行わないと、どんどんエストロゲンが増えてしまって、却ってデブになっちゃうんですよ(笑)。遊離型テストステロンの下位にエストラジオールがありますよね? つまり、男性に於いては、テストステロンとエストロゲンの比率が大事なんです。スマートで贅肉なんて言葉を知らない20代の頃若い頃は、テストステロンとエストロゲンの比率は、50:1です。年を取ると、この比率は10:1とエストロゲン優位に傾いてしまいます。ゴルフ場の温泉なんかで、おばさんみたいに腹回りがたぷたぷしたオッサンって見掛ける事ってありませんか? 正に、エストロゲン優位の体型です。ですから、特にダイエット目的でテストステロン補充をする場合は、20代の小僧並は流石に難しいので、T:E比≒30:1を目標に調整します。この時に良く使用するのが、アロマターゼ阻害薬です。おばちゃん(閉経後)の乳癌の治療に使うお薬です。唯、乳癌のお薬とは言いましても、その作用機序は、乳癌はエストロゲン(女性ホルモン)依存性の癌なので、アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素であるアロマターゼを非可逆的にブロックする阻害剤を服用すると、血中エストロゲン濃度が下がるので、癌細胞の増殖を抑えるって代物です。ですから、エストロゲン値が高いオジ様は、乳癌でなくても、このお薬の恩恵を得られちゃうって訳なんです。少量使うだけでも体脂肪が落ちますから、データ次第ですけど、適当な頃合を見計らって終了かな。
同化と異化のバランス~ホルモン代謝物の比から考察する
同化と異化って言うと、根っからの文系女子は、単語聞いただけで端っから拒絶体勢に入っちゃう(笑)ので、先に解説しときますね。
まず、話には順序ってもんがあるので、代謝から。Wikipediaによると、代謝とは、生命の維持のために有機体が行う、外界から取り入れた無機物や有機化合物を素材として行う一連の合成や化学反応の事で、新陳代謝の略称です。これらの経路によって有機体はその成長と生殖を可能にし、その体系を維持しています。まあ、つまり平たく言いますと、私達は毎日毎日、一日に三回も、肉や魚やお米やキャベツ等々、時には人によってはワニだとかカンガルーだとかゲテモノ系もありだとは思いますが、色んな食べ物を食べます。これ等の食材は、私達の体の血や肉(筋肉)や骨等々の身になる=合成されます。唯、例えば筋肉は、確かにボディビルダーの様なマニアックな輩にとっては、存在するだけで絶対的な意義(≒観賞用としての?)があります(笑)が、普通の人々にとっては、歩いたり呼吸したり心臓を動かしたりする為の、つまり筋肉なんてもんは単なる燃料の一つの形態で、分解されてエネルギーになってナンボのもんなんです。これらの一連の流れを代謝と言い、合成と分解で成り立っています。 お洒落な言い方をすると、これは、同化 (anabolism) と異化 (catabolism) と言い換える事が出来ます。異化とは、高分子等の有機物質を分解し、低分子化する事によってエネルギーを得る過程です。呼吸(嫌気・好気)が良い例です。反対に、同化とは、エネルギーを使って有機物質を合成する過程であり、例えば蛋白質・核酸・多糖・脂質の合成が挙げられます。
この同化と異化のバランスは、おしっこでは、総17-水酸化ステロイド群と総17-ケトステロイド群を比較する事で、評価します。国家の財政状態や家計も同じで、収入と支出の収支決算のバランスが取れている状況が望ましく、理想は1:1です。17-水酸化ステロイド群↑、若しくは17-ケトステロイド群↓であれば、それは即ち、異化(摩損)やストレス状態が亢進している事を意味します。反対に、17-水酸化ステロイド群↓、若しくは17-ケトステロイド群↑していれば、同化(成長と治癒)や修復状態が亢進していると考えられます。
エストロゲン類の代謝
エストロゲンの代謝の話は散々今までし尽くしてきた感が無きにしも非ずですが、おしっこ検査の醍醐味(美容通信2010年8月号)の一つが、エストリオール商(EQ)が評価出来るって事でしょう。端的に言うと、乳癌の危険度を表わす指標で、尿中EQ>1の集団は、乳癌の発生率が低い事が知られています。かの有名なHenry Lemon先生が編み出した方程式で、悪までもおしっこ限定です。唾液でも、勿論血液でも、この方程式は当て嵌まりません。
エストリオール商(EQ)=E3/(E1+E2)
唯、EQなるものは、何らかの根拠があっての方程式ではなく、値を弄ってたら、そんな方程式が出来ちゃった! でも、何故か使える!!的な(笑)存在です。
復習にもなりますが、エストロゲンには3種類の、エストロゲン性の強度の異なるホルモンがあります。エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)の3つです。
E2が一番強力なエストロゲンで、現役女子時代に一番多く作られるホルモンです。作用としては、下記が挙げられます。
- 善玉コレステロールであるHDLを増加させる。
- 悪玉と罵倒されるLDLと、総コレステロールを減少させる。
- トリグリセリド類、まあ中性脂肪って奴ですわな、これを減少させる。
- 骨構造の維持を手助けする。
- セロトニン分泌を増加させて、ハッピーな女子にしてくれる。
- 疲労感を減少させてくれる。
- 抗酸化剤の一つでもある。
- 記憶の保持を手助けしてくれる。まあ、ボケ防止って事だわな。
- カルシウム、マグネシウム、亜鉛の吸収を手助けしてくれる。
ところが更年期を過ぎて現役を返上すると、E1が主要なエストロゲンになります。濃度が上昇すると、乳癌のリスクが上がると多くの研究者に信じられており、忌み嫌われているホルモンですが、正確にはE1だって、ちゃんと代謝出来れば、ホルモン依存性の癌にはなりませんからねぇ(美容通信2010年8月号)。一方的に嫌うものは如何なものかと思いますが、転ばぬ先の杖として、敢えてホルモン補充療法の際にE2+E3のバイエストロゲンを使うのはありだと思います。HISAKOだって、必ずしもとは心情的には分っていても、如何に天然ホルモンであろうとも、トリエストロゲン(E1+E2+E3)製剤は処方しません。専ら、バイですもん。因みに、合成ホルモンの代名詞的として使われるプレマリンは、主にE1に代謝されます。
E3は、前述のキャラが濃い(笑)E2やE1と比べると、影が薄いと言うか…、エストロゲン受容体との親和性が低く、体内からの掃出し率も高いので、短時間作用型の弱性エストロゲンとして分類されています。しかしながら、単なる弱者と侮るなかれ! E2の様な骨や心臓、そして脳みそに対する保護作用には欠けていても、実は、乳癌の予防作用があるんです。ヨーロッパでは、タモキシフェンの代わりに、乳癌の治療に使用されているくらいなんですよ。興味本位で、乳癌とE3濃度の低下について触れた論文について、幾つか紹介してみますね。
- 乳癌の女性では、E3濃度が低下している。
-Lemon HM, Wotiz HH, Parsons L, Mozden PJ. Reduced estriol excretion in patients with breast cancer prior to endocrine therapy. Jama. Jun 27 1966; 196(13): 1128-1136
- E3を処方された患者の37%で、転移性乳癌が止まった。
-Lemon HM. Estriol prevebtion of mammary carcinoma induced by 7,12-dimethylbenzanthracene and procarbazine. Cncer Res. May 1975; 32(5): 1341-1353
- ビタミンEは、乳癌の発症率を低下させ、E3濃度を18%上昇させた。
-London RS, Sundaram GS, Schultz M, Nair PP, Goldstein PJ. Endocrine parametes and alpha-tocopherol therapy of patients with mammary dysplasia. Cncer Res. Sep 1981; 41(9 Pt2): 3811-3813
- E3単独投与で、乳癌の発症率が低下する事が報告された。
-Laurtizen C, Velibese S. Clinical investigations of a long-acting oestriol (polyoestriol phosphate). Acta Endocrinol (Copenh). Sep 1961; 38: 73-87
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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来月号の予告
眠れない仔羊達へ
ホルモン、生活習慣、そして代謝機能からの総合的アプローチの提案
<不眠症>です。