HISAKOの美容通信2026年7月号
ラクトバジルス乳酸菌優位の健康な膣内フローラで、閉経後に繰り返す膀胱炎,細菌性膣炎,膣カンジダ症等を予防/治療
思春期になると、エストロゲンの影響で膣の上皮細胞がグリコーゲンを産生し始めるので、それに伴い、ラクトバチルス乳酸菌が膣内フローラの多数派を占めるようになります。ラクトバチルス乳酸菌は、乳酸、過酸化水素、バクテリオシンを生成し、膣のpHを低下させ、病原菌の増殖を抑え、膣を健康な状態に保ってくれます。しかし、更年期になると、エストロゲンが減少し、グリコーゲンの量が低下するので、ラクトバチルス乳酸菌の数も必然的に減少します。これが、更年期を境に、繰り返す膀胱炎を始めとする尿路感染症や、細菌性膣炎、膣カンジダ症等々のおしもの悩みが急増する理由でもあります。従来はこの様な感染症に対して、取り敢えず(←失礼!)、抗生剤や抗菌薬による治療を繰り返すしかありませんでした。しかしこの様な治療方法には、常に薬剤耐性菌の出現の問題があります。近年、マイクロバイオームの研究が進み、腸内細菌叢と多臓器間の関係が次第に明らかになって来ました。泌尿生殖器に於いても、エストロゲンの補充以外にも、膣内と腸内細菌叢に対するWアプローチで、膣内フローラをラクトバチルス乳酸菌優位に戻し、抗生剤や抗菌薬に頼らずに、閉経後のおしもの悩みを健康的に解決すると言う選択肢が出て来ました。
先日開催された抗加齢ウィメンズヘルス研究会/GSM研究会で話題になった、ラクトバチルス乳酸菌のお話をまとめてみました。
生殖器・泌尿器のマイクロバイオーム
近年、腸内のマイクロバイオームだけでなく、それと関連する生殖器のマイクロバームも重要視されるようになって来ています。マイクロバイオームの解析が進みつつあります。微生物と宿主である私達人間様の間の相互作用は、病気だけでなく、正常な生理機能にも多岐に亘って関与しています。特に女性では、性ホルモンの変動や妊娠等に、マイクロバームが非常に重要な役割を果たしています。
因みに、子宮内フローラ検査とは、腟または子宮内に存在する 善玉菌・ラクトバチルス属菌の割合を調べる検査です。来月号では、この子宮内フローラの検査についてご紹介します。自分の状況を先ず把握したい時には、やっぱり、検査するしかないでしょう。更年期を境に、繰り返す膀胱炎を始めとする尿路感染症や、細菌性膣炎、膣カンジダ症等々のおしもの悩みだけでなく、不妊の原因解明や妊娠率向上にも、役立ちます。
生殖器のマイクロバイオーム
近年の真覚ましいマイクロバイオームの研究の進展により、細菌が女性の健康と生殖に大きな役割を果たしている事が明らか(美容通信2024年6月号)(美容通信2020年6月号)になって来ました。これ等の研究から、特定の細菌に対する抗生剤の使用だけでなく、人体に有益なプロバイオティクス(美容通信2023年7月号)(美容通信2020年9月号)の導入、更には人体に有益なマイクロバイオームの移植(美容通信2024年2月号)が、不妊や婦人科疾患に対する新たなアプローチとして提案されされ始めています。これ等のアプローチは、病原菌の抑制、健康な微生物バランスの維持・回復を通じて、従来の治療法では対応が難しい症例に対しても、新たな解決策となるかも知れません。
■生殖器のマイクロバイオーム
左図を見て下さい。正常な膣や子宮内膜では、Lactobacillusが多く、恒常性の維持に関与しています。正常妊娠には、ある程度の菌量が必要とされ、その中でもProteobacteriumやActinobacteriumが妊娠の維持に重要と考えられています。
細菌性膣炎では、Lactobacillusが減少し、Enterococcus faecalis等が増加しています。子宮体癌では、炎症性の細菌が発癌に関わっている可能性が示唆されています。また、卵巣癌では、大規模シークエンスの結果から、Proteobacteria等が多い事が分かっています。
- 女性生殖器
- 膣及び上部生殖器のマイクロバイオーム
女性の生殖器(膣、子宮頸部、子宮内膜、卵管、卵巣)には、独自のマイクロバイオームが存在し、体内の全細菌量の約9%を占めています。膣には最も多くの微生物が存在し、健康な膣では、97%以上がLactobacillus属の細菌です。子宮頸部、子宮内膜、卵管、卵巣は、以前は無菌であると考えられていましたが、最近になって、夫々が特異的なマイクロバームを構成している事が分かって来ました。女性の生殖器系に存在する微生物は、膣から卵巣に向かって、徐々に総数が減って来ます。しかし、数が減るのとは反対に、多様性が増加するそうです。
膣のマイクロバイオームが、2007年のヒトマイクロバイオームオブジェクトでその存在が確認されてからは、妊娠及び早産に於けるマイクロバイオームの研究や、生理周期の異なる段階に於けるマイクロバイオームの構成の違い等、様々な研究が行われています(←まだまだ、現在進行形って意味です)。
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- 生殖器のマイクロバイオームは年齢と共に変化する
女性の生殖器のマイクロバイオームは、年齢、ホルモンの変動、妊娠、疾患等に応じて変化します。例えば、乳児期から学童期にかけては、膣のpHは中性で、嫌気性菌や大腸菌が多く存在するんだそうです。思春期になると、エストロゲンの影響で膣の上皮細胞がグリコーゲンを産生し始めるので、それに伴い、Lactobacillusが多数派を占めるようになります。Lactobacillusは、乳酸、過酸化水素、バクテリオシンを生成し、膣のpHを低下させ、病原菌の増殖を抑えてくれる働きがあります。更年期にはエストロゲンの減少に伴い、グリコーゲンの量が低下するので、Lactobacillusの数も必然的に減少します。
補足ですが、乳酸菌バクテリオシンは、乳酸菌が生産する抗菌ペプチドです。AI様にお伺いを立てたところ、下記の様なお答えを頂きました。「バクテリオシンは、ヒトに対する毒性がなく、体内や環境中に於いて分解されやすく、耐性菌が出現し難いといった特性から、人体や環境に優しく安心して使用できる抗菌物質として注目されています。乳酸菌バクテリオシンは、食品保存や食品と同様に、高い安全性が求められる様々な用途への利用が期待されています。乳酸菌は、自然界に広く分布し、ヨーグルト、チーズ、漬物、味噌、醤油等の伝統的発酵・醸造食品の風味や嗜好性の向上、その保存性の向上に大きく寄与しています。」以上。
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- 妊娠に於けるマイクロバイオームの役割
非妊娠時と比べて、妊娠中では膣内のマイクロバイオームが変化し、Lactobacillus属の細菌が増える一方で、他の種類の細菌が減ります。妊娠中期から後期にかけては、Lactobacillus属の中でも、L. inersが減少し、L. crispatusが増加します。また、妊娠成功時の子宮内膜液に細菌量が少ないと、自然流産を経験する頻度が高まる事が報告されています。妊娠中期には、胎盤に特定の微生物種(Proteobacterium. Actinobacterium. Firmicutes. Bacteroidetes. Temericutes)と抗炎症性の子宮環境が、妊娠の維持に役立つ事が複数の研究で明らかにされています。
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- マイクロバイオームと婦人科疾患
細菌性膣炎では、Lactobacillusが減少し、Gardnerella. Mycoplasma. Prevotellaが増加します。これにより膣内の環境が乱れ、異常な分泌物や悪臭を引き起こします。慢性子宮内膜炎は、主にEnterococcus faecalis. Enterobacteriaceae科. Streptococcus属. Staphylococcus属. Gardnerella. Mycoplasma等が主な原因菌で、抗生物質による治療が行われます。卵巣癌については、大規模なシークエンス解析が行われており、ProteobacteriaやFirmicutesの多くの種を含む、特有のマイクロバイオームが明らかにされました。これらのマイクロバイオームが、癌の発症と進行に影響を与えているのか、若しくは癌自体が特定の細菌の生存に適した環境を作り出したのか、はたまた両方なのか…まだ真相は分かってはいません。
- 男性生殖器のマイクロバイオーム
男性生殖器のマイクロバイオームに関する研究は、女性生殖器に比べて少なく、進展が遅れているのが現状です。しかし、辛うじて微生物の関与が知られているのが、陰茎癌です。陰茎癌は、子宮頸癌と同様に、HPV(ヒトパピローマウィルス)(美容通信2010年7月号)に関連する悪性腫瘍であり、繰り返しHPVに暴露される事で炎症が引き起こされ、癌化すると考えられています。最近の研究によれば、HPV感染がある陰茎ではマイクロバイオームが変化し、特にStaphylococcusやPrevotellaが増殖する事が知られています。
また、腫瘍組織と非腫瘍組織を比べると、Fusobacteriota門とCampylobacterota門が腫瘍組織で多く検出されています。これらの細菌感染も炎症を引き起こす為、HPVに感染に加え、細菌感染による慢性炎症も発癌リスクを高めているかも知れません。しかし、陰茎癌とマイクロバイオームの研究に於いては、皮膚や尿道からの混入も多く、両者の関係性を明確に示すのは難しいのも事実ですが…。
尿路系のマイクロバイオーム
■おしっこは無菌?
2007年のHMPでは、健常人から膀胱の組織を採取すること自体を倫理的に問題視されてしまった為、膀胱のマイクロバイオームを評価する試みは否定されてしまいました。また、従来の手法では、おしっこの中の細菌種を検出する事が出来ませんでした。その為、「おしっこには、バイ菌がいない!」と考えられて来たのです。しかし、科学の進歩は凄まじいものです。EQUC(拡張クオリティ尿培養法)と16SrRNA遺伝子シークエンスの技術により、約80%のおしっこにマイクロバイオームが存在する事が明らかになったのです。大昔の教科書の「尿は無菌」って記述は、あっけなく覆されてしまいました。男女共に、Lactobacillus. Streptococcus. Corynebacterium等が検出されましたが、女子はLactobacillusが多く、男子にはCorynebacteriumが多い傾向があります。
右図に、男性生殖器・泌尿器のマイクロバイオームを示しました。腎癌は、UTI(尿路感染症)がリスクファクターとなり得ますが、マイクロバイオームとの関連は不明な点も多いとされています。膀胱癌では、Acinetobacter等特定の細菌叢は増える一方で、マイクロバイオームの多様性は低下します。前立腺癌については、炎症を惹起するマイクロバイオームが関係する可能性が示唆されており、前立腺癌とBPH(前立腺肥大症)(美容通信2026年2月号)では、マイクロバイオームの構成が異なっている事が既に分かっています。陰茎癌では、半数がHPV(ヒトパピローマウイルス)関連ではありますが、HPV感染に加え、炎症性のマイクロバイオームの感染が発癌に関わっていると考えられています。
■排尿障害とマイクロバイオーム
排尿障害は、生活の質を低下させ、尿失禁や下部尿路症状を引き起こします。特に、HISAKOの様な爺婆や女子では多く、全人口の25~45%が悩まされるとされています。最近では、おしっこのマイクロバイオームが、排尿障害に何らかの悪影響を及ぼしていると考えられるようになって来ており、研究も盛んに行われています。切迫性尿失禁(美容通信2022年1月号)の女性では、そうでない女性と比して、おしっこの中のLactobacillusが少なく、Gardneliaが多い事が知られています。また、切迫性尿失禁の症状が重い人ほど、微生物の多様性が低くなるようです。腹圧性尿失禁の患者さんでは、おしっこのマイクロバイオームには変化が認められないそうです。つまり、尿失禁と一言で言っても、その内容により、マイクロバイオームの変化に差異が認められるようです。
間質性膀胱炎(美容通信2025年2月号)は、膀胱痛、頻尿、尿失禁、排尿困難等の症状を伴う病態ですが、女性は男性の5倍の頻度で発症します。これまでは、間質性膀胱炎と細菌感染は無関係と考えられて来ましたが、最近の研究では、罹患していない人に比べて、Lactobacillusが極端に多いにも拘らず、全体的なマイクロバイオームの多様性は減じているそうです。Lactobacillusは、一般的には弱毒性であり、病原性は低いとされていますが、一部には病原性を示すものもあります。このマイクロバイオームの偏りは、膀胱のバリア機能に何らかの影響し、それが炎症を引き起こし、それが引いては間質性膀胱炎へと繋がっているのではないかと考えられています。
脳卒中、脊髄損傷、腫瘍等の神経異常に起因する排尿障害の一つである神経因性膀胱では、マイクロバイオームの異常が直接の原因とは考え難いですが、マイクロバイオームの構成が、Klebsiella. Enterococcus. Pseudomonas等が多数派を占める構成に変わっています。
■泌尿器癌とマイクロバイオーム
膀胱癌とそうでない人では、尿中マイクロバイオームの構成が異なり、前者では、Acinetobacterが有意に検出されるのに対し、後者ではLactobacillusが多く検出されます。Lactobacillusは、女性性器と同様に、膀胱でも保護的な役割を果たしていると考えられています。また、PseudomonausやEscherichia等のN-ニトロソアミンを生成する細菌も、膀胱癌の発生に関与しているようです。更には、筋層浸潤性膀胱癌と非筋層浸潤性の膀胱癌では、マイクロバイオームの構成が異なっています。膀胱癌では細菌が多様性が増し、手術後の再発期間の短さと関連もしているようです。
前立腺癌は、日本男児の中でも最も罹患が高く、HISAKOの父親も、親しい男友達連中も「お前もか!?」って頻度で患っている(いた)癌です。マイクロバイオームが癌を促進する要因としては、慢性炎症や免疫環境の変化が挙げられていますが、前立腺癌については、特に優位なマイクロバイオームは特定されていません。
また、腎細胞癌については、尿路感染症が関連する可能性が示唆されています。
Fusobacterium感染は、子宮内膜症の発症を促進する
子宮内膜症は、生殖年齢って妙齢のご婦人の約10%に発症する慢性疾患です。子宮外部の卵巣等に子宮内膜組織が異所性に増殖し、骨盤痛や不妊等の様々な症状を引き起こします。子宮内膜剥離組織が、月経血と共に、卵管を介して腹腔内に逆流する事が一要因として考えられています。しかし、何故、一握りの女性だけに発症するのか等々と、未だ未だ謎が一杯です。
治療法は、ホルモン剤内服による偽閉経療法や手術療法での病巣切除が一般的ですが、薬剤の副作用や術後の高い再発率等が悩みどころ。しかも、これ等の治療方法は、生殖年齢の患者さんにとって、妊娠の妨げになりかねず、患者さんのみならず、少子化に悩む日本国家としても、非ホルモン性の新規治療戦略は喉から手が出るほど欲しいのも事実。
子宮内膜症は卵巣癌の前癌病態であり、また、TAGLN陽性筋線維芽細胞は癌促進タイプの線維芽細胞として知られており、今後卵巣癌の予防や治療戦略を考える上でも、Fusobacterrium感染が注目されています。
■TAGLNによる線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化促進
子宮内膜症の発症には、慢性的な炎症による子宮内膜の変化が関与しています。静止状態の間質線維芽細胞が活性化して、筋線維芽細胞に変化し、それらが異所性に増殖する事が、子宮内膜症の進行に於ける重要な要因です。
細胞移動に関連する蛋白質であるTransgelin(TAGLN)が、健常者に比して、病変部及び子宮内膜の線維芽細胞で著明に増殖している事が知られています。TAGLNは、子宮内膜に於いて、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を促進する重要な因子で、TAGLN陽性の線維芽細胞は、子宮内膜症の発症に関わる増殖、遊走、腹膜内皮細胞への接着が亢進した筋線維芽細胞の性質を有し、これが子宮内膜症の病変形成に寄与していると考えられています。
■Fusobacterium感染が、子宮内膜症の発症を促進
最近、これまでは無菌環境と考えられていた子宮内膜に、実は、多様な細菌が存在している事が分かって来ました。子宮内膜症患者さんの子宮内膜組織及び病変部では、特異的に、Fusobacterrium感染が有意に増加しているんだそうです。
免疫組織化学実験によって、Fusobacterrium感染により、子宮内膜組織内ではマクロファージが活性化している事が分かっています。細胞実験でも、Fusobacterriumとの共培養により、マクロファージが、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)を分泌するM2マクロファージに進化する事が確認されています。このTGF-βは、静止状態の線維芽細胞に於いて、TAGLNの発現を誘導し、TAGLN陽性の筋線維芽細胞へと分化させる重要な因子です。Fusobacterrium感染によるTGF-βシグナルの活性化は、子宮内膜症の病変形成に於いて重要な役割を果たしています。
■マウスモデルによる抗生剤治療の効果
Fusobacterriumは、口腔内や腸管内にも存在し、大腸癌の発症に関与する菌体として知られています。
マウスの子宮内膜にFusobacterriumを感染させ、その後、感染した子宮内膜組織を取り出して、別のマウスに移植した実験ですが、Fusobacterriumに感染させた組織を移植させたマウスでは、子宮内膜症病変の数と重量が増加していました。更に、これ等のマウスにメトロニダゾールやクロラムフェニコール等の抗生剤の投与を行ったところ、子宮内膜症病変の形成が有意に抑制されたそうです。Fusobacterrium感染が子宮内膜症の発症に於ける重要な要因であり、抗生剤治療が非ホルモン性治療として有効な治療戦略となり得る可能性が示唆されました。
THER-BIOTICTMFemme Flora
膣の微生物組成の変動と膣の健康への影響
腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを整える、腸内フローラは有名ですが、膣や子宮内にも乳酸菌があり、善玉菌や悪玉菌が存在しています。これらは膣や子宮内フローラと呼ばれ、子宮内の健康や妊娠の確率や妊娠継続に影響が事が分かって来ました。膣内フローラに於いて、善玉菌の代表格として知られているのが、Lactobacillusです。
ラクトバチルス菌は、女性ホルモンの働きで作り出されたグルコースから乳酸を作り出しています。この乳酸のお陰で腟の中をpH3.5~4.5の酸性の状態に保つ事が出来ます。つまり、ラクトバチルス菌の働きで膣の中を酸性にし、膣の自浄作用が正しく働くように環境を整え、腟の中で病原菌が増えるのを防ぎます。腟と同じ様に子宮の内にもラクトバチルス菌が多数存在しており、子宮の中の環境を良い状態に保ってくれています。子宮の中にラクトバチルス菌が沢山いる環境の方が妊娠しやすい事も分かっています。
■Lactobacillus
Lactobacillusは、グラム陽性の通性嫌気性又は微好気性、桿菌、非芽胞形成性の真正細菌の属で、糖を乳酸に代謝する乳酸菌群の大部分を占めています。私達人間様!では、ラクトバチルス属細菌は多数の身体部位に於ける微生物叢の重要な構成要素であり、婦人科系に於いても、膣内微生物の主要な細菌です。繰り返しになりますが、これらの細菌の組成と私達の健康との間には密接な関係があり、ドイツのナチス党やイタリアのファシスト党等の右翼的反革命独裁とは意味合いが異なりますが、単一の種による一党独裁支配は、細菌性膣炎や尿路感染症等のトラブルを回避する等の健康、及び妊娠(着床や妊娠の維持)に於ける良好な結果と相関しています。ラクトバチルス菌の理想的な割合は90%以上で、女性の約70%ではラクトバチルス属が優勢とされています。しかし、この占有率はヨーロッパ起源のアメリカ人女性とアフリカ起源の女性の間では異なり、後者のグループはより多様な膣内微生物を有する傾向が知られています。
ラクトバチルス属には、現在180種以上の種が分かっていますが、糖から乳酸のみを産生するホモ乳酸発酵を行う種もあれば、糖からアルコールまたは乳酸の何れかを産生する事が出来るヘテロ乳酸発酵を用いる種もあります。ラクトバチルス属は、呼吸鎖の完全な欠如にも関わらず、酸素耐性です。この多くの種では、増殖の為に鉄を必要とせず、極めて高い過酸化水素耐性を有していているのが特徴です。
膣内のラクトバチルス菌を増やして、理想の細菌の桃源郷を実現する為には、生活の改善だけでなく、THER-BIOTICTMFemme Floraの様なプロバイオティクスを服用したり、ラクトバジルス乳酸菌を含有したest’re(エストール)等の、低刺激のデリケートゾーンのケア製品を使用して、直接膣内に投与する方法があります。勿論、更年期を境に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少すると、その影響を受けて、膣内の酸性度は弱まるので、膣内の乳酸桿菌が減り、膣内フローラが乱れる切欠になります。これが更年期を境に繰り返す膀胱炎の一因でもあるのですが、日本では欧米とは異なり、ホルモン補充療法(美容通信2010年8月号)(美容通信2010年9月号)に抵抗がある女子が多く(美容通信2025年5月号)、中々、根本的なGSM(美容通信2025年2月号)の治療に踏み込めないのが現状です(;^_^A。
THER-BIOTICTMFemme Flora
ホルモン環境のみならず、食事やストレス等の多くの要因が、腸内及び膣の微生物叢に多大な影響を及ぼし、それらのバランスの乱れは、様々な疾患に引き金や増悪に関与している事が、前述の通り、昨今の研究により明らかになって来ました。THER-BIOTICTMFemme Floraには、膣の健康と免疫機能をサポートする効果のある以下の4種類のプロバイオティクス菌のみを厳選しており、乱れがちな膣内細菌叢を整えてくれる「飲んで膣で効く」サプリメントです。臨床研究のないフィラー菌株は含有していません。
【有効成分】下記が含まれています。
- ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®:11.5億CFU
- ロイテリ菌RC-14®:11.5億CFU
- ビフィズス菌アニマリス種 ラクティスBB-12®:10億CFU
- ラクトバチルス・パラカゼイ CASEI431®:10億CFU 合計CFU数 43億CFU
1日1カプセルを目安に、水等と一緒に服用します。
妊娠中と授乳中の安全性については、確立されていません。また、プロバイオティクスは一般的に忍容性が良好とはされてはいますが、稀に、軽度の胃腸障害を来す場合があります。ご注意下さいませ。
また、抗生物質と抗真菌薬を同時に服用すると、プロバイオティクスの有効性が低下する可能性があります。
■ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®
ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®は、女性の健康に関して今大注目の菌株の一つです。女性尿道遠位部から分離されますが、棒状のグラム陽性の乳酸菌で、胞子を形成せず、鞭毛で自ら移動します。膣微生物叢の中でもバランスを改善する能力、謂わば社内調整役としての実力が高評価されており、同じ様に調整能力が高いラクトバジルス・ロイテリRC-14株と併せて、膣感染症のカンジダ症の治療の際に使われます。一般的に、下記の補助治療として、病状の主要な治療に追加又は補完的な役割として両者を併用するのが一般的です。
- カンジダ・アルビカンスによる膣カンジダ症の治療
- 女性に於けるVCC感染(中心静脈ライン、静脈カテーテルなど)、又は心臓に接続する静脈へのチューブ
- 病原性酵母の成長抑制
- 呼吸器感染症に対する抵抗力の向上
- 免疫応答の改善
- 乳児の不快感や泣き声の緩和(泣き声や落ち着きのなさの軽減)
- 皮膚の炎症や皮膚疾患の軽減
これまでに、実施された研究によれば、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®は、細菌性膣症、カンジダ症、膀胱炎等の尿路感染症等の女性の泌尿生殖領域に於ける病原性細菌や酵母の感染症の予防と治療に役立つ事が分かっています。
プロバイオティクスは尿道に付着して、感染症の軽減と予防に役立つと考えられており、経口投与後に膣粘膜スワブでもその存在が確認されています。これは、椅子取りゲームで悪いバイ菌共の座る椅子を予め奪ってしまう(病原菌から粘膜内のスペースを争う競合的阻害)だけでなく、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®は膣内のpHを下げる乳酸の生成をするので、アルカリ性環境が得意な病原体達には非常に過酷な状況となり、生存が難しくなります。
更には、プロバイオティクスは、バイオサーファクタントを作り、病原性細菌や酵母等の侵入を阻止し、その増殖をも阻害します。補足になりますが、サーファクタント(surfactant)とは英語で界面活性剤の事であり、バイオサーファクタントとは生物が作り出す界面活性剤の事です。疎水性の高い物質を微生物が細胞内に取り込む方法としては、①水に溶けているものだけを取り込む、②界面活性剤(バイオサーファクタント)を合成し、疎水性物質を1μm以下の微粒子に乳化して取り込む、③ 疎水性物質の表面に付着して直接取り込むの3つの方法があります。この②の方法は、水への溶解速度に関係なく炭化水素を取り込む事が出来るので、①の方法よりも分解速度が速いことが特徴です。
また、これ等の物質は、病原体によって作られた結界!(バイオフィルム)を破り、薬剤をより効果的に作用させる一助にもなります。バイオフィルム(美容通信2024年8月号)は、固体や液体の表面に付着した微生物が形成する生物膜の事です。バイオフィルム内では、嫌気性菌から好気性菌、従属栄養から独立栄養のものまで様々な種類の微生物が存在し、その中で様々な情報伝達を行いながらコミュニティを形成しています。バイオフィルム内の細菌は、抗生物質や免疫に対する抵抗性が高く、しばしば医療の分野では問題となります。右下の図は、バイオフィルムがどの様に形成されるかを示した図です。
細菌が付着と脱離を繰り返しながら、徐々にバイオフィルムが形成されます。バイオフィルムのコロニーには、複数種の微生物が生息し、動的平衡を保っています。棲む微生物は、環境により異なりますが、細菌類以外の微生物が生息している場合も多く、単一種のみで形成されるコロニーは、自然界には稀です。形成後のバイオフィルムも、常に脱離や溶菌が起こっているので、決して安定した代物ではありません。バイオフィルムという呼び名は、極相林のような変遷の終着点というより、形成された後に変化する形態全てを指しています。ある程度大きくなると、コロニーが自己崩壊し、細菌が放出されます…。その変遷は、そのまま私達人間社会を彷彿とさせます。
- 安全性と生存性
ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®は、数十年も前から世界中で販売されている王道サプリ。長年に亘り消費者が大きな問題もなく服用されて来た事を鑑みても、その安全性プロファイルが良好である事が分かります。ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を60日間併用した試験でも、有害事象の発生率は、プロバイオティクス群とプラセボ群で差がありませんでした。又、菌株が経口投与後の糞便サンプルと膣のスワブで検出されており、腸内及び膣での有効な生存が確認されています。
- 細菌性膣症
細菌膣症とは、原因となるガードネレラ菌や真菌等が増えるのを抑えて、腟内を綺麗に保ってくれるはずのLactbacillus(ラクトバチルス)が減ってしまった状態で、おりものが増えて、いやな臭い(魚が腐った様な、と表現されます)がします。女子の3人に一人はこの膣炎に罹患した既往があると言うほどありふれた病気で、抗生物質での治療が一般的です。しかしながら、効果は多くの場合一時的とされ、再発率が高い為、プロバイオティクスの併用が注目されています。
- 尿路感染症
膀胱炎を始めとする尿路感染症は、大腸菌等の病原体が膣内に定着し、尿道を伝い上がって、最終的に膀胱に感染する事によって引き起こされます。これ等の嬉しくない侵入者と闘う為に、粘膜には特別なセンサーが完備されていて、これ等のグラム陰性病原体を感知すると、サイトカインを産生し、免疫調節反応が始動します。ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®は、この反応をサポートし、実際に病原体と一戦を交え、尿路感染症の発症率を減らす事が分かっています。
泌尿生殖器感染症に対する従来の抗生物質の治療で深刻な問題となるのは、抗生物質耐性菌の出現です。予防的に抗生物質を投与するのではなく、プロバイオティクスにその使命を肩代わりさせるって方法が、最近は注目を浴びています。ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を併用した群と抗生物質投与群とで二重盲検ランダム化臨床医試験を行ったところ、尿路感染症は、プロバイオティクス群では、抗生物質を1年間服用したのと同等の予防効果が認められ、発症は半数以下に減少しました。抗生物質投与群では、嬉しくないオマケがほぼ必発、つまり、90%の抗生物質に対する耐性が生じてしまいましたが、当たり前ですが、プロバイオティクス群では病原体に対する耐性の出現がなく、改善が認められたと良い事づくめだったそうです。
- 外陰膣カンジダ症
異常増殖により膣微生物叢のバランスを崩すものとしては、病原性細菌の他に、カンジダという真菌(カビ)が膣の中で増殖し感染を起こす外陰膣カンジダ症があります。本来カンジダは、皮膚や膣内・口腔内に常在菌として存在しているのですが、免疫やホルモンのバランスが乱れた時に感染を起こします。75%の女性が生涯で少なくとも1回は発症すると言われている程、身近な感染症です。しかし、元々が常在菌って性質上、菌を完全に取り除く事は不可能で、再発を繰り返してしまう(再発率:20〜30%)事が大きな問題となります。
4週間抗菌剤のみを服用した群と、抗菌剤にラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を併用した群を比較したところ、後者では前者に比して、70%のカンジダ数の減少を認めたそうです。
- 妊娠
論文によれば、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®の抗炎症効果により、早産のリスクを軽減する可能性があると考えられています。
お母さんのお腹の中にいる胎児は、腸内細菌がいない無菌状態です。経膣分娩(美容通信2020年6月号)では、お母さんの膣及び腸内細菌叢が赤ちゃんの腸内細菌叢を決定付けると言っても過言ではありません。56人の妊婦さんを対象にした小規模試験では、新生児の腸内細菌の多様性を増加させたそうです。
B群連鎖球菌又はストレプトコッカス アガラクティエは、20~30%の人で腸内細菌叢に常在している菌ですが、妊婦さんの約15~40%の膣内細菌叢にも存在しています。しかし、感染していたからと言っても、通常は問題なく、健康な赤ちゃんを出産しますが、極く稀に新生児に感染症のリスクがある事もあり、その場合には抗生物質を投与します。まあ、B群連鎖球菌陽性の妊婦さんに、極力危険回避!の目的で、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を投与したところ、プラセボ群では18%しか陰性に転じなかったのに対し、42.9%の妊婦さんで陰性になりました。膣及び直腸でのB群連鎖球菌の定着率を低下させる効果があると思われます。
- 炎症
ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を炎症性腸疾患の患者さんに1ヶ月間投与したところ、採血にて明らかな抗炎症効果が確認されましたが、有害事象は確認されませんでした。
■ラクトバジルス・ロイテリRC-14®
ラクトバチルス・ロイテリは、腸内細菌叢やヒト全体のマイクロバイオームの重要な部分を構成しているグラム陽性の細菌です。乳児の疝痛治療や、カンジダ、ヘリコバクター・ピロリ、大腸菌等の感染症を引き起こす微生物に対する防御力を高めるプロバイオティクスとして知られています。ラクトバチルス・ロイテリは、ロイテリン、ロイテリン、ロテリサイクリン等の、広域スペクトルの抗生物質特性を持つ抗菌物質を産生します。中でもロイテリンは、有益な腸内細菌を殺さずに、有害なグラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、カビ、原生動物の成長だけを阻害するので、腸内フローラを保ったまま、腸への侵入者を排除します。
ラクトバジルス・ロイテリRC-14®は、女子の健康に関して、最も周知されているプロバイオティクス株の一つで、元々は、健康な女性の膣から分離されました。膣感染症のカンジダ症や細菌性膣炎、膀胱炎等の尿路感染症の治療や、腸内フローラの回復等の目的で良く使用されますが、単独ではなく、前述のラクトバチルス・ラムノサスGR-1®と一緒に使用される事が一般的です。両株とも、膣粘膜に定着し、膣の微生物叢の組成にプラスの影響を与える菌達です。
in vitoro及びin vivoの研究から、ラクトバジルス・ロイテリRC-14®は、女子の泌尿生殖器領域の上皮表面だけでなく、腸上皮にも付着する事が分かっています。病原性細菌を椅子取りゲームで追い出して、占拠。乳酸を生成し、腸と泌尿生殖器領域の両方で、病原性細菌の増殖を抑制します。毒素生成を抑制するシグナル伝達因子も生成し、免疫調節活性を有していると考えられています。
- 安全性と生存性
長年に亘り、サプリメントとして世界市場で販売されてきた実績があり、又様々な臨床試験の結果から、安全上の問題はないと考えられています。
このラクトバジルス・ロイテリRC-14®は、経口投与後7日目の糞便サンプル及び膣スワブで回収され、ガンバの冒険(斎藤惇夫の児童小説『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』が原作。ノロイ一族から島ネズミを守る為に、ネズミの少年ガンバが仲間と共に戦いを挑む冒険活劇です)さながらの行程が、つまり、腸を通って、お尻の穴から会陰、そして膣までの長旅を外敵達と闘いながらも、生き残って到達し、生存する事が臨床的に証明されています。「さぁみんなー!しっぽを立てろー!!」のキメ台詞を知らない? 是非、国内最大(←らしい)定額制動画配信サービスのdアニメストアでアニメ見放題で、この不朽の名作を鑑賞しながら、ラクトバジルス・ロイテリRC-14®の大(!)冒険に思いを馳せて下さいませ。
- 膣カンジダ症
臨床試験では、ラクトバジルス・ロイテリRC-14®が膣内に定着し、病原性酵母を排除し、カンジダ・アルビカンスに対する膣の自然防御をサポートする事が知られています。抗真菌薬とプロバイオティクスを併用した群は、抗真菌薬だけを服用した群と比べ、膣分泌物の減少を始めとする症状が大幅に改善しただけでなく、真菌の数も約70%も少なかったそうです。また、別の臨床試験でも、慢性外陰膣カンジダ症に対し、抗真菌薬単独よりも、プロバイオティクスを併用した群の方が、再発率の大幅な減少が確認されたそうです。
- 細菌性膣炎
細菌性膣炎は、正常な細菌と病原性細菌の慢性的な不均衡によって生じ、独特な生臭い臭いを伴う白灰色の膣分泌物が特徴で、膣の痒みや灼熱感を伴います。一般的に、治療には、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を併用しますが、これらの菌株は手を取り合って一緒に膣に定着し、バイオサーファクタントを生成し、バイ菌の保護シェルターであるバイオフィルムを破壊します。細菌性膣炎に対する無作為二重盲検プラセボ対照試験では、抗生物質と併せてプロバイオティクスを服用した群では膣微生物叢が61.5%正常化したのに対し、抗生物質単独投与群では26.9%に留まったそうです。また、治癒率も、併用群が88%もあったのに対し、抗生物質単独投与群は40%だったそうです。別の無作為化プラセボ対照研究でも、抗生物質投与中止後もプロバイオティクスを継続した群では、2ヶ月後も膣の状態とpHが正常に保たれていたのに対し、プラセボ群では3割の人しか保たれていませんでした。
- 尿路感染症
膀胱炎又は尿路感染症では、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を併用します。これ等の菌株は、それらが生成するバクテリオシン、乳酸、過酸化水素を駆使して、多くの膀胱炎の原因菌とされる大腸菌等をやっつけて、平和を取り戻します。その威力は、抗生物質の投薬とほぼ同等とされています。因みに、バクテリオシンとは、細菌類が産生する、主に同種や類縁種に対する抗菌活性を持った蛋白質やペプチドの総称の事。通常、個々のバクテリオシンの抗菌スペクトルは狭く、同属から同門程度とされ、比較的広い抗菌スペクトルを持つ抗生物質とは区別されます。その作用機構は多岐に及び、Lactococcusの生産するナイシンは、同系統のフィルミクテス門の細胞膜に穴を開けて死滅させるのに対し、大腸菌の生産するコリシンは、腸内細菌科の蛋白質合成系を破壊するんだそうです。この他、緑膿菌が産生するピオシン(膜電位差の消失)、古細菌では高度好塩菌が産生するハロシン(Na+/H+トランスポーター阻害剤)等があります。
再発性の尿路感染症に悩む閉経後の女子を対象にした大規模試験では、12ヶ月間の長期抗生物質投与群と、同期間ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を併用したプロバイオティクス群では、両者に有意差はなく、尿路感染症の発生が50%減少しました。しかし、長期抗生物質投与群では、1ヶ月間の服用の時点で、90%に薬剤耐性が生じてしまっていたそうです。
- 妊娠
妊娠中のB群溶連菌の感染は、別に珍しい事ではありません。性別に関係なく、20~30%の人間の腸内細菌叢にはその常在が知られており、女子に限って言えば(男の子には膣はありませんが…)、膣に約22%定着しています。ですから、B群溶連菌を飼っていたとしても、殆どの妊婦さんはその後健康な赤ちゃんを出産していますし、何ら健康上のリスクや症状を呈するものではありません。唯、極く極く稀にではありますが、出産の際に赤ちゃんが感染してしまう事はあります。その際には、お母さんと赤ちゃんの両方に抗生物質を投与して、合併症の発生を極力回避する方法を選択します。
B群溶連菌に感染している妊婦さんに、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®を併用したプロバイオティクス群では、42.9%でB群溶連菌の定着が陽性から陰性に変化したのに対し、偽物のサプリメントしか与えられなかった群では、(それでも!だと、HISAKOは褒めてあげたくは思うのですが…)18%しか陰性化しませんでした。ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®のコンビは、妊婦さんの膣と直腸に棲みつくB群溶連菌の定着率を低下させてくれるんですね。
- 炎症
炎症とは、免疫システム反応の正常且つ不可欠な反応であり、異物や細菌が体内に侵入した時や、外傷等の際に起こります。しかし、この炎症反応が長期化する(美容通信2021年1月号)と、様々な問題が生じます。
炎症性腸疾患に苦しむ合計20人の患者さん(内訳・クローン病15人/潰瘍性大腸炎5人)と健常人20人に対し、ラクトバチルス・ラムノサスGR-1®とラクトバジルス・ロイテリRC-14®の両者を摂取してもらい、経過を1ヶ月間観察したところ、両群共にT細胞の増加が確認されました。また、炎症性腸疾患患者さんの末梢血では、望ましい抗炎症環境の形成が認められましたが、既に健康な人々がもっと超人並みに高みに上るなんて事は、当たり前ですがなく、健康な状態のままでした。追跡調査では、プラセボ群では前述の様な効果は認められなかったそうです。
■ビフィズス菌アニマリス種 ラクティスBB-12®
ビフィズス菌アニマリス種 ラクティスBB-12®は、デンマークのクリスチャン・ハンセン社の保有する菌で、プロバイオティクスとして1985年から世界的に利用されている、由緒正しいビフィズス菌です。乳幼児の苛立ちを緩和したり、お肌の状態を改善するといった研究成果もあります。日本では、その整腸作用の保健効果から、特定保健用食品及び機能性表示食品の関与成分にもなっています。ビフィズス菌は、一般的に強い酸性や酸素に弱いのが特徴ですが、このビフィズス菌BB-12株はpH2.0という非常に強い酸性でも平気の平左で、胃酸にも負けず、生きたまま小腸・大腸まで到達可能な菌です。
【効果】
①整腸作用
腸管細胞への付着性も高いのが特徴です。ビフィズス菌BB-12株の摂取により、腸内フローラが改善されて、①短鎖脂肪酸(乳酸や酢酸など)の増加により腸内環境が酸性に傾いて、腸内環境が改善される(悪玉菌は酸性の環境を嫌う)、②腸の蠕動運動が活発になって排便が促進される。このような作用によって、整腸作用がもたらされます。
②胃腸での作用
胃のむかつき等を緩和する作用も確認されています。
③免疫強化
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」ではありませんが、酸に強く、胃酸に耐えて、小腸・大腸に到達し、マクロファージ(美容通信2024年3月号)を活性化させ、免疫応答を高めて、免疫力を上げる作用が確認されています。
④気道感染症に罹患するリスクを軽減
ビフィズス菌BB-12株の継続的摂取により、糞便中のIgAが増加します。気道感染症に罹患するリスクを減少させる事が期待出来ます。
⑤アトピー性皮膚炎に対する効果
アトピー性皮膚炎の乳幼児にビフィズス菌BB-12株を摂取させたところ、2ヶ月後、摂取した乳幼児は、摂取しなかった乳幼児にに比べ、皮膚の状態が改善(SCORADのスコアが改善)しました。しかし、花粉症に関する研究成果は報告されていません。
⑥ピロリ菌抑制
ビフィズス菌BB-12株とアシドフィルス菌LA-5株を含むヨーグルトを、ピロリ菌感染者に摂取させたところ、効果的にピロリ菌が抑制されたそうです。
■ラクトバチルス・パラカゼイ CASEI431®
Chr. Hansen 研究所によって開発された株で、パラカゼイ グループに属しています。元々は健康な赤ちゃんの便のサンプルから分離されました。ラクトバチルス・パラカゼイ CASEI431®は、酸性の消化器系でも生き残って、細菌が健康のサポートに役立つ働きをしているとされている腸まで到達します。1995年に発見され、それ以来、ヨーグルトを含む多くの発酵食品の成分として一般的に使用されています。
ラクトバチルス・パラカゼイ CASEI431®は、約60報の論文に記載されており、そのうち20報以上が私達人間を対象とした研究論文です。 様々な論文により、ラクトバチルス・パラカゼイ CASEI431®は、成人の免疫系や赤ちゃんの消化器系の健康に役立つと考えらえています。
【効果】
①免疫応答の向上。
②胃の不快感の軽減。
③消化の促進。
④乳糖不耐症の一部の副作用の緩和。
⑤風邪の期間を短縮する可能性。
- 安全性と生存性
B. lactis BB-12®と一緒に3ヶ月間子供に投与して、成長、行動、感染症、抗生物質の使用、便の特徴、有害事象の数等々の様々なパラメーターによる評価を行ったところ、これ等の菌株が安全で忍容性が高い事が確認されています。また、経口投与後の便の分析から生存が確認され、生きたまま腸まで届く事が明らかになっています。
- 免疫
上部気道感染症の治療法は、抗生物質の投与が一般的です。しかしながら、様々な副作用の他、薬剤耐性菌の出現等の問題が指摘されています。ラクトバチルス・パラカゼイ CASEI431®を摂取した群では、インフルエンザ様の症状の持続期間が41%短縮しただけでなく、症状の重症度スコアも12%低かったんだそうです。他のゴールドスタンダード試験でも、ラクトバチルス・パラカゼイ CASEI431®を摂取した群では、IgGが37%増加し、slgAが有意に増加したそうです。
- 抗生物質治療中の免疫及びサポート
抗生物質療法の最大の弊害は、腸内細菌叢の破壊です。これにより、私達のマイクロバイオームと免疫系の蜜月関係が損なわれ、免疫機能にも甚大な障害が波及します。抗生物質によるこれらの被害を最小限に食い止める為に、プロバイオティクスは果たして有効か?を検証する目的で、子供に対する二重盲検対照臨床試験が行われました。プロバイオティクス群では、唾液分泌型IgA(sIgA)のレベルが維持され、また腸内のプロバイオティクス細菌数の増加が認められたそうです。分泌型IgA(sIgA)は、毒素や病原性微生物から、抗原を破壊するのではなく、循環系への異物の侵入を防ぐ事で、腸上皮を保護する防御の第一線として機能します。健康な血清中の総免疫グロブリンの約 15% を占めています。偽薬しか飲ませて貰えなかったプラセボ群では、抗生物質療法後に、このsIgAレベルが最初に低下する事が知られています。
- 胃腸機能
子供も大人も、便秘傾向が改善されました。乳酸微生物叢の安定化も、認められました。
- 下痢
持続的な下痢症状に悩まされている小児に対し、プロバイオティクスを投与した群では、大幅に下痢症状が改善されました。
- ラクターゼ欠乏症と乳糖不耐症
乳製品不耐症は、ありふれた食品不耐症ですが、酵素ラクターゼの欠乏によって起こる事が殆どです。ラクターゼは、乳製品に含まれる糖であるラクトースをより単純な分子の形に分解します。特定のプロバイオティクス株は、乳糖を発酵させるので、ラクターゼもどきの様な作用があり、乳製品不耐症の治療の一助になるのではないかと、注目を浴びています。
- 小児の成長
プロバイオティクスは、子供の成長、鉄分、亜鉛の状態にプラスの影響を与える事が、介入試験でも明らかになっています。
デリケートゾーン専用ケア製品:est’re(エストール)
デリケートゾーンの正しいケアによって、膣内環境が改善される事が知られるようになりました。est’re(エストール)は、膣内フローラに着目した製品で、全ての製品にラクトバチルス乳酸菌を含有しており、膣内に直接与える事をコンセプトとしています。
est’reシリーズ
■アウターケア
- デリケートソフトウォッシュ(洗浄)
適量(2~3プッシュ)の泡を手に取り、掌で優しく洗います。
大切な善玉菌であるラクトバチルス乳酸菌を残して、汚れのみを優しく落とす泡状洗浄剤。低刺激でありながら、きちんと汚れを落としてくれるアミノ酸由来の洗浄成分を厳選しています。オレンジブロッサムの香り(精油配合)。
【成分】水、ラウロイルメチルアラニンNa、BG、コカミドDEA、コカミドプロピルベタイン、乳酸菌培養液、デキストリン、ウメ果実エキス、海水、ダイズ種子エキス、ダマスクバラ花エキス、カニナバラ果実エキス、ローズマリー葉油、ニオイテンジクアオイ油、オレンジ果皮油、グレープフルーツ種子エキス、加水分解水添デンプン、グリコシルトレハロース、ミリストイルグルタミン酸Na、DPG、キサンタンガム、グリセリン、カプリン酸グリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル-2、ラウリン酸ポリグリセリル-10
- デリケートソフトジェルクリーム(保湿)
適量を手に取り、フェムゾーン周辺の鼠径部・ビキニラインやショーツライン等の乾燥しやすい部位に優しく馴染ませます。
みずみずしく伸びの良いテクスチャーで、ボディクリームとしても使用可。別名・介護脱毛とも言うVIO脱毛後のお肌や乾燥によるくすみにも。無香料。還元発酵乳酸菌®(皮膚コンディショニング成分)が善玉菌をサポートします。
【成分】水、BG、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、グリセリン、DPG、乳酸菌培養液、デキストリン、ウメ果実エキス、海水、ダイズ種子エキス、アラントイン、ソメイヨシノ葉エキス、加水分解コラーゲン、ヒアルロン酸Na、ホホバ種子油、スクワラン、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、ヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-3、水酸化K、キサンタンガム、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、カルボマー、フェノキシエタノール
- デリケートリッチオイルセラム(保湿)
適量を手に取り、より乾燥が気になる箇所に優しく馴染ませます。ミニボトルなので、携帯にも最適。
還元発酵乳酸菌®が善玉菌をサポートするだけでなく、4種類の高保湿植物オイル配合しているので、保湿力が高く、より乾燥が気になる方のスペシャルケアとして最適。無香料。
【成分】コメヌカ油、スクワラン、ヒマワリ種子油、マカデミア種子油、パルミチン酸デキストリン、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10、乳酸菌培養液、デキストリン、ウメ果実エキス、海水、ダマスクバラ胎座培養エキス、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、トコフェロール、ローズマリー葉油、ニオイテンジクアオイ油、オレンジ果皮油、水
■インナーケア
ラクトバチルス乳酸菌や乳酸、ヒアルロン酸配合のインナージェル。弱酸性pH3.4~4.4で、普段の環境に影響のない使い心地。
【成分】精製水、乳酸桿菌、ビフィズス菌培養液、乳酸桿菌/ダイズ発酵エキス、ヒアルロン酸Na、乳酸、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、フェノキシエタノール、他
- 使い方:右図を参考にして下さいね。
- 切り取り線に沿って開封し、アプリケーターを半分程度引き出して、ピストンを掴み、袋の上からキャップを倒す様にして外します。
- 体をリラックスさせた状態で、アプリケーターの先端から7cm程度まで膣に挿入したら、ピストンを押して、ジェルを注入します。その後ゆっくりと抜きます。
アプリケーターの挿入の目安は、先端から約7cmです。正しく挿入し、ジェルを注入します。
- 使用頻度
- 膣壁の粘膜萎縮以外の明らかな異変がないにも拘らず、膣内の痛みが強い場合の他、膣や膀胱炎を繰り返しやすい方は、3日に1回のペースでの継続使用をお勧めしています。
- 膣内環境が乱れがちになる月経の終わり頃にだけ使用するのも、ありです。
- 性交痛のある方は、潤滑ゼリーとして使用する。
- 膣剤の自己挿入の補助として。
- 使用タイミング
- お風呂上りや就寝前の、清潔な状態で使用します。注入後にジェルが外に流れ出してしまう事もあるので、おりものシートやナプキンの併用で安心(⋈◍>◡<◍)。✧♡
- 生理中の経血の時期は、避けた方が無難。
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
*使用中や使用後、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等の異常が現れた場合、使用を中止し、医師に相談してください。
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来月号の予告
子宮内フローラ検査とは、腟または子宮内に存在する 善玉菌・ラクトバチルス属菌の割合を調べる検査です。
<子宮内フローラ検査>