酒皶(酒さ)/赤ら顔に有効な赤味カバー化粧品|グラファ スキンケアエマルジョンAZ旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2025年8月号

酒皶(酒さ)に有効な赤味カバー化粧品|グラファ スキンケアエマルジョンAZ

酒皶(酒さ)やその近縁疾患(酒皶様皮膚炎や顔ダニ、赤ら顔etc.)は、意外に日常的に遭遇する身近な病気です。アトピー性皮膚炎のプロトピック療法が普及するに従って、長期に亘り免疫を抑制する外用薬を使用する機会が増えた事、そして、コロナ禍以降、顔パンツとして定着してしまったマスクの常用等の要因で、特に最近増加傾向が認められています。酒皶(酒さ)に有効な赤味カバー化粧品「グラファ スキンケアエマルジョンAZ」は、治療をサポートするだけでなく、寛解維持にも有効なアゼライン酸10%を配合しており、お薬だけでなく、普段お使いの化粧品の代わり、若しくは追加してご使用いただけます。また、酒皶(酒さ)の悪化要因である、紫外線から肌を守るUVカット効果(SPF35/PA+++)も嬉しいポイントです。

 今月号は、酒皶(酒さ)に有効な赤味カバー化粧品「グラファ スキンケアエマルジョンAZ」のご紹介です。

酒皶(酒さ)

酒皶(酒さ)ってどんな病気?

 酒皶とは、頬や鼻、前額部を中心とした、原因不明の慢性炎症性疾患で、別名・酒焼け。赤ら顔とも言います。中年以降に発症しやすく、男性よりも女性に多い傾向があります。顔面に症状が発現する為、日常生活に支障をきたす事も多く、金融王と称えられたアメリカのモルガン財閥の創始者であるジョン・ピアポント・モルガンは、その容姿故に、大の写真嫌いだったって話は有名です。

 日光、ストレス、寒暖や風、運動、化粧品等が誘因としてが知られています。治療は軽症から中等症では、第一選択はメトロニダゾール(抗菌薬)やアゼライン酸。誘因を避け、日光から防御し、ステロイドの使用は避けるのがお約束です。

 

酒皶(酒さ)の症状

 皮膚症状と眼症状があります。  

 皮膚症状の好発部位は、左図の通り。鼻や頬、額等に、赤みやニキビのみたいな症状が出ますが、ニキビとの大きな違いは、最初に症状が現れた時の年齢(典型的には30 ~ 50歳)と、面皰と呼ばれる毛穴の入り口の角化や毛穴の詰まりがない事で区別が付きます。皮膚のバリア機能の障害によって、過度な経表皮水分喪失が生じる結果、乾燥や、鱗みたいに角質が毛羽立った状態(鱗屑)になったり、火照りやヒリヒリ、浮腫感等も認められる事もあります。顔面と言う非常に人目に付きやすい部位に症状が出る為、ジョン・ピアポント・モルガンの様に大の写真嫌いになってしまうだけでなく、自己評価がダダ下がりになり、挙句、卑屈になってしまう人もいます。時には、抑うつ状態から、QOLが著しく損なわれる事も。

 目の症状(眼型酒皶)は、酒皶患者さんの半数以上に合併が認められ、高頻度に異物感、乾燥、灼熱感、掻痒、発赤、羞明、流涙、霧視が起こります。角膜炎による視力障害は、稀ではありますが、あります。 

■酒皶(酒さ)のタイプは4種類

 臨床症状によって、①紅斑毛細血管拡張型、②丘疹膿疱型、③鼻瘤、④眼型の4型に分類されます。しかしながら、クリアカットに分類出来るものでもなく、これらの病型が複数混在したり、また、病型自体も固定しているものではなく、複数の病型間をうろうろ行ったり来たりします。

  • 紅斑毛細血管拡張型

   潮紅と持続的な顔面中央の紅斑が特徴。所謂、赤ら顔。毛細血管の拡張は良く認められますが、この型に分類するかどうかの決定的な判断要因にはなりません。あってもなくても、どっちでも良いんです。顔面中央の浮腫、ヒリヒリ感、灼熱感、粗造、鱗屑等を合併する事もありますが、潮紅だけの時も往々にして認められます。

  • 丘疹膿疱型

   持続的な顔面中央の紅斑と、一過性の丘疹若しくは膿疱、或いは両者が顔面中央に混在します。丘疹と膿疱は、口の周りや目の周囲にも出現する事があります。灼熱感やヒリヒリ感を感じる事も。毛細血管の拡張は、持続性紅斑、丘疹、膿疱に紛れて気付かない事もありますが、治療によってこれらの症状が改善して、初めて気が付く…。ニキビに似ていますが、面皰と呼ばれる毛穴の入り口の角化や毛穴の詰まりがない事で区別が付きます。

  • 腫瘤型(鼻瘤)

   皮膚の肥厚、不規則な表面の結節性変化、肥大を特徴とします。鼻瘤が最も多い臨床病型とされていますが、日本人では稀。鼻以外の、頤、前額、頬部、耳介等の部位にも生じます。紅斑毛細血管拡張型や丘疹膿疱型に見られる所見が、高頻度に認められます。

  • 眼型

   異物感、灼熱感、ヒリヒリ感、乾燥、羞明、視力障害っを訴える場合には、先ず、疑ってみるべき病型です。他覚所見としては、涙目。結膜充血、眼瞼炎、結膜・眼瞼縁の毛細血管拡張、眼瞼周囲の浮腫があります。また、霰粒腫としてみられるマイボーム腺の機能不全や、麦粒腫としてみられる慢性ブドウ球菌感染が酒皶に関連する眼疾患として良く認められます。視力障害は、角膜障害(点状角膜炎、角膜潰瘍、辺縁角膜炎)により惹起されます。眼型酒皶に於ける視力障害のリスクの観点から、眼科的アプローチは必須。約半数の患者さんは、皮膚病変が眼か病変に先行しますが、反対に、約20%の患者さんでは眼病変が皮膚に先行します。

  • 特殊病型:肉芽腫性

   肉芽腫の形成が主要な病態であり、上述の酒皶の形態的パターンや組み合わせから逸脱しているので、特殊型に分類されます。弾性硬、褐色~黄色~赤色調の丘疹や結節を呈し、消退後に瘢痕を残します。

 

酒皶(酒さ)の原因・増悪因子

 酒皶の原因は明らかになっていませんが、神経血管シグナル伝達の異常や自然免疫系の調節不全、ニキビダニやヘリコバクター・ピロリ等の微生物叢(美容通信2024年2月号)との関連が提唱されています。環境要因としては、寒暖差、ストレス、紫外線、香辛料、熱い飲み物、喫煙、アルコール、顔パンツ(マスク)等が挙げられ、様々な要因が重なって発症すると考えられています。学校や会社等の一般社会では、マスクではなくパンツを被ると言う行為は、非常識の誹りを免れません。しかし、変態ほむらさんやとある変態の風紀委員の様な人達≒変態の間では、パンツは被るものですし、HISAKOの同業者の中にも、不倫パンツ被りに興じる人達はいます(笑)。

 

酒皶(酒さ)の疫学

■発症頻度

 発症頻度は、報告によって可なり異なります。32報の文献を基にしたメタ解析では、成人の0.09%~24.1%が罹患すると試算されています。しかしながら、日本人に於ける信頼に足る疫学データは乏しいのが現状です。

■発症年齢

  全ての年齢層で認められますが、主に30歳以降に診断され、40~59歳でピークを示します。

■性差

 女性の方が、男性より圧倒的に多いです。が、瘤腫になるのは男性が多く、鼻瘤として40歳以降に認められる事が多いとされています。しかし、眼型酒皶には男女差はありません。

■人種差

 紫外線に感受性の高い白人(Fitzpatrick skin phototypes Ⅰ~Ⅱ)で、より発症しやすいと考えられています(日本人では、Fitzpatrick skin phototypes Ⅲ~Ⅳが多い)。スキンタイプによる発症率の違いは、有色人種では赤い色がマスキングされやすいだけでなく、メラニンによる紫外線遮断効果、遺伝的素因の差異によるものと考えられています。

■認知症との関係…

 病院で酒皶の診断を受けた患者に於ける認知症のハザード比は 、1.42 (95%CI=1.17-1.72) 。アルツハイマー型認知症のハザード比は 、1.92 (95%CI=1.44-2.58) と報告されています。酒皶は、認知症(特にアルツハイマー型)と有意に関連していると考えられています。

 

酒皶(酒さ)の診断

 国際的な酒皶の研究調査機関であるNational Rosacea Society(NRS)が、2002年に診断基準を提示し、これが今日まで広く踏襲されています。

  • 主要診断基準(下記のうち、何れか1つを満たす)
    • 一過性の紅斑
    • 持続性の紅斑
    • 炎症性丘疹・膿疱
    • 毛細血管拡張
  • 副次診断基準(主要診断基準項目と合併してもしなくても良い)
    • 増殖性変化
    • 灼熱感やヒリヒリ感
    • 局面
    • 乾燥・鱗屑
    • 浮腫
    • 顔面周辺病変
    • 眼病変

 この診断基準からも明らかな様に、酒皶は臨床的特徴と臨床経過によって診断されます。まあ、この検査をしたら確定診断が付くって代物じゃなくて、単に、見た目診断なんです。

 

酒皶(酒さ)の病理組織像

 特異的な病理組織的所見はありません…。

酒皶(酒さ)に於ける病因としての毛包虫症

 毛包虫によって引き起こされる皮膚疾患・眼疾患で、酒皶や酒皶様皮膚炎と一部オーバーラップする臨床概念。つまり、毛包虫症とは、酒皶や酒皶様皮膚炎の症状や所見の有無に関わらず、病変部から多くの毛包虫が検出されれば、毛包虫症(美容通信2008年10月号)なんです。

 毛包虫は、ニキビダニとか顔ダニとも呼ばれます。ニキビダニ科は、ニキビダニ属 Demodex 1属のみから成る科で、哺乳類の皮膚の様々な分泌腺に寄生しており、全ての種の哺乳類に、特異的に種分化したニキビダニが寄生していると考えられています。私達人間では、2種のニキビダニが異なる部位に寄生していますが、皮膚の上の異なる種類の分泌腺毎に種分化が起きている為、少なくとも5千種以上の種が存在すると考えられています。

 私達人間には、前述の通り、2種類の毛包虫がいますが、毛包の皮脂腺の導管部が開口している部分か、それより浅い部分に棲息しているのが、ニキビダニ D. folliculorum 。彼らは、6 – 8個体の群を成して暮らしています。皮脂腺内部には、コニキビダニ D. brevis が単独で寄生しています。ニキビダニの餌は毛包上皮細胞で、コニキビダニの場合は皮脂腺の細胞と考えられています。ニキビの内部から多数検出される事がありますが、必ずしもニキビに寄生する訳ではなく、健康な皮膚からも普通に検出されます。

 生まれたばかりの新生児には寄生していませんが、親が抱いたり皮膚に触れて感染します。毛包虫は、宿主の免疫システムをコントロールして、片利共生をしています。

 酒皶と病態が基本的に類似している為、酒皶に準じた治療に、概ね反応します。

 

毛包虫の病態への関与

■毛包虫増加の悪循環

 局所の免疫不全を誘導する因子を介した悪循環により、毛包虫は継続的に増殖します。

 紫外線B波(UVB)照射により、ケラチノサイトや線維芽細胞から、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)が産生されます。VEGFにより、エフェクターT細胞表面にPD-1が出現し、これが免疫寛容誘導性樹状細胞に発現したPD-L1と結合し、T細胞の機能不全が誘導されます。この局所免疫抑制を背景として、毛包虫が増加します。上図の様に、医原性因子が尻馬に乗る事も多々あります。増加した毛包虫は、TLR2経路の免疫反応を活性化します。それによりLL-37が増加し、引き続き、血管新生、炎症が惹起されます。LL-37は内皮細胞を活性化させ、UVに対する感受性を更に増加させます。悪循環って奴です。

■酒皶(酒さ)に於ける病因としての毛包虫の増加

 酒皶では、局所にVEGFと、その受容体であるVEGF-R1とVGEF-R2が高頻度に発現しています。VEGFは、酒皶の診断的所見の一つである持続的な顔面中央の紅斑に対し、血管増生作用を介して増悪させるのと同時に、免疫抑制作用により毛包虫の増悪に有利な環境を形成していると考えられています。

 

マスクが酒皶(酒さ)やその類症に及ぼす影響

 乾癬(美容通信2024年2月号)(美容通信2019年9月号)(美容通信2008年4月号)の病態の研究から、慢性的な接触刺激により、ケラチノサイトからLL-37が分泌される可能性が指摘されています。マスクによる慢性的な表皮への刺激(美容通信2022年5月号)により、ケラチノサイトから同様にLL-37が分泌される可能性は否定出来ません。LL-37により内皮細胞の紫外線に対する感受性が増加し、紫外線暴露によりVEGF産生が亢進し、前述の様な悪循環の挙句に、症状が増悪すると考えられています。従って、日常的なマスク着用は、紫外線からの直接的な照射を防御している以上に、紫外線への感受性の増加と言う、それを上回るマイナス面が考えられます。

酒皶様皮膚炎

 ステロイド外用やタクロリムス(美容通信2020年12月号)外用等の医原性の免疫抑制が先行し、且つ酒皶と診断可能な皮疹が認められた場合は、酒皶様皮膚炎。医原性免疫抑制が先行してなければ、酒皶。つまり、酒皶様皮膚炎って用語は、「医原性」酒皶と同義なんです。酒皶と酒皶様皮膚炎を厳格に区別する臨床的意義なんて、殆どないんです、はい。後述する様に、治療にも大きな差がありません。

 皮膚炎と言う疾患名に関わらず、典型的な皮膚炎の病理組織像は呈しません。

病因

 典型的には、思春期~成人の女子の顔面に対する、局所ステロイドやタクロリムス療法等により発症する為、素因やホルモン環境を背景に、外的因子が加わり発症します。長期外用で重症化や肉芽腫型に進展する事もあります。

 正確なメカニズムは不明ですが、局所的なステロイドやタクロリムス療法による局所免疫抑制状態を背景に、Candida albicans、細菌、毛包虫が深く関与するのではないかと考えられています。その他、フッ素入り歯磨き粉やチューイングガムに含有されているロジン(天然樹脂)、歯科充填物、保湿剤とファンデーションの重ね塗り、サンスクリーン剤等のスキンケア製品も発症に関与すると言われています。女性に多い為、ホルモン等の影響も指摘されており、ピル(美容通信2007年11月号)で軽快する症例もあります。

 

治療

 酒皶同様の皮膚のバリア機能障害が認められており、バリア障害に対する保湿剤は必要です。保湿剤であるToleriane Fluideについて行われた4つのオープンラベル試験(n=170)によれば、同保湿剤を1日2回、8週間外用により、症状は改善したそうです。

 速やかに症状を改善させる事を目的に、抗生剤の経口投与の併用が行われます。

酒皶(酒さ)の治療

 軽症から中等症の丘疹膿疱型では、第一選択はメトロニダゾール(抗菌薬)やアゼライン酸。中等症から重症の丘疹膿疱型で、最初の治療に反応がない場合、ドキシサイクリン(抗生物質)の内服を追加します。

 紅斑毛細血管拡張型に対しては、スキンケアとトラネキサム酸の内服や漢方薬の処方、レーザー治療・光治療等を根気良く行います。現時点では、眼型酒皶に対するコンセンサスの得られた治療方法はありません。

 参考までに、下記に、日本皮膚科学会:尋常性ざ瘡・酒皶治療ガイドライン2023.日皮会誌,133(3),407-450,2023 を掲載しますね。

  外用療法[推奨度] 内服療法[推奨度] 理学療法・外科的治療
紅斑毛細血管拡張型 スキンケア[C1] 漢方薬*[C2]

パルス色素レーザー(595nm)*[C1]

Nd:YAGレーザー(1064nmロングパルス)*[C1]

IPL*[C1]

丘疹膿疱型

メトロニダゾール[A]

アゼライン酸*[C1]

スキンケア[C1]

イオンカンフルローション[C2]

ドキシサイクリン*[C1]

ミノサイクリン*[C1]

テトラサイクリン*[C1]

イベルメクチン*[C2]

メトロニダゾール*[C2]

漢方*[C2]

レーザー治療*[C2]
腫瘤型    

外科的切除*[C2]

炭酸ガスレーザー*[C2]

Nd:YAGレーザー(1064nmロングパルス)*[C2]

*酒さに対して国内未承認
眼型(眼合併症)酒皶の眼科的治療には言及しないが、併存する皮膚症状に関しては上記に従う。
A:行うよう強く推奨する
A:行うよう推奨する(Aに相当するも副作用などを考慮)
B:行うよう推奨する
C1:選択肢の一つとして推奨する
C2:十分な根拠がないので(現時点では)推奨しない
D:行わないよう推奨する
 

適切なスキンケアは、基本中の基本

 適切なスキンケアは、酒皶治療に於ける基本中の基本です。表皮バリア機能の改善と、妙に過剰に反応しちゃいがちな皮膚の保護の為には、清潔保持と保湿、サンスクリーンによる遮光が鉄則です。999例の酒皶患者と1010例のコントロールからなる研究では、洗浄剤の使い過ぎが発症に関与すると報告されています。

 HISAKOのクリニックでは、天然セラミド配合の石鹸、保湿クリーム、日焼け止めの3製品から成るAKシリーズ(美容通信2015年2月号)の他、アクネビット(美容通信2022年8月号)、マヌカファインジェル(美容通信2023年9月号)も人気の保湿化粧品です。医療品質のマヌカハニー(ハチミツ)は1つのランダム化比較試験で、69名で1日2回ハチミツを塗布するか偽薬の塗布かに分かれ、偽薬に比して有効であったとの報告もあります。また、併せて、ヘリオケア360°(美容通信2022年8月号)の服用をお勧めしています。紫外線(UVA、UVB)、可視光線、赤外線の4種類の光線からの防御作用が証明された、飲む日焼け止めです。

 アゼライン酸は、日本では医薬品としては未承認の、小麦等の穀類や酵母に含まれる成分で、抗菌、皮脂分泌抑制、抗炎症作用、角化異常の抑制作用があり、後述のグラファ スキンケアエマルジョンAZにも含有されています。グラファ スキンケアエマルジョンAZは、アゼライン酸10%配合の酒皶に有効な赤味カバー化粧品で、治療中も、赤味が落ち着くまでの赤味カバーとしては勿論、寛解状態に至ってからも、普段のお化粧に併用をする事で寛解維持に有用です。

 

外用療法

■ロゼックスゲル(メトロニダゾール)

 ロゼックスゲル0.75%(一般名:メトロニダゾール)は、酒皶及び癌性皮膚潰瘍臭改善薬治療薬です。酒皶に対しては、2022年5月から医療保険が適用となりました。尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023では、酒皶の病型の1つである丘疹膿疱型酒皶には、推奨度A(強く推奨)とされており、酒皶治療の代表的な薬です。

 病変部での活性酸素増加を抑制して、抗炎症作用により症状を改善します。また、ロゼックスゲルの有効成分であるメトロニダゾールは、毛包虫やニキビ菌の増殖を抑え、抗菌する作用もあります。刺激感を感じる事もあるので、最初は狭い範囲から様子を伺いつつ、徐々に塗り広げるのが無難です。

 赤みの改善には時間を要すると言うか…、殆ど効果がありません。赤い丘疹や膿疱に対しては、比較的早くに改善が認められ、一般的には数か月で改善がみられます。国内臨床試験では、12週間の投与による有効性と安全性が確認されており、使用期間は12週間までとされています。副作用としては、赤み、痒み、乾燥、つっぱり感、皮脂欠乏症etc.があります。妊婦・授乳中は、使えません。

■アゼライン酸

 有機化合物のひとつで、白色粉末の飽和ジカルボン酸。サリンジャーはその出世作である「ライ麦畑でつかまえて」ではアゼライン酸について言及する事はありませんでしたが、小麦、大麦、ライ麦等の穀物類に含まれる天然成分です。人生はゲームなんだ、若者よ。人生は、ルールに従ってプレイするゲームなんだ…。作品はハーコード・プレスから当初出版される予定でしたが、「狂人を主人公にした作品は出版しない」と出版を拒否されました。しかし、主人公のホールデンは同世代の若者からは圧倒的な人気を誇り、2007年までに全世界で6000万部以上の売り上げを記録したそうです。

 酒皶に対するアゼライン酸の有効性は20年以上前に既に確立されており、2002年にはFDA(アメリカ食品医薬品局)から、酒皶治療薬の有効成分として承認されています。American Acne & Rosacea Society(アメリカ痤瘡&酒皶学会)の治療ガイドラインでは、酒皶患者に対する外用治療に於いて、アゼライン酸は第一選択薬の一つとして記載されています。しかしながら、日本では医薬品の有効成分として承認されていない為、保険の適応はありません。化粧品としての販売のみになります。20%濃度のDRX AZAクリアが、病院用製品としてロート製薬から発売されている他、酒皶の赤味に対するカバー化粧品であるグラファ スキンケアエマルジョンAZにも、アゼライン酸が10%含有されています。アゼライン酸には、メラニンの生成を抑制する効果があり、美白剤としても処方されます。慢性毒性、変異原性、催奇形性を示すデータはなく、メトロニダゾールとは異なり、妊婦・授乳中でもOK!なのが嬉しい。

 アゼライン酸は、外用直後にヒリヒリ感等の一過性の刺激を感じる事が知られており、20%アゼライン酸クリームを使用した試験では、ほぼ全例に掻痒感とヒリヒリ感の何れか、若しくは両方が認められたとの報告があります。しかし、何れの症状の程度は軽度又は中等度であり、中止又は処置を要した症例はなかったとされています。

【酒皶に対するアゼライン酸のエビデンス】

 丘疹膿疱型酒皶の新しい治療薬としての15%アゼライン酸ゲルの有効性と安全性について:2つの基剤対照、無作為化、第Ⅲ相試験の結果から

  • 目的

   中等度の丘疹膿疱型酒皶に対する外用治療として、新規製剤である15%アゼライン酸ゲルの有効性、忍容性、安全性を評価します。

  • 方法

   2つの多施設共同、二重盲検、無作為化、並行群間、基剤対照試験

   (同一の試験デザイン、患者選択条件、評価項目)を実施。試験①への登録患者は329例、試験②への登録患者は335例。

  • 結果

   中等度の丘疹膿疱型酒皶の外用治療に於いて、15%アゼライン酸ゲル基剤に対する優位性が、2つの試験から一貫して示されました。15%アゼライン酸ゲルは、基剤よりも炎症性皮疹数を有意に減少させました(試験①58%対40%(基剤),p=0.0001:試験②51%対39%(基剤),p=0.0208)。また、15%アゼライン酸ゲルで治療した患者に於いては、基剤の場合よりも有意に高い割合で紅斑の改善が認められましたた(試験①44%対29%(基剤),p=0.0017:試験②46%対28%(基剤),p=0.0005)。治験責任医師による全般的評価では、15%アゼライン酸ゲルで治療が奏功した患者の割合は、基剤の場合よりも有意に高くなりました(試験①61%対40%(基剤),p=0.0001:試験②62%対48%(基剤),p=0.0127)。治療と関連した重篤な有害事象は報告されませんでした。

  • 結論

   2つの試験の結果から、15%アゼライン酸ゲル(1日2回塗布)は、中等度の丘疹膿疱型酒皶に有効で且つ安全で、忍容性が良好な外用薬である事が分かりました。

■トラネキサム酸

 トラネキサム酸の外用(美容通信2024年11月号)や超音波イオン導入やエレクトロポレーション(美容通信2025年7月号)、内服は、臨床現場では肝斑の鉄板治療として用いられていますが、最近の研究では、酒皶の治療にも用いられつつあります。トラネキサム酸は、免疫反応と血管新生の調節を介して、酒皶の患者さんの症状を改善する可能性が指摘されています。HISAKOのクリニックでは、抗炎症効果を期待して、ご希望の患者さんに、トラネキサム酸のセラムに羊水の主成分である尿中トリプシンインヒビター(美容通信2013年6月号)を添加して、お使いいただくこともあります。

 Kimらは、6名の韓国人女性の丘疹膿疱酒皶をトラネキサム酸溶液の外用により治療しました。紅斑のスコアは、全ての症例で有意に減少しました。加えて、掻痒、潮紅、灼熱感を定量化するvisual analog scaleスコアの顕著な減少を認めたそうです。紅斑毛細血管拡張型酒皶20例と1例の、夫々異なる臨床研究にいて、トラネキサム酸外用療法は効果を示し、重大な副作用は認められなかったと報告しています。

 

内服療法

■ビブラマイシン(ドキシサイクリン)・ミノマイシン(ミノサイクリン)

 丘疹膿疱型酒皶に対し、有効性が証明されている抗菌薬です。メトロニダゾール外用薬等と併用しながら、1~3か月程度服用します。

■漢方薬

 紅斑毛細血管拡張型酒皶に対しては、梔子柏皮湯、黄連解毒湯、葛根紅花湯、桂枝茯苓丸、温清飲etc.が、丘疹膿疱型には、荊芥連翹湯や十味敗毒湯(美容通信2022年5月号)、白虎加人参湯等を処方する事が多いです。

 

光療法(IPL)・Nd:YAGレーザー(1064nmロングパルス)

 主に毛細血管拡張症状の改善を目的とする治療として、HISAKOのクリニックでは、Nd:YAGレーザー(1064nmロングパルス)(美容通信2013年9月号やintense pulsed light(IPL)(美容通信2023年4月号)(美容通信2003年5月号)を使用しています。

 

ボツリヌス毒素局所投与法

 ボツリヌス毒素(美容通信2011年3月号)が、酒皶に有効であるとの報告があります。24名の患者を対象にした二重盲検、プラセボ比較試験で、左右の頬部に無作為にボツリヌス毒素と生理食塩水を皮内注射(美容通信2022年12月号した研究では、ボツリヌス毒素の皮内注射群で、有意に紅斑の減少と皮膚の弾力性の改善が認められたそうです。また、ボツリヌス毒素の皮内注射では、紅斑、浮腫、毛細血管拡張、潮紅の、何れも著明な減少を認めた症例が報告されています。更には、パルスダイレーザーとボツリヌス毒素の皮内注射療法を併用した治療を受けた20名の酒皶患者では、相乗効果と高い安全性が報告されています。

 

目の酒皶に対する治療

 目の症状も、半数以上で認められます。眼瞼縁の衛生と、テトラサイクリン全身投与が一般的な治療になります。ω3脂肪酸(美容通信2010年6月号)[エビデンスレベル:中等度]、シクロスポリン点眼[エビデンスレベル:低い]、ドキシサイクリン[エビデンスレベル:低い]が、目の酒皶に推奨されてはいます。

 

腫瘤型酒皶に対する治療

 ROSCOの於ける最近の酒皶の治療方針として、腫瘤を炎症性か非炎症性かに分け、異なる対応を取る事が推奨されています。

 炎症性或いは活動性腫瘤では、経口ドキシサイクリンや経口イソトレチノインが推奨されます。非炎症性或いは線維性腫瘤では、CO2レーザー(美容通信2014年9月号)の様な物理的な方法が推奨されます。

グラファ スキンケアエマルジョンAZ

 グラファ スキンケアエマルジョンAZは、アゼライン酸10%配合の酒皶に有効な赤味カバー化粧品です。治療中も、赤味が落ち着くまでの赤味カバーとしては勿論、寛解状態に至ってからも、普段のお化粧に併用をする事で寛解維持に有用です。

 容量は1本12g(約2~3ヶ月分)。

製品特徴

  • 赤ら顔(酒さ)でお悩みの方向けに開発された 「アゼライン酸10%配合 赤みカバー化粧品」です。高いカバー力で塗った瞬間から赤みのない肌へと導きます。
  • 普段のお化粧に組み込んで継続してお使い頂く事で、肌を健やかに保つ事が出来ます。
  • 赤ら顔(酒さ)の悪化要因である紫外線から肌を守る、UVカット効果(SPF35/PA+++)。

【安全性】

アゼライン酸を配合していながらも、刺激指数が2.0と低いのが特徴です。有用性評価試験では、試験品の使用に起因した有害事象は認められず、ほぼ全例(21例中19例)で刺激性は認められませんでした。

 

使用場面

 医薬品に加え、普段お使いの化粧品(日中用乳液、日焼け止め、化粧下地等)の代わりに、若しくは追加で、御使用になれます。

 

推奨使用方法

 朝、スキンケアで肌を整えた後、良く振ってから、適量(目安:直径1cm位)を手に取り、顔全体に優しく馴染ませます。

 本製品の後にファンデーション等をご使用の場合は、パウダータイプの製品をお勧めしています。また、日焼け止めを併用する場合は、本製品の前に使用して下さい。

 

有用性評価試験結果

■方法

  1. 対象:20代~70代の日本人女性で、紅斑、丘疹、血管拡張の何れかの症状が症状スコア基準1(軽微)以上の酒皶・酒皶様皮膚炎患者。
  2. 実施期間:2019年7月~11月、試験期間12週間(0~8週は試験品使用有・8~12週は試験品使用無)。
  3. 試験デザイン:多施設共同オープン試験
  4. 試験品:グラファ スキンケアエマルジョンAZ
  5. 使用方法:1日1回、朝、スキンケアの最後に顔全体に適量を塗布。試験品は8週間毎日継続使用。
  6. 併用薬剤:試験参加前から使用している薬剤は継続使用し、新たな薬剤は使用しない。
  7. 使用化粧品:試験参加前と同じスキンケア化粧品を継続使用し、新たなスキンケア化粧品の使用は禁止。
  8. 評価項目:0週、4週、8週、12週に、皮膚科医による皮膚所見検察(紅斑、丘疹、血管拡張、乾燥)、顔写真の撮影、被検者によるアンケート評価、SKINDEX-16によるQOL評価

■グラファラボラトリーズ株式会社提供のチャンピオン症例(素肌写真)

 当たり前ですが、全ての症例に当て嵌まる訳ではありませんが、下記症例では、試験品の使用により、著明な改善を示しました。しかし、12週(試験品の使用終了後4週)では、症状がやや戻っています。

 

■SKINDEX-16によるQOL評価

 試験品の使用開始4週で、左図の如く、患者QOLは大きく改善しました。特に、0週で69あった感情のスコアは、8週で有意に改善しました。また、有意な差ではありませんが、12週(試験品の使用終了後4週)には、QOLのスコアは再び悪化の方向に転じました。

■皮膚科医による皮膚所見結果

 紅斑、血管拡張、丘疹、乾燥の何れの症状も、試験品の使用開始4週で、有意に改善しました。その後も、8週まで改善傾向は継続しましたが、12週(試験品の使用終了後4週)には、再び悪化の方向に転じました。

■被検者による肌状態変化の評価

 被検者自身も試験品の使用による肌状態の変化を実感しており、特に肌の赤味に関しては、4週時点で74%、8週時点で95%もの被検者が改善したと答えており、悪化したと答えた被検者は8週までいませんでした。一方、12週(試験品の使用終了後4週)では、8週時点に比べて肌状態が悪化したと答えた被検者が増えており、皮膚科医による皮膚所見結果とも一致する結果となりました。

■保湿効果

 グラファ スキンケアエマルジョンAZは、ルースパウダーのみを塗布した場合よりも、高い水分蒸散抑制効果と高い角質水分保持効果を示しました。

  • 水分蒸散抑制効果

   ジャー容器(CM-30)に精製水を10gを入れ、その上に3Mマイクロポアサージカルテープを貼り付け、試験品を塗布(0.15g/約10cm2)しました。試験品を1.5時間乾燥させた後40℃の恒温槽に静置し、時間毎の重量を測定しました。重量変化より水分蒸散抑制率(%)を算出しました。

  • 角層水分保持効果

   温度21~23℃、湿度50%の環境下で前腕内側を洗浄し、15分間順化後に、試験品を均一に塗布(0.015g/9cm2)しました。塗布前後の水分量をSKICON-200EXにて測定しました。

■成分

ジメチコン、酸化チタン、シクロペンタシロキサン、アゼライン酸、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、シリカ、含水シリカ、水酸化Al、ジステアルジモニウムヘクトライト、ハイドロゲンジメチコン、トコフェロール、酸化鉄

 

 


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

*使用中や使用後、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等の異常が現れた場合、使用を中止し、医師に相談してください。

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