ボトックスリフト | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2011年3月号

ボトックスリフト

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ボトックス注射と言えば、シワ取りのイメージが強いですが、実は毛穴の開きの改善の他、お肌のキメを整えたり、小顔にしたり、はたまたニキビの予防(治療)に使ったり、色んな使い道があります。
今回紹介するのは、リフトアップ。
表情筋ではなく、真皮内に注射します。
物凄く効果的って訳ではないんですが、単独でも、他の施術と組み合わせて更なる効果を狙っても、OK。
結構、応用範囲が広いのです。

 もうじき、雛祭ですねぇ。女の子の健やかな成長を願って、雛あられや菱餅、白酒等の飲食を楽しむ節句祭りです。が、成長がとうの昔に終了してしまって、退化の一途を辿っているHISAKOの様な女子にまで、その適応を広げて祝って良いものかどうなのかはちょっと微妙な気がしないでもないですがぁ‥、気分は女の子ですし、まあ、良いかなぁ(笑)。でも、少しでも後ろめたさを払拭して雛祭を楽しみたいなら、ボトックスの真皮内注射による若返りがオススメです。皮膚の質感の改善と、皺取りと、弛み切った皮膚の吊上げと、お手軽に一石三鳥が楽しめる、今流行のお注射です。

HISAKOの、マシュマロ女子化計画について語ろう。

 春だというのに、近頃鏡を見て憂鬱な気分に陥る事多し。てな訳で、衣替えではありませんが、顔のプチ替えをする事にしました。そうなると、目指す顔ってイメージが固まらないと、何処の領域にボトックスを真皮内注射するのか決められない(笑)。HISAKOは元々どちらかと言うと間延びした馬面で、最近それがたぷ~んと下に弛んで来たので、今春は、松たか子みたいな‥若々しいタヌキというか、マシュマロ女子みたいな顔になりたいなと思っています。
 で、下図の様にデザイン。
 まあ、端的に言うと、ボトックスリフトとは、を真皮内に注射してリフト効果を期待する=セロハンテープで皮膚がだら~んと下垂しないように、セロハンテープで止めるみたいなもんです。ですから、所謂、典型的なボトックスリフトのデザインではありませんが、教科書通りだと馬が狐になるだけなので、ちょっとバリエーションを付けてみました。併せて1箇所だけですが、非対称で、所謂教科書的にはオレンジ皮様(peau d’orange)と表現される(実際は蒸しリンゴみたいだと密かに悩んでいる)顎が気に喰わなかったので、オトガイ筋のど真ん中にボトックスを打ってます。

註:オレンジ皮様(peau d’orange)の顎とは 梅干し皺とも言う。オトガイの真皮のコラーゲンや皮下脂肪が失われると、英語の「so」等、オトガイ筋や口唇下制筋だけでなく、口輪筋も同時に収縮させなければいけない単語を発した時に、顎の部位がwhirling dervish状になる事。

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 まあ、注射した直後から変わるわけではないので、直後はちょい脹れてるかなぁ‥ってありふれた感想だけで終わり。そんじょそこらの毛唐なんぞには到底真似出来ない、日本の中小企業の匠の技で製造された超極細針で細かく注射するので、内出血らしい内出血すら出来ない‥。

 1週間経ちました。HISAKOです。実感的には、3日目位から何かちょっと可愛いかも♪って気がし始めていたんですが、我慢我慢(笑)。

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 だぶ付いていたフェイスラインは、すっきりとしたかな。輪郭が締まった分だけ、真ん中がタボ~んと言うか、ポニョ~んとして、若々しいタヌキ系にすこし化けれたかも(笑)。特に注目すべきは、顎。ゴジラ顔負けのボコボコのみかんの皮状態だったのがつるんとして、シャープになった事。HISAKOのボトックス注射前の顔を見てもらうと明らかな様に、顔の左側(向かって右側)が対側に比べて筋肉が強く、従来のボトックスの筋肉内注射のみだとなかなか左右対称にならず苦労していたんです。が、今回は真皮内注射を併用する事で、左右対称も梅干し皺も改善出来て○かな。コメカミのところに打ったボトックスの効果は写真では今一つだけど、個人的には少しだけ二重の幅が、被さってた皮膚がタイトニングされた分広がった気はする。目の雰囲気までは変えたくはなかったので、軽~く微妙系リフトには、最適なボトックスの打ち方だと思う。
 でも、欲を言うと、う~ん、豊齢線、気になる。今回の特集はボトックスの真皮内注射だけど、追加しちゃえ(笑)! てな訳で、2箇所ばかり、image598 ブチブチと筋肉内に注射。
 う~ん、豊齢線、もう少し消えて欲しいけど‥、あんまり下に打つと、豊齢線はなくなるけどぉ、鼻の下が何となく伸びてより老け臭くなるしなぁ。まあ、2~3日は、しゃべっていて上口唇の滑りが悪い様な気がしないでもなかったけど、鼻の下は伸びてはいないので、豊齢線が少し薄くなった分、良しとしようかな。  若返りましたか?

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皺取りと言えば、それはボトックス注射の代名詞だった。

 何度も美容通信でも特集している様に、ボトックスは、従来は、目尻のカラスの足跡や眉間のシワに対するシワ取りとしてとか、多汗症に対する治療(あ、これは筋肉には注射しない!! 当然だけど(笑))、小顔にする為に咬筋や耳下腺に打つなんて治療(美容通信2010年4月号)が一般的でした。詳しくは以前の特集(美容通信2003年10月号)を読んで頂きたいんですが、期間限定で、神経筋接合部でアセチルコリンの放出を阻害する事で、筋肉の収縮力を殺ぐ、若しくは弛緩したまんまになってしまい、結果、感情を露にしようにも出来ない!って代物です。

「皺」と一言に言っても、従来のボトックスがターゲットにしていたのは、表情皺だけだった。

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 皺、皺と私達は気軽に言いますが、皺は一通りではなく、実は大きく分けると3つ。小皺、大皺、表情皺です。
 以前”シワのメカニズム”(美容通信2004年4月号)については特集しましたが、小皺は、表皮から真皮乳頭層の異常で生じます。爺婆になるのに従って、角層での水分保持能力が低下して角層水分含有量が減少する、つまり水気が抜けて干物(ミイラ!?)化するだけならまだしも、紫外線により柔軟性ゼロの弾性線維症に陥ると、真皮の緊張が低下し、必然的に上に乗っかっている表皮が余る=小皺化するんです。
  大皺は、単に爺婆になったって時間的な問題に、紫外線による光老化(美容通信2003年7月号)(美容通信2003年8月号)って余計なオマケがくっ付くとなります。つまり、加齢により表皮・真皮共に萎縮してぺらっぺらの状態にも拘らず、紫外線で受けたダメージが嵩んで、本来ならふわとろオムレツみたいだった真皮が、網上層の上半分位まで合羽橋の食品サンプル真っ青の硬直状態になると、皮膚の重みに耐えられず大皺になり、重力が更に掛かるとタルミになるんです、はい。
 そして、従来のボトックスがターゲットにする表情皺。元々、表情筋てモンは、体の他筋肉などと違って皮膚に始まり皮膚に終わる自由な輩が故に、笑ったり、怒ったりと感情のままに収縮すると、付着する皮膚もつられて折れて皺になります。表情筋は、超いっぱいありますが、皺の原因となる代表的な筋肉は精々、①前頭筋、②皺眉筋、③鼻根筋、④眼輪筋、⑤オトガイ筋、⑥広頚筋の6つです。ミッフィーには首がない(!)ので、右上図には広頚筋を図示出来てませ~ん。悪しからず。

例えば、ボトックスを眉間に注射すると、期間限定で皺が寄せられなくなる理由

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 例えば、”僕は深刻だなぁ。はぁ~っ”と悩めるハムレットちゃんになると、脳みそは眉間に皺を寄せる筋肉”皺眉筋”に<縮め!縮め!>シグナルを送って、眉間に皺を寄せます。まあ、脳みそから受け取った<縮め!>シグナルを荷台に載せて、神経高速道路を爆走するトラックを想像してみて下さい。シグナルの届け先は、筋肉です。シグナル下の図を見て下さい。神経筋接合部では、縮め!縮め!シグナルにより、ACh(アセチルコリン)が放出されていますね。おおっ、筋肉がACh(アセチルコリン)の作用により縮んでいますよ。所謂、これが、眉間に皺が寄った状態なんですね。
200310image3 じゃあ、今度はボトックスを注射してみましょう。一体、どうなるのでしょうか? ボトックスは、図の様に軽鎖と重鎖が引っ付いて(ジスルフィド結合)一塊になった構造をしています。 あっ、ボトックスの重鎖側が神経にくっ付いた! 神経には、受容体って名前の、ボトックス(の重鎖部分)に貼り付きやすいトリモチみたいなものが元々あるんですね。

200310image4 あれれ、ボトックスが神経(の細胞)の中に取り込まれて行きますよ(エンドサイトーシス)。

 何と、神経(の細胞)の中で、ボトックスを構成していた重鎖部分と軽鎖部分が分かれてしまいましたね。おやおや、軽鎖はACh(アセチルコリン)の倉庫(ACh小胞)群の大扉を封鎖して、ACh(アセチルコリン)の放出を一時的に阻止してしまいました。これじゃあ、脳みそは眉間に皺を寄せようとしても、筋肉が収縮しないんですから、皺は寄れませんよね。

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進化するボトックス~真皮内注射について

 最近は、上記の様な筋肉ではなく、皮膚のど真ん中に細かく少量を分散注射する事で、お肌の質感の改善~オイリー肌や毛穴の開きを改善するだけでなく、軽いタイトニング(お肌の引き締め)効果や滑らかでマットなシャイニーな艶肌効果等を期待する方法が広まって来ました(美容通信2010年11月号」)。HISAKOのクリニックでは、真皮内に注射するので、そのままずばっと”真皮内注射”って呼んでますが、メソボトックスとか、マイクロボトックスとか、はたまたシンデレラリフト(!)とか、呼び方自体もクリニックでばらばら。  昔から、ボトックスを注射すると、「何か、肌まで綺麗になるぞ!」って事は、女医会とかそんな内輪の飲み会の席では囁かれてはいました。が、慎ましやかな日本人医師たちの間では、囁きが確固たる治療メニューにまで進化する事はありませんでした。まあ、停滞したと言うよりジリジリと地盤沈下する一方の日本経済に対し、勢いのある国って、ある意味”イケイケ、どんどん!”(笑)。「理論は後から付いて来るもんだ」的に、5~6年前に韓国やシンガポール等々から続々新しいボトックスの治療法~従来の様に筋肉に注射するのではなく、皮膚に微量に注射する事で肌の若返りを果たす方法が黒船的に日本上陸。表情筋を全てではなく、皮膚に入り込む表面線維の働きを弱めるだけなので、お肌は若返るのに、表情が能面みたいに固まらないのが最大の特徴です。

 更には、その進化系としてボトックス・リフトと、まだまだ進化途上で面白い使い方が出現しそうな予感♪ 近頃は、アレルギー系を専門とする内科さんなんかは、花粉症の治療の一つとしてボトックス注射を利用しているみたいですしね。

実は、作用機序は良く分っていないのが現状。

 ボトックスは、神経筋接合部以外にも、自律神経節や交感・副交感神経終末にも作用します。詳しい作用機序については未だ分んない事も多いんです。皮膚直下の筋肉(表情筋)から立ち上がる部分的な筋線維への作用、毛根に付着する立毛筋への作用(←これが毛穴を小さくする最大の理由とも言われたが、実際は立毛筋はアドレナリン作動性なので、現在では単に韓国辺りから何となく流れて来たデマに過ぎないと判明!)、エクリン汗腺への効果、毛穴の開き改善、汗腺に存在する筋上皮細胞への作用、真皮内のコラーゲン線維やamyelinic nervous fiberへの作用、更にアセチルコリンやカテコラミンの関与が考えられています。
 ですが、毛穴の改善の一番の功労者は、皮膚直下の筋肉(表情筋)から立ち上がる部分的な筋線維への作用だと、現在のところ考えられています。つまり、すり鉢状構造に凹んだ底面を、ぐ~っとと底上げてくれるから、毛穴が浅くなる。同時に、皮脂の分泌も抑えてくれる事が、前述の過酸化脂質の生成を減らし、延いては炎症を抑え、正常な角化を促してくれるので、オイリー肌の改善のみならず、毛穴の開大にもプラスに働いてくれているようです。がぁ、どういう機序が絡み合って皮脂の分泌を抑制しているのかは、未だ良く分っていないんですよねぇ‥。そのうち、どっかの偉い先生が解明してくれるでしょうけど(笑)。

立役者である表情筋から立ち上がる部分的な筋線維って奴を、拝んでみよう!

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 顔面と頚部の筋肉の表面線維だけにボトックスが作用するので、深い筋肉部分は影響を受けない。つまり、本来の機能である表情(!)を損なわずに、小皺っぽい肌を、しゃきっと糊を利かせたお父さんのワイシャツみたいに仕上げてくれるから、より自然に若々しく見えるのが、ボトックスの真皮内注射です。特に、頚から顎に掛けてのラインの乱れ~ブルドックみたいなフェイスラインとか七面鳥みたいな頚の持ち主にとっては、広頚筋も上方に引き上げてくれる効果も期待出来る為、婆化すればするほど、有難味が沸くって寸法です。(最近寒さがぶり返して来た事もあって、タートルばっか着ていたHISAKOは、弛んだ首の事はすっかり失念。ボトックス、頚の辺りには打ってません。それ故に、冒頭の写真を見ても、効果は当たり前だけどありません、ははは。)

 表情筋は、皮膚に始まり、皮膚に終わる。‥ですが、この皮膚ってさらっと言っているのは、真皮の網状層のお話。右上図を見てみましょう。網状層のコラーゲン線維束の間を、まるで刺さり込むかの様に、表情筋が細い束をなして入り込んでいるでしょう? 顔は、表情筋の収縮・弛緩によって真皮網状層を変形させて表情を発現出来るように特殊な進化を遂げた場所なので、その代償として張力が発揮し難くなっちゃったんです。つまり、爺婆化によって、他の部位に先駆けて真っ先に”たるみ”が露見するようになったんです‥、はい。

 補足までに、「皮膚の構造」を解説しときますねぇ。暇だったら、読んで下さいませ。
image1068 皮膚をイメージするとすると、身近なものとしては、毛足の長いカーペットの上に大風呂敷を広げた図を想像して下さい。大風呂敷が表皮、カーペットの毛足の部分が真皮乳頭層で、カーペットの芯の部分が真皮網状層。カーペットは毛足と芯の両者を合わせてカーペットと呼ぶのと同様に、両者を合わせたものを真皮と言います。

  • 真皮乳頭層
  •  表皮と真皮網状層の間に挟まっている一種の緩衝帯で、両者の間にすくっと垂直に林立する細いコラーゲン線維の層です。弾性線維もあり事はありますが、後述の網状層の様に吻合した網目を作らず、細いオキシタラン線維のまま、表皮下の基底膜に収斂しています。  表皮ってもんは、元来が重層扁平上皮のシートで、加えて表面が角化と言う、謂わば塩ビでコーティングしたヴィトンのバック状態なので、とっても柔軟性に欠けるんです。それに対し、体の動きに合わせて自在に変形するのが、真皮網状層の真髄。静と動。相反する性格の表皮と真皮網状層の間を取り持って、円滑に事を運ぶ調整役です。  一見、中立国とか、寧ろ”真皮”繋がりで網状層寄りなのではと思われがちですが、実は、真皮乳頭層は表皮基底細胞(上図ではimage1071)に首根っこを完全に掴まれていて、表皮の言いなり状態。操り人形(笑)。真皮乳頭層の中核を担う線維成分は本より、線維成分が浸っている大部分の基質も線維芽細胞が分泌していますが、その生産量と線維の立体的配列は、基底膜の上に鎮座する表皮基底細胞が制御しているんです。
  • 真皮網状層
  •  真皮乳頭層と異なり、コラーゲン(膠原)線維系と弾力線維系が交互にサンドウィッチの様に配列しています。顔面では、この網状層内に、横紋筋群である表情筋が存在しています。
image1073 *註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。


※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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