HISAKOの美容通信2024年11月号
トラネキサム酸配合クリームとローション|コロナ禍以来、供給不安定な内服(トランサミン)の代替案としても
トラネキサム酸(トランサミン)が、美白成分として、2002年に厚生労働省から医薬品部外品の美白成分として認可されました。しかしながら、このコロナ禍以来、未だに内服薬は供給が不安定…。ならば、家で塗る、ホームケアって手があるか!(外用の延長線上のイオン導入と言っても、業務用のパワーの強い奴は、病院に行かなきゃ出来ないし…毎日、通院なんて無理!無理!) 勿論、内服と外用は併用した方が効果は上がるし、より浸透性を高める為には、超音波イオン導入やフラクセルやメソセラピーを追加する方が望ましいですが。
肝斑や、老人性の色素斑(美容通信2014年12月号)や黒子(美容通信2014年9月号)等に対するレーザー照射(美容通信2013年12月号)後、ケガや火傷等の後の炎症性の色素沈着には、ハイドロキノン等のメラニン合成を抑制する美白剤を用いる事が一般的です。しかしながら、ハイドロキノンは副作用も多く、世界中の製薬会社や化粧品会社が、ハイドロキノンを使用しない美白化粧品や治療法で鎬を削っているのが現状です。
<トラネキサム酸配合クリームとローション>です。
メラニンの生成を抑えるトラネキサム酸配合の美白ケア
こんな時に、トラネキサム酸(トランサミン)の外用は、使えるぞ!
- トラネキサム酸(トランサミン)が、コロナ禍以来、未だに品薄。中々手に入らない代表格の内服薬となってしまいましたが、外用ならまだまだ大丈夫。薬局から入荷の連絡が入るまでの繋ぎにはなる。
- そもそも、あのデカい粒は飲めない。
- 一日に3回、毎食後に飲めと言われても、面倒過ぎる。
- 他にも仰山薬を飲まなくちゃならない…。もう、これ以上飲み薬を増やしたくない!
- 美白の女王・ハイドロキノンの外用は、効果もあるが、それ以上に被れる。
- ハイドロキノンと作用機序が異なる、トラネキサム酸との併用で、更にパワーアップを目指したい。
- レーザー照射に付き物の炎症後色素沈着を少しでも減らしたいから、施術前からプレトリートメントとして使っておくか。
- レーザー照射や光治療等の後から、と言っても表皮化後のお話ではありますが、少しでも炎症後の色素沈着を減らしたい。
- レーザー治療による介入自体が中々難しい、目元のクスミにも使える。
プラスリストアTAホワイトシリーズの成分達
2つの有効成分
有効成分に加えて、サポート成分としてアルブチン、プラセンタを配合しています。更に、製品の抗酸化剤として、ビタミンC(美容通信2009年10月号)も配合されています。
TAホワイトローションMDについては、別途料金が掛かりますが、抗炎症作用の羊水成分(尿中トリプシンインヒビター)(美容通信2013年6月号)の追加が可能です。
■トラネキサム酸
トラネキサム酸は、人工的に合成されたアミノ酸の一種で、内服薬は、止血剤や抗炎症剤として出血や炎症の予防や治療に用いられます。また、肝斑等の炎症性の色素沈着の治療にも有効とされ、内服薬や化粧品にも配合されており、2002年には美白成分として医薬部外品に配合を認められました。
炎症性の色素沈着とは、皮膚に炎症が起こった後に、メラニン色素が過剰に生成されて、皮膚が茶色く変色する現象です。 これは、炎症によって活性化されたプラスミンという酵素が、メラニン生成を促進する物質を放出する事が原因と考えられています。トラネキサム酸は、プラスミンが生成するメラニン色素の前駆体であるチロシンを抑制し、その結果、メラニン生成が抑制されます。2017年の文献レビューでは、肝斑に対して経口、外用共にトラネキサム酸は、他の標準的な治療と少なくとも同等に有効にも拘らず、副作用が少ないとされています。
トラネキサム酸の外用は、主にクリームや化粧水等の形で、皮膚に直接塗布します。 トラネキサム酸は水溶性の成分なので、油性の基剤よりも水性の基剤の方が皮膚への浸透性が高いとされています。 また、超音波イオン導入(美容通信2023年1月号)で、電気的な刺激を与えながら成分を皮膚に送り込むと、より効果的にトラネキサム酸を吸収させる事が出来ますが、これにはクリニックに来院する必要があります(←家庭用もありますが、如何せん、パワーが弱い…)。
トラネキサム酸の外用の効果は、個人差がありますが、一般的には3ヶ月以上の使用が必要です。 トラネキサム酸の外用の効果については、いくつかの臨床研究が行われており、肝斑に対しては有効性が示されていますが、シミに対しては効果が不明確な場合もあります。まあ、肝斑は炎症性の色素沈着ですが、シミは多くは紫外線等の影響で遺伝子自体が損なわれた状態が本態ですから、トラネキサム酸でどうこう出来る様な代物ではありません(笑)。しかし、シミも日焼けしますし、炎症性の色素沈着が被っている場合が殆どなので、その分については薄くなります。勿論、鉄や蛋白質、亜鉛やビタミンA等の栄養状態も、炎症性の色素沈着の治療に於いては重要です。
トラネキサム酸の外用は、内服と比べて副作用のリスクは低いですが、皮膚の刺激や赤み等が起こる可能性があります。 また、トラネキサム酸の外用だけでは、シミや肝斑の予防や改善に限界があります。因みに、内服のトラネキサム酸に、3%濃度のトラネキサム酸外用薬を追加した方が、20%濃度アゼライン酸の外用薬を追加するよりも有効であったという、100名でのランダム化比較試験があります。また、別の60名でのランダム化比較試験では、肝斑へのトラネキサム酸のマイクロインジェクションでは約35%に改善が見られ、1.5ミリのマイクロニードリングを施した面に同濃度のトラネキサム酸を塗布した方が約44%に改善が見られたとの報告があります。HISAKOのクリニックでも、より効果を上げる為に、内服や外用の他、トラネキサム酸の超音波イオン導入に、メソガン(MPガン)(美容通信2022年12月号)やフラクセル(美容通信2007年2月号)の施術を併用をしたりしています。
因みに、左図は、竜血樹。この竜血樹の樹皮を傷付けると滲み出して来る、血の様な色をした樹脂を集め、乾燥させてドロップ状にしたものを、竜血と言います。古代ローマ時代から鎮痛効果や止血の為の薬品としても使用された他、中世期には染料やラッカーとして用いられ、赤い金と持て囃された時代もあったんだそうです。トラネキサム酸の天然版ってところでしょうか。
■グレチルレチン酸ステアリル
グリチルレチン酸ステアリルは、甘草の根から得られる成分の油溶性誘導体で、安全性が高く、強い抗炎症作用を有します。化粧品成分としては、肌あれやあれ性を防ぐ効能に加えて、メラニンの生成を抑えて、しみやそばかすを防ぐ美白効能もあります。
作用機序としては、紫外線によって肌に炎症が起きると、その刺激がメラノサイトに伝達されるのを抑えるので、シミの形成を防ぐと考えられています。また、肌の赤みや色むらを減少させ、明るさや透明感を向上させる効果も示されています。
サポート成分
■アルブチン
アルブチンは美白効果が期待される成分で、医薬部外品の化粧品に使われています。アルブチンは、メラニン色素の合成に関わる酵素・チロシナーゼに直接作用して、メラニン生成を阻害する働きがあります。
■プラセンタ
プラセンタ(美容通信2009年2月号)とは、胎盤から抽出された成分で、アミノ酸や蛋白質、ビタミン、ミネラル等の肌に嬉しい💛成分が含まれています。美白効果、保湿効果、肌質改善、肌にハリを与える効果、肌の免疫力アップ等の外用効果が期待出来ます。
プラスリストアTAホワイトシリーズ
TAホワイトクリームMD
皮膚刺激が少なく、継続して使える美白クリーム。みずみずしく、伸びが良い使用感で、各種施術後のデリケートな肌にも、肌を整え、潤い効果を発揮します。更には、潤い効果により、乾燥小皺のケアも叶う薬用美白クリームです。
この美白クリーム、たまたま、美容外科の学会で立ち寄ったブースで、試供品をもらったのが切っ掛け。個人的には、このJMECって会社、レーザー器機の輸入大手ではあるのですが、ちょっと都会的な洗練を売りにしている社風で、HISAKOとはノリソリが合わないと言うか…苦手な会社さんだったんですが、品物はそれなりには良い(笑)。1ヶ月間、いつものトラネキサム酸の内服はそのままに、TAホワイトクリームMDをプラスしたところ、毎月お肌の世話に来てもらっている出入りのレーザー屋さんが、HISAKOの顔見るなり、「何したんですか?」と質問攻め。白くなったんですよ。それも、う~ん、漂白した様な人工的な?強制終了的な?白ではなくて、炎症って嵐が去って、静かに、垢抜けた感じの白に。はっきり言って、このTAホワイトクリームMDは良いです。まあ、効果には個人差がありますので、全員が全員、同じ効果を実感出来るとは限りませんが。
【有効成分】トラネキサム酸・グレチルレチン酸ステアリル配合
【適応】①レーザー・光治療の前後に ②美白ケアしたい方に ③乾燥による小皺が気になる方に(効能評価試験済)
【効能・効果】
メラニンの生成を抑え、シミ、そばかすを防ぎます。その他、肌荒れ、荒れ性、あせも、しもやけ、あかぎれ、ニキビにも改善効果があります。皮膚に潤いを与え、皮膚を保護し、乾燥も防いでくれます。
【使い方】
- 朝晩の洗浄後、化粧水や美容液で肌を整えた後に使用します。
- 適量を手に取り、肌に優しく馴染ませます。
TAホワイトローションMD
上記の美白クリームの化粧水版です。Wでご使用頂くと、更に効果的です。また、抗炎症作用の羊水成分(尿中トリプシンインヒビター)(美容通信2013年6月号)の追加が可能です。
【有効成分】トラネキサム酸・グレチルレチン酸ステアリル配合
有効性を(レーザー会社さん提供の資料で)検証!
■レーザー会社さん提供のチャンピオン症例1.
下図は、55歳女性。レーザー照射1ヶ月前より、トラネキサム酸外用を全顔に使用。レーザー照射から1週間は被覆、塗布を中断。被覆終了後に塗布を開始し、6ヶ月間継続使用した。ステロイドは未使用。レーザー照射部位以外の明度も上昇し(←画像がちょっと暗くて、7ヶ月後の明度が上がっている気がしないかも知れませんが…上がっているそうです、はい)、赤味も減少。
因みに、上の症例の様に、老人性の色素斑の治療としてQスイッチルビーレーザー照射が、HISAKOのクリニックを始め、一般的に行われています。しかしながら、残念な事に、炎症後色素沈着ってオマケが殆ど必発なんです。鉄や亜鉛、ビタミンA等の栄養がしっかり摂れていれば、大した問題にまでに発展する事はないですが、こんな症例は精々5%。大半以上の患者さんを悩ます炎症後色素沈着に対し、ハイドロキノン等のメラニン合成を阻害する美白剤による治療が手っ取り早い?のもあって、殆ど定番の処方と化しています(←自覚がなく今まで過ごして来た患者さんに、「栄養状態を評価する為に、採血しましょう」と勧めてもなかなか応じてくれないの現状。例え、採血に応じてくれても、そこから理想の栄養状態まで改善するのは、医者も患者もかなりの覚悟がないと難しい…)。しかしながら、前述の通り、ハイドロキノン等の美白剤の(長期)使用による、皮膚刺激性や色素増強及び脱失等の副作用の報告が散見されており、世界の潮流は、脱ハイドロキノンにあります。
医薬部外品の美白成分であるトラネキサム酸は、抗プラスミン作用によりメラノサイトの活性化を防ぐ為、作用機序の異なるハイドロキノンと比較して、副作用や接触性皮膚炎等の発現を低下させる事が期待出来ます。また、後述の論文にもあるように、トラネキサム酸の外用は肝斑や雀卵斑、老人性色素斑等の改善に効果があるとの報告もあります。
■レーザー会社さん提供の使用成績
トラネキサム酸配合乳液の肝斑・雀卵斑に対する使用成績は、論文によれば、肝斑では8週以内、雀卵斑では12週以内で、約6割の患者さんで効果が認められました。少なくとも、2ヶ月以上の外用が効果発現に必要と考えられます。トラネキサム酸外用は、薬用化粧品として有用と考えられます。
★使用中や使用後、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等の異常が現れた場合、使用を中止し、医師に相談してください。
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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