HISAKOの美容通信2019年4月号
機能性医学~皮膚の病気と認知症と、ついでに老化
機能性医学に基づく治療とは、特にその病気に特化した治療と言う訳ではありません。薄毛に対して植毛するとか、シワにヒアルロン酸を注入するとか…そんな現世利益的な治療ではなく、老化を始めとする慢性の病気、例えば、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎、蕁麻疹や花粉症の様なアレルギー性疾患、認知症、冠動脈疾患及び心血管疾患、壊疽、黄斑変性症、慢性疲労、癌、急性及び慢性感染症、皮膚真菌症、間質性膀胱炎、歯髄炎、副鼻腔感染症、肥満(メタボリック症候群)、糖尿病、自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎等々に対し、そもそもの根本的な原因にアプローチをしましょうってものです。地道な割には…って、忙しい医療現場では(面倒臭い!と)敬遠されがちな機能性医学ですが、この基本的な改善がなされていないかどうかで、従来の治療の結果の差が大きく出るのも事実です。
先日、たまたま白澤卓二(医学博士/白澤抗加齢医学研究所所長/お茶の水健康長寿クリニック院長)先生の「ケトン体研究会」に参加する機会があり、それを機に彼が監修した『アルツハイマー病~真実と終焉』(デール・ブレデセン著)をアマゾンでポチしました。皮膚科・形成外科のHISAKOが縁遠く感じていた「認知症(アルツハイマー病)」。その病因と回復と予防法は、正に、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎等のアレルギー性疾患や、ドライスキン(乾皮症)、シワやシミ、薄毛等の皮膚科の病気にそのまんま当てはまります。そうかい。そうかい。「外見の老化は、中身の老化を反映する」とは良く言われる事ですが、改めて、皮膚の様々なトラブルに対して、HISAKOのクリニックでも行っている、体の外側からだけではなく、体の内側からのアプローチを行うという考え方、つまり、まあ、今時に言い方をすれば『機能性医学』(美容通信2013年3月号)って奴ですが、この概念は、皮膚科の為のみならず。逆も真なりで、認知機能の低下の予防と治療は、そのまま、皮膚にも反映されると言う事ですね。二兎を追うものは、百兎を得る(笑)。
*デール・ブレデセンDale E. Bredesen, MD:アルツハイマー病等の神経変性疾患の世界的権威。「リコード法」の教育・普及を行うMPI Cognitionを設立し、最高医療責任者を務める。
アルツハイマー病について
アルツハイマー病のホントの原因
アミロイド仮説:アルツハイマー病の原因は、脳に、アミロイドβと呼ばれるべとついた蛋白質の塊が蓄積された為に起こる。アルツハイマー病の治療は、この仮説に則って、だたひたすらにアミロイドβを除去する治療薬のみが開発されて来ましたが、殆どが不発。それ故に、専門家達は不治の病という烙印を押し、門外漢のHISAKOに至っては、「ふ~んそうなんかい。以上!」で、No Man’s Land扱い。以前、生活習慣病に関する遺伝子検査(美容通信2008年2月号)でもちらっと書きましたが、HISAKOはアルツハイマー病の遺伝子ApoE4の保有者にも拘らず、で
す。だって、手の施しようがないんだもの…と。
因みに、ApoE4とは、最も強力なアルツハイマー病の遺伝的危険因子です。どちらかの親からApoE4を一つ受け継いだ人は、アルツハイマー病のに罹る生涯リスクは30%に上昇し、二つ受け継いだ人は50%以上(論文により諸説あり、50~90%)。これに対し、このアレルが一つもない人のリスクは、僅か9%と言われています。
『アルツハイマー病~真実と終焉』の著者プレデセン医師らの研究によると、脳は、以下の3つの脅威、つまり、
- 炎症(感染、食事又はその他の原因による)
- 補助的な栄養素、ホルモン、その他の栄養となる分子の低下や不足
- 金属や生物毒素(カビ等の微生物が産生する毒素)等の有害物質
に曝されると、それらに対する「防御反応」の一環として、
アミロイドβを集積させて、脳自体を守っているんだそうです。ところが、これらの脅威が強大且つ、一時的ではなく長期渡り継続すると、アミロイドβがどんどん蓄積し、ついには過剰在庫により倉庫の床が抜けてしまう(=脳神経自体が破壊する)。それ故に、従来の治療法とされているアミロイドβの除去のみに腐心しても、結果が出なかったのだと。
…ん? これって、アトピー性皮膚炎(美容通信2007年4月号)に、ステロイドの外用薬や抗ヒスタミン剤の内服をしても、一時的に症状は抑えられても、治んないのと一緒じゃ~ん。今更、アトピーの遺伝子を変えられないところまでそっくり(美容通信2014年11月号)。これは、癌の治療に於ける高濃度ビタミンC点滴療法(美容通信2016年11月号)やオゾン療法(美容通信2017年4月号)の立ち位置とも同じで、機能性医学の考え方に則したものであり、認知症も慢性疾患である以上、当然と言えば当然のお話なのですが。
プレデセン医師らが提唱する「リコード法」
HISAKOのクリニックでは、プレデセン医師らの提唱する、認知症をターゲットにしたリコード法を行っている訳ではありません。ですから、アルツハイマー病の3つ(正しくは4つの?)の病態に則したリコード法の実践については、専門家にお任せしますし、ここではさらっと触れるだけにしておきますね。
正常な脳では、脳神経の保護・生育と破壊・縮小(ダウンサイジング)が上手くバランスを取っているのに対し、アルツハイマー病ではこのバランスが崩れ、脳神経を破壊し、縮小させる方向に傾いているんだそうです。そのバランスを崩している原因は、大きく分けると前述の3つ(①炎症、②栄養不足、③毒素)であり、更に36個の原因に細分され、その比重により、1型(炎症性)、2型(萎縮性)、3型(毒性)、更に1型と2型の混在した1.5型(糖毒性)の病態として現れるんだそうです。リコード法とは、端的に言うと、患者さん一人一人について、検査を行い、多くの潜在的な原因の中から何に対して防御反応を起こしているのかを確認し、その要因除去します。場合によっては、従来のアリセプト(コリンエステラーゼ阻害薬)等のお薬を併用して、既に溜まってしまったアミロイドβ自体を除去し、最後の仕上げが病気によって破壊されたシナプスを再構築する、この一連の治療方法です。
確かに、少し考えれば…、シナプスの成長と維持に必要なホルモンや、栄養素等のインプット情報が乏しくなれば、脳の巨大ネットワークの維持を諦め、戦略的にダウンサイズを行うのは当たり前です。APP(統合型依存性受容体)は、自分自身のシナプス削除命令を発動します。家計が苦しくなれば、節約するのと同じです。デフォルト回避。つまり、アルツハイマー病に罹った時に脳が行っているのは、究極の生き残り戦略なんです。生命維持に必要な機能だけを温存し、必要ない記憶の形成なんぞの贅沢品に、大事なエネルギーや資源を浪費させない。呼吸する事、体温を維持する事、若しくは話す方法を覚えている事と、昨夜、友人と再会した時の出来事(=新しい記憶)を覚えておくのと、どちらが大事か? 記憶、思考、理解、想像は犠牲にならざる得ないんです。HISAKOが、外来で、シミのレーザー治療を希望する患者さんに、「脳みそ(の維持)とシミの分解に使われる鉄と、体はどっちが大事だと考えますか?」という問いを良くしますが、それと本質は全く同じです。シミに対し、例え、同じレーザーを同じパワーで照射しても、貯蔵鉄のあるなるしで、その後の炎症性色素沈着に大きな差が出てしまいます。綺麗も認知症の治療も、基本は同じです。
アルツハイマー病になる方法
『アルツハイマー病~真実と終焉』から、アルツハイマー病になる方法をそのまま引用抜粋します。
これは、アルツハイマー病だけでなく、アトピー性皮膚炎やフケ(脂漏性皮膚炎)等の皮膚の病気を増悪させる手っ取り早い確実な方法であり、同時に、シワやシミ、薄毛等の様々な老化の兆候をお肌に確実に烙印する方法でもあります。優れた反面教師でありますが、「これって…、現代人の極々く普通の生活じゃない?」と思ってしまう自分が怖い。…あっ、でも、クリスピークリームドーナッツ! もう絶滅危惧種かと思いきや、先日ナショナルマーケットで試食販売していて、「へ~っ」と思ったら、ナント、トランジットでたまたま立ち寄った羽田空港でも山積みにして売っていました…。な、懐かしい!?(笑)。
3つの原因と対策~①炎症(感染、食事又はその他の原因による)予防と低下
何故、炎症を起こすのか?
炎症とは、感染や怪我等の、降って湧いたような災害?に対する自然な免疫システム(美容通信2016年7月号)です。南カリフォルニア大学神経生物学の教授カレブ・タック・フィンチによれば、炎症は異物の侵入に対する免疫システム反応の一部ですから、私達の祖先が二足歩行になり、樹上から降りてサバンナを歩くようになった時、これは物凄い利点として働きました。ばばっちい!モノを踏んづけても、尖ったモノで足を刺しても、病原菌がうじゃうじゃいる生肉を食べても、狩りの最中に怪我をしても、仲間と諍いを起こして傷を受けても、尚且つしっかりと生き延びる。生命を脅かす病原菌達に対し、強力に撃退するだけの強い炎症反応を獲得したからこそ、それが可能になったのです。
しかし、短期的には私達の生命を力強く守ってくれる炎症ですが、長期的には災いとなります。老化のみならず、癌や心血管疾患や関節炎、そしてアトピー性皮膚炎や花粉症等のアレルギー疾患、認知症(アルツハイマー病)、糖尿病、慢性疲労、肥満等の慢性疾患を齎すからです。寿命を多少犠牲にしてでも、繁殖力の旺盛な世代を犬死させない。私達が遺伝子の箱舟と言う生物学的な存在意義からすると、長老一人がハーレムを形成して長年に亘って子孫をじわじわ増やすより、短命でも多くの若者が子供をわさわさ作る方が、ずっと遺伝子の多様性を守る事が出来るからです。この様な一種のトレードオフ(=遺伝的変化)は、拮抗的多面発現と呼ばれ、非常にドライな印象を受けますが、ギャートルズの時代は、そもそも、悪魔に魂を売り渡したところで、その代償を支払わなければいけないほど長生きをしなかった(笑)から、別に人道的な問題にもなりませんでした。
炎症の原因となるトランス脂肪酸や糖の摂取を避ける
炎症は、感染がなくても起きます。
トランス脂肪や糖(美容通信2011年4月号)(美容通信2015年10月号)は、炎症誘発性の食品です。因みに、トランス脂肪とは、常温の時は液状である植物油が、水素を混ぜると軟質になる(トランスする)事から付けられた名前で、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等がその代表選手です。他にも特定の油の高温調理やマイクロ波加熱(電子レンジ)によっても多く発生したりします。また天然には牛、羊等の反芻動物のお肉や乳製品の脂肪にも含まれます。パン、ケーキ、ドーナツ、クッキーと言ったベーカリー、スナック菓子、生クリーム等には欠く事の出来ないパートナーであり、他にもフライドポテト、ナゲット、電子レンジ調理のポップコーンに、ビスケット…焼いた食品やファーストフードの至る所で、トランス脂肪は使われています。
また、グルテンや乳製品は、精々農耕が始まって(約1万年前)からの比較的新しい蛋白質で、これ等に対し、私達はきちんとアミノ酸まで代謝する能力が欠けている事が多く、胃腸のダメージ→腸漏れ症候群(リーキーガット)(美容通信2016年9月号)に発展する可能性が高い食品とされています。つまり、不完全な消化状態のまま大量な在庫として倉庫に山積みされ、遂には、その重みで床が抜けてしまう様子を想像して下さい。消化管に開いてしまったひび割れと言うか…微細な穴から、ロクに消化されていない状態の食べ物やらバクテリアの断端が、本来は立ち入る事が出来ないはずの血流にズブズブと混ざり込むのです。これ等の間抜けな一般人(闖入者)達を、免疫システムは外部からの病原体の侵入と勘違いして、総攻撃を仕掛ける。体の炎症反応の連鎖(美容通信2018年7月号)の始まりです。因みに、生麦事件ってご存知ですか? 幕末に武蔵国橘樹郡生麦村付近で、薩摩藩主島津茂久(忠義)の父・島津久光の行列に乱入した騎馬のイギリス人達を、供回りの藩士達が殺傷した事件ですね。尊王攘夷運動の高まりの中、この事件の処理は大きな政治問題となり、そのもつれから薩英戦争にまで発展しました。リーキーガットを生麦事件に当てはめてみますと、人間の体内で起こっている現象も、人間を巻き込んでしまう大きな社会現象も、似たり寄ったりなんですね。
以下は、グルテンを含む食品と、含んでいる事が多い食品です(ディビッド・パールマター博士のウェブサイトより)。
- グルテンを含む食品
小麦・小麦胚芽・ライ麦・大麦・ブルグル・クスクス・ファリーナ(穀粉)・グラハム粉・カムート マッツォー・セモリナ・スペルト小麦・ライ麦
- グルテンを含有している事が多い食品
モルト/モルト調味料・スープ・市販のブイヨンとだし汁・コールド カット・フライドポテト(しばしば冷凍前に小麦粉を振りかけている!)・プロセスチーズ・マヨネーズ・ケチャップ・モルトビネガー(麦芽酢)・醤油ソース/照り焼きのタレ・サラダドレッシング・人工カニ肉/ベーコン等、卵の代用品・タブーリ・ソーセージ・乳製品ではないクリーム・揚げ野菜/天ぷら・肉汁・マリネの漬け汁・インゲン豆のソース煮の缶詰・穀類・市販の調理済チョコレートやミルク・パン粉を塗した食品・果物の詰め物とプリン・ホットドッグ・アイスクリーム・ルートビール・エネルギー バー・トレール ミックス・シロップ・セイタン(グルテンミート)・ウィートグラス・即席のホット飲料・フレーバーコーヒーとフレーバーティー・ブルーチーズ・ウォッカ・ワインクーラー・ミートボール/ミートローフ・聖餐用聖餅(聖体拝領に使われる紙の様にペラペラに焼いた薄っぺらなパン)・野菜バーガー・焼きナッツ・ビール・オート麦(グルテンフリーの証明のない製品)・オート ブラン(グルテンフリーの証明のない製品)
炎症が糖毒性に起こっているような場合(1.5型のアルツハイマー病が相当)は、脳に対する直接的な損傷も大きな問題となります。お砂糖は、私達にとって非常に大切なエネルギー源ではありますが、過剰な糖は猛毒です。ですから、私達の体は、急激な糖の上昇に対し、素早く幾つものメカニズムを作動させて、血中や組織内の糖濃度を下げる様に働きます。インスリンは、その代表選手です。しかし、このインスリンは、実はアルツハイマー病の病態にも密接に関係しています。つまり、インスリンが出動して、上昇した血糖値を低下させてはくれるのは良いのですが、体としては、調子に乗って際限なく下げられても困るので、頃合いを見計らって、インスリンにお引き取り頂く必要があります。この時に働くのが、インスリン分解酵素です。ところが、この酵素、分解するのはインスリンだけではなく、アルツハイマー病では、脳に蓄積するアミロイドβも分解します。しかしながら、両者の分解を同時に行えるほど人手がある訳ではないので、インスリンとアミロイドβ、どっちが優先度が高い?って選択を余儀なくされ、当然、インスリンの分解に軍配が上がります。アミロイドβの分解は後回しになります。インスリンの効きが悪く、何時までも糖の処理にインスリンが大量に動員され続けなければいけない事態をインスリン抵抗性と言いますが、この自分で自分の首を絞める自傷行為を止めさせない限り、アルツハイマー病に歯止めをかける事が出来ません。
炎症性アルツハイマー病(1型)の特徴
HISAKOの様なApoE4の遺伝子を保有している人は、どちらかと言うとこの炎症性のアルツハイマー病になりやすいとされています。この炎症性のタイプは、新しい情報を記憶する能力がなくなる事に始まり、長く覚えていた事や、話す、計算する、字を綴る、文章を書くといった能力は保たれるとされています。そして、この炎症型のアルツハイマー病は、リコード法に最も早く反応する型でもあります。
- 検査値:CRP↑、A/G比↓、IL-6↑、TNF↑、インスリン抵抗性等の代謝とホルモンの異常
■ホモシステイン値↑:血管と脳にダメージを与える
ホモシステインは、血液中にあるアミノ酸の一種で、炎症のマーカーですが、栄養不足でも値が上昇します。つまり、2型限定ではなく、1型でも増加する検査項目です。
ホモシステインの代謝(美容通信2017年7月号)(美容通信2017年5月号)には、葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12
【目標】ホモシステイン 7μmol/L未満
■ビタミンB6、B12、葉酸は、ホモシステイン値を低く最適に保つ
ホモシステイン値を低く最適に保つ為には、ビタミンB6(美容通信2009年11月号)、葉酸(美容通信2017年8月号)、B12が、全て活性型で十分な水準にある事が重要とされています。私達の多くは、化学的に摂取したビタミンを活性型に変えられないので、活性型ビタミンを摂取するのが数値の低下の為には一番手っ取り早い方法なんです。
唯、注意しなければいけないのは、分子整合栄養医学(美容通信2007年3月号)的な立場からの最適値と、所謂、「病気」で治療を要するかどうかって意味合いでの”正常範囲内”は、違います。例えば、ビタミンB12の最適値は500~1500pg/mLですが、正常範囲内は200~900pg/mLです。明らかに正常範囲であるからと言って、十分に足りているかって話とは違うんです。
【目標】ビタミンB6 30~50μg/L 、葉酸 10~25ng/mL、ビタミンB12 500~1500pg/mL
■インスリン抵抗性:糖は、依存性の毒!
高インスリンと高血糖は、アンチエイジングの敵(美容通信2011年4月号)であり、美肌の敵!のみならず、アルツハイマー病の最も危険因子(美容通信2015年10月号)でもあります。出来れば食事全体で、グリセミック・インデックスGI(美容通信2011年4月号)が35未満に納めるのが基本です。同時に、栄養分の損失やAGE(終末糖化産物)(美容通信2015年10月号)の産生を減らす調理方法を選択する事も大切です。煮る/蒸す/炊く等の水を利用した湿式加熱や短時間調理、低温調理、又レモン/ライム/酢等の酸性の食材の使用で、AGEは減らせます。
【目標】 空腹時インスリン 4.5μIU/mL以下、HbA1c 5.6%未満、空腹時血糖値 70~90mg/dL
お砂糖の様な単純炭水化物を多く含むお食事、ブドウ糖果糖液糖が沢山入った加工食品や座りがちのライフスタイル、ストレスの多い仕事やお家での生活etc.からインスリン抵抗性になりますが、捨てる神あれば拾う神あり。DESS、つまり、食事、運動、睡眠、そしてストレスの軽減は、非常に有効な解決策にもなります。
*アルツハイマー病にならない為の食生活「ケトフレックス」について:
以下が、4大原則!
①ケトシース
ケトシースは、肝臓が脂肪を分解して、ケトン体(アセトアセテート、βヒドロキシ酪酸、アセトン)と呼ばれる特有の化学物質を産生するプロセスで、一番のエネルギー源である炭水化物が欠乏すると、生き延びる為にやむを得ず起動される代謝経路です。皇居、首相官邸、国会、官庁、赤坂日枝神社、市ヶ谷の方まで続いている有事に備えた地下経路みたいなもので、普段は、鉄格子で通行封鎖されています。βヒドロキシ酪酸は、ニューロンやシナプスにとって、非常に重要なBDNF(脳由来神経栄養因子)の産生を増やしてくれます。ケトーシスを促進するには、①低炭水化物食(糖類、パン、じゃがいも、白米、ソフトドリンク、アルコール、飴ちゃん、ケーキ、加工品等の単純炭水化物食品)を最小限にする、②適度な運動(早足歩きやもっと激しい運動を、150分以上/週)、③少なくとも12時間の絶食(晩ご飯から次の日の朝ご飯までの時間を12時間開ける!)の3つを守る事が大切です。その他は、MCT(中佐脂肪酸トリグリセリドオイル!)等の脂肪やオリーブオイル、アボカド、ナッツ等の不飽和脂肪酸も、軽やかなケトーシスの促進をしてくれます。
②フレックス
緩やかな菜食主義。唯、ブレデセン先生の本は白人向け!なので、緩やかなと言いつつ、体重1Kgあたり1gの蛋白質で十分と書いてありますが、以前美容通信(美容通信2016年6月号)でも特集しましたが、日本人はそれすらも難しい(笑)。お魚3オンス(約85g)には、約20gの蛋白質が含まれていますが、お刺身ではなくて、焼き魚にすると熱損傷分の0.6を掛けるなければいけないので、12gの蛋白質の計算になります。体重48Kgの人なら、12オンスのお魚さん(骨や内臓は勿論除きますよ!食べられる身で換算して下さいね!)。これを薬味程度って言い切っちゃう白人は凄いと思うのですが…、まあ、お国柄って事でご勘弁をでしょう。因みに、スーパーで売ってる鮭の切り身さんは、骨付き!で70gくらいです。
③朝ご飯まで、12時間開ける。
つまり夜7時に晩ご飯を食べ終えたら、それ以降はスナック菓子等は食べず、朝7時に朝ご飯を食べようってだけの話です。これを絶食!絶食!と言う感覚は、まあ前述の薬味同様摩訶不思議な気もしないでもない(笑)ですが、夕食後のカウチポテトは、就寝前のインスリン値を急上昇させます。これはインスリン抵抗性の大いなる原因となるだけでなく、睡眠や免疫機能に役立つメラトニン(美容通信2017年1月号)や成長ホルモン(美容通信2018年9月号)を抑制し、体の修復を妨げます。更に、12時間の絶食は、脳細胞を含めた細胞を構成する成分をリサイクルし、ダメージを受けた蛋白質やミトコンドリアを破壊する、自食作用(美容通信2017年7月号)を促し、細胞の再生にプラスに働きます。絶食(美容通信2016年3月号)は、当たり前ですが、ケトーシスを促進します。
④リーキーガットを予防し、腸内フローラ(微生物叢)を最適化する。
多くの人にとって、「腸内フローラ(美容通信2012年8月号)を最適化する」≒「グルテンや乳製品等の過敏性が出る食品を避ける(美容通信2016年9月号)」と言う図式が成り立ちます。乳製品、乳製品って連呼してますが、これは悪までも牛の!です。ラクダのミルク(美容通信2018年3月号)ではありません。勿論、リーキガットが終息したら、プロバイオテイクスやプレバイオティクス等(美容通信2016年2月号)(美容通信2018年5月号)(美容通信2013年8月号)で、腸内フローラを最適化するのをお忘れなく。
■炎症について
- C反応性蛋白(CRP):あらゆるタイプの炎症に反応して、肝臓で産生されます。炎症には必ず原因がありますから、糖分・単純炭水化物(ジュース・果物etc.)の摂り過ぎ、リーキーガット(腸漏れ症候群)(美容通信2016年9月号)、グルテン感受性、口腔内の不衛生(美容通信2018年1月号)、特定の毒物(美容通信2016年4月号)、その他の多くの可能性から、発生源を究明しなければなりません。
- 血中アルブミン対グロブリン比(A/G比):炎症の補完的指標です。
- 赤血球中ω6脂肪酸対ω3脂肪酸比:3未満に留めます。ω6は炎症性で、ω3(美容通信2010年6月号)は抗炎症性の脂肪酸です。
【目標】高感度CRP(hs-CRP) 0.9mg/dL未満、アルブミン 4.5g/dL、A/G比 1.8以上、ω6/ω3比 0.5~3.0、IL-6 3pg/mL未満、TNFα 0.6pg/mL未満
*リーキーガット(腸漏れ症候群)についての補足:
リーキガットは物凄くありふれた全身性の慢性炎症の原因であり、慢性炎症はアルツハイマー病の原因にもなります。
胃腸管を覆う細胞同士は、非常にタイトな密着結合をしているので、食べ物が腸管から漏れ出してしまう事はなく、腸管の中に留まっています。通常は、蛋白質はアミノ酸まできちんと分解(消化)されないと、腸内膜細胞に運ばれ、そこから血流に乗り、栄養素として体内の細胞達に行き渡る事はありません。
しかし、グルテン過敏症や、殺虫剤等に含まれる化学物質、清涼飲料水、アルコール、砂糖、加工食品、防腐剤、炎症、慢性ストレス、イースト菌、アスピリンやアセトアミノフェン等の薬剤等により、本来ならタイトな密接結合で漏れるはずのない胃腸管に穴が開いてしまうと、当然、あり得ないものがそこから漏れ出てします。つまり、アミノ酸以外の…グルコースやフルクトース(果糖)の様な単糖分子や、ビタミン類も血流に入ってしまうって事です。それどころか、もっと大きな断片!も、血液の中に零れ落ちてしまいます。例えば、細菌やイースト菌、若しくはその断片です。これ等のあり得ない!×あり得な~い!!!!!!!!!!!!!!!は、免疫系により異物と認識され、1型アルツハイマー病の主な病因である炎症が、メラメラ燃え上がります。これは、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎等の、皮膚の炎症と同じですね。
問題は、これだけではありません。免疫細胞の中には、うっかり八兵衛の様な輩も混じっていますから、「侵入者と思いきや、実は自分自身の組織だった!」なんて、巻き添え攻撃を仕掛けてしまう事も無きにしも非ず。この結果、自己免疫状態と言う、低レベルの炎症が遷延する事態に陥ります。これが高じれば、多発性硬化症や慢性関節リウマチ、エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)等の自己免疫疾患へと繋がり、アルツハイマー病の原因にもなります。正に、踏んだり蹴ったりです。
*血液脳関門透過性についての補足:
リーキーガット同様に、血液脳関門と言うバリアが損なわれると、細菌やウイルス、真菌等の病原菌が脳みそに侵入します(美容通信2018年7月号)。髄膜炎や脳炎の様な活動性感染症ではなく、もっともっと低レベルの病原体、例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリスやプレボテラ・インターメディア、フソバクテリウム・ネクロフォーラムの様な口腔細菌(美容通信2013年8月号)や、単純ヘルペスウイルス(美容通信2005年7月号)、最近メキメキと存在感を露わにし始めた梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ等々で、炎症はゆっくりと緩慢に慢性的な炎症反応を引き起こします。実際、アルツハイマー病では、血液脳関門の異常が、病気の極めて早い時期から見つかるそうです。
*グルテン感受性についての補足:
腸と脳みその繋がりは、皮膚以上に認知力にも関与します。
胃腸管の、特に細胞間の密着結合は、グルテンにより損傷されます。これは前述のリーキーガットの原因のひとつであり、リーキーガットはアルツハイマー病に繋がる慢性炎症を引き起こす可能性があるのです。元を辿れば系の、関係ですね。
*自己抗体についての補足:
認知機能の低下には、特に脳みその蛋白質を攻撃する自己抗体は重要な要因です。
■睡眠と睡眠時無呼吸症候群
睡眠は、複数のメカニズムを介して認知力に影響します。更に、糖尿病や肥満、心血管疾患リスクを増大させ、アルツハイマー病の全ての危険因子を増大もさせます。また、寝不足すると、糖や不健康な脂肪、その他の不健康な食品がたまらなく食べたくなる!ものですが、代謝プロファイルがアルツハイマー病を誘発するように変化します。
出来るだけ1日8時間に近い睡眠を取る様に心掛け、(認知機能を損なわせる)睡眠薬は使わない様にする事が肝要です。
質の良い睡眠の環境(美容通信2015年8月号)を整えてあげる事は前提として必須です。寝るホルモンである「メラトニン」は光刺激で産生が止まってしまう(美容通信2017年1月号)って理由もありますが、それだけではなく、年を取っても下がってしまいます。メラトニンのサプリメントは、ホルモン剤であって睡眠薬ではありませんから、ベンゾジアゼピン系のお薬の様な鎮静効果はありません。しかし、これらの睡眠薬に付き物の、感情を弱め、脳を麻痺させるような代物ではなく、生理的な睡眠を回復してくれます。快眠とすっきりとした目覚めがメラトニンの特徴ですが、服用量が多過ぎると、数時間は良く眠れても、夜中に起きて、その後眠れなくなってしまいます。その時は、単純に減らして下さい。
過量のメラトニン服用以外で、真夜中に起きてしまう理由は色々上げられますが、大きなものとしては、プロゲステロン(美容通信2010年8月号)の減少があります。閉経前後では、エストラジオールの数値に比べて、プロゲステロンの数値がぐ~んと下がってしまう事は珍しい事ではありません(美容通信2015年9月号)。この様なアンバランスがあると、不安や睡眠の質の低下、頭がぼんやりとしてクリアさに欠ける!ようになります。
プロゲステロンは女子限定!と考えられがちですが、上図の代謝の経路を見てもらえば分かる通り、テストステロンの前駆体です。プロゲステロンの低下は、男女問わず、睡眠障害の大いなる原因になります。
その他、真夜中に目が醒めてしまう原因としましては、うつ病やストレス、胃食道逆流症等の様々な理由も考えられます。
呼吸が周期的に停止する睡眠時無呼吸は、半覚醒状態と同じで、細胞修復に必要な睡眠の質が得られず、認知機能の低下の重要な要因になります。
【目標】AHI(無呼吸低呼吸指数)5イベント/1時間未満
■コレステロール
コレステロール値(美容通信2017年9月号)は、高いよりも低い事の方が問題となります。コレステロールは、脳細胞を含め、細胞膜の重要な部分を構成しているので、総コレステロール値が150未満では、脳萎縮を患う可能性が大きくなってしまいます。
コレステロールに関して大事なのは、酸化LDL、小型高密度LDL、或いはLDL分子数を、炎症の程度と一緒に測定する事が推奨されます。
【目標】LDL-p(粒子数)700~1000、若しくはsd-LDL 20mg/dL未満、またはLDLの20%
■ビタミンEは、細胞膜を保護する
ビタミンE(美容通信2009年12月号)は、トコフェロールやトコトリエノール等の一連の化合物であり、これらは脂肪細胞膜と相互作用し、フリーラジカルを除去。細胞膜をダメージから保護してくれます。ビタミンEは、単剤療法の臨床試験に於いて、多少ではあるものの、認知機能の低下を遅らせる事が示された、非常に少ない成分のひとつです。
【目標】ビタミンE(αトコフェロールとして測定の場合)12~20mcg/mL
3つの原因と対策~②ホルモン、栄養素、栄養物(食品)を最適化する
慢性的な、及びインスリン抵抗性に伴う炎症が取り除かれれば、アミロイドを蓄積させていた脅威が取り除かれ、これで脳のダメージが阻止されます。アトピー性皮膚炎(美容通信2007年4月号)を増悪させる様々な要因、例えば、アレルギーの原因を放置した(美容通信2016年9月号)(美容通信2016年3月号)(美容通信2005年3月号)り、不必要に汗を搔く事を避けた(美容通信2017年12月号)り、洗顔等の不適切なケアで皮膚の常在菌のバランスを崩し(美容通信2019年3月号)たり、遺伝的素因(美容通信2014年11月号)を増悪させてしまうような悪事!を、除去する。そして起こってしまった炎症を、従来のステロイド外用薬や漢方薬(美容通信2016年10月号)、抗ヒスタミン剤等(美容通信2016年1月号)に併せ、高濃度ビタミンC点滴(美容通信2016年11月号)や、水素(美容通信2017年10月号)(美容通信2015年2月号)、EPA(美容通信2010年6月号)を含む食材やサプリメントの内服の他、オゾン療法(美容通信2017年4月号)、プラセンタ注射(美容通信2009年2月号)ビタミンD(美容通信2013年3月号)やCDPコリン(美容通信2016年7月号)の内服、副腎機能の改善(美容通信2017年5月号)で自らのステロイド合成能を高めたり、局所的に羊水由来のローション(美容通信2013年6月号)を使う。…端的に言えば、炎症を抑制するとは、土砂降りの雨の中で傘を差すというイメージですね。
傘を差して雨を凌げるようになったら、次が、土砂崩れで壊れた道路の修復です。つまり、ホルモンや、栄養素、栄養物(食品)を最適化する事により、脳の働きを高めなければいけません。シナプスが強くなれば強くなっただけ、アミロイド班の破壊に対抗出来ます。これって、皮膚も同じですよね。
脳のダメージに対する抵抗力を高める
特定のホルモン、栄養素、栄養のある食品等、神経とシナプスの補助因子が欠乏していると、当たり前ですが、脳みそだってロクに働きはしません。
シナプスとニューロンを強化する化合物には、脳由来神経栄養因子BDNFがありますが、これは嬉しい事に運動で増加します。エストラジオール(美容通信2010年8月号)やテストステロン(美容通信2015年6月号)等のホルモンは、ホルモン製剤の処方や、エクエル(美容通信2016年8月号)やプラセンタ(美容通信2009年2月号)の様なもどき、またその働きを高めてくれるサプリメントを摂取(美容通信2015年11月号)する事で良い状態に保つ事が出来ます。ビタミンD(美容通信2013年3月号)や葉酸(美容通信2017年8月号)等もサプリメントでの補充(美容通信2007年3月号)が可能です。
萎縮性アルツハイマー病(2型)の特徴
炎症性よりも発症が遅いですが、炎症タイプと同様に、新しい記憶の喪失はありますが、言語、執筆、計算能力は保たれています。1型と異なり、炎症性のマーカーは正常よりも低く、その代わりに、脳シナプスの総合的なサポートが枯渇しています。ですから、これ等の補充を行わずにアミロイドβを除去すると、CFOをクビにして浪費を続けるようなもので、最終的にはより規則性の低いダウンサイジングに陥る可能性=重大な認知能力の低下を来たす可能性があります。
- 検査値:甲状腺ホルモン・副腎ホルモン・エストロゲン・プロゲステロン・テストステロン・プログネノロン等のホルモン値↓、ビタミンD↓、インスリン値↓、ホモシステイン値↑
■ビタミンD3は、遺伝子のスイッチをonにする
ビタミンD活性(美容通信2013年3月号)の減少は、認知機能の低下に関連します。ビタミンDは、ビタミンD受容体を介して、脳みそのシナプスの生成と維持に重要な遺伝子を含め、核内の900以上の遺伝子のスイッチをonにします。つまり、ビタミンDが不足していると、適切な遺伝子が正しく活性化されません。
【目標】25(OH)ビタミンD(D3)50~80ng/mL
*至適用量の算出の仕方:例・現在の値20ng/mLで、目標値を50ng/mLとした場合、50-20=30に×100した値は、3000。つまり、3000IUのビタミンD3のサプリメントを内服します。
■ビタミンB1(チアミン)は、記憶を形成する
チアミンは、記憶の形成に必須な栄養素ではありますが、チアミン分解酵素を含有する紅茶、コーヒー、酒、生魚等を食べたり飲んだりすると、低下する恐れがあります。
【目標】血清チアミン 20~30nmol/L
■ホルモン状態
多くのホルモンは、特にシナプスの形成と維持をサポートする事で、認知機能の最適化に重要です。ホルモンのレベルが低下し、シナプスの破壊にバランスが傾くと、認知力は低下します。
- アルツハイマー病では甲状腺機能が低下する
甲状腺機能(美容通信2015年3月号)は、代謝速度に影響する為、心拍数や頭の冴えにも影響します。それだけでなく、何時間眠るか、寒いか?暑いか?、デブ化しやすい(美容通信2011年10月号)か、うつ病になるかどうか、又、その他の多くの健康パラメーターに影響します。認知症や軽度認知機能障害がある場合は、殆どの場合で、甲状腺機能が低下しています。
遊離T3は、活性型ですが、寿命が短い甲状腺のホルモンです。遊離T4は、基本的に約1週間持続する貯蔵型のホルモンです。リバースT3は、甲状腺の活性化を阻害します。ストレスと共に増加し、T3の有効性を下げてしまいます。従って、遊離T3とリバースT3の比率(美容通信2016年11月号)は、甲状腺の機能を有効に反映する測定値となっています。
【目標】TSH 2.0μIU/mL未満、FT3 3.2~4.2pg/mL、FT3/rT3比 20以上、ET4 1.3~1.8ng/dL
- 認知症を予防するエストロゲンとプロゲステロン
エストロゲン(美容通信2010年8月号)は、APP切断酵素を活性化し、シナプスをサポートするsAPPαとαCTFの合成に関与し、認知症の予防に於いて決定的な役割を果たしています。論文によれば、40歳までに卵巣を切除(←わ、私だ!)し、ホルモン補充療法を行っていない女性は、アルツハイマー病のリスクが2倍に跳ね上がるんだそうです。エストロゲンとプロゲステロン(美容通信2015年9月号)だけでなく、エストラジオールとプロゲステロンの比率も重要(美容通信2015年7月号)で、この比率が高い場合は、物忘れと記憶力の悪さに関連します。
【目標】エストラジオール 50~250pg/mL、プロゲステロン 1~20ng/mL、エストラジオール/プロゲステロン比 10/100
- ニューロンの生存をサポートするテストステロン
テストステロンは、男性にも女性にも両方に存在しますが、男性の方がより高濃度で、ニューロンの生存をサポートします。テストステロンの濃度別に5段階に男性の被験者を分けた場合、濃度が一番低いグループに属する人は、アルツハイマー病のリスクが高い事が報告されています。
【目標(男性)】総テストステロン濃度 500~1000ng/dL、遊離テストステロン 6.5~15ng/dL
- ストレス関連~コルチゾール、プレグネノロン、DHEA
ストレスは、認知機能が低下する最も重要な要因の一つとされています。特に、3型アルツハイマー病では、急速な認知機能の低下に繋がり、その始まりは大きなストレスが掛かった時期と重なる事が多いとされています。
慢性的なストレスは、HPAアクシス(視床下部-下垂体-副腎皮質軸)の機能不全に繋がる可能性があります。これは、かつて『副腎疲労』(美容通信2015年4月号)(美容通信2017年5月号)と呼ばれていた病態に相当します。副腎は、感染や毒物、睡眠不足等のストレスに対処するのに十分なストレスホルモンを産生出来ず、認知機能の低下が増悪する可能性があります。更に、急激なコルチゾールの減少は、それ自体が海馬ニューロンの喪失に繋がります。
プレグネノロンは、全てのステロイドホルモンの元となる、マスター・ステロイド ホルモンです(美容通信2015年7月号)。エストラジオールやテストステロン等の性ステロイドと、コルチゾールやDHEA等のストレス ホルモンで、全て出所がプレグネノロンです。ストレスが高いと、プレグネノロンは、ストレスホルモンの産生に為に使われ、性ホルモンまでにお鉢が回らず、steel steroidsと呼ばれる現象が起こり、EDになったり、生理が止まってしまいます(美容通信2010年9月号)。
プレグネノロンには、記憶をサポートし、神経保護作用があります。ですから、このプレグネノロン不足は、認知機能の低下の危険因子です。
【目標】コルチゾール(朝) 10~18mcg/dL、プレグネノロン 50~100ng/dL、DHEAs (女性)350~430mcg/dL、(男性)400~500mcg/dL
*コルチゾールの血液検査は、日内変動が不明で、且つ測定出来るのが血液中を循環しているホルモン濃度のみで、組織内のホルモン濃度や組織が潜在的に利用出来る量までは分からない。その為、唾液での検査が推奨されます(美容通信2015年4月号)。
■細胞が機能する為に必要なエネルギーは、ミトコンドリアが供給!
ミトコンドリア(美容通信2017年7月号)は、細胞が機能する為に必要なエネルギーを供給してくれる小さな電池です。しかし、この大切な電池に損害を与えてしまう多くの化学物質が世の中には溢れています。抗生物質は、その代表格です。元を辿れば、ミトコンドリアは、私達の体に寄生した細菌の子孫ですから!苦手で当然です。高脂血症の鉄板治療薬のスタチン類、アルコール、パーキンソン病の際に処方されるL-DOPA、抗真菌薬のグリセオフルビン、アセトアミノフェン、アスピリンやイブプロフェン等の非ステロイド性の抗炎症薬、コカイン、メタンフェタミン、HIVやAIDS等のウィルス感染の際の治療薬であるAZT等々です。因みに、ApoE4って、アルツハイマー病に非常に関係性の深い遺伝子は、ミトコンドリアの損傷と関連する可能性があるとされています。ミトコンドリアの機能を的確に評価する簡単な検査方法はありませんが、以前ミトコンドリアの特集で取り上げた有機酸検査等は間接的に評価の足しにはなるでしょうが…まあ、危険なものには近寄らない=暴露されない様に気を付けるしかありません。
3つの原因と対策~③毒素を駆除する
銅や水銀等の有害重金属(美容通信2017年8月号)や、カビが代謝の過程で産生する有害な毒素であるマイコトキシン等の生物毒素が脳に侵入し、挙句、ニューロンが損なわれてしまったら、もうこれは大事件です。脳はニューロンを保護する為に、アミロイドをガンガン増産体制に入ります。
しかしながら、私達がこの世界で生きている以上、デメントゲン(認知症発生要因)である毒素の存在にすら多くの場合気付かず、避けて通る事は至難の業に近いのが実情です。私達は毒素を吸入し、摂取し、皮膚を通して吸収し、生化学反応の副産物として内因性の毒素を産生し、毒性のある磁場と放射線に曝されています。
「シナプスの形成・維持」と「シナプス再構成・リモデリング」と言う一見相反する現象は、コインの裏と表の様な存在で、両者のバランスが取れて、初めて正常な機能が維持出来ます。このバランスを負の方向に傾ける可能性があるデメントゲン(認知症発生要因)としては、高脂血症治療薬の鉄板処方されるスタチン類(美容通信2017年9月号)が挙げられます。3型のアルツハイマーの患者さんで高頻度で認められる、もう一つのデメントゲンは、一連のマイコトキシン類で、黒カビやアスペルギルス、赤カビ、ケタマカビ等のカビの産物です。実際、カビが原因となっていると思われるアルツハイマー病は増加の一途を辿っており、アメリカだけでも50万人以上と推定されております。
アミロイドを大量生産する、そもそもの理由を取り除く
暴露している毒物を特定(美容通信2016年4月号)し、除去したら、デトックスしましょう。グルタチオン(美容通信2018年7月号)やバイタルデトックスの様なサプリメントや点滴(美容通信2010年10月号)、キレーション(美容通信2016年11月号)を併用する事も大事ですが、普段からアブラナ科のお野菜(美容通信2010年8月号)等のデトックスに有効な食品を摂り、綺麗な水を補給する等の日常も生活も忘れてはいけません。
毒物性アルツハイマー病(3型)の特徴
遺伝子ApeE4の関与はありません。比較的若い時に、しばしば大きなストレスに続いて、911の同時多発テロで一気に崩壊したワールドトレードセンター・ツインタワーの如くに、番号や会話、整理等を含めた認知的困難が、古い記憶の喪失と同時に、瓦解します。3型の患者さんの脳からアミロイドβのみを除去する事のみに専念すると、一種の防衛反応が損なわれるのと同じなので、毒物暴露が継続している場合は…恐ろしい事が起こります。ギャ~っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 例が悪いですが、ガサガサ踵(美容通信2009年6月号)の角質除去♬って、軽石とかヤスリで削っちゃう人が未だにおりますが、あれと同じ。生体防御として、態々角質乗せてるんだから、原因も取り除かないで削り落とせば、もっと体は必死に角質作って防御しようとするじゃ~ん。
- 検査値:脳の多数の領域に萎縮と、MRIのFLAIR画像(神経の炎症と血液漏出)。Cu/Zn比↑、ストレス反応系であるHPAアクシスの機能障害(以前、「副腎疲労症候群」(美容通信2017年5月号)(美容通信2015年4月号)と呼ばれていたものが相当する)があり、コルチゾール↓・rT3↑(美容通信2016年11月号)・FT3↓・プログネノロン↓・エストラジオール↓etc.、水銀やカビが産生するマイコトキシン等の有害化学物質の血中濃度↑
■金属について
- 銅が過剰で、亜鉛が少な過ぎると、危険!
ミシガン大学のブルーワー教授によれば、老化は低亜鉛値と関連しますが、アルツハイマー病では更にその値が低く、更に更に、3型の毒物性に至っては、値は非常に低くなり、通常な人の半分程度しかないそうです。
亜鉛(美容通信2011年4月号)は、インスリンの合成、貯蔵及び放出には必須ですから、これが不足すれば、アルツハイマー病に極めて特徴的とされる、インスリンシグナル伝達が低下します。更には、炎症の源である自己抗体値も上昇します。自己抗体は、酸化ダメージと老化を酷くするだけでなく、ホルモンと神経伝達物質のシグナル伝達を弱め、毒物に対する感受性を飛躍的に高めてしまいます。
【目標】銅/亜鉛比 0.8~1.2、亜鉛 90~110mcg/dL
- Mg
Mgは、脳機能にとって極めて重要ですが、脳の細胞機能に最適なMg濃度に達するには…、残念ながら、食事だけでは難しいとされています。
【目標】赤血球中のMg値は、血清中の濃度よりも正確な値なので、こちらがオススメ。赤血球Mg 5.2~6.5mg/dL
- セレンとグルタチオン
グルタチオン(美容通信2018年7月号)の値が低いと、炎症や毒性、シナプスのサポートの喪失、つまりアルツハイマー病の全てのタイプの原因となる可能性があります。セレン(美容通信2015年11月号)は、グルタチオンがフリーラジカルの除去に使い果たされしまった時に、グルタチオンのリサイクルに必須な金属です。それ故に、セレンの減少は認知機能の低下にも関わっているんです。
【目標】血清セレン 110~150ng/mL、グルタチオン(GSH) 5.0~5.5μmol/L
- 重金属
- 水銀:水銀(美容通信2006年11月号)は、アルツハイマー病に特徴的なアミロイド班や神経原線維変化誘発するだけでなく、メチル水銀(美容通信2017年5月号)もフリーラジカルを除去してくれるグルタチオンを破壊します。
- 砒素・鉛・カドミウム:砒素は、しばしば、3型(毒物性)アルツハイマー病で認められる視床下部-下垂体-副腎皮質軸にも影響を及ぼします。
【目標】全て50%未満(Quicksilver Scientific社)
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
関連ページ
関連するHISAKOの美容通信をピックアップしました。
来月号の予告
プチ整形と、メスで切る本格整形の中間、若しくは、いいとこどり?
<糸リフトで、低侵襲の鼻形成!>です。