HISAKOの美容通信2016年5月号
リンパ浮腫手術後の脂肪減量~ホルモン治療編
子宮癌や乳癌の術後に発生するリンパ浮腫の治療の鉄板は、保存的治療と外科的療法の併用です。 これらによりリンパ浮腫自体は少なからず改善しますが、特に外科的な手術(リンパ管-静脈吻合手術や、遊離血管柄付きリンパ節-リンパ管移植手術等)については、脚については手術後不満を訴える患者さんが殆どです。 これは当然と言えば当然な話で、リンパ浮腫自体は可なり改善していても、長年のリンパ液の貯留による脂肪組織の増大と言う合併所の治療がなされていない為に、足が細くならない=リンパ浮腫が治らない(完治しない!)と誤解している事が原因です。 加齢及び医原性の理由で、崩れてしまったホルモンバランスを整える事で、効率良く、残存した脂肪組織を減量(燃焼)する方法を提案します。 特に、代謝のホルモンである甲状腺ホルモンにつきましては、甲状腺と副腎疲労(アドレナルファーグ)の関係に言及しています。
子宮がんや乳がん術後に発生する、リンパ浮腫は、一旦発症すると、非常に治療に難儀します。 リンパ浮腫歴45年!のHISAKO自身の経験も交えての、<リンパ浮腫手術後の脂肪減量(燃焼)~ホルモン治療編>です。
再発の心配しながら、心置きなく手術は受けられない。
殆ど、2年に1回の恒例行事と化した、HISAKOのリンパ浮腫の手術です。今回で5回目かな。初回のリンパ管-静脈吻合手術(美容通信2012年4月号)で畑を耕し、次に遊離血管柄付きリンパ節-リンパ管移植手術(美容通信2014年3月号)で、種イモは撒いた。後は、収穫の為のメンテナンス。謂わば、農家さんで言うなら、お水を上げたり、温度管理をしたり、害虫駆除、肥料を上げる等々の、お世話作業です。前回、そして今回のリンパ管-静脈吻合と脂肪吸引は、収穫の為の日々の農作業に相当します。実りある人生の為には、まだまだ、こつこつ、恒例行事としての手術は続けざる得ないのでしょう…。。
唯、再びグレーゾーンを彷徨っているHISAKOにとって、安心してこの恒例行事と化した手術を受けられるかどうかは、術前に行うPET-CT検査の結果次第。光嶋先生に怒られちゃうかもしれないけど、命あっての物種ですからね、ホント。
提携しているペット検査屋さん(北新横浜・ゆうあいクリニック)で、昨年も術前検査(2015.7.23)しました。以下が結果です。
[所見]
- 臨床情報 子宮癌術後、化学療法、放射線治療後。
- 所見
F-18 FDGの投与量は182MBq、投与時の血糖値は88mg/dlでした。前回PET(2014.8.10)と比較しました。
子宮癌の再発や転移、他の悪性腫瘍や活動性病変を疑う明らかな異常集積は認められません。
消化管への集積が全体的にやや目立ちますが、癒着や蠕動運動などの影響と思われます。その他、脳、口蓋扁桃、心臓、肝臓、尿路系に生理的な集積が認められます。
・CT所見
頭頸部に明らかな異常所見は認められません。
両肺に明らかな異常所見は認められません。縦隔に明らかな腫大リンパ節は認められません。胸水はありません。
肝S4に嚢胞を認める他、肝内に明らかな病変は認められません。その他、上腹部臓器に明らかな異常は認められません。
腹部傍大動脈域に、明らかな腫大リンパ節は認められません。
子宮、卵巣摘出後です。腹水が貯留しています。骨盤内に明らかな腫大リンパ節は認められません。
- 画像診断
子宮癌の再発や転移を疑う明らかな異常集積は認められません。
- コメント
ご依頼ありがとうございました。
脂肪吸引後の3〜4ヶ月ヶ月位は、正直、しんどかったぁ。
幾ら、両脚で約600gのチャラ過ぎる量しか吸引してないとは言え、畑にリンパ節移植って名の種イモは植えたけれど、十分に収穫を享受出来る程にはまだまだ全然育ってない段階です。排水路が未だに効率の悪い毛細リンパ管頼りって現状では、健康体の脂肪を吸引(美容通信2004年10月号)するのと異なり、術後に必発する浮腫みを、当たり前ですが、処理し切れません。元々、リンパ浮腫の患者さんのベースには、長い間のリンパ液の貯留による線維化もありますしね、人工的な、所謂”急性皮膚炎”(美容通信2011年1月号)様の症状が、脂肪吸引した以上の広範囲に出現します。”蜂窩織炎”の様にバイ菌に餌食にされた挙句のお話ではないので、全身的にお熱がば~んなんて上がる事もなく、見た目的には、患肢である足が、割りと広範囲に、何とはなしに赤くて熱を持っていている程度の地味さ加減。しかしながら、急激に溜まった大量のリンパ液で皮膚が引き伸ばされて起こる為、ちょっと重苦しい様な、鈍痛っぽい、張った感じがず~っと続きます。それも、所謂正統派の”急性皮膚炎”と異なり、皮膚の下に広く広がる脂肪吸引をした領域が、炎症反応(第一期)→肉芽形成(第二期)→線維増殖(第三期)→安定期(第四期)と、傷がある程度落ち着く(美容通信2004年5月号)(美容通信2013年4月号)まで、延々と3~4ヶ月間に亘り続くのです。
通常の”急性皮膚炎”ならば、何時も以上にしっかり圧迫に留意して、ロキソニンの様な消炎鎮痛剤を飲んで、只管、診療の合間をみてはマッサージを根気良くし続ければ、1~2週間で終わりが見えてきます。ところが、リンパ浮腫の患者さんに於ける脂肪吸引の場合は、殆どがリンパ管静脈吻合術を同時に施行するのが一般的ですから、緩めの圧迫を余儀なくされます。
「折角移植した種イモ(リンパ節)が、水没して、根腐れ起こした挙句に、死んじまうんじゃないのか?」と、激しい不安に苛まれつつ、ロキソニンをお八つ代わりにぼりぼり齧り、不愉快な痛みに疲労し切った3~4か月間。予想はしてはいましたが、正直、しんどかったぁ。あの時は、光嶋先生には本当に申し訳ないんですが、手術をした事を、マジ、後悔しました。
…喉元過ぎれば、熱さだって忘れちゃうのが人間の性。唯、結果が伴うとなれば、1年も経てば、又したくもなると言うもの(笑)。で、又、手術受けちゃったんですけどね。でも、やっぱりしんどかった! この苦境を少しでも軽減する。私のライフワークの一つは、リンパ浮腫手術後の脂肪減量なんです。
脂肪減量作戦として、①キャビテーションで脂肪細胞をぶっ壊す(美容通信2012年4月号)、②今流行の糖質制限(美容通信2014年3月号)、③糖質制限ダイエットの欠点を補うAC BODY(美容通信2014年3月号)と、特集を組んで取り上げて来ましたが、今月号では、④として、脂肪燃焼をUPさせる為のホルモン補充療法、特に甲状腺ホルモンについて考えてみようと思います。
ホルモン補充療法の概略
代謝に関与するホルモンは、年齢と共に分泌が低下します。リンパ浮腫の患者さんは、乳癌や子宮癌の治療により、低下に更に加速が加わる場合があります。血液や唾液検査により、明らかな低下を認めた場合、甲状腺ホルモン、男性ホルモン、プロゲステロン等のホルモンを補充する事で、代謝を改善し、リンパ浮腫によって余計に蓄積してしまった脂肪の燃焼を促進(美容通信2011年10月号)します。
エストロゲン
ホルモン依存性の癌でなければ、若くして子宮癌で広汎全摘手術を受けた患者さんに、殆どルーチンで処方されるのが、プレマリンの様な合成のエストロゲン製剤(美容通信2010年8月号)です。しかし、この合成のエストロゲン製剤は、確実に太ります。実際患者さんの中には、あまりの体重増加に嫌気がさして、服用を中止する患者さんも結構いるのも事実です。卵巣を摘出した事による急激なエストロゲンの低下による、謂わば医原性の更年期障害の緩和目的に処方しているだけの保険のお薬ですから、合成物の弊害を熟知している医者共は、患者の申し出を「これ幸い!」と、喜んで処方を中止します。
”天然”の生物学的同一ホルモン(ヒト固有ホルモン=バイオアイデンティカル(バイオアベイラブル)ホルモン=天然(ナチュラル)ホルモン)には、そんな副作用はありません。大きな声で繰り返しますが、太りません。しかしながら、日本の保険医療制度は、病気!を直す為のものであって、患者さんのクオリティオフライフを上げるものではありません(←そんなと広範囲までカバーしていたら、財政状態が破綻します! しかし、本当の意味ではこの様な予防医学に投資をする方が、病気になってから治療するよりも、はるかに経済的なコストは下がるはずなんですが…)から、当然、保険診療の範囲内で診療を行っているお医者さん達は、敢えて天然物について言及すらしようともしません。
下図は、お馴染みのホルモンの代謝経路図です。
エストロゲンには3種類の、下図の様に、エストロゲン性の強度の異なるホルモンがあります。エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)の3つです。
E2が一番強力なエストロゲンで、現役女子時代に一番多く作られるホルモンです。作用としては、下記が挙げられます。
- 善玉コレステロールであるHDLを増加させる。
- 悪玉と罵倒されるLDLと、総コレステロールを減少させる。
- トリグリセリド類、まあ中性脂肪って奴ですわな、これを減少させる。
- 骨構造の維持を手助けする。
- セロトニン分泌を増加させて、ハッピーな女子にしてくれる。
- 疲労感を減少させてくれる。
- 抗酸化剤の一つでもある。
- 記憶の保持を手助けしてくれる。まあ、ボケ防止って事だわな。
- カルシウム、マグネシウム、亜鉛の吸収を手助けしてくれる。
ところが更年期を過ぎて卵巣機能が衰えると、子宮癌の場合は卵巣も併せて全摘出を行うので、卵巣機能は一気に廃絶してしまうのですが、左図の様に、今まではE2の陰で注目を殆ど浴びることのなかったE1が、相対的に主要なエストロゲンとなります。濃度が上昇すると乳癌のリスクが上がると、忌み嫌われているE1ですが、正確には、上図のホルモン代謝経路を見て貰えば分るように、きちんと代謝が出来さえすれば、ホルモン依存性の癌にはなりません(美容通信2015年9月号)。まあ、自分の代謝がどうなっているのかをきちんと把握する事は、ホルモン補充療法を行うにしろ行わないにしろ、脂肪組織や副腎がE1の主な産生場所と言う事実を鑑みれば、おしっこを取って調べる検査(美容通信2015年7月号)は簡便で、年に一回くらいは健診のつもりで行うべきじゃないかとは思いますが(笑)。
しかし、ホルモン補充療法を行う際に、敢えて危険を冒してまで、E1を加える理由は見当たりませんから、E2+E3のバイエストロゲンを使います。因みに、合成ホルモンの代名詞的として使われるプレマリンは、主にE1に代謝されます。
E3は、エストロゲン受容体との親和性が低く、体内からの掃出し率も高いので、短時間作用型の弱性エストロゲンとして分類されています。しかしながら、E2の様な骨や心臓、そして脳みそに対する保護作用には欠けていても、実は、乳癌の予防作用が認められています。ヨーロッパでは、タモキシフェンの代わりに、乳癌の治療に使用されています。
唯、如何に天然ホルモンとは言え、乳癌の様なホルモン依存性の癌については、治療後5年経過している事=完治が補充治療の前提にはなります。代謝が本当に改善しているのか、極めて怪しいですからね。
プロゲステロン
何度も繰り返しますが、HISAKOの様に、「若い頃に、子宮癌で子宮と卵巣を摘出してしまった!」なんてリンパ浮腫の患者さんは結構いるとは思いますが、その場合のホルモン補充は、日本の保険制度では合成のホルモン製剤しかないので、どうしてもエストロゲンだけの投与しか行われないのが現状です。プロゲステロンが相対的に欠乏状態にならざる得ない。まあ、ここら辺の話は以前から何度もしてるので、もう一度美容通信(美容通信2012年4月号)(美容通信2010年12月号)(美容通信2010年8月号)(美容通信2010年9月号)を読み直して欲しいんですが、相対的にエストロゲン優位/プロゲステロン欠乏(美容通信2015年11月号)の状態になると、一般的に、以下の症状が出現すると言われています。
- 子宮頸部異形成・子宮癌のリスク増大・子宮筋腫・重く不順な月経
- 乳房の膨脹と圧痛・乳腺線維嚢胞・乳癌のリスク増大
- 不安又は動揺を伴う鬱・気分のムラ・パニック発作
- 疲労
- 甲状腺機能低下症状
- 甘い物への渇望!
- 体重増加(腹部・臀部・大腿部)
- 水分貯留
- 頭痛
- 不良睡眠 etc.
正に、デブになれと言ってる様なもの(笑)。
特に、プロゲステロンは後述する代謝のホルモンである甲状腺ホルモンと、非常に密接過ぎる関係があります。端的に申しますと、甲状腺ホルモンは、婆化に伴い唯でさえ分泌が低下し、代謝機能が衰えます。プロゲステロンが欠乏すると、T4から活動的なT3への変換が難しくなり、更に代謝機能の低下に拍車が掛かります。
しっかり寝ないと、デブるぞぉ。
更には、不眠との関係も重大です。睡眠時間が短かったり、眠りが浅かったりすると、インスリンの分泌が乱れ、血糖値(美容通信2010年4月号)(美容通信2011年4月号)が上がる傾向があります。睡眠時間が不足すると、食欲を刺激するホルモン(グレリン)が増え、逆に満腹だと脳に伝えるホルモン(レプチン)が減る事も判明。寝不足は、過食も誘発してしまうんです。
DHEA
直接的な作用としては、インスリン耐性の阻止が挙げられます。その他にも、細胞再生能活性化、筋肉増強、性機能改善、抗欝・抗精神作用が代謝関連系の作用として考えられています。
男性ホルモン
インスリン抵抗性も改善されるので、最近はメタボ対策としても注目されているのが、男性ホルモン(美容通信2015年6月号)です。男性専科と思われがちですが、実は女性の体内にも、男性の10%位ですが、卵巣と副腎が分泌する男性ホルモン(テストステロン)(美容通信2010年9月号)が存在しています。しかしながら、子宮癌の場合、リンパ浮腫を後遺症として発症する様な重症な症例では、子宮と一緒に卵巣を摘出している事が殆どで、この場合は卵巣由来のテストステロンは当然ながらゼロに。つまり、副腎で極く少量作られる以外、補給手段がない状況ですから、昔のHISAKO同様、非常に底辺を彷徨ってる患者さんが殆どです。例え、子宮の摘出だけで卵巣が残っていたとしても、卵巣って奴は元々根性って言葉を知らない臓器ないので、子宮摘出の1年か2年後にはその機能を停止しちゃいます。
甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは、端的に言うと、代謝を高め、体温を上げてくれるホルモンです。他にも、女性ホルモンの低下により高値になっていたコレステロール値も下げ、細胞代謝を高めます。又、眠りのリズムも決定します。低甲状腺ホルモン(美容通信2015年3月号)は、欝や疲れの原因にもなります。しかしながら、35~60歳の女性の12.5%が、60歳以上の女性の15~20%は、無症状性甲状腺機能低下症に罹ってるとさえ言われています。
因みに、採血でTSHの値を測定すると、所謂基準値(0.340~3.880μIU/ml)なるものが検査結果には一緒に記載されていますが、あの値は検査会社さんの温情でしかなく(←この辺りのお話は、以前”検査の裏読み”(美容通信2007年3月号)で触れているので、そっちを読んでね)、単なる従業員の健康診断の値の上下5%を切っただけの代物(笑)。最適値とは違います。元気で働いている(≒健康な!)職員には分類されていても、実は、その95%がTSH<2.5と、甲状腺機能低下組。一般的に、TSHの最適値は、0.1~1.0μIU/mlです。これが、患者さんが、最も幸福で認知機能が最善である時の範囲であり、且つ、脂質代謝が最善で脂肪組織の蓄積が最小である時の範囲とされています。
婆化に伴う甲状腺機能低下状態に、癌の治療が重なり、又、(医原的に発生した)更年期障害の症状と甲状腺機能低下症の症状が極めて酷似しているが故に、甲状腺ホルモンの低下が見逃され、単に更年期障害の治療しか受けていない子宮癌術後の患者さんが世の中に大多数います。又、更年期障害の治療と言っても、保険医療の縛りから、合成のプロゲステロンしか選択肢がない保険医療の病院では、癌の再発を恐れ、単に(合成の)エストロゲンだけの補充しか行っていません。この様な片手落ちの補充状態が続くと、プロゲステロンが枯渇し、これにより甲状腺ホルモンの働きも低下します。つまり、加齢による①T4産生の低下、②T4からT3への変換量の低下、③受容体機能の低下に加えて、多くの癌患者は片手落ちの女性ホルモンの補充療法のツケまで払わされるって事です。
甲状腺についてのトピックス
活性のある甲状腺ホルモンは、トリヨードサイロニン(T3)です。T3は、T4の4~5倍の活性を有し、脂肪燃焼のみならず、不整脈の予防に効果的とされています。しかし、後述の通り、食事やストレスで軽減してしまうのが欠点です。因みに、T3と似て非なる構造式を持つリバースT3(rT3)は、全くこのような生理的な作用は認められません。 T3の約20%は、甲状腺からダイレクトに産生されますが、残りの約80%は、肝臓やら腎臓、筋肉等の甲状腺以外の組織で、T4からの脱ヨード反応で産生されます。因みに、甲状腺ホルモンの一日の生産量は、サイロキシン(T4)が100mcg、トリヨードサイロニン(T3)=30mcgです。
甲状腺と副腎の関連
甲状腺と副腎の関係は、非常に密接なものがあります。より掘り下げて詳しくなら、副腎疲労(美容通信2015年4月号)を読んでもらえれば良いかなと思うんですが、一応、補足的に、箇条書きに纏めておきますね。
- ストレスの長期化は、コルチゾールとコルチコステロン合成が著しく上昇しても、又反対に欠損しても、起こる可能性があります。
- コルチゾールは、実は、甲状腺ホルモン受容体に対するT3の親和性に関わる重要なホルモンで、欠乏すると、受容体の活性は半分以下に激減してしまいます。
- 反対にコルチゾールの値が高いと、T4からT3への脱ヨウ素化が阻まれるだけでなく、下垂体に於ける甲状腺刺激ホルモン(TSH)の産生も減ってしまいます。
- 更に、踏んだり蹴ったりではありませんが、ストレスにより、末梢組織や循環血液中のT3は、自らの鏡像型であるrT3と言う不活性型へ変換され、結果、有効な活性のあるT3の量が減ってしまいます。
ストレスの挙句に、何で、デブ(体重増加)(美容通信2011年10月号)やハゲ(薄毛)(美容通信2010年9月号)、低体温(冷え性)(美容通信2014年10月号)、エネルギー不足、疲労感、便秘(美容通信2016年2月号)(美容通信2013年8月号)、記憶力の減退、イライラ、不眠(美容通信2015年8月号)、鬱、ドライスキン(美容通信2003年12月号)、性欲低下等々の様々な不定愁訴に悩まされなくちゃならないんだ!? 踏んだり蹴ったりじゃないか! まあ、皆さんの憤りは御尤もではございますが、まあ、これも進化の代償。現代の様に恵まれた衣食住の環境になかった、遠い遠い昔のご先祖様達は、①インスリン抵抗性、②抗炎症作用への抵抗性、③甲状腺抵抗性って、三種の神器で、過酷な時代を生き抜いたんです。生体防御だったんですね、これらは。インスリン抵抗性は、脂肪を蓄積し、飢え死にを避けると言う意味では合目的な特性ですし、甲状腺抵抗性は、飢餓や様々な精神的肉体的ストレス(長期に亙るリンパ浮腫、リンパ浮腫に対する外科的手術!→炎症促進性サイトカインの放出!、元々の諸悪の根源だった癌、有害重金属等々)なんかで死んでしまわない様に、身を守る為の手段でした。だから、rT3なんて、究極のエコな産物なんですよ(笑)。脂肪分解を阻害します。例え、主様が飢餓状態に陥っていようとも、体の保護の為に脂肪分解を妨げる! その確固たる意志が恨めしいですよね、ホント。
甲状腺と副腎疲労への栄養的アプローチ(美容通信2015年11月号)
甲状腺機能低下が認められた場合は、ホルモン製剤の処方がお約束。出来れば、保険で処方されるチラージンの様なT4単独製剤よりも、T3への変換に問題を抱えている事が多いリンパ浮腫の患者さんには、T4+T3併用製剤である豚の甲状腺の粉末であるアーマーサイロイドの方が望ましい(美容通信2015年3月号)。T3単独製剤は? 駄目です。前にも言いましたが、T4しか血液脳関門(BBB)を通過出来ませんから、両者が必要なんです。それも、バランス良い比率で配合された!製剤が必要なんです。因みに、多くのクリニックで使用されているアーマーサイロイドは、1グレイン(60mg)に、38mcgのT4と9mcgのT3を含有しています。
そして、実際に使えるT3を増やす為には、ホルモン製剤の投与は勿論ですが、折角投与したT3が犬死しないように、環境を整える事も重要です。前述の様に、ストレスがあると、末梢組織や循環血液中のT3は、不活性型のrT3とへ変換され、結果、有効な活性のあるT3の量が減ってしまいます。教科書的には、副腎機能に問題があるようなら、副腎疲労の治療(美容通信2015年4月号)と併せて甲状腺のホルモン投与をしましょうなんて、さらっと書いてくれてますが、実際問題として、甲状腺の機能低下があれば、漏れなく副腎疲労が付いて来ますからね。コルチゾール分泌低下すると、甲状腺での産生・転換、受容体での取り込みに悪影響が出てしまいます。糖質制限(美容通信2014年3月号)と併せて、検査データによる必要な栄養素の補充、特に元々リンパ浮腫の患者さんは、リサイクル機能が十分に働いてない(美容通信2012年4月号)ので、非常に低蛋白状態の人が多い。否、殆どかな。更に、抗ストレスホルモンであるDHEAが低値の場合は、DHEAやアドレナルガード等のサプリメントも積極的に併用します。
甲状腺機能低下症に対する分子栄養学的アプローチ
今時の日本人は、毛唐並に海藻とか食わない。しかしながら、ヨウ素って材料がそもそも足りなきゃっ話になりません。
- 実は、甲状腺機能低下の約1/3に、潜在性を含めてって意味ですが、貧血(美容通信2013年11月号)が合併しています。
ビタミンE | 800IU~ | 心筋での酸素効率を高めて甲状腺薬による副作用の抑制と、動脈硬化抑制。 *CPK値↑は 、筋肉のビタミン不足! *ホルモン産生細胞の機能をUP。 |
ビタミンB | ビタミンB1レベルで100mg~ | 甲状腺薬に対する心筋代謝亢進に対応。 *ビタミンB2の代謝に甲状腺ホルモンは不可欠。 |
CoQ10 | 300mg~ | 心筋代謝亢進に対応して。 |
ビタミンC | 3000mg | 活性酸素のスカベンジ。抗ストレス対策。 |
カルシウム | 1000mg~ | 骨吸収の亢進抑制。 |
マグネシウム | 1000mg~ | 骨吸収の亢進抑制。 |
ビタミンD | 400IU~ | 骨吸収の亢進抑制。 ホルモンのインバランスの改善。 |
プロテイン | 30mg~ | 基礎代謝を亢進。 |
ヘム鉄 | 24mg | 貧血、フェリチン低値時に。 *因みに、ペルオキシダーゼはヘム酵素だよ~ん。 |
EPA | 1000mg~ | 抗血栓対策 |
亜鉛 | 60mg~ | T4→T3への代謝促進。 |
ビタミンA | 30000IU |
皮膚の乾燥対策。 |
甲状腺ホルモンは、蛋白質に結合し、作用部位まで運搬されます。薬の効果や作用の発現に、アルブミンとグロブリンとの関与が強いとされています。つまり、低蛋白質・低ALB血症の患者さんに、お薬を沢山処方したところで、薬に効きは悪いし、その癖、副作用の出現だけはよりシビアって、踏んだり蹴ったり状態になってしまいます。蛋白質の補給(美容通信2010年1月号)は必須です!
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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肌荒れしている時に、 神頼みじゃないけど、ドラッグストアのサプリメント売り場に、 ついつい吸い寄せられちゃう事ってありませんか? ちょっと待って! <皮膚科の治療に必要なサプリメントの選び方>です。