HISAKOの美容通信2015年3月号
アラフォー世代に意外に蔓延る、甲状腺ホルモン分泌低下による甲状腺機能低下症について。
甲状腺ホルモンは、加齢に伴い、残念な事に減少してしまうホルモンです。
特にホルモン減少による甲状腺機能低下症(ウィルソン症候群を含)は、近年アラフォー以降の女性にめきめきと増えているにも拘らず、更年期障害と非常に症状が似ている事から見逃され易い疾患です。
中年太り、薄毛、寒がり、ドライスキン、疲れ易い、便秘、鬱、不眠、イライラ、性欲の低下、記憶力の低下等々…。
これ等の症状に思い当たりがあったら、先ずは検査してみませんか?
最近注目の副腎疲労とも、非常に関連性の高い病態です。
巷では、甲状腺はあたかも蝶が翅を拡げた様な形状と称されます。完全なるWikipediaからのコピペですが、蝶は、昆虫綱チョウ目(鱗翅目、ガ目とも)のうち、Rhopalocera に分類される生物の総称です。その他のチョウ目は、十派一絡げ的にその他大勢を総称してガ(蛾)と呼んでいるんです。つまり、蝶はチョウ目の系統の中でかなり深いところにある派生的な系統であるのに対し、ガは「チョウでない」としか定義出来ない側系統なんです。まあ、子供の頃から、蝶でも蛾でも、体が鱗粉で覆われているってだけで呪われた存在としてしか思えなかったHISAKOには、叶恭子様が蝶の刺青を入れるなんて…、それも事もあろうか、陰部ですよ、陰部! 恭子様だって一応は女ですから、トイレ行く度にパンツ降ろして用を足すわけですよね? その度に、あの気色悪い生物でしかない蝶が、百歩譲って鱗粉が付いてないとは言え、蝶は蝶ですからね、分類上。これが嫌でも目に入っちゃう訳ですよね? それも、死ぬまで。…全く正気の沙汰とは思えません(笑)。可愛いうちの猫共だって、蛾を一気食いしたその口であたしにチューする事は、一切許してないぐらいなのに…。
今更、恥ずかしくて人に訊けない、甲状腺ホルモンの一般常識から
甲状腺刺激ホルモン(TSH)
採血でTSHの値を測定すると、所謂基準値(0.340~3.880μIU/ml)なるものが検査結果には一緒に記載されていますが、あの値は検査会社さんの温情でしかなく(←この辺りのお話は、以前”検査の裏読み”(美容通信2007年3月号)で触れているので、そっちを読んでね)、単なる従業員の健康診断の値の上下5%を切っただけの代物(笑)。最適値とは違います。元気で働いている(≒健康な!)職員には分類されていても、実は、その95%がTSH<2.5と、甲状腺機能低下組なんです(笑)。厳しい先生は、2で切りますからね、スパッと。声を大にして言います。TSHの最適値は、0.1~1.0μIU/mlです。これが、患者さんが、最も幸福で認知機能が最善である時の範囲であり、且つ、脂質代謝が最善で脂肪組織の蓄積が最小である時の範囲なんです。更に、この範囲内では、副作用の心配がない。つまり、骨喪失を心配する必要も、心房細動に怯える必要もないって事です。
唯、念頭に置いておかなければいけないのは、TSHも日内変動をしているって事実です。午前2~4時に値が最も高くなり、午後5~6時に底値に達するんです。それ故に、理想は午前10時前に採血するのが望ましいと、何処のホルモン系のセミナーに行っても指導されるんですが、HISAKOのクリニックは何せ11時からのスタートなので(笑)、せめて同じ時間帯に採血をされて下さいませ。因みに、甲状腺ホルモンは日内変動だけでなく、季節変動もあります。真夏日が続く夏と空っ風が吹く冬では、値も異なって当たり前。
甲状腺刺激ホルモンの作用は、その名の通り、甲状腺ホルモン産生を刺激して、甲状腺からのホルモンの放出を促す事にあります。それ以外にも、骨ミネラル密度や循環器系への作用もあります。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌に影響を及ぼす因子としては、以下のモノが考えられます。
[TSH分泌を減少させる要因]
- 不安神経症(25~35%)
- 長期に亙る過剰な運動
- 断食、低カロリー食、栄養不良
- 外傷後症候群
- 甲状腺ホルモン治療
- Ⅱ型糖尿病
- 加齢
[TSH分泌を増加させる要因]
- 瞬発的な激しい運動
- 睡眠不足
- ストレス
甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンの一日の生産量は、サイロキシン(T4)が100mcg、トリヨードサイロニン(T3)=30mcgです。 T3の内訳ですが、20%は、甲状腺からダイレクトに産生されます。残りの80%は、T4からの脱ヨード反応で産生されます。山椒は小粒でもぴりりと辛いではありませんが、T3も同じで、T4の4~5倍のパワーの持ち主なんです。ですから、世の中的には、T4が軽んじられているとまでは言いませんが、単なるホルモンの前駆体としての扱いしかなされないのに対し、T3は活性のあるホルモンとして、やれ、脂肪燃焼に必要だとか、不整脈の予防に効果的とかと、盛んに持て囃されます。まあ、T3のアキレス腱?を強いて挙げるとすると、食事やストレスで軽減しちゃう事でしょうか。あっ! 後でウィルソン症候群について解説しますが、T3と似て非なる構造式を持つリバースT3(rT3)は、大事な主戦力であるFree T3の足を引っ張る陰険な性格の持ち主です。
[甲状腺機能検査]
- Free T4
- Free T3
- Reverse T3
甲状腺機能低下症の症状
列挙するだけで、疲れる位の多彩な症状達とでも言えば宜しいんですかね(笑)。実に、低下による症状は、ナント200種類以上とも言われています。
- 体重増加
カロリーを代謝出来ないだけならまだしも、疲れ過ぎて運動自体が出来ないとなると…、そりゃあ、太って当たり前(美容通信2011年10月号)だわな。後述の鬱とも関連しますが、甲状腺ホルモンは代謝をコントロールし、体の殆どの臓器をその支配下に置いています。脳みそも例外ではありませんから、当然、機能が低下すれば、落ち込んで、しみじみと不幸だと感じるようになって当たり前なんです。そんな低下症による澱み系おデブに、「もっと運動しましょう」とか「食事に気を使いましょう」、「もっと良く寝よう」等々のアドバイスをしたところで、はたまた、抗欝剤を丼に山盛り飲んだところで、治りっこありません。
- 体温の低下
- 体液貯留
- エネルギー不足、疲労感
暑さや寒さへの耐性の低下と言えば聞こえが良いですが、単に変温動物化ですよね、これって(笑)。真っ当なら、人間様の平熱は、午前は36.4℃前後、午後は37.0℃前後なものです(美容通信2014年10月号)。唯、確かに甲状腺ホルモンが体温を調節していると言っても、全ての患者さんが寒がりって訳ではないんです。多彩な200以上の症状のうち、精々1つか2つしか現れないものですし、症状が軽い場合もあれば、非常に深刻な症状の場合だってあります。ここら辺の匙加減が、また難しい!
眼窩周囲浮腫、くるぶし浮腫、高血圧。
副腎機能の低下によって発症する事もある。まあ、副腎と持ちつ持たれつの悪循環とも言えるが…。
- 副腎疲労。
- 便秘。
- 記憶喪失、認知機能障害。
- 不安神経症、不眠。
- 鬱。
- 性欲だけじゃなくて、リビドー自体が低下する。
- 関節痛、筋肉痛。
- 頭痛。
- ドライスキン、薄毛。
大人女子って名の中高年の女性の薄毛(美容通信2008年5月号)と、甲状腺ホルモン低下の間には、密接な関係があります。甲状腺ホルモンが加齢と共に低下するに従い、代謝機能が衰えます。そうなると、当たり前ですが、限られたエネルギーを大して重要性が無い髪の毛に割いている場合なんかじゃないので、最初の犠牲者となります。更に、更年期を境にしてプロゲステロンって名の女性ホルモンが低下するので、後述する様に、T4からT3への変換が難しくなり、T3不足に陥った挙句に、薄毛に拍車が掛かるって寸法です。恐ろしいですね、ホント。
- 嗄声。
- 不妊、月経不順。
- そして、症状の列挙項目に、40歳以上の女性!
これってありかよ!って思わぬ訳ではないけど、でも、テキストにはそう記載されている。謂わんとする事は分るが…(笑)。
徐々に増加する、甲状腺機能低下症の発症率
何故かって問われても、理由は良く分りません。やれ重金属が、環境汚染がとか、寿命が伸びたからだとか、何だかんだと勝手な憶測が跋扈しておりますが、真実は闇の中(笑)。でも、厄介な事に、確実に甲状腺機能低下症の発病率は、増加しています。1920年にDr. Starrの報告では10%だったのに、1940年のBroda Barnesは20%、197年の同じくBroda Barnesの報告は30%、1990年のJacques Hertogheに至っては80%と、「これを鰻上りと表現せずに、何を」的な増加ペースです。
甲状腺機能低下の原因
私達が何時までも若々しくスマート(←HISAKOの様な、言葉通りのぽっちゃりを超越したポニョ体型≒メタボ体型(笑)ではないって意味です!)なルックスを享受出来ない最大の鍵は、進化の過程にありました。つまり、進化の途上に於いては、進化を有利に進めてくれていた様々な優れた特性、例えば、①インシュリン抵抗性、②抗炎症作用への抵抗性、③甲状腺抵抗性等は、進化が終了して、現代社会で快適に暮らす人間として完成してしまった暁には、それらは寧ろ欠点でしかなくなってしまったからです。インスリン抵抗性は、脂肪を蓄積し、飢え死にを避けると言う意味では合目的な特性ですし、甲状腺抵抗性は、飢餓や様々なストレスなんかで死んでしまわない様に、身を守る為の手段でした。因みに、抗炎症作用の抵抗性は、急性感染症や外傷によるダメージを最小限にする為の、一種の生体防御です。ここら辺の話は以前特集しているので、もう一度読み返してみてね(美容通信2014年10月号)(美容通信2015年4月号)。 甲状腺機能低下の原因は、大きく分けると6つに分類出来ます。
- 甲状腺不全 原発性甲状腺機能低下症とも称されるもので、頻度としては最も高い原因です。由緒正しき甲状腺機能低下症とも言います。
- 下垂体の調節機能の不全 続発性の甲状腺機能低下症です。TSHが低下します。
- 視床下部調節能の不全 三次性の甲状腺機能低下症です。これ又、当たり前ですが、TSHが低下します。
- T4からT3への変換不全
- 受容体での取り込み不全
- 副腎疲労(美容通信2015年4月号)
コルチゾール分泌低下すると、甲状腺での産生・転換、受容体での取り込みに悪影響が出てしまうんです。
唯、原因は一つだけとは限らない
上図の如く、甲状腺ホルモン(美容通信2010年12月号)(美容通信2011年10月号)(美容通信2010年9月号)も、ご多分に漏れず、加齢に伴って減少してしまう残念なホルモンの一つです。まあ、後述する様に他にも色んな原因はありますが、大人女子と称するおばさん以上の年代では、甲状腺機能低下による症状を、理解の無い医者から単なる”老化”と鼻先であしらわれたりします。だって、未だに、甲状腺ホルモンについては「病気は発生するまで治療しない!」って、予防医学的治療に興味関心のない昔ながらの保守的な考え方をする医者が大多数を占めるのが、日本の現状ですから(笑)。ですが、最悪パターンは、更年期のお年頃の乙女達。更年期障害の症状と甲状腺機能低下症の症状が極めて酷似しているので、甲状腺ホルモンの低下が見逃され、単に更年期障害の治療しか受けていない場合。それも、健康保険では単にエストロゲンだけの補充しか(それも合成の!)(美容通信2010年8月号)しませんから、プロゲステロンが枯渇したままの状態が続いていると、当然、甲状腺ホルモンの働きも低下します。ですから同じ年を取っても、おっさん連中は、加齢による①T4産生の低下、②T4からT3への変換量の低下、③受容体機能の低下だけの被害で済むのに、大人女子達は、更に片手落ちの女性ホルモンの補充療法のツケまで払わされてるって驚愕の事実! 実際、更年期真っ只中の50歳のオバチャン連中は、通常の15%の量までfreeのT3値は低下しているんて報告もあります。つまり、原因は一つだけじゃない!
左図の如くに、大部分のホルモンは、細胞の核ではなくて、細胞膜自体に受容体が存在しています。細胞の膜は以前お話(美容通信2007年3月号)した様に、蛋白質が60%を占めますが、残りの40%を脂肪酸で構成されているので、どうしたって酸化され易く、膜の保護、安定性を保つ為にビタミンEはとても有用です。特に女性の場合は、バランスを崩し易いとされる、初潮、妊娠・出産、更年期の時期が短いスパンで起こるので、注意が必要です。
余談ですが、中高年になってLDLコレステロールが上がる輩が多くおりますが、これは受容体が老化に伴って変化してしまった(→ちゃんと機能する受容体の数が減った)為、若い頃はホルモン等に利用出来てた物が、あぶれて、野良コレステロールとして血中を徘徊しただけの話。と言っても、野良コレステロールを放置しておくと、酸化して動脈硬化等のトラブルがどうしても起こり易くなります。まあ、内科の先生の様に、問答無用でコレステロールを下げるより、そもそもの諸悪の原因である細胞膜の酸化を防ぐ算段をする方が理には適ってはいると思うけど…、世の中、製薬会社さんの儲けにも拘わる事なので、中々上手くは行かない(笑)。
ところが、これに対し、甲状腺のホルモンは、ステロイドホルモンや、活性型ビタミンD3、ビタミンAの活性型レチノイン酸と同じスーパーファミリーに属するので、膜ではなくて、細胞の核にT3受容体が偏在しています(右図参照)。つまり、膜状の受容体を介する事無く、ダイレクトに核に作用するんです。ほら、ステロイドの飲み薬や塗り薬って、結構切れ味のある効き方するでしょ? これは、細胞の核に直接にアプローチするからなんですよ。
代謝や発達、ステロイドの産生等に関与し、その作用は殆ど組織特異的とされています。
特徴としては、
- ビタミンD(美容通信2013年3月号)によって活性化される。
- その発現にはビタミンAが必要。
- 適切なコルチゾール濃度に依存する。
- 特に水銀が性悪な重金属とされ、これは甲状腺受容体の機能をパワフルに損なう。
それ故に、病歴聴取では、環境や仕事、食事等に於ける重金属の暴露について情報収集がお約束なんです。まあ、明らかな暴露履歴がなくても、治療が中々捗らない時は、尿路重金属検査(美容通信2006年11月号)や毛髪検査を行って犯人捜しをせざる得ないなんて事も。
甲状腺機能低下の診断を下す!
甲状腺機能低下症の診断を下す為には、TSH↑である事。或いは、臨床症状(基礎体温低下を含む)があるとか、Free T3濃度が最適値を下回っている、Free T4濃度が低下している(←TSHの値はしばしば正常だったりする!)とか条件が揃うと、「甲状腺機能が低下してるね」って話になるんです。
T3濃度が低下したり欠乏したりする原因
T3濃度が低下したり欠乏したりするのは、そもそもT4からT3への転換が上手く進まない。これには幾つかの要因が考えられます。例えば、
- 精神的肉体的ストレス
- ホルモンのアンバランス
外科手術、病気の長期化(慢性疲労症候群、線維筋痛、感染)、癌、鬱、毒素(ダイオキシン、PBC、重金属、銅過剰)、糖尿病(血糖値とインスリン濃度の上昇)、炎症促進性サイトカイン類(インターロイキン(IL)-6、TNF‐α)、毒性重金属(水銀)、ハロゲン類(臭素、フッ素、塩素)
コルチゾール、成長ホルモン、エストロゲン
- 低蛋白質、高脂肪の食事。若しくは炭水化物ばっか、喰ってる
- アブラナ科の野菜や大豆の大量消費!
- 栄養素の欠乏
ヨウ素、セレン、亜鉛、ビタミンA、ビタミンD等々。
- 大酒のみ
- ある種の薬剤
- 加齢
ヨウ素についてクローズアップ!
先ずはヨウ素の基礎知識編から。
前述のTYROID HORMONESの図でも示した様に、ヨウ素はT3とT4を含む全ての甲状腺ホルモン群の必須の構成成分です。それ故に、こ奴が欠乏した状態では、甲状腺は快適に機能出来ませんから、困り果てた挙句に、反撃の暴挙である甲状腺腫になるか、従順に虐げられた環境に甘んじて甲状腺機能低下となるかの二者択一(笑)。
ヨウ素が十分に満ち溢れている状態なら、平均的な成人だと、甲状腺に15~20mgのヨウ素を溜め込んでいます。しかしながら、ヨウ素と言えば甲状腺的な認識が世間的はなされていますが、実は色んな体の臓器が恙無く働く為にはヨウ素が必要です。乳腺組織(成人)然り、卵巣や前立腺然り、皮膚然り、腸管然り、唾液腺然り、赤血球細胞と白血球細胞然り。そして、夫々の臓器で嗜好性が異なるが故に、例えば、甲状腺や皮膚はヨウ化物を好みますが、乳腺はヨウ素がお好き。腸管や唾液腺等に至っては、どちらもってバイな性向(笑)。それ故に、ホンちゃんの体想いを自負するなら、ヨウ素とヨウ化物の混合物を摂取しなきゃダメなんですよね~ぇ。サプリで摂るなら、ルゴールヨウ素液やイオドーラルがオススメです。因みに、ルゴール液2滴=イオドーラル1T(=ヨウ素5mgとヨウ化物7.5mg)の勘定になります。
サプリじゃなくて、食べ物で足掻きたいだって? それなら、魚貝類と海藻が優れた供給源になってくれます。海の中には大量のヨウ素が存在しているからです。これに対し、地殻って所には、極々僅かのヨウ素しか含まれておらず、唯でさえ土中のヨウ素は少ないのに、ガッチリ土の中で凝り固まっているので、お野菜には殆ど取り込まれません。どうしても陸上系なら…、卵や乳製品、肉類、ヨウ素添加食卓塩には、ある程度のヨウ素は含まれてはいます。一言追加しておくと、ヨウ素添加食卓塩は、しかしながら、あんまり期待は抱かない方が良いみたいです。そもそもヨウ素しか含有されていないので、無機的で生物学的には10%しか利用が出来ない上に、塩素で漂白までされちゃっていますから、吸収率まで低いと来る…。
一日当たりの推奨される摂取量は、ヨウ素150μg/日とされています(RDA)。最新の研究では、甲状腺や乳腺組織(成人の場合)、卵巣や前立腺、皮膚、腸管、唾液腺、赤血球細胞及び白血球細胞等の臓器に対し、至適な一日量が12.5~13.7mgである事が報告されています。
ヨウ素が足りない!
ヨウ素欠乏が、世界中の甲状腺機能低下症と甲状腺腫の一番の理由って言われています。因みに、WHOによると、世界中の精神遅滞の一番の理由も、ヨウ素欠乏によるものなんだとか。WHOでは、世界人口の72%でヨウ素が欠乏していて、ヨウ素欠乏性疾患の脅威に晒されてる!って盛んに警告を発していますが…、そんな警告、肝心な一般人には届いてない!?
ヨウ素が欠乏しているかどうかの診断要件としては、①TSH↑若しくは→、②T3は取り敢えずは、基準値の範囲内。あっ、前述の通り、基準値と最適値は違いますので、お間違いなく! 最適値は、基準値の上限ギリギリか多少超えるかのレベルです。③T4↓。
ヨウ素の吸収を阻むもの
ヨウ素の吸収を阻むと言うか…、無益なライバルとして、ヨウ素の吸収と取り込みの際に競合するのが、ハロゲン化物です。代表的なハロゲン化物には以下の物が挙げられます。
- 臭化物 プール、スパ、喘息の際の吸入具、炭酸飲料、一部の野菜油や小麦粉、牛乳や乳製品等
- 塩化物 水道水や漂白物
- フッ化物
じゃあ、どれ位、ハロゲン化物にヨウ素の吸収が阻害されているのかは、尿中ヨウ素/ハロゲン化物検査で調べるしかありません。
端的に言うと、50mgのヨウ素&ヨウ化物(イオドーラル)を負荷して、負荷前後(負荷前と負荷24時間後)のおしっこを調べるものです。体が既に十分な量のヨウ素を貯蔵している場合は、投与したヨウ素の90%以上がおしっこの中に排出されます。90%未満の排出量の場合は、検査で投与したヨウ素すら、ラッキーって取り込んじゃう位にヨウ素不足だったって判断になります。
ハロゲン化物の検査の場合は、検査結果は負荷したヨウ素で置き換えられたフッ素と臭化物の量が示されます。
甲状腺機能低下に対する治療
甲状腺ホルモン補充は、如何に副作用の少ないアーマーサイロイドであれ、何であれ、基本は一緒。 少量から開始して、少しづつ増量がお約束です。最初から飛ばしてガッツリ投与すると、急激に酸素消費量が増大するので、心悸亢進、不整脈、不眠、脱力感等の、楽しくない副作用ってオマケが付いて来るからです。こんな時は、CoQ10やビタミンB群のお力を借りると、改善が早くなります。
又、副腎機能に問題があるようなら、副腎疲労の治療(美容通信2015年4月号)と併せて甲状腺のホルモン投与って、セットメニューで治療を行うって考え方が必要になります。
T3+T4の併用投与がT4単独投与より選ばれる理由
甲状腺の治療を考える時に、副腎との関係は非常に重要になります。副腎疲労(美容通信2015年4月号)の特集でもこの密接と言うかぁ、濃厚?な関係については言及しましたが、甲状腺機能低下があれば、まるで金魚の糞か!?とツッコミ入れたくなっちゃう位に、漏れなく副腎疲労がオマケで付いて来ます。
少しばかり解説いたしますと、ストレス下に晒されている状況では、甲状腺のホルモンの分泌低下します。この状況を打開する為の生体反応(応答)がコルチゾールの産生増加なんですが、これは副腎疲労の十分過ぎる切欠に成り得ちゃうんです。それ故に、副腎疲労の治療、つまり基本は栄養療法なんですが、場合によっては生物学的に同等の生理作用を有するヒドロコルチゾンを補充しないと、中々にっちもさっちもいかないなんて事もあります。しかしながら、これが又難しいお話になっちゃうんですが、これらだけを優先して行っても、肝心の甲状腺の治療を併せて行わない限りは、一時的には良くなった気がするかもしれませんが、結局は副腎疲労を拗らせただけって、悲しい結果に終わります。ですから、この様な症例に対しては、T3+T4の併用投与ではなくて、T4のみの単独処方を行っても、T3への転換が滞っていれば、更にストレスの症状は悪化するだけです。正に、悪循環です(笑)。ですから、T3は半減期が短いから、一時的に高濃度になっても直ぐ濃度が下がっちゃうから無意味とか、人間はそもそも10%のT3を産生しているとか、屁理屈ばっかり捏ねないで、素直にT3とT4の併用しといた方が安心です。
じゃあ、T3だけあればすべてが解決するかって言われると、勿論そんな訳ないから、神様はT4とT3をお創りになったんです。神の意思は尊重しなければいけません(笑)。実際問題、T4しか血液脳関門(BBB)を通過出来ないんですよ。脳みそでしかT4をT3に変換出来る触媒を作れない以上、両者の補充は絶対のお約束にならざるえないんです。
つまり、甲状腺機能を適切な水準で維持をしようとすれば、T3とT4の併用は必須なんです。実際、神様の御心を信じていない患者さんでさえ、併用療法を好むのが何よりの証拠です。生活の質の改善度が、T4単独と比べて高いのが実感出来るからです。HISAKOも今更天然ホルモンであるアーマーサイロイドを止めて、健康保険の適応であるチラージンの様な合成の、それもT4だけの投与に甘んじろって言われたら、必死になって抵抗すると思います(笑)。工場で大量生産した合成物は、所詮”もどき”でしかありませんから、体の中で、不活化したT4の全部が全部、活性化したT3に変換される訳ではないのです。その変換率は極めて低く、より良い中高年ライフを求めて甲状腺ホルモンを補充する以上、T4とT3のバランスがきちんと保たれていなければ、意味が全く無いとまでは言わないけれど、余りにも片手落ちな感がするんですよねぇ。
アーマーサイロイドって選択
HISAKOのクリニックでも偏愛しているアーマーサイロイドは、豚の甲状腺を磨り潰して粉末にしたモノです。豚、豚と呼び捨てしておりますが、そんじょそこらの野良豚なんかじゃなくて、何れ己の甲状腺を薬として使われる事を前提にして、穀物を与えられ、大事に大事に育てられた豚さんです。ご安心を!
サイロイド1グレイン(60mg)に、38mcgのT4と9mcgのT3を含有しています。商品規格としては1/4、1/2、1、1+1/2、2、3、4、5グレインがあります。
ぶっちぎりの優れた治療効果を示しながら、副作用が最も少ないと称され、甲状腺治療のお約束処方としての不動の地位を確立しています。
治療については、上図の甲状腺治療のアルゴリズムを参考にして下さい。一般的には、例え検査値が正常範囲内であっても、低下傾向が認められる場合には勿論、そうでなくても、どうしても爺婆化するのに伴い、嫌でも受容体の能力が低下するもんですから、正常範囲のやや高めを目標に、0.5grain/day(1grain(60mg)=T3(9mcg)+T4(38mcg))から、検査データや自覚症状を聞きながら調整をして行きます。多汗とか動悸とか、頻脈、振るえ、神経過敏等々の所謂過剰による症状と、欠乏による諸症状の妥協点狙いになります。元々、甲状腺ホルモンに対する感受性が高い人だと、過剰による症状が出易い傾向が強いですから。 過剰症状を呈する場合は、3~4日間治療を減じて、体勢を整えてから、治療計画の再評価を行います。
その他の治療上考慮すべき栄養素達
色々考えなくちゃいけない、事柄ってもんはある。
- ヨウ素の補給
前述の通り、ヨウ素って材料がそもそも足りなきゃっ話になりません。しかしながら、今時の日本人の若い連中は、昔の日本人と違って海藻とか食わないしね、毛唐レベルに低い輩が多いんですよ。ですから、海藻とか、ヨード卵とか、サプリもありだと思います。
- 副腎機能低下(疲労も含む)を伴う症例では、プラスαのNa
副腎疲労(美容通信2015年4月号)でもお話したNaの補給も大事です。
- 実は、甲状腺機能低下の約1/3に、所謂貧血(美容通信2013年11月号)が合併している!
フェリチンまで考慮すると、つまり潜在性のって意味なんですが、ほぼ全員に貧血印って太鼓判を押しても構わないと思う…。
データをチェックすると、少なくてもHISAKOん所の患者さん達は、軒並み、ヘム鉄、ビタミンB12-葉酸の補給が必要って診断になっちゃうんですがぁ(笑)。何で、こんな踏んだり蹴ったりの事態が起こるかと申しますと、甲状腺ホルモンの分泌低下によるEPOの造血幹細胞に対する直接作用、消化管からの鉄の吸収低下により、発症してしまうんです。それ故に、世の中の「鉄剤を飲み続けてるのに、中々その努力が報われない」なんて嘆いている御婦人は、実は甲状腺のホルモンの分泌が低下しているからだったりして。疑ってみるのもありかもよ~ん。
- 虚血性疾患のチェックと予防的アプローチ
甲状腺受容体の章でもチョロンと触れましたが、甲状腺ホルモンの長期低値持続してりゃあ、もう既に時遅しではありませんが、動脈硬化が進行してしまっていると覚悟しといた方が無難。虚血性疾患のチェックとしては、頸動脈のエコーなんかが推奨されますが、HISAKOの所にはないので、何処か内科さんで見て貰っておくんなまし。予防的アプローチとしては、ビタミンEやEPA(美容通信2010年6月号)の補給は、やっぱり鉄板処方になります。
- 甲状腺自己抗体陽性例も世の中には少なからず、いる。
成人女性の10~20人に1人の割合で、甲状腺自己抗体陽性って人々が存在してるのも忘れてはいけません。サイログロブリン抗体、マイクロゾーム抗体が陽性であれば、例え甲状腺腫や機能異常を発症していなくても、やはり潜在性に自己免疫性甲状腺炎があると考えて方が無難です。こういう女子達は、特に機能低下が認められなければ、所謂ところの治療の必要はありませんが、妊娠・出産を切っ掛けに甲状腺機能異常を来す事があるんです。出産後には一時的に甲状腺機能低下をしますが、本当にこれは一過性のものなので、結構要注意! そうなると、転ばぬ先の杖は、ヘム鉄と、ビタミンEです。
つまりは、分子栄養学的アプローチとしては、代謝が低下している分、十分な栄養補給が必要って考えて、下記のサプリメントを推奨します。
ビタミンE | 800IU~ | 心筋での酸素効率を高めて甲状腺薬による副作用の抑制と、動脈硬化抑制。 *CPK値↑は 、筋肉のビタミン不足! *ホルモン産生細胞の機能をUP。 |
ビタミンB | ビタミンB1レベルで100mg~ | 甲状腺薬に対する心筋代謝亢進に対応。 *ビタミンB2の代謝に甲状腺ホルモンは不可欠。 |
CoQ10 | 300mg~ | 心筋代謝亢進に対応して。 |
ビタミンC | 3000mg | 活性酸素のスカベンジ |
カルシウム | 1000mg~ | 骨吸収の亢進抑制。 |
マグネシウム | 1000mg~ | 骨吸収の亢進抑制。 |
ビタミンD | 400IU~ | 骨吸収の亢進抑制。 |
プロテイン | 30mg~ | 基礎代謝を亢進。 |
ヘム鉄 | 24mg | 貧血、フェリチン低値時に。 *因みに、ペルオキシダーゼはヘム酵素だよ~ん。 |
EPA | 1000mg~ | 抗血栓対策 |
亜鉛 | 60mg~ | T4→T3への代謝促進。 |
ビタミンA | 30000IU | 皮膚の乾燥対策。 |
境界線ギリギリの女達(笑)Ⅰ~”甲状腺機能正常症候群”
甲状腺機能正常症候群では、以下の検査値を示します。- FT3 正常内低目
- FT4 正常
- rT3 上昇
- TSH 正常
リバースT3↑と関係する症状達
- 疲労感
- 脂肪が蓄積!
rT3は、脂肪分解を阻害します。例え、主様が飢餓状態に陥っていようとも、体の保護の為に脂肪分解を妨げる! その確固たる意志が恨めしい…。
- 頭に靄が掛かって、ぽわ~ん。←笑点でお馴染みの林家木久扇です。
- 筋肉痛
- 慢性疾患の増加
- ダイエットしてはリバウンドを繰り返す事をyo-yo dietingって言います。
- 重金属の蓄積(美容通信2006年11月号)、感染、精神的肉体的ストレスの増加
境界線ギリギリの女達(笑)Ⅱ~”ウィルソン症候群”
良く間違われますが、ウィルソン病とは違います。
ウィルソン症候群とは、甲状腺機能低下症の症状は明らかにあるのに、臨床検査の結果は、取敢えずは基準値の範囲内。厳しく最適値って観点から見れば、そりゃあT3↓だけど、超早期だど、それすらも認められない場合だってあったりします。じゃあ、何で判断するのかって申しますと、基礎体温の低下しかない。冷え症の特集(美容通信2014年10月号)でも触れましたが、36.66℃(←半端な体温と思うかも知れませんが…、毛唐の国では98°Fって表示なので、換算するとこんな間抜けな表示になってしまう(笑))以下だと、もうアウト! それどころか、報告によれば、ウィルソン症候群の10%未満の頻度とは言え、36.66~36.88℃(98~98.4°F)の人々もいますからねぇ。微妙っちゃ微妙なんですが…。
起床後3時間から、3時間おきに3~4回基礎体温を測定します。咥えるかって? そんな御大層な検査ではないので、脇の下に挟むだけで十分です。例えば、午前9時に起床したら、BBTを正午、午後3時、午後6時って具合です。これで一日中低体温が持続していれば、ビンゴ!
切っ掛けは、誰もが人生きてりゃ、そりゃあ、一度や二度や百度は遭遇するよなぁって代物で、出産だとか、離婚、愛する人と死別、仕事や家庭での軋轢、外科手術、事故、激しいダイエット等々と言ったストレスなんです。激しい疲労感、頭痛や片頭痛、月経前症候群、体重が増加の一途を辿る、浮腫む、便秘、過敏性大腸症候群、バサバサに乾いた髪の毛、薄毛、ドライスキン、暑さや寒さが体に堪える、ちょっとした事でも直ぐ興奮しちゃう、不安神経症、すぐパニくる、鬱、記憶力も集中力も低下した、自尊心の低下、性欲の低下、月経周期の異常なんかの嬉しくない症状が、全部が全部出現する事は殆どあり得ないけど、幾つかは起こり得る。
治療方法
改善策は、兎に角、T3を増やして、rT3を減らすの一言に尽きます。
T3を増やす方法
T3は半減期が短いので、直ぐ血中濃度が下がちゃうのが欠点ですから、12時間毎に服用するのがお約束。何時まで、患者さんに七面倒臭い事を続けるかと問われたら…、それは基礎体温が決める事と突っ放すしかない(笑)。
rT3を減らす方法
T4がT3に的確に変換されない悪循環を改善しない事には、話にならない(笑)。
これ又、T3の投与と言うと、鼻先で笑われちゃいそうですが、やっぱ必須です。しかしながら、これにはちょいとコツがあります。スタンダードなやり口!としては、最初はT3を7.5mcg/日から投与を開始し、毎日若しくは一日おきってペースで7.5mcgづつ増量し、体温が37℃まで上がったら、増やした時のペースの逆で7.5mcgづつ徐々に減らします。但し、maxの投与量は75mcg/日。ペースとしては10~20回掛けてです。
他には、D2受容体とD1受容体の活性を増加させるか、D3受容体を減らすかですね(セレン脱ヨード酵素)。具体的には、以下の通り。/p>
- セレンを補充する。
- ヨウ素欠乏を治療する。
- 亜鉛欠乏を治療する。
- 肉体的及び精神的ストレスを取り除く。
- 場合によっては、成長ホルモンを処方する!(←D2受容体とD1受容体の活性を増加させま~す)
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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