シミ治療のホームケアに、3.9%ハイドロキノン配合製剤(医療機関専売品)|グラファ メラノキュアHQ 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2026年5月号

シミ治療のホームケアに、ハイドロキノン製剤|グラファ メラノキュアHQ

我が国で肝斑等の皮膚色素沈着の治療薬として頻用されているハイドロキノンは、美白化粧品の定番と広く認識されています。しかし、ハイドロキノンは酸化を受けやすく、品質の劣化や刺激の増加等を生じ、ちょっと取り扱い要注意人物のレッテルを貼られがちでした。グラファ ラボラトリーシリーズのグラファ メラノキュアHQは、安定性と使用感に優れたハイドロキノン3.9%配合軟膏です。アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体等等の抗酸化剤との配合と軟膏の製法に独自の工夫を凝らす事により、従来品より高い安定性を実現させました。

古くて、新しい。温故知新のハイドロキノンのお話です。

ハイドロキノン

昭和の美徳「男は黙ってサッポロビール」の終焉

 肝斑や雀卵斑、老人性色素斑(日光性色素斑)と言った皮膚の色素沈着に対する美容上のお悩みは、長らく大人女子の専売特許とされて来ましたが、今は美意識の潮流は小学生や日本男児までと裾野は拡がり、「人間見た目が大事」のご時世です。

 そりゃあ、原始部族社会は勿論の事、人々が小さな集落で暮らしていた時代には、現在ほど「見た目」は重要ではありませんでした。確かに、男女を問わず美しい容貌は好まれました。しかし、生まれた頃から濃密な人間関係の中で暮らしていれば、「顔は綺麗だけど、心は汚い」なんて、ばれる前に知られてます。信用に値する人間かどうかは、上っ面だけ判断する事はありませんでした。

 しかし、現代社会では、集落の境目が果てしなく広がり、コンビニでお買い物一つするにも、その対応してくれる人間(店員)が、「グェン」とか「るん」とか…、本名だか愛称だか、どこの誰兵衛かも分からない。国籍(文化背景を含めてって意味で)を含め、どんな人間か分からない。そりゃあ、関係が濃密になってくれば、当然の如く「中身」が重視されるようになるけれど、そこまで到達するかどうかの最初の関門が、「見た目」。昭和の「男は黙ってサッポロビール」では、最初の段階でリジェクトされてしまいます(尤も、都市伝説ではありますが、このCMが流れていた時に同社を就職面接で訪れた学生が、面接の際にどんな質問にも一切答えず完全沈黙。呆れた担当者が「もう退室して下さい」と指示した帰り際に、一言つ呟く「男は黙ってサッポロビール」。この一言が妙にインパクトを残し、採用に至った…という逸話がありますが)。

 ルッキズムと非難されるかもしれませんが、スーパーで、会計の列が同じようにお客さんが並んでいれば、HISAKOは普通に?本能的に?二宮君に似た、可愛い男の子がレジ打ちしてくれる列を選びます。現代社会の多くは、広く浅く、見た目重視の人間関係から成り立っているんです。

 

美白成分としてのハイドロキノン

 最近は、美白目的に病院の門戸を叩くのに、性別も年齢も関係なし。皮膚の美白成分としては、アルブチン、ルシノール、脂溶性甘草エキス、トラネキサム酸(美容通信2024年11月号)等が製品化され、美白化粧品として、一般市場でも販売されています。ハイドロキノン(美容通信2014年12月号)は、色素沈着に対する美容成分として、古くから米国を中心に使用されて来た物質で、日本でも種々の色素沈着症への応用とその有用性が報告されています。

 最近は、ハイドロキノン外用の単独使用だけではなく、レーザー治療(美容通信2014年9月号)(美容通信2013年12月号)(美容通信2003年6月号)後の色素沈着の予防や、ケミカルピーリング剤(美容通信2023年5月号)、オバジゼオスキン(美容通信2004年12月号)等のトレチノイン(美容通信2005年2月号)を併用する外用療法や超音波導入(美容通信2023年1月号)、メソガンによるメソセラピー(美容通信2022年12月号)(美容通信2025年7月号)、内服療法(栄養療法含む)(美容通信2021年4月号)等の、他の治療方法との組み合わせによる有効例が報告されています。

 HISAKOはどちらかと言うと、あまりハイドロキノンは好きではありません。なので、切れ味は劣っても、安全性が高いトラネキサム酸製剤を処方する事が多いですが、症例を選べば、他の美白化粧品では到底望めない良い成績が期待出来るのも事実です。

■ハイドロキノンの治療効果

 濱田らの報告によれば、各種皮膚色素沈着症に対するハイドロキノン軟膏の治療効果に関しては、下記の通り。

 ハイドロキノン2%ないし5%軟膏の4~6ヶ月間の使用により、改善率は肝斑21/33(63%)、雀卵斑2/5(40%)、扁平母斑1/4(25%)、尋常性白斑の辺縁色素沈着3/6(60%)、老人性色素斑0/2(0%)、原因不明の色素沈着3/6(50%)。全体改善率は54.4%だったそうです。つまり、雀卵斑、肝斑への改善率は高いものの、老人性色素斑への効果は劣っており、特に表皮肥厚を伴う色素沈着に対する効果は殆ど認められません。

■我が国でのハイドロキノンの現状

 現在、日本では2%~5%ハイドロキノン軟膏が主として使われています。しかしながら、ハイドロキノンは、その化学的性質上、熱や空気に対して不安定な為、成分の劣化や着色が起ったり、高い濃度では皮膚に対する刺激等が問題点として指摘されていました。

■ハイドロキノンの作用機序

 チロシナーゼ活性阻害、メラニン生成関連蛋白の活性阻害、メラノサイトDNA合成阻害等が知られています。その効果は、ビタミンCやコウジ酸、アルブチン等に比べても、10~100倍高いと言われています。

  • ” wolf in sheep’s clothing”(マタイ7;15)

   左図は、HISAKOの美容通信で何度も登場している、メラニン生合成のメカニズム図です。

   皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生すると共に、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌されます。これらが直接、又はメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させます。

   メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われます。生合成経路としては、アミノ酸の一種であるチロシンを起点に、酸化酵素であるチロシナーゼの作用により、ドーパ→ドーパキノンへとどんどん変換が進みます。ドーパキノンは、システイン存在下の経路では、黄色-赤色のフェオメラニンになります。それ以外は、チロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)により、茶褐色-黒色のユウメラニンへと変換されます。

   メラニン色素は日々生成され、メラノソーム内で貯蔵されます。しかし、もう、キャパ的にはこれ以上倉庫に貯め込むのはちょっと…って状況になると、樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に、押し売りならぬ押し配布します。皮膚のターンオーバーと共に、皮膚表面に押し上げられ、最終的には垢となってバイバイ。これがメラニンの排泄です。

   正常な皮膚に於いては、上記の様なメラニンの生成排泄のバランスが保持されているので、色素沈着は起こりません。ところが、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症等により、このバランスが崩れると、メラニン色素が過剰に表皮内に蓄積され、色素沈着が起こります。

   ハイドロキノンは、左図の如くに、チロシン構造に非常に類似しています。つまり、チロシンの振りをして、しれっとチロシンが本来座るべき椅子に陣取ってしまう為、チロシンが弾き飛ばされ、本来のチロシンを起点としたメラニン生成反応が抑制されてしまいます。その結果、色素沈着が抑制される…。まるで、マタイの福音書(7章15節)にある羊の皮を被った狼です。

 しかし、最近は、ハイドロキノンは、メラニンを生成する酵素チロシナーゼの反応を阻害する羊の皮を被った狼なんて生易しいものではなく、実はメラニン細胞(メラノサイト)に対する毒性を通して作用しているのではないかと考えられるようになって来ました。十災禍をふと思い出してしまいました…。

 

グリム童話「赤ずきんちゃん」に於ける赤ずきんちゃんの逆襲か、はたまた十災禍か?

   グリム童話の「赤ずきん」のお話を覚えていますか? あらすじを、Wikipediaから抜粋します。

  1. 赤ずきんと呼ばれる女の子がいた。彼女はお使いを頼まれて、森の向こうのおばあさんの家へと向かうが、その途中で一匹の狼に遭い、唆されて道草をする。
  2. 狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そして、おばあさんの姿に変装して、赤ずきんが来るのを待つ。
  3. 赤ずきんがおばあさんの家に到着すると、おばあさんに化けていた狼に、赤ずきんは食べられてしまう。
  4. 満腹になった狼が寝入っていたところを通りかかった猟師が気付き、狼の腹の中から二人を助け出す。
  5. 赤ずきんは「言いつけを守らなかったから酷い目に遭った」と反省し、2度と道草をしたり知らない人の誘いに乗らないことを誓う。

   ここで注意をして頂きたいのは、4.です。赤ずきんちゃんとおばあさんを食べて満腹になった大鼾を掻いていた狼は、猟師に腹を裂かれ、助け出された2人の代わりに、腹の中に大きな石を詰め込まれました。目を覚ました狼は、川で水を飲もうとしましたが、重い石っ腹の為にバランスを崩して川に落ち、溺れ死にましたとさ。…これがかの有名な、所謂、赤ずきんちゃんの逆襲って奴です。

   羊の皮を被って騙したハイドロキノンも、漫然と使い続けていると、当然、狼と同様に逆襲を受けます。逆襲の詳しいメカニズムについては、未だ完全に解明されている訳ではありませんが、ハイドロキノンをその治療システムの中に取り入れてきたオバジ(美容通信2004年12月号)は、2013年には4%濃度までが推奨濃度としました(←しかし、2%濃度の外用薬を長期的に使用した場合でも、1980年代以降、褐変症が報告されており、高濃度が原因となるかそうではないのかの議論は未だ決着が付いていません)。更には、長期的なハイドロキノンの使用によって、重度のリバウンド性の色素沈着を起こす可能性があるとして、2015年には注意喚起のためにハイドロキノンフリーの製品を出しています。この色素沈着は、アフリカ系の人々に褐変症が多い為、長期的な使用が原因ではないかと考えられて来ました。しかし、ハイドロキノン使用歴のある白人、アジア人でも経時変化である褐変症が見られ、ハイドロキノンが光感受性を増加させているではないかとしています。

   また、耐性の問題もあります。4%濃度のハイドロキノンを使用して4-5か月後には、全員が全員ではないのですが、メラニンが過剰な部位のメラニン細胞がハイドロキノンへの耐性を持つようになり、色素沈着の改善が頭打ちになります。しかし、正常な部位での改善が続くので、コントラストの問題なのですが、却って色素沈着が酷くなった様に感じる事があります。その為、4-5か月の使用後には、2-3か月の休止期間を設ける事が推奨されています。

■ハイドロキノンの副作用

  • 濃度依存的な皮膚一次刺激
  • アレルギー性接触性皮膚炎(多くの酸化染毛剤に使用されているパラフェニレンジアミンと交叉反応の報告有)
  • 高濃度(6~8%)を長期間大量使用、且つ日光暴露で、組織褐変症の報告有。

■使用上の注意

  • 皮膚への刺激性や被れ等のアレルギー症状が生じる可能性があるので、使用前にパッチテスト等を行い、肌に異常がない事を確認の上、使用するのが望ましい。
  • 使用中は、紫外線により刺激を受けやすい状態となる為、日中に使用する場合は、必ず日焼け止め等の紫外線遮蔽効果があるものを併用する。
  • 正常皮膚のメラニンも薄くする作用があるので、色素沈着部位にのみ塗布する。

ハイドロキノン メラノキュアHQ

ハイドロキノン メラノキュアHQの適応/非適応

■適応

 適応は下記の通り。主に、表皮のメラノサイトが関与する色素沈着に効果があるとされています。予防効果も期待出来ます。

  1. 紫外線や加齢によるシミ
  2. 肝斑
  3. 炎症後の色素沈着(ニキビ跡)
  4. そばかす

 右図は、グラファ ラボラトリーズ社提供のチャンピオン症例。殆どがこれ以下の結果で、これ以上はなかなか望めないって症例って意味です。…この程度かと言われちゃうと、身も蓋もないのですが(笑)。

■非適応

 真皮のメラノサイトが関与しているものや、先天性の色素沈着等には、効果がないとされています。効果が期待出来ない色素沈着は、以下の通り。

  1. 後天性メラノサイトーシス
  2. 太田母斑
  3. 単純黒子(ホクロ)
  4. 扁平母斑(カフェオレ斑)
  5. 脂漏性角化症

 

ハイドロキノン メラノキュアHQの製品特性

 ハイドロキノン メラノキュアHQは、医療機関専売製品です。効果の発現には、一般的に約2ヶ月程度は要します。

 皮膚の漂白剤とも称されるハイドロキノンの副作用としては、刺激性、感作性を有する事が報告されており、濃度依存的に皮膚刺激性が高まる事が知られています。その為、ハイドロキノン メラノキュアHQは、適切な有効性と安全性の妥協ラインとして、3.9%ハイドロキノンを配合しています。ですから、肌に優しい低刺激性なんです。

 また、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体等の抗酸化剤を配合し、独自の軟膏製法により、ザラザラつかない滑らかな使用感。しかも、高い安定性で、3年間常温(15~25℃)保存が可能です。

 無着色、無香料、防腐剤フリー。

【配合成分】ミネラルオイル、ポリエチレン、ハイドロキノン(3.9%)、アスコルビルグルコシド、ワセリン、アスコルビン酸

 

ハイドロキノン メラノキュアHQの使用方法

  洗顔後、化粧水等でお肌を整えた後、お肌の気になる部分に薄~く、優し~く伸ばします。ごしごし、力強く塗り込むのは厳禁です。

■使用上の注意点

 ハイドロキノンは、強力な美白作用がある一方で、人によってはアレルギーや刺激が起こる事があります。

  • ハイドロキノンは非常に安定性が悪い成分であり、劣化(茶色に変色)した製品は刺激が強いので、使用しないで下さい。
  • 紫外線はシミの原因になります。ハイドロキノン使用中に、強い紫外線を浴びると刺激が起こる場合があります。強い日差し(美容通信2018年6月号)は避け、日中は、必ず日焼け止め(美容通信2022年8月号)(美容通信2003年8月号)(美容通信2022年2月号)を併用して下さい。
  • 海水浴やスキー、ゴルフ等の長時間紫外線を浴びる日は、ハイドロキノンはお休み。しっかりと、UVケアをして下さい。

 


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

*使用中や使用後、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等の異常が現れた場合、使用を中止し、医師に相談してください。

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