HISAKOの美容通信2003年6月号
シミとレーザー治療
女性が気になるお肌のトラブルNo.1が”シミ”って統計がある位。
シミの治療=レーザー照射ってイメージがありますが、実はレーザーの効かないシミもあったり、寧ろ増悪してしまうものも。
シミの種類を見極めた上での治療が大事なんです、はい。
そろそろ梅雨の便りが聞こえてきそうな季節となりました。今年はエルニーニョ現象も終息。熱い夏を目前に、梅雨だからって鬱々と部屋に閉じこもって鏡を見ていても仕方ありません。貴女のその気になるシミ、この撃退法を先月号の<フォトフェイシャル>に引き続きと<シミとレーザー治療>言う観点から考えてみましょう。
光老化した肌とは。いきなり硬い話で恐縮ですが、レーザー(LASER)って、一体何モノ?
「レーザーって、一体何モノ?」と街頭で突撃インタビューを受けて即答出来るって人って、多分殆どいないと思います。「あっ、あの、えーと、シミ取る奴ですよねえ?」とか、「レーザービーム!!(決まったぜ、ふっ。)」等など、レーザーって言葉は一度は耳にした事があるし、何となく解っているような気がするんだけど、解んない。大体、こんな所じゃないでしょうか?
レーザー(LASER)とは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(直訳すると、<放射の誘導放出による光の増幅>)の頭文字を取って作られた言葉です。まあ、端的に言うと、パワーアップした光に過ぎませんから、レーザー光線が私達人間に及ぼす作用は、基本的には光のそれと同じです。つまり、
- 光熱作用
- 光化学作用
陽だまりは暖かいにゃん?
紫外線は、蛋白質を酸化して変性させます(来月号の美容通信は<光老化>。紫外線が私達のお肌にどんなダメージを来たすのか、それを予防する為にはどうしたら良いのかについて特集します!)が、可視光線は病的状態以外では反応を起こしません(先月号の<フォトフェイシャル>を思い出して!施術不可の項目…だよ)。ですから、後者についてはもっぱら温熱効果を及ぼすだけです。
レーザー光線が皮膚に及ぼす影響:- 光熱作用
- 光化学作用
- 光音響作用
主にこれがレーザー治療の本質なんだよーん!
可視光線領域のレーザー光では、当然無視出来ちゃいます。
光と違ってエネルギーが断然強いから、ショックウェーブ(衝撃波!)が発生するんだけど、通常の可視光線領域のレーザー光線では殆ど問題にはなりません。
じゃあ今度は、この様な性質のレーザー光線が、シミにどんな風に作用するのか考えてみましょう!
先ず、下の図を見て下さい。レーザー光線が、変身を繰り返しながら標的をやっつける過程が分かりますね。
おや? でも、ちょっと待って! そうです、閃いた貴女は正しい。レーザー光線を無闇矢鱈に当てたって、色素君以外のターゲット迄破壊されちゃ元も子も無いないし、だからってトドメを刺せなきゃ意味無いですよね。そこで誕生したのが、selecyive phototherolysis(SP)って概念。ちょっと細かくなるので、<補足>しておきましょう。
補足
selecyive phototherolysis(SP)って概念は、色素と色素の周囲の極く極く狭い範囲にだけに熱による変性が起る様にする事なの。従来の連続照射じゃ、周囲への熱損傷が大きくなり過ぎちゃうもんね。えっ、分からない?じゃあ、この図をみておくんなまし。これが飛躍的にレーザー治療を世間に広めた功績者なんです。
つまり、最適な波長、照射時間、照射エネルギーのレーザー光線を当てる事が重要なんですねえ。
①波長:ポイントは2つ。吸収率と深達度の兼ね合い。
色素にはどんな長さの波長でも吸収されますが、波長が長い程吸収率は低下します。しかし、…。
<光の皮膚への深達度>の図にもう一度戻りましょう。シミが浅い場所にあれば短い波長の可視光線でも十分ですが、深所にも原因のあるシミでは長い波長の可視光線じゃないと光が届かないでしょ?
②照射時間:レーザーを照射し続ける時間が長ければ長い程、当然必要も無い周囲の組織にダメージを与える事になっちゃいますもんね。短い時間で照射は終了させなければなりません。
では、実際にレーザー光線を<シミ>に当ててみましょう。
色素性皮膚病変、所謂<シミ>においては黒い色素(メラニン)が唯一の色素です。此処にレーザー光線を当てると、組織は右の図の様な経過を辿ります。
注意事項としては、レーザーを当てた後1週間位は、バイ菌が付いたり、皮膚の上がりが悪くならないように、その部分は洗ったりしないで下さいね。カサブタが取れたら、日焼け対策をばっちりしましょう。この段階では、色素沈着をなるべく来さない様に漂白剤を併用する方が望ましいかな。
効果の判定は、3ヵ月後! それまでは、一時的な表皮の脱落や、色素脱失、炎症後色素沈着など、皮膚の状態が落ち着くのには約3ヶ月掛かるからです。だから急いでも駄目なんだぴょ-ン。追加照射の対象である細胞が真皮内に残っていても、炎症性色素沈着の状態、つまり表皮基底層に黒い色素(メラニン)が増加していちゃ、レーザー光線は肝心の深部まで届きませんからね。それに、炎症後の色素沈着の原因となった活性化された表皮のメラノサイト(黒い色素を産生する細胞)を無闇に破壊しちゃうと、白ブチ!になっちゃうかも。急がば回れですね。
…近年のスキンケアの考え方は、シミについてだけ限ってみても、単独で何かを解決しようと言うのではなくて、<フォトフェイシャル>で気になる部分に<レーザー>を加えたり、<ケミカルピーリング>や<マクロダ-マルアブレ-ジョン>を加えたり、内服療法、美白剤等の軟膏処置や<プラセンタ>の注射とか、勿論自宅で出来るスキンケアやバランスの取れた食事指導等、色々なメニューを組み合わせて、多角的に<シミ>を改善して行こう!なのよね。
んー、話、大幅に脱線してしまいましたが…。
さあ、いざ出陣!
<お肌の色とその異常>~レーザー治療の観点から-
私達のお肌の色を決める色素は、2種類あります。赤血球に含まれるヘモグロビンと言う赤い色素と、メラノサイトと言う細胞が産生する黒い色素(メラニン)です。今月のテーマは<シミとレーザー治療>ですから<シミ>に話を限定すると、何らかの原因(生まれつきのものもあるし、日焼けによる障害や、刺青等の人為的なものもあります)でこの黒い色素(メラニン)が部分的に増えてしまうと、私達は<うひゃー、シミだ!困ったぞ!>って状況に陥ってしまいます。
補足
一般的に黒い色素(メラニン)が、皮膚の奥深くにあればある程青く見えます。
これに対し皮膚の浅い所に存在すると、その量が増えるにつれ、茶色、褐色、黒色に見えて来るのでーす。
貴女の気になるシミは、どれ?
レーザー治療は先にも述べた通り、標的に先ずは辿り着かなくては話になりませんから、標的である色素君が何処にいるのかが問題となります。そこで、<シミ>を大きく2つに分類します。つまり、黒い色素(メラニン)が皮膚の深い所(真皮内)で増えているもの(dermal melanosis)と、浅い所(表皮内のみ)で増えているもの(epidermal melanosis)に分けて考えます。一応、代表的疾患名を参考までに載せておきますね。
- 黒い色素(メラニン)が皮膚の深い所(真皮内)で増えているもの(dermal melanosis)
- 浅い所(表皮内のみ)で増えているもの(epidermal melanosis)
扁平母斑、ベッカー母斑、カフェオレ斑、老人性色素斑、雀卵斑(そばかす)、肝斑、炎症性色素斑等。
えっ? 何か複雑な様相を呈して来ましたよ。敵は、一種類じゃないんですね。それも場合によっては同じ場所に重複して存在したり…。(HISAKOの独り言がちょっと重く感じられる今日この頃だったりして。フムフム。)
黒い色素(メラニン)が皮膚の深い所(真皮内)で増えているもの(dermal melanosis)
一般にメラニンは熱に強いので、メラニン含有細胞が破壊されてもメラニンは真皮内に残り、直ぐには色の変化が起きません。破壊されたメラニン含有細胞がマクロファージに食べられて、それからあリンパ節に運ばれて…、まあ弔いが済むのに時間が数ヶ月は掛かるっちゅう事ですか。
太田母斑
効果抜群! 照射以前の治療歴や色調にもよりますが、2、3回照射後から効果がはっきり実感出来るものが多いようです。大体4、5回の治療は必要かな。(症例によっては、色調の減退はレーザー照射後1~2年持続する場合だってあるのです! 長期戦です。) 治療の間隔は、3ヶ月以上空けるのがお約束。
補足・太田母斑と顔面の発生学
同じ様にレーザーを照射しても、太田母斑では部位によって反応が違います。つまり、小鼻が一番反応が良く、次いで頬っぺたで、反応が鈍いのは瞼や額、こめかみ。これは左の図を見ても分かる通り、発生学上、色素を産生する細胞(メラノサイト)の分布パターンが違うから。浅い所にだけメラノサイトが存在している頬っぺたは効果が出やすいけど、深い所や広い層にび慢性に存在している額やこめかみ、瞼は反応が鈍いんですよね。
あ、それと、ドライアイス何かで以前に治療を行っていると、び慢型のものも次第に深在型に移行してしまっているので、治療に中々反応し難くなってしまっているんですね。
うーん、奥が深いでやんす。
遅発性太田母斑
真皮の浅い所に疎らにメラノサイトが存在している事が多いので、太田母斑より照射回数が少なくて済み、効果も花マル! 唯、照射後の色素沈着が長引き易い事と、中高年以降の女性に多いので他のシミ(肝斑や女子顔面黒皮症、色素沈着型接触性皮膚炎等のレーザー治療の適応が無いとされるシミ!)を合併している事が多く、治療が先ずレーザーが無効とされる他のシミを改善してからになってしまう事が欠点かな。
刺青(入れ墨)
大昔に、色が薄く、疎らに墨汁(凄く熱に弱い!)だけで入れた刺青は、効果があります。しかし、入れた墨の種類によっては、火傷っぽくなって傷が大きく残ったり(酸化鉄や水銀等が混ざっている墨の場合)、色が変化したり(レーザー光線の熱によって化学反応が起る!)、赤や黄色等の何色か混ざっているものではレーザー光線が深い場所まで届かないので効果が余りないなど、問題が多い! お話を聞いたり、表面から刺青を見ただけじゃあ、全然予測不可。<うーん、目立たない所で試して、考えてみる?>って、スタンスになっちゃうんですよねえ。
色素性母斑・青色母斑
確実に色は薄くなりますが、原因となる母斑細胞が余りにも多いので凄く回数が掛かるし、黒くない母斑細胞は当然破壊されないので出っ張ったものが平らにはなりましぇーん。だから隆起性のものは切って縫い合わせるのが手っ取り早い!
浅い所(表皮内のみ)で増えているもの(epidermal melanosis)
黒い色素(メラニン)は主に表皮基底層って所に存在し、休止期のメラノサイトは殆どメラニン色素を持っていないんです。だからレーザーを照射すると、メラニンが在った所(基底層)は熱で壊されて表皮が吹っ飛ぶ→表皮が欠けたままじゃ困るので、表皮は頑張って再生する→損傷を受けた周りの表皮や、損傷された部位に生き残っていたメラノサイト(あんまり黒いものを持っていなかったので、損害が小さくて済んだ!)も、俄然頑張っちゃう!→黒くなる(=炎症性色素沈着)。だから、炎症性色素沈着にはレーザーを照射してはいけないし、炎症性の色素沈着の一種と考えられる肝斑にも照射してはいけないんだ!
扁平母斑
子供の方が大人より効きが良い。しかし再発が多く、難治性。うーん1/3位は、直ぐ色が消えるけど、半年~1年位で再発すんだよね。このタイプのものは気長に再照射繰り返す内に段段良くなるけど、他はねえ。他の方法の併用を行う場合も結構ある。
老人性色素斑
黒い色素を産生する細胞(メラノサイト)の異常によるシミと言うよりは、表皮にある角化細胞の老化による異常なので、これを破壊しちゃえばOK。唯、色の薄いタイプのものはちょっと苦手かな。
老人性疣贅・尖圭コンジローマ
腫瘍の大きさによって、治療回数は色々。
雀卵斑(そばかす)
1回で軽快するものが多い。唯、日本人には白人と違って、本当の意味でのそばかすちゃんは極めて少ないのも事実ですが…。
粘膜の色素斑
凄く反応は良いし、再発も殆どなし! 正常な粘膜にはメラノサイトは存在しませんからね。
(註:2003年6月1日の作成の為、総額表示となっておりません。本体価格です!) *註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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