HISAKOの美容通信2017年10月号
水素は、悪玉活性酸素を退治する。
活性酸素は、従来、癌化や老化だけでなく、糖尿病や動脈硬化、うつや肥満、慢性疲労、アトピー性皮膚炎等の様々の慢性疾患だけでなく、シワやシミ、(光老化含む)、薄毛の原因にもなると忌み嫌われておりました。しかし、活性酸素は全てが悪者ではなく、細胞障害作用のある悪玉活性酸素と、生理活性作用を有する善玉活性酸の2種類に大別されます。ヒドロキシルラジカルは、所謂活性酸素と呼ばれる分子種の中では最も反応性が高く、最も酸化力が強く、糖質や蛋白質や脂質等のあらゆる物質と反応し、活性酸素による多くの生体損傷は、このヒドロキシルラジカルによるものとされています。水素は、この悪玉活性酸素を選択的にターゲットとする抗酸化治療方法で、善玉活性酸素を損なわないのが特徴です。酸化療法であるオゾン療法(血液クレンジング療法)と併用する事で、治療効果が更にUPします。
品川イーストワン スキンクリニック時代の大家さんがアイロムって会社で、水素水の製造販売もしていました。その関係で、お歳暮、お中元に何時も水素水頂いてたんですが、今一つ水素水の恩恵が体感出来なかった…。それ以来、少し遠ざかっていた水素ですが、実は水素の実力は凄かった! 抗酸化作用とアンチエイジング。水素の底力を引きずり出せなかった、私が悪うございました。平身低頭。水素再考の為の、先ずは基礎編です。
活性酸素
酸化ストレスと老化~慢性疾患の研究
私達は、生命維持に必要なエネルギーを得る為に、ミトコンドリア(美容通信2017年7月号)で絶えず酸素を消費しています。これらの酸素の一部は、代謝過程に於いて、活性酸素と呼ばれる反応性が高い状態に変換(美容通信2017年4月号)され、一般的に、消費する酸素の2%程度が活性酸素に変わると言われています。呼吸鎖(美容通信2016年11月号)で活性酸素を生成するのは、主にミトコンドリア中の電子伝達系の複合体Ⅲに於ける反応です。
この生体内で発生した活性酸素種は、抗酸化物質や抗酸化酵素の働きによって大半が消去(美容通信2014年11月号)されてしまいます。抗酸化酵素としては、カタラーゼやスーパーオキシドディスムターゼ、ペルオキシダーゼ等が有名です。しかし、過剰に発生し、細胞内の酵素で分解し切れなかった余分な活性酸素種は、DNA、脂質、酵素、蛋白質 といった重要な生体成分を酸化させます。こうした生体成分の酸化損傷は、老化現象の亢進(老化≒酸化劣化説)だけでなく、糖尿病、高血圧、動脈硬化等の生活習慣病を始めとする様々な疾患の発症に深く関わっている事が、徐々に明らかにされつつあります(美容通信2017年4月号)。
この様に、呼吸の残骸としての活性酸素だけならば、悪いと言っても、高が知れた程度です。しかしながら世の中には、最初から極悪非道のヒドロキシラジカル等の悪玉活性酸素を発生させてしまう原因が、実は、非常に沢山あります。紫外線、放射線、大気汚染、有害重金属と言った環境的なものや、ウィルス、化学物質(焦げ付き防止の調理器具やクリームやバター等の脂肪性食品に接する柔らかいプラスチックの容器やスプーンやフォーク、スパチュラ等の柔らかいプラスチック製品、家庭用洗剤、日焼け止めクリーム等々)、煙草、薬等、所謂私達の体にとって害を及ぼすものは、悪玉活性酸素の大いなる発生原因でもあるのです。更には、精製された炭水化物(白いパンや精製された糖、砂糖を多く使用したケーキやクッキー、菓子パン等)や加工食品、食品添加物等の不適切な食事や運動不足等々の良くない生活習慣によっても、活性酸素の産生は増大します。そしてそれらが、そのままDNAや細胞内器官、細胞膜、組織蛋白質等を、更に酸化劣化させるのです。これ等は、老化や慢性疾患の発症や増悪に繋がります。
因みに、酸化ストレス(oxidative stress)は、活性酸素(種)と抗酸化システム(抗酸化物質(antioxidants)、抗酸化酵素(antioxidant enzymes))との バランスで決まります。酸化ストレスが高いと、生体内において活性酸素(フリーラジカル)による酸化作用と、 抗酸化物質等の抗酸化(還元)作用とのバランスが崩れ、酸化反応が亢進します。因みに、以前、酸化/還元については特集しました(美容通信2016年11月号)が、電子の受渡し状況によって決まります。
代表的な活性酸素について
活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)とは、好気性生物が酸素(3O2)を消費する過程で発生する反応性の高い副産物であり、 スーパーオキサイド/スーパーオキサイドアニオン(O2・-)、ヒドロキシラジカル(HO・)、過酸化水素 (H2O2)、一重項酸素(1O2)の4種類が知られています。活性酸素は、酸素分子が不対電子を捕獲する事によって、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、という順に生成します。
■スーパーオキサイド/スーパーオキサイドアニオン(O2・-)
スーパーオキシドは、酸素分子から生成される最初の還元体で、1つの不対電子を持つのが特徴です。他の活性酸素は、このそもそもの始まりであるスーパーオキシドなくして始まらないと言う、前駆体と言う名の出発点です。
ミトコンドリア(Complex I および Complex III)をはじめ、呼吸代謝に関与する多くの酵素、キサンチンオキシターゼがその代表格として良く知られていますが、これ等の副生成物として生じます。
生体に於いて、スーパーオキシドは、侵入した微生物を殺してくれる=免疫系の作用を有するので、所謂、善玉活性酸素と呼ばれています。しかしながら、必殺仕事人?ゴルゴ13?の様に、「善」として、如何に私達から拍手喝采を受けようとも、殺人鬼である事には変わりはありません。ですから、もしもの事態に備え、酸素が存在する全ての細胞小器官の近傍には、スーパーオキシド代謝酵素、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD) 等の、様々なアイソザイムが含まれています。SOD は極めて効果的な酸化還元酵素で、あっという間に、二段階の一電子酸化還元を行い、過酸化水素にしてしまいます。唯、年を喰うと、このSODも減少の一途を辿ってしまうのですが…。
2O2–+2H+→O2+H2O2
過酸化水素は、更にカタラーゼやペルオキシダーゼで無害化されてしまいます。
■過酸化水素( H2O2 )
ミトコンドリアの電子伝達系では、スーパーオキシドアニオン(O2–)等の活性酸素種が常に発生しています。活性酸素は生体分子を破壊し有害である為、防御機構が存在しています。スーパーオキシドアニオンは、まずスーパーオキシドディスムターゼ(SOD) によって過酸化水素に変換され、カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼによって無害な水に分解されます。
2H2O2→2H2O+O2
因みに、グルタチオンペルオキシダーゼとは、セレノシステインを含む酵素で、グルタチオン(美容通信2017年8月号)を電子供与体として用い、過酸化水素だけでなく有機過酸化物にも作用し、酸化ストレスから生体を守ってくれます💛
過酸化水素の反応性はそれほど高くなく、生体温度では安定していますが、金属イオンや光により容易に分解して、後述の諸悪の根源とされるヒドロキシルラジカルを生成してしまいます。
その高い酸化力から、医療用の外用消毒剤として利用され、オキシドール (oxydol) と言う日本薬局方名、またはオキシフル (oxyfull) という商品名でも呼ばれています。衣料用漂白剤や髪の脱色、うどん、かまぼこ、かずのこ等の漂白目的の食品添加物としても使用されています。しかしながら、過酸化水素全体の使用量では、製紙の際のパルプ漂白や廃水処理、半導体の洗浄等の工業的な利用が大部分を占めています。塩素系の漂白剤等が多量の廃棄物を生じるのに対し、過酸化水素は最終的には無害な水と酸素に分解する為、工業利用するには環境に優しい!物質であると言われ、近年工業的な過酸化水素の利用は拡大してきているんだそうです。
■ヒドロキシルラジカル(•OH)
ヒドロキシ基(水酸基)に対応するラジカルで、•OH と表されます。とっとと酵素により処分されなかった余り物の過酸化水素水が、紫外線照射や金属イオン、スーパーオキシドと反応する事で発生します。
活性酸素の中でも、ヒドロキシルラジカルは、所謂活性酸素と呼ばれる分子種の中では最も反応性が高く、最も酸化力が強いのが特徴です。糖質や蛋白質や脂質等のあらゆる物質と反応し、活性酸素による多くの生体損傷は、ヒドロキシルラジカルによるものとされています。細胞障害型、つまり悪玉活性酸素の代表格です。しかし、その反応性の高さ故、通常の環境下では長時間存在する事は出来ず、生成後速やかに消滅してしまいます。
私達の体からヒドロキシルラジカルを除去する物質としては、水素の他、ベータカロチン、ビタミンE、尿酸、リノール酸、システイン、フラボノイド、グルタチオン(美容通信2017年9月号)等の抗酸化物質が良く知られています。
活性酸素種ROSの二つの顔
活性酸素は、従来、生体分子を酸化損傷する悪い奴で、癌化や老化だけでなく、糖尿病や動脈硬化、うつや肥満、慢性疲労、アトピー性皮膚炎等の様々の慢性疾患だけでなく、シワやシミ、(光老化含む(美容通信2003年7月号))(美容通信2014年11月号)、薄毛(美容通信2016年4月号)の原因にもなると忌み嫌われておりました。
過剰に発生し、細胞内の酵素で分解し切れなかった余分な活性酸素からは、活性窒素分子の一つであるペルオキシナイトライトや、強力な破壊力を持つ活性酸素ヒドロキシラジカルが作られますが、これ等は細胞障害性活性酸素と呼ばれ、私達の体を構成する蛋白質や脂質、核酸等を酸化劣化させてしまいます。
しかし、神様は、悪いだけの存在を作る訳がありません。右図の様に、善の側面(生理活性作用)も有しています。例えば、過酸化水素(H2O2)。活性酸素種の中では比較的安定している存在として知られていますが、最近の研究では、過酸化水素は、細胞内に於けるシグナル伝達物質(セカンドメッセンジャー)として機能している事が分かっています。
つまり、抗酸化治療には、闇雲にやつけりゃ良い訳ではなくて、ターゲット選択性が非常に重要だって事なんです。
水素医学の歴史
水素と水素の医学的利用の歴史
■1888年~2007年
水素に関する医学的な論文が、世の中で最初に出たのが、1888年。この論文は、水素ガスを直腸注入して穿孔診断を行った!ってもので、水素自体の効果効能を決して謳ったものではありません。が、大量投与でも、特に毒性も認められず、安全に利用出来た❤めでたしめでたしって内容です。これを契機に、水素の医学的利用に弾みが付くかと思いきや、1937年のヒンデンブルグ号事故により、別に水素が悪者って訳ではないのに、水素=爆発ってイメージで、一気に医学的利用の機運がダダ下がり。ヘリウムだって船体が炎上したはずなのに、です。以後、1969年までほぼ封印された状態になってしまいました。
1969年にThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに発表された論文によると、水素分子は通常血液に溶解しており、この水素ガスの出所は、健康な腸管の持ち主ならばですが、99%以上が結腸で産生されるんだそうです。因みに、小腸に過剰な腸内細菌を飼っている人は、結腸ではなく、小腸での産生がお盛んなようです。…つまり、水素は元々体の中に存在していますが、腸内細菌叢の状況により、その産生が左右され、その産生が低下すると、活性酸素の除去能が低下する。つまり、老化や慢性疾患の引き金となるらしいぞ!って事です。
<10人の腸内水素ガス産生を調査>
・0.06~29ml/分(平均:0.24ml/分)
・腸に乳糖注入時、平均1.6ml/分
→食事によって、7~30倍に増加。平均14%が肺から排泄(他は放屁等)
1975年に発表された論文は、マウスの扁平上皮癌に、97.5% 8atmと言う高濃度、高圧水素ガスを投与した結果について書かれたものですが、何故癌に対して効果的だったのかという作用機序については、この論文でははっきりと言及されていません。恐らく水素の抗酸化作用によるものだろうと書かれてはいますが、水素自体の抗癌作用の可能性については記載されていません。
2001年に発表された論文は、肝炎に対する水素の抗炎症作用について述べられています。水素吸入により、住血吸虫感染部(炎症部)に対し抗炎症効果が認められたとの報告で、抗酸化酵素の増加、過酸化脂質レベルの低下、環境レベルTNFαの低下、肝組織の線維化を抑制し、肝損傷に対する優位な保護作用等が認められたそうです。新しい抗炎症戦略物質として、水素ガスを提案した初めての論文で、ヒドロキシラジカルと炎症反応の関係性と水素の作用について記載されています。しかし、炎症の始まりでもある、このヒドロキシラジカルに対する水素の選択性については触れられていません。
■分水嶺となった2007年の太田先生らの論文
2007年の太田先生らによる論文Hydrogenn acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicalsで、従来の「水素の効果を示すものの、その理由は不明」から、「水素の作用は、選択的な活性酸素の除去」であると言及し、大きな潮目となりました。
H2自体は非常に安定しているので、それ自体が何か悪さをするかと言うと、特にしません。基本的に、人畜無害系です。上図の如く、活性酸素の所謂生理的活性の度合いは、その活性酸素自身の種類によって、1~7000倍程度の開きがあります。生理活性作用の高い活性酸素に対しては、H2自体は非常に安定しているので、触媒がないと反応出来ません。つまり、触媒がない限り、その活性酸素の生理活性を妨げないって事です。ところが、ヒドロキシ型は極めて活性が高い超野獣系なので、触媒なぞなくても、強引にH2反応しちゃいます。これが、飛んで火に入る夏の虫❤若しくは、おとり捜査に引っ掛るバカな極悪人(笑)。つまりは、水素の選択的抗酸化作用の本体なのです、はい。
■2007年~
2007年の太田先生らの発表後、一気に水素に関する研究が加速しました。主な論文/臨床試験を列挙しておきますね。
- 2013年:水素分子がTNFα誘導性細胞障害を抑制
- 2014年:心肺停止後に対する水素ガス吸入の効果
- 行動量/認知機能の低下を抑制
- 神経細胞死/炎症反応が著明に低下
- 2015年:出血性ショックによる腸粘膜損傷を、水素点滴が抑制
- (付録)2016年:DJ-1遺伝子変異によるパーキンソン病の発症
→発症してしまったパーキンソンは水素では治せないが、進行のstopと予防については可能にゃん。
- 2016年:パーキンソン病に対する多施設二重盲検試験
- パーキンソン病に対して行われた大規模な二重盲検試験で、有効性を確認
- H25mM含有水素水を1l/day 8weeks
- 評価:UPDRS(unified Parkinson’s disease rating scale)に於いて、効果を確認
- 水素投与により、パーキンソン病の進行を抑制し得る
オゾン療法の論文から見る水素療法
これが分からないと話にならない!Nrf2とNFkB
■Nrf2
NF-E2-related factor 2(Nrf2)は、酸化ストレス防御機構の中心的役割を果たす転写調節因子です。親電子性物質や活性酸素、活性窒素種等の様々な反応性分子種の攻撃を受けて、私達の大事なDNAや蛋白質等の生体高分子が損なわれると、それこそ大事件! 発癌や外来異物/酸化ストレスに対する感受性の亢進、炎症・免疫系の異常、鉄代謝の異常、神経変性疾患に対する感受性の亢進等々の、ロクでのない災害に屈する羽目に陥ります。ですから、この重大な危険を察知すると、俄然Nrf2は活性化されます。具体的には、親電子性物質を直接解毒するグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)やキノンオキシドレダクターゼ(NQO1)、解毒により枯渇したグルタチオンを合成するグルタミルシステイン合成酵素、細胞内の主要な還元力であるNADPHを合成するグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ等の、酸化ストレス防御遺伝子群の発現を統一的に制御します。
以前も特集(美容通信2016年11月号)で触れましたが、毒性学には、“ホルミシス”と言う概念があります。「少量のストレスが細胞の防御機構を誘導し、引き続く重篤なストレスに耐性となる現象」です。ざっくり言ってしまうと、”獅子の子落し”。
諺(ことわざ)大辞典によれば、”獅子の子落し”とは、「自分の子に試練を与え、その才能を試す事。厳しく育てる例え」と記載されています。獅子は、産んだ子を深い谷に投げ落とし、這い上がってきた強い子だけを育てるという言い伝えから出た諺です。オゾン療法(美容通信2011年8月号)も、高濃度ビタミンC点滴療法(美容通信2008年11月号)も、少なくともHISAKOが専門としている美容皮膚科に関して言えば、アンチエイジング系(特に皺!)に関する治療は、ケミカルピーリング(美容通信2005年4月号)であれ、フォトフェイシャル(美容通信2003年5月号)であれ、フラクセル(美容通信2007年2月号)もダーマローラー(美容通信2009年8月号)もファイブロペン(美容通信2008年6月号)も、その他諸々、須らく何らかの傷を外的に加える事で、その修復過程で盛んに生成されるコラーゲンのお零れを当てにした方法です。つまり、体の中からか外からかのアプローチの違いだけで、少量のストレスを加える事に於いては一緒。それに対する抵抗力を期待する、ホルミシスの概念をそのまま実践する治療方法です。
つまり、Nrf2は、酸化ストレスに対するホルミシスを仲介するものであり、オゾンによるマイルドな酸化ストレスは、Nrf2を活性化してくれます。
■NFkB
NFkBは、免疫反応に於いて中心的役割を果たす転写因子の一つで、1986年にノーベル生理学医学賞受賞者であるデビッド・ボルティモアらにより発見されました。急性及び慢性炎症反応や細胞増殖、アポトーシス等の数多くの生理現象に関与しています。しかしながら、制御不全による恒常的なNF-kB活性化は、クローン病の様な炎症性腸疾患や関節リウマチ、気管支喘息等のアレルギー疾患等や癌の原因となります。更には、NFκBは、サイトメガロウイルス (CMV) やヒト免疫不全ウイルス (HIV) の増殖にも関与しています。
HISAKO的には、度が過ぎて酷い目に会う、文武久茶釜の狸のイメージなんですけど、NFkBって(笑)。まあ、酸化も、程ほどが、前述のNrf2を活性化させて良く、度が過ぎれば、NFkBが活性化して、身を亡ぼすって訳ですかね。
酸化(オゾン)療法と抗酸化(水素)療法
■酸化ストレス度の違いとシグナル
2011年に発表されたオゾン療法に関する論文によれば、酸化ストレスの強度により、軽度のストレスはNrf2シグナルとなりますが、強度のストレスはNFkBシグナルに変化します。
- オゾンによるマイルドな酸化ストレスによって、Nfr2が活性化
→軽度の酸化ストレスは、健康にとって望ましい❤
- 強度の酸化ストレスは、NFkBを活性化
→強度の酸化ストレスは除去すべき! 水素H2は、直接作用(・OH)、間接作用(ROO・)に関わらず、”悪玉活性酸素だけを選択的にやつける”と言っても…正確には、ONOO–については放置プレーだけど(笑)。まあ、主犯格の極悪人であるヒドロキシラジカルを成敗してくれる訳ですから、ないより全然2マシ以上で、結果的に、悪玉活性酸素によりNFkBが活性化されるのを随分過ぎる位に減らす事が出来るって話です、ハイ。
下図は、2008年のBiochem Pharmacolに掲載された論文(Activation of Nrf2-antioxidant signaling attenuates NF-κB-inflammatory response and elicits apoptosis)からの引用改変です。
つまり、オゾン療法と水素療法は、酸化と抗酸化と、そもそもターゲットが違うので、併用した方がより相乗効果が期待出来るんですね。慢性結腸炎の未来も、W使いで明るい!?
水素とその作用
原子-分子-物質
先ずは中学校の理科の復習から。左図は、懐かしい周期表ですね。
ドルトンの原子説、覚えていますか?
- 化学変化でそれ以上分ける事が出来ない。
- 化学変化で新しく出来たり、なくなったり、種類が変化したりしない。
- 種類によってその質量、大きさが決まっている物質は、全て原子で出来ています。
ドルトンは原子はそれ以上分割出来ないと考えましたが、現在では原子は原子核と電子で成り立っている構造が分かっています。現在、約110種類の原子が発見されていて、原子の大きさは1cmの1億分の1程度。
分子は、共有結合/配位結合/金属・金属間結合により、幾つかの原子が固く結びついた粒子で、その物質の性質を示す最小の粒子です。物質は、その多くが、ファンデルワールス力/イオン結合/金属結合/水素結合/…等によりまとまりを持った分子の塊で、固体、液体、気体、プラズマの四形態があります。
ですから、分子状水素とは、”物質化していない水素分子”の事を言います。
水素とその特性
水素は、原子番号 1 、原子量 1.00794の非金属元素である。元素記号は H。水素には、水素(軽水素)1H 、重水素 2H (デュウテリウム、ジューテリウム、略号D) 、三重水素3H (トリチウム、略号T)の三つの同位体があります。
■分子状水素のターゲット
ラジカル(分子)と反応するのは、分子状の水素です。分子状の水素のターゲットとなるのは、前述の通り、OH・やONOO–で、O2–やH2O2、O2、NO・には、触媒がないと反応が出来ません。つまり、殺菌作用やホルモンの合成作用、代謝促進作用、ミトコンドリアでのエネルギー産生等の、大事な生理活性作用を損なう事なく、酸化劣化ストレスの根源となる活性酸素だけを選択的に攻撃が可能なのですから。賢いな、分子状水素!
■水素の作用はOH・除去による作用
ヒ ドロキシルラジカルの寿命は、100万分の1秒間と非常に短いんですが、酸化力が強く、生体内での蛋白質や脂質、 核酸(DNA、RNA)の酸化は、主にヒドロキシルラジカルによるものと考えられています。
水素が、この性悪のヒドロキシラジカルをとっとと捕獲(正しくは、反応!)して、ヒドロキシラジカルの性悪さを封じ込めちゃうので、悪さを発揮出来ない…。まあ平たく言えば、水素はエクソシスト(祓魔師)?
- 遺伝子の酸化
- アミノ酸の酸化
蛋白質は、酸化を受けやすいアミノ酸残基を多数含んでいるので、生体内でヒドロキシルラジカルやペルオキシナイトライト、NO・等の濃度が高まると、様々な酸化修飾を受けてしまいます。
具体的には、カルボニル化、チロシン残基のニトロ化、システイン残基の酸化、メチオニン残基の酸化等が挙げられます。
- 脂肪酸の酸化
左図の如くに、ドミノ倒し系!に、反応が進んでしまいます。
脂質が活性酸素(ROS)により酸化を受けると、マロンジアルデヒド(MDA)やヒドロキシノネナール等の脂質由来の中間生成物質によって、脂質は修飾を受け、ALEs(脂質過酸化最終産物)を生成します。ALEsの生成は、体の機能障害、つまり、老化や慢性疾患って意味ですが、これ等を引き起こす原因の一つになっています。
因みに、MDAは、前述の通り、不飽和脂肪酸の過酸化によって生じる主要な過酸化脂質ですが、細胞や組織に於ける酸化ストレスのマーカーとして、臨床的に使用されています。
- AGEs合成とROS
AGEs(Advanced Glycation End Products)(美容通信2015年10月号)とは、の終末糖化産物の事です。別名、後期糖化生成物。蛋白質の糖化反応(メイラード反応)によって作られる生成物の総称で、身体の様々な老化に関与する物質です。
現在判明しているだけでも、AGEsには数十種類の化合物があり、其々が多種多様な化学的性質を有しています。AGEsの例としては、Nε-カルボキシメチルリシン(CML)、Nε-カルボキシエチルリシン(CEL)、アルグピリミジン等が知られています。類似の概念に、過酸化脂質に由来する終末過酸化産物(Advanced Lipoxidation End products、ALEs)が有ります。
AGEsは、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、慢性腎不全、アルツハイマー型認知症等の変性疾患のみならず、シワやたるみ、皮膚の乾燥、髪の毛の色艶が失われる等、私達の見た目も大きく左右します。糖尿病の血管系合併症の原因ともされ、活性酸素による細胞障害が加速し、機能を大きく低下させると言われています。
抗酸化は活性酸素(ROS)の生成を抑えると共に、ROSの生成過剰によるカルボニルストレスを防ぎ、ALEsの生成を防ぐ役割を果たしています。また抗糖化は、糖化反応によるアルデヒド基やカルボニル基を持った物質の生成を抑えると共に、AGEsの生成を防ぐ役割を果たしています。つまり、抗酸化と抗糖化は、私達の体のカルボニルストレスを避ける対策として、非常に近しい関係にあるとも言えます。
- サイトカインとROS
前述のAGEsは、臓器や組織だけでなく、細胞1つ1つにも間接的に悪影響を及ぼします。細胞の表面には、外からの情報を感知するRAGE(最終糖化産物受容体)と言うアンテナが立っているのですが、この働きによりサイトカインが活発化し、免疫反応により炎症が惹起されてしまいます。
サイトカインは、基本的に、異常な物を排除して、細胞や組織が正常に戻る様に道筋を付けてくれる物なのですが、何かの切っ掛けで悪循環に陥ると、炎症が増悪しそして遷延してしまいます。左の図を見て下さい。慢性的な関節の痛み、つまりサイトカインの悪循環の鎖をH2が断ち切ってくれるので、非常に効果があります。しかし、原因が未だ改善されていない(=残存している)急性期では、今一つ以上にも効かない(笑)。
つまり、老化や慢性疾患の最大の原因は、ヒドロキシラジカルによる酸化である事は間違いありません。しかし、これだけではなく、糖化(美容通信2011年4月号)や炎症(美容通信2014年1月号)(美容通信2016年7月号)が三つ巴になって、悪循環を加速させているのです。
水素の臨床利用
水素は、元来、私達の体の中、血液や体液中に存在する物質です。子供の頃は大量に体の中に存在していますが、年を取ると、めきめき減少に転じてしまいます。この様な物質を投与するので、非常に安全性の高い治療と考えられています。
- 天然物質である
- 安定の最小単位分子
- 人間が作った化合物ではない
- 天然化合物でもない
- 腸管内で産生される物質である
- 消化管内(特に結腸)の水素酸性菌によって産生
- 水素酸性菌は善玉菌の一種
- 血中内に存在する物質である
- 腸管内で発生した水素ガスが吸収され、血中に移行
- 肺で換気され、呼気ガスとして放出
- 安全性と共に、食品添加物認可
- 1995年に食品添加物認可され
- 2000年、2004年、2005年、2007年に継続調査。毒性等を認めず
この様に安全性の高い水素が、臨床現場でどの様に使われているかについては、次号以降で特集予定です。ここではさらっと、概略だけお話します。
水素を生体内(細胞内)にアプローチさせる方法イロイロ
水素は非常に安全で、有効な抗酸化治療のツールであり、前述の通り、オゾン療法の様な酸化療法と組み合わせで、飛躍的な効果を期待出来ます。しかし、水素の最大の弱点?欠点?は、貯め置く事が出来ない事です。つまり、体内に取り入れた、その瞬間にどれだけの仕事をしてくれるかの一言に尽きます。
全身の酸化を対象にするのであれば、点滴や入浴剤等が最適なアプローチの方法でしょうし、関節や筋肉の痛みならば、患部近くへの局注。頭皮を含む局所の皮膚であれば、ナパージュで皮内に注射をしたり、水素バームを塗るのが望ましいと思われます。ゆっくりじわじわならば、水素吸蔵体やアカルボースの様な糖吸収遅延剤の内服が最適と思われます。
しかし、その大前提として、水素が私達の体の中でその実力を発揮する為には、水素分子が、液相(血液、間質液、細胞内液)に溶解する必要があります。
- 液体に溶解させてから、投与
- 水素水(消化管):分子状水素を含ませた水だが、投与出来る水素分子量が少なく、不安定で抜けやすいのが欠点。
- 点滴
- 注射(筋肉内/腱鞘内/関節内/皮内(ナパージュ)・皮下)
- 経皮(水素バーム/入浴剤:未来入浴料AP)
- 気体を投与し、体内で溶解
- 吸入(肺)
- 経皮
- 注入
- 消化管内で発生させ、体内で溶解
- 水素吸蔵体(内服):体内で分子状水素を発生させる物質で、MgH2、フラナガン、珊瑚カルシウム等がある。
- 糖吸収遅延剤:腸内細菌による水素ガスの発生を促すもので、2型糖尿病の治療に使われる経口血糖降下薬であるアカルボースについては論文が多数あり。但し、腸内細菌量/種類によって発生量に差。
■未来入浴料AP
未来入浴料APについては、以前特集(美容通信2015年2月号)しましたが、「お家で水素浴」を可能にした画期的な入浴剤です。キャッチフレーズは、エビデンスのある機能性入浴剤! お風呂にのほほ~んと浸かっているだけで、皮膚から水素がぐいぐい浸透し、血流に乗って体全体に広がり、悪玉活性酸素をボコボコにやっつけてくれるって代物です。
以下は、(株)メディサプリ 419 Addison Plce, Ridgewood, NJ07450, USA (031512 Ver.2.0)からの抜粋です。
- 水素水の風呂の湯を作るのは、超簡単だ!
入浴剤を風呂の湯に溶かすだけで、水素ガス(H2)が発生し、自宅のお風呂のお湯が水素水になります。
右図は、未来入浴料APを1包、一般的なお風呂のお湯(193L、39℃)の中に入れ、軽く掻き混ぜ、お湯の中の水素濃度を時間を追って測定しました。K, U, A は違う会社の水素濃度測定器で、測定原理も皆違うけど、真実は一つ(笑)。水素水溶液の飽和濃度は凡そ0.8mmol/Lなので、溶解後15分で、お湯は飽和の 20~30%の濃度の水素水になります。だから、混ぜたらすぐ、浴槽にドボンではなくて、15分位経ってから入浴するのが○なんです。
- 風呂に入るだけで、水素が体の中に浸み込んで来る!
お湯につかっていると、呼吸で吐き出す息(呼気)の中に、水素が次第に出てきます。左図は呼気中の水素濃度です。入浴後経時的に呼気を採取し、テラメックス社のBreath Gas Analyzer Model TGA-200により呼気中の水素濃度を測定しました。図は開始時からの増減です。■は 12 人の平均値。 呼気採取時の浴湯の残存水素濃度は、0.07~0.19mmol/L。
水素分子は世界で一番小さいので、簡単に肌を通って体内に入ります。血流に乗って全身に行きわたり、肺に達した水素の一部が呼気から出て来たと考えられます。以上から、ゆっくりと、最低でも15分は入浴!して下さいね。
- 家族みんなで楽しめる。
家族全員が一緒に湯船に浸かるなんて事は、温泉の大浴場にでも行かない限り、狭い日本のウサギ小屋ではまず不可能。時間差入浴で対応するのが、日本の一般的な家庭のお風呂事情だと思います。未来入浴料APは、残存水素は13時間保持されるってデータが出てますから、十分対応可能です。
右の図を見て下さい。長時間40℃で静置した時の残存水素濃度の推移です。実験用水槽の40℃のお湯を50L入れ、本入浴料の1/8量相当を添加し、軽く撹拌して放置プレイ。温度はヒーターで一定に保ち、経時的に溶存水素濃度をUnisenseのMicrosensor Multimeterで測定した。n=8(0~180分)、n=1~3(240分後)。
そりゃあ、このデータは実験室での結果ですからね、実際の個人のお宅のお風呂環境とは違いますから、多少の乖離は有るとは思いますがぁ、浴湯中の残存水素は長時間保持されるのは事実みたいです。家族が順繰りに、そんなに時間を置かずに同じお風呂に入るのなら、1包で充分じゃないですかね。
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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