HISAKOの美容通信2017年5月号
副腎疲労症候群の治療
とにかく疲れる、副腎疲労症候群。
しかし、そこまで疲れ果てるなんて事はなくても、副腎の機能が十分発揮されないと、大事なステロイドホルモンがキチンと分泌されなくなり、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、花粉症、脂漏性皮膚炎、ニキビやニキビ跡、肌荒れ、ドライスキン、色素沈着、白斑、シミやくすみ、老化等の様々な皮膚の(炎症にまつわる)トラブルの原因にもなります。
副腎機能の低下には、様々な要因が複雑に絡み合って起こりますが、特に、マグネシウム不足、腸内環境不全、カンジダ感染、水銀の蓄積が関与しています。
これ等に対して4つの戦略(治療)、つまり、①食事とサプリメント、②腸内環境改善、③重金属デトックス、④脳機能改善を軸にアプローチを行います。
副腎疲労症候群の概略については、以前特集(美容通信2015年4月号)を組みました。今回はより一歩踏み込んだ具体的な治療について解説します。
ダイジェスト版「とにかく疲れる、副腎疲労症候群とは。」
副腎に影響を及ぼす様々な要因
様々な要因が積み重なって、挙句、とうとう潰れた…。熊やバイ菌、宇宙人等々…不運な遭遇による不可避な事態ではなく、生真面目過ぎる人こそ陥りやすい落とし穴的疾患が、副腎疲労症候群(美容通信2015年4月号)です。
副腎に影響を及ぼす要因には様々なものがあり、例えば以下が挙げられます。
- 精神的ストレス
- 会社、学校でのプレッシャー
- セクハラ、パワハラ
- 苦手な人との付き合い(人間関係)
- 近親者の死、ペットの死
- 身体的ストレス
- 深夜に及ぶ長時間労働
- 過剰な肉体労働
- ダイエットによる栄養不足(美容通信2007年3月号)
- 過剰な日焼け
- 感染症
- アレルギー
- 即時型アレルギー
- 遅延型アレルギー(美容通信2012年9月号)
- 不耐症
- 乳糖不耐症(美容通信2016年9月号)
- アルコール不耐症
- 有害金属(美容通信2006年11月号)(美容通信2016年4月号)
- 水銀
- 鉛
- カドミウム
- ヒ素
- 過敏症
- ハウスダスト
- 化学物質(シックハウス)
- 間違ったストレス解消法
- カフェイン
- 過剰な糖分(美容通信2011年4月号)
- 多量のアルコール
- チョコレート(テオプロミン)
- 間違った健康法
- 朝の果物から摂るカリウム
- 激し過ぎる運動
- 生活の乱れ
- 朝食抜き
- 夜更かし(美容通信2017年1月号)
- ジャンクフード
- 栄養ドリンク
何故、副腎って臓器が疲れるの?
■副腎疲労症候群になりやすい人の、共通点
■夫々の項目は、副腎の働きと密接に関係しています。
- ストレスに対抗するホルモンは、副腎から分泌しているんです。
- 副腎の働きは、生体リズムとリンクしています。このリズムを保つ事が重要なんです。
- 副腎の働きに必要なビタミン、ミネラルが不足します。
- 血糖値の変動を少なくする事が、副腎から分泌するホルモンを節約する事に繋がります。
つまり、副腎疲労は、ストレス、有害ミネラル、食生活の乱れ、血糖調節異常等の様々な原因が複雑に絡み合って起こって来ます。原因の強弱、個別の環境、体調、生活習慣に合わせて治療をしていく事が肝心です。
副腎疲労の対策に、特に必要な栄養素達
■取り敢えず、何か1種類のサプリで事足らしたいなら…アドレナルガード
効率良く副腎疲労をサポートしてくれるサプリメントが、アドレナルガード90。抗ストレスホルモンであるDHEAと併せての服用がオススメです。①副腎機能をサポート、②ストレスマネジメント、③コルチゾールサポート、④エネルギーサポートの4つのサポートをしてくれる超便利物です。お仕着せだって良いじゃないですか(笑)。
■マグネシウム/亜鉛/ビタミンD
ビタミンCやビタミンB群の陰に隠れてしまって、今一つ陽の目を見ない虐げられ≒疎かにされがちな存在が、このマグネシウムと亜鉛とビタミンDです。
- マグネシウム
- エネルギー産生
- 生体恒常性の維持
- 副腎ホルモンの合成
- 心のリラックス
- 亜鉛
- エネルギー代謝
- 抗酸化
- 糖代謝のコントロール
- 細胞の修復
- ビタミンD
副腎の働きに必須な栄養素。
これが分からんと後々苦労する、ステロイド産生経路
ニューステロイド
上図を見て戴ければ一目瞭然。全ての出発点は、コレステロールにあります。
プログネノロンやDHEAは、ニューステロイドとして、ストレス反応に対する神経保護作用を有しています。つまり、コルチゾールを強力にバックアップしてくれるサプリメントだとも言えます。でも、これだけを補充しても、症状が改善するとは限らないんですけどね…。ストレスに於ける副腎の反応は、これ等ニューステロイドの神経保護作用の減弱をもたらします。
因みに、この経路図には載っていませんが、ビタミンD(美容通信2013年3月号)もニューステロイドの一つとして機能している事は良く知られています。
■ビタミンDと神経・精神疾患
NGF、BND等の神経栄養因子の発現を促進する作用があります。又、脳内γGTが上昇し、グルタチオンレベルの上昇させます。その為、神経細胞内酸化ストレスの軽減、細胞死の抑制、PDを始めとする神経変性疾患を抑制します。
- 統合失調症
- うつ病
特に、冬季うつ(winter blue)に関与します。
[冬季うつ]
・20~30歳代の女性に多く、男性の4倍。つまり、患者さんの4人に3人は女性って事です、はい。
・成人の10人に1人が発症と言う報告があります。
・赤道から30度以内のエリアでは、発症が少ないそうです、
・日照時間が短くなり、セロトニン、メラトニンの生合成トラブルとされています。
・日焼けマシーンによるUVBの照射でVD濃度が上がると、うつ症状が改善したんだとか…。
ストレスに於ける副腎の反応
DHEA-sは、血液中の貯蔵型タイプを測定しているので、ネガティブフィードバックがなく、素直に、ダラダラ落ちる様が見て取れます。
副腎疲労の4つの戦略とは
副腎疲労には、特に、①マグネシウム不足、②腸内環境不全、③カンジダ感染、④水銀の蓄積が、大きく関わっていると考えられています。つまり、これだけの改善でも、副腎疲労症候群の重症例!とされる患者さんの半数が症状の軽減を実感するとされています。
ストレスで影響を受けるのは、当たり前ですが、副腎だけではありません。副腎‐脳‐全身に分けて、原因別にアプローチを行う必要があります。例えば、うつやキレ易い等は脳からの症状ですし、疲れ易いはミトコンドリアの機能低下が原因で症状が起こります。
これ等の症状に対し、副腎が幾ら大御所だからと言って、副腎へのサポート系のサプリメントだけでは、どうしても不足してしまします。
<副腎へのサプリメント>←これだけでは足りない!
- ビタミンB、Cの他に、フォスファチジルセリン(HPA連携強化)
- 副腎の抽出物(Adrenal Cortex)と、ロディオラ(ストレスへの耐性を高める)
- 「立ち眩み」に対する甘草(Licorice Root)と、バコパ(鎮静作用、精神安定、記憶力向上)
副腎疲労の4つの戦略とは
■食事とサプリメント
- 適切な糖質!
- GF、CF
- マグネシウムを摂る。
- ビタミンCを頻回に摂る。
- カルシウムを摂らない。
- プロテインを摂らない。
■腸内環境改善
腸内環境検査(美容通信2013年8月号)して、以下を実行!
- 乳酸菌を摂る。
- 消化酵素を摂る。
- グルタミンを摂る。
- ブチル酸を摂る。
■重金属デトックス
- 特に、水銀がターゲット。
- アマルガムをチェックする。
- 大型魚を食べない。
■脳機能改善
- 瞑想によって自律神経の緊張を改善する。
- メチレーション状態、脳機能アンケートによって、脳サプリを決める。
副腎疲労の1つ目の戦略~食事とサプリメント
副腎疲労の疲弊期には、糖質制限をしない!
副腎疲労≒糖質制限のイメージが定着していますが、これは軽度の副腎疲労の人達のお話。本当に、へろっへろに疲労してしまった極期の人には、糖質制限は無理。引導を渡す事になりかねません(笑)。
- 人は、エネルギーを作り出す為に糖質が必要です。
- その為には、安定した血糖値を保つ事が不可欠です。
- 健常人は、「糖新生」により血糖値を保っています。
*「糖新生」とは、主に肝臓で、グリコーゲン等を分解して糖を作る工程の事。この糖新生を行う為に最も必要とされるホルモンが、コルチゾール(他に、アドレナリン、成長ホルモン等)です。
副腎疲労では、コルチゾール分泌が低下しているので、当然、「糖新生」も低下しています。なので、副腎疲労がと~っても重症な人(←決して、軽症な人ではないですよ!)では、寧ろ”糖質を含む食事で、血糖値の維持を助けてあげる”と言う、寛容な心が大事になります。と言っても、精製された糖質は、論外です! 可能な限り控えて下さい。
小麦は、食べてはいけない。
テニス界の王者・ジョコビッチ選手が実践している事から、広く知られるようになったグルテンフリー・ダイエットですが、小麦は、以下の理由により副腎疲労の敵と目されております。
- 腸粘膜を破壊する(美容通信2014年1月号)(美容通信2012年9月号)。
- 遺伝子組み換えが進んでいる…。
- GI値が、チョコレートよりも高い(反応性低血糖)(美容通信2011年4月号)(美容通信2014年3月号)。
- 未消化の小麦が、麻薬様作用!
オピオイド過剰理論 グルテン、カゼインは、中枢神経に於いて麻薬(オピオイド)様の作用があります。その為、神経伝達物質の伝達にも支障を生じます。ナルトレキソンやナロキソン等の麻薬拮抗薬によって、小麦依存が軽減する事が知られています。 牛乳や小麦を好む場合、或いは日常的に多く摂取している場合は、要注意! |
乳製品を控える。
- 腸管粘膜を破壊する危険性!(美容通信2014年1月号)(美容通信2012年9月号)
アレルギー(リーキーガット症候群/遅延性フードアレルギー(美容通信2016年9月号))の解釈;
IgG抗体が多くの食材(抗原)に陽性で、それも殆ど摂取すらしていない食材に対するIgG抗体が陽性の場合、先ずは、不良のリーダー格と目されるカゼインやグルテン等の優先除去(GFCF)を行います。その他の食材については、加工品を避けて、4 days rotation dietsを遵守。これだけでも、後述の戦略の2つ目である、腸管粘膜の炎症の改善、腸内環境(腸内細菌)の改善が認められる症例も散見されます。
- マグネシウムの効果を高める。
一般的にはMg-Caと一蓮托生!?的に語られるCaですが、副腎疲労の人では、Caの過剰な反応を抑える為に、敢えてMgだけを単独に!って作戦が功を奏する事が多いとされています。
しかしながら、食事からの代表格である牛乳・乳製品によって、体に入るカルシウムが増えたからと言って、骨粗鬆症が予防出来る訳ではないんです。論文(J Clin Invest. 1987 October;80(4):979-982. Dietary calcium intake and rates of bone loss in women.)にも、「カルシウム摂取量と骨量の減少には、相関がない!」とはっきり記されています。寧ろ、カルシウム摂取量の多い国ほど、骨粗鬆症の発症頻度が高いって論文(J Nutr. 1986 Nov; 116(11) : 2316-9. Calcium and osteoporosis.)さえ出ています。
- 未消化で、麻薬様作用!
- その他…もろもろ。
■大事な補足:マグネシウム
Mgは、300以上もの酵素反応の補因子として作用し、人体内に存在する殆ど全ての酵素の活性化に関与しています。エネルギー代謝、特に、美容通信でも何度か特集をしているミトコンドリアの働き(美容通信2016年11月号)(美容通信2017年4月号)を円滑に進める為にはなくてはならないミネラルですし、核酸、蛋白質代謝、神経興奮、血圧コントロール、ホルモン分泌等、生理機能の全てに関与しています。ところが、こんな大事なミネラルなのに、ストレスであっという間にすり減ってしまうんです。
栄養素的に一番大事なモノは、ビタミンC。でも臨床的に一番大事なのは、Mgなんです。そんなこんなで、Mg不足に関するエトセトラ、まとめてみました。
- Mgは、エネルギー産生のキーミネラル。
- ATPが働くのに必ずMgは必要!
- 世の中の人は、Caばっかに話題にして、Mgの存在について顧みない現実…。
- 血液検査でも、Mgが足りてるか足りてないか分かんないから、敢えて触れない医者も多い(笑)。
各組織に於けるミネラルの局在を示した表です。(”Hair test interpretation” Andrew hall cutler)
血漿 (細胞外液) |
血漿 (細胞内液) |
赤血球 | 尿 | 毛髪 | 最大と最小の差 | |
ナトリウム(Na) | 3300 | 230 | – | 2800 | 66 | 49倍 |
カリウム(K) | 160 | 5500 | 79.0 | 1600 | 40 | 140倍 |
カルシウム(Ca) | 96 | 0.0004 | 16.0 | 140 | 640 | 1600000倍 |
マグネシウム (Mg) |
29 | 1400 | 620 | 96 | 75 | 48倍 |
リン(P) | 120 | 2300 | 600 | 680 | 320 | 19倍 |
亜鉛(Zn) | 1.0 | – | 11 | 0.33 | 160 | 470倍 |
銅(Cu) | 1.0 | – | 0.680 | 0.023 | 15 | 660倍 |
クロム(Cr) | 0.32 | – | 0.029 | 0.055 | 0.28 | 11倍 |
コバルト(Co) | 0.63 | – | – | 0.0022 | 0.021 | 290倍 |
マンガン(Mn) | 1.7 | – | 0.014 | 0.0020 | 0.31 | 840倍 |
モリブデン(Mo) | 0.00078 | – | 0.00100 | 0.056 | 0.040 | 72倍 |
セレン(Se) | 160 | – | 0.27 | 0.13 | 1.3 | 1200倍 |
細胞外液と細胞内液では、全く異なる値でしょう? つまり、血中ミネラル濃度は、必ずしも細胞内環境を反映したものではありません。血液検査で、細胞内のミネラルの過不足を判断するなんて、見当違いも良いところなんですよ。
臨床では、ALPの値を参考にします。ALP低値の時は、マグネシウムや亜鉛の不足を疑うんです。両者共に、多くの酵素の補因子として働く重要なミネラルで、これ等の不足でエネルギ―代謝が大きく損なわれる為、疲労の原因になります。ただ、ALP値が高いからと言って、MgやZnの不足を決して否定出来るものでもありません。ALPは、骨粗鬆症でも脂肪肝でも、はたまた、成長期のガキでも上昇しちまうからです。
Mgは、毛髪のCa-Mgバランス(美容通信2016年4月号)で見ます。毛髪中Ca↑、Mg↑は、脱灰の亢進=Mg不足を意味します。毛髪中Ca↑、Mg↑、Na↓、K↓は、副腎疲労の、それも疲弊期で、Mgが物凄~く凄~く不足している事を表しています。
- ストレスで滅茶苦茶消費が嵩み、疲弊期には枯渇状態(泪)。
- Mgと言えばにがりですが…、食卓からどんどん姿消しちゃってます。
- 無機質で、吸収が悪い。
ミネラルが中々吸収出来ないのは、ミネラルを吸収する最前線である消化管上皮も細胞で出来ているので、細胞膜の通過にはイオン化している事が必須の条件になります。ところが、胃酸が十分に分泌出来ていないと、pHが下がらず、イオン化が難しくなってしまうからです。実際、MgCl等は、水に入れるだけでも、乖離してイオン化しやすいという特性があります。他にも、吸収妨げられる理由としましては、Mg等の2価のイオンは、膵液でイオン化が戻りやすい事や、脂肪酸と結合して吸収が悪くなりやすい事が挙げられます。
ミネラルを吸収し易くする方法は、①イオン化、そして②キレート化です。キレート化には、グリシン酸マグネシウムや、鉄、ビタミンCが有効です。
マグネシウムは、最低1日当たり6mg/Kgとされていますが、前述の通り経口では吸収が悪いので、経皮吸収としての入浴剤がオススメです(←現在数社から販売されているMgの溶液はありますが、刺激が強過ぎて、とてもそのまま皮膚に塗れる代物ではありません。なので、塗布よりは劣るとは分かっていても、内服よりは遥かにマシという苦肉の選択が入浴剤なんですね。そのまま皮膚に塗れるMgオイルが近々発売されるのではって噂はありますが、未だ噂の域を出ていません)。クリニックでは、ニューサイエンス社のMg入浴剤のお取り扱いしています。詳しくは、スタッフまでお尋ね下さいね。
- ビタミンは腸内細菌さんに頑張ってもらえ(美容通信2016年2月号)ば何とかなるが…、Mgはそうはいかない。摂取の姿勢が問われるミネラル。
- 重金属(特に、水銀やカドミウム)に干渉される…。
●副腎疲労患者さんは、須らくMg不足です。 ●全身全霊を賭けて、手段を選ばず、Mgを摂る事だけに専念しよう! ●しかしながら、腸内環境の兼ね合いってもんがあるので、ただ単に量を増やすだけでは、下痢になるだけ。 ●摂る方法、吸収、重金属との関連も大事です。 |
副腎疲労の2つ目の戦略~腸内環境改善
副腎疲労の患者さんの腸は、実に可哀そうな状況です。 問題点を下記に列挙しますが、これらの改善の為に、乳酸菌(美容通信2016年2月号)やグルタミン(美容通信2012年8月号)、酪酸(美容通信2012年8月号)、消化酵素(美容通信2016年6月号)を使うのは、非常に有効な治療方法の一つです❤ 1つ目の戦略「食事とサプリメント」にも関連しますが、副腎疲労の患者さんには蛋白質の代謝(美容通信2016年6月号)が非常に落ちている人が多いんですが、腸内環境に問題があると、当たり前ですが、中々アミノ酸や消化酵素を加えても、中々改善してくれないんです。唯、腸内環境は、後述の3つ目の戦略である「重金属」の問題が非常に関係をしてきます。
- 乳酸菌が少なく(77%)(美容通信2013年8月号)
- 腹部膨満感が強く(59%)
- 時には、悪性細菌が多く(25%)(美容通信2013年8月号)
- 炎症を起こしており(64%)
- 免疫異常があり(65%)(美容通信2014年1月号)
- エネルギー不足(30%)
カビの菌糸(美容通信2016年9月号)は、兎に角、ロクでもない事を引き起こします。繁殖箇所は口腔から膣まで。腸管も例外ではありません。菌糸が腸粘膜を貫いて血流に達すると、産生物質は当然これに乗って全身に拡がります。リーキーガット症候群が誘発され、IgG↑=遅延性フードアレルギー(美容通信2012年9月号)の完成!とあいなります。同時に、菌糸は腸管でコロニー、バイオフィルムを形成し、善玉菌を駆逐! 治療抵抗性になってしまいます。特に、ピルの服用で腸内環境が荒廃していると、カビにより付け込まれ易くなっているので、要注意です。
上図はエネルギーの産生の場である、クエン酸回路です。酵母菌の生成物質がエネルギー産生を阻害します。
2オキソグルタル酸(αケトグルタル酸)←拮抗→3オルソグルタル酸↑…疲労度がドupする!
有機酸検査(OAT)(美容通信2016年9月号)は、腸管内で酵母菌や悪玉細菌から生じた種々の副産物を調べる検査です。これ等の副産物は、腸管から血液中に吸収され、最終的にはおしっこへと濾過されます。端的に言うと、お買い物の際のレシートをチェックするような検査ですから、正確な消化器系イースト菌と細菌の評価の他、重要な神経伝達物質、栄養指標、グルタチオンの状態、シュウ酸代謝等も分かります。
因みに、カンジダの診断には、うんこ検査も決して悪くはないですが、基本的には尿中有機酸検査とセットで行います。本質は、カンジダに感染しているのではなくて、腸管で幾つかの集団又は”巣”を作る形態で異常増殖しているだけですから、剥がれ落ちた細胞のしかカウント出来ない便検査のみでは片手落ちだからです。それでも、副腎疲労の患者さんでは、便検査でのカンジダ陽性率は47%ですから、推して知るべしなんですけどね。
カンジダ増殖の抑制には、次の3つのポイントがあります。
- 付け入る隙(繁殖場所)を与えない⇒良性菌の大量投与。
- 餌(栄養)を与えない⇒単純糖質(美容通信2011年4月号)は控える! しかしながら…、副腎疲労で本当にボロボロの疲弊期では、前述の様に、実際問題としては無理な事も多いんだけどね…。
- pHを上げない⇒乳酸菌、胃酸、カプリル酸(ココナッツオイル)等。
乳酸菌だけでも、つまり、抗真菌剤を使わなくても、カンジダ・ダイオフが起きる事があります。極度の疲労や発熱、腹がガスでパンパンに張った感じになったり、吐き気や、嘔吐、湿疹、頭痛、鼻詰まり等の症状が起こる事もあります。事前に、肝臓のケアや便秘の解消をしておくだけでも、例え症状が起こったとしても、軽く済みます。
■腸内環境とビタミンB
腸内細菌は、多くの栄養素を活発に合成しています。正常な腸内フローラが合成している栄養素には、①ビタミンK、②ビタミンB1,2,6,12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、③アミノ酸、蛋白質、④短鎖脂肪酸 等があります。これが、腸内フローラの乱れによって、栄養障害が起こる理由の一つと考えられています。特に、ビタミンB群は、腸内環境の影響を受けやすい栄養素です。
ビタミンB群は、抗酸化アプローチの中心的な役割を担っていると考えられています。例えば、大昔から、ビタミンB2やB6等の、過酸化脂質の代謝改善作用等による抗酸化作用は広く知られるところでしたし、葉酸やビタミンB12等が抗酸化を有する事も最近分かって来ました。更に、ビタミンB1やB6は、糖化抑制物質(美容通信2011年4月号)として注目されています。
因みに、統合失調症の患者さんの約2割が、カルボニルストレス性による統合失調症であると言う報告があります。カルボニルストレスとは、最終糖化産物(美容通信2015年10月号)が蓄積した状態の事です。ビタミンB6にはカルボニルストレスを消去する作用がありますが、統合失調症の患者さんは健常者に比べてビタミンB6レベルが低下していたんだそうです(Arch Gen Psychiatry. 2010;67(6):589-597)。
副腎疲労の3つ目の戦略~重金属デトックス
水銀は大いなる問題である
有害重金属については、以前に特集したので、そちら(美容通信2006年11月号)(美容通信2016年4月号)を詳しくはご参照下さい。
メチル水銀は、自然環境で無機水銀から作られます。水銀は、大気中や土壌、海水中では、主に無機水銀の形で存在しています。海水中に含まれている無機水銀は、細菌等の働きで、有機水銀の一種であるメチル水銀に変わります。無機水銀は消化管から殆ど吸収されませんが、メチル水銀はアミノ酸のひとつであるシステインと結びついて、消化管から簡単に吸収され、身体の中で色々なところに入り込む性質を持っています。それにもかかわらず、側鎖が短く、代謝的に安定しているので、生物学的に半減期が長い≒体外に中々排出されないのが特徴です。この為、脳の中に入りこんで神経細胞に傷害を与えたり、お母さんと胎児をつなぐ胎盤の関門を通り抜け、胎児の身体にも入ったりと、多世代間に亘り、多彩な症状を引き起こします。
(メチル)水銀で問題となる症状には、説明のつかない疲労感(85.0%)、説明のつかない辛さ(73.3%)、長期間のうつ(72.0%)、四肢の痺れ(67.3%)、夜間頻尿(64.5%)、四肢の冷感(暖かい日でも)(62.6%)、食後の腹部膨満(60.6%)、記憶障害(物事が思い出せない)(58.0%)、突然怒りがこみ上げてくる(55.5%)、便秘(54.6%)、優柔不断(単純な事でも決められない)(54.2%)等があります。
■水銀が問題視される理由
水銀が問題とされる理由には、以下の3つ挙げられます。
①暴露量の爆買いならぬ、爆増。
中国の悪口を決して言うつもりではないんですが、中国の目覚ましい経済発展を支える火力発電。これが、中国~日本の領域での、急激な水銀の暴露量の増大の原因とされています。汚染されたお魚、特に食物連鎖の関係から、鯛よりも大きいお魚は要注意です。
水銀の源として、お魚さん以外で多いのは、歯の詰め物(アマルガム)です。あと、最近の話題として挙がるのが、ワクチン接種の問題(←唯、アメリカなどでは、巨額な利権が絡むので、学会やセミナー等で否定的な言動をした医者が、翌日川に浮かんでたなんて話は好く耳にするお話で、今や命が惜しけりゃタブー中のタブーとされているようです。「詳しくは、懇親会の席で」がお約束とされています)。
アマルガムが、他の水銀暴露と区別して語られる理由は、①量が多い。②頭蓋内にあるので、中枢神経に移行しやすい! つまり、眼科疾患(緑内障、虹彩炎、色覚異常、ドライアイ、黄斑変性症、軸輳眼球運動障害)、耳鼻科疾患の他、頭痛、耳鳴り、神経痛等の原因になったり、③消化管の上流にあるので、口腔内、腸管内に於けるメチル化、胃腸障害を引き起こし易くなってしまう事が挙げられます。
実際の性悪さの証明ではありませんが、アマルガム除去により酸素飽和度が上昇するなんて報告(Hal Huggins, qoors traial)もあります。上図の写真は、その論文の著者で、有名な歯科アマルガム論争の火付け役ともなったHal Huggins先生のお写真です。アマルガムの市場がワクチンと利権の桁が違ったお陰か…、彼は歯医者の免許を剥奪されたりぐらいの可愛い嫌がらせの受けましたが、生き長らえて、77歳の天寿?を全う致しましたとさ。めでたし、めでたし。
職業的にアマルガムを取り扱う歯科医師の殆どは、アマルガム中毒とも言われ、あるデータによると、尿中アマルガムの排泄量は、一般人が0~5μg/lに対し、歯科医師は30μg/l以上で、驚くべき事に、1.3%の歯科医師では100μg/l以上の値を示したそうです。1987年のスウェーデンでの10年間のスタディによると、他の大学卒の職業より、歯科医師は高い自殺率!を誇り、ストレスとストレスによる鬱に弱い事が分かっています。又、南アフリカの医科開業医の10%は、自殺観念を抱いているそうです。アマルガム使用の歯科医師は、非使用の歯科医師に比べて、集中力の低下、感情的不安定、気分障害がより多く認められたと言う報告もあります。
アマルガム除去は、究極なデトックス(美容通信2006年11月号)とされていますが、安全な!アマルガム除去をしてくれる歯医者さんでないと、×です。詳しいやり方についてはHISAKOは歯医者じゃないので、きちんとプロの歯医者さんに聞いて下さい。半端な充填物の研磨は、単純にアマルガムの流出を促し、それによる急性水銀中毒で物凄く体調が悪化します。ですから、安全なアマルガム除去をやっている歯医者さんは、右図の如く、ラバーダムで、他の組織どころか人まで全て隔離した上で、尚且つ患者さんも削る瞬間に息を止めるなそうな…。ある意味、アマルガム除去は一番危険なデトックス方法とも言えるんですねぇ。
②ミネラル輸送・利用の障害。
中学校の理科の教科書でもお馴染みの元素周期表。一部を抜粋しました。亜鉛は、カドミウムや水銀と同じお仲間なので、キレーション等でデトックスに励むと、悪い仲間に引き摺られて、一緒に体外に出てしまうんです。これが、キレーションするなら亜鉛を飲め!と言われる所以です。また、サプリで亜鉛を幾ら摂っても、皮膚の状態が悪いまんまで、治る兆しがない場合は、水銀をまず除去して、亜鉛の入る隙間をまず作ってあげることから始めないといけません。
③水銀の他にも、鉛、カドミウムは、環境ホルモン指定物質で、エストロゲン様作用を有しています(美容通信2015年9月号)。
ほぼ全てのホルモンの産生、受容体等に関係しています。特に、甲状腺は、デトックスで改善効果が高いのですが、そもそも甲状腺に問題のある人は、副腎から改善してかないと、同じグループに属しているので結果が出ません。
メチル水銀の代謝とデトックス
■メチル水銀による臓器障害
メチル水銀は、体内での組織感応度に差があります。
脳みそは、メチル水銀の濃度が高い部位だと言う事は良く知られていますが、ちゃんと蛋白質を食べているかどうかによって、この水銀の蓄積量に差が出るんだそうです。論文によれば、これはあくまでもマウスの動物実験ですが、通常蛋白質摂取群と低蛋白質摂取群で比較すると、肝臓と腎臓のメチル水銀の蓄積量には差がありません。しかし、脳みそのメチル水銀の濃度については、暴露したメチル水銀の量に関わらず、低蛋白質摂取群では、通常摂取群よりも濃度が高く出たんだそうです。
繰り返しになりますが、組織への水銀移行は、ちゃんと蛋白質を食べていないと、増悪します。特に、脳みそでのその傾向は顕著です。血中メチル水銀は、システイン抱合体として、L型中性アミノ酸輸送媒体を介して脳みそに移行します。
このアミノ酸トランスポーターは、濃度依存で競合します。システインと、アスパラギン、アラニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン、スレオニン、セリン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、メチオニン、ロイシンは競合関係にあるとも言えます。これが、蛋白質の不足により、脳内への移行が増加する理由です。又、インスリン存在下では、脳内移行の増加が示唆されています。
■メチル水銀の代謝
メチル水銀は、腸管からシステイン抱合体として吸収され、門脈に入ります。肝臓でグルタチオン抱合体となり、その後、血液や胆汁中に分泌されます。ですから、メチル水銀の排泄(デトックス)には、肝臓に於けるグルタチオン抱合が鍵となります。絶食や低蛋白食で、肝臓のグルタチオン活性は急激に低下します。含硫アミノ酸の、つまり動物性の!って意味ですが、この含有量に依存しています。
血中のMeHg-グルタチオン抱合体は、その90%がアルブミンと、10%がグルタチオンと結合しています。これらはシステイン抱合体として、一部は近位尿細管から腎排泄されます。蛋白質をロクに食べない状態では、腎臓からの、つまり尿中の水銀排泄量は著しく低下し、有効なデトックスが行われません。
胆汁中のMeHg-グルタチオン抱合体は、胆管にてシステイン抱合体となり、腸肝循環を形成し、腸内細菌によって無機Hgとなり、その一部はうんこから体外に排出されます。
副腎疲労の4つ目の戦略~脳機能改善
必要なのは、鈍感力!
ストレス反応には、2系統あります。
- [内分泌系]脳下垂体⇒ACTH⇒副腎皮質⇒コルチゾール⇒標的細胞
- [神経系]自律神経⇒副腎髄質⇒アドレナリン⇒標的細胞
副腎髄質は、脳下垂体のホルモンコントロールを受けずに、髄質中に入り込んでいる自律神経の電気インパルスによってのみ、コントロールされています。私達の精神的なストレス反応で大事なのは、副腎髄質過剰反応による自律神経失調症です。
ストレス反応は、本来は、ジャングルでライオンに襲われた時、餌食にならずに生き長らえる為の「闘争と逃走」反応でした。
- 副腎が肥大する⇒怪我の修復、炎症を抑える
- 胸腺が委縮する⇒ストレスによるアナフィラキシーショックを防止する
- 胃粘膜が萎縮する⇒断食による免疫増強効果
その他にも、瞳孔散大、心拍数増加等があります。
しかし、現代社会では、ジャングルでライオンに襲われる事は、まずもってありません。精々、イオンモールでナイフを振りかざした殺人鬼に「誰でも良かった!」と襲われるか、違法ドラッグで爆走した車が猛スピードで向かって来るとかでもない限り、殆どが慢性のストレスです。ですから、従来のライオン仕様に特化したストレス反応システムは、寧ろ緻密過ぎるが故に、慢性の精神的ストレスに対しては却って徒となってしまいます。つまり、現代社会のストレスの形態に、未だ身体のシステムが適応出来ていない為に起こる、謂わば、発展途上?交代途中?の悲劇≒副腎疲労って言えます。
ハンス・セリエは、次の様に述べています。「人は様々な原因で病気になるが、発病初期にはいずれも同じ様な舌の荒れ、発熱、胃腸障害、体の痛み等の「ありふれた症状」(非特異的症状)を示す。又、ラットに様々なストレスを負荷すると、いずれも同じ変化(非特異的反応)が現れる。これらの人とラットで認められる一見懸け離れた現象は、実は大自然が防衛の為に作り上げた根本的な仕組み、つまりは大自然の摂理の現れではなかろうか」と。
つまり、副腎疲労は人間の宿命であり、全ての慢性疾患の陰に、副腎疲労があるとも言えます。
■マインドフルネス瞑想法
瞑想によって自律神経の緊張を改善するのは、決してライオン仕様ではないですが、現代社会特有の慢性ストレスに対する過剰防衛の回避には、非常に有効な方法です。
マインドフルネス瞑想法は、マサチューセッツ大学メディカルセンターのストレスクリニック等の、専門医療施設でも行われている治療方法です。グーグルやインテル等、お馴染みの欧米の有名企業では、能力向上のトレーニングとして、この瞑想法を取り入れているそうです。評価や価値判断に囚われる事無く、今の瞬間に意識を向ける_。これを実践する事で、ストレスの軽減、脳の活性化、チームワークや生産性の向上、創造性の発揮等、様々な効果が注目されています。
ひたすら呼吸に注意を向けて下さい。練習を続けるうちに、リラックスした状態が訪れます。 ①座ったまま目を閉じて、力を入れずに背筋をまっすぐ伸ばします。 ②呼吸に注意を集中します。呼吸のリズムは自然に任せ、どんな風に感じているかを感じ、空気が入り、そして出て行くのを、客観的に観察しながら、呼吸を意識します。 ③この状態を3分間続けて下さい。 |
呼吸がキチンと出来る事が重要! 副腎疲労の患者さんは、呼吸がキチンと出来ていない人が殆どなんですよ。
脳の部分的な活性度から、症状が分かる!?
副腎疲労の患者さんでは、特に、大脳辺縁系と大脳基底核に異常が認められる人が多いとの報告があります。
脳の部位と働き、機能低下時とその対処法は、以下の通り。
- 前頭前野:機能低下で、衝動が抑えられなくなる。ドーパミンの分泌低下が認められる。対処方法としては、計画を紙に書く、運動、SAMe、チロシン、アダプトゲン。
- 前帯状回:機能低下で、強迫的になる。セロトニンの分泌低下が認められる。対処方法としては、選択肢、運動、5HTP。
- 大脳辺縁系:機能低下で、悲観的になったり、鬱になる。コルチゾールの分泌低下が認められる。対処方法としては、日記、感謝、運動、ボランンティア、ビタミンD、SAMe、DHEA。
- 大脳基底核:機能低下で、不安神経症になったり、過食になる。GABAの分泌低下が認められる。対処方法としては、リラックス、フェイスブックを止める、GABA、ビタミンB6、Mg、NAC、フィッシュオイル。
■うつ病の生化学対応と神経伝達物質のアンバランス
ウィリアム・ウォルシュ博士によれは、うつ病は幾つかの生化学タイプに分けられるそうです。
- 低メチレーション(38%):低セロトニン、低ドーパミン
メチレーション回路とは、遺伝子発現を抑制する「メチル基」を作りだす代謝機構の事です。メチレーション回路に異常があった場合、この代謝機構を正常化させる為に使われる栄養素が、メチル葉酸やSMAe、ビタミンB12、メチルコバラミン、グルタチオン等です。
- 葉酸欠乏(20%):高セロトニン、高ドーパミン
- 銅過剰(17%):高ノルエピネフリン
- ピロール異常(15%):低セロトニン、低GABA
- 重金属(5%)
- その他(5%)
副腎疲労攻略の為の、オマケ戦略
甲状腺ホルモンについて
甲状腺機能低下症(美容通信2015年3月号)(美容通信2016年11月号)の症状と、副腎疲労の症状は非常に似通っています。症状を列挙すると、以下のようになります。
- 喉:喉に違和感、触診にて喉の腫れ
- 疲労感:疲労感、倦怠感、易疲労感、動作緩慢、傾眠、嗜眠
- 気力、記憶:無気力、記憶力低下、集中力低下
- 体温低下:低体温、寒がり、発汗減少、皮膚乾燥
- 腸、その他:便秘、体重増加、浮腫み、抜け毛・脱毛、目の下のクマ
- 女性:月経過多、月経不順
- 子供:成績低下、成長停止(身長、体重)
■甲状腺機能低下と女性ホルモン
甲状腺機能障害は、女性ホルモンに影響し、不定愁訴の原因になります。因みに、ビタミンD(美容通信2013年3月号)の濃度をUPさせるだけで、TSHの値は下がるんですよ。
■PMS(月経前症候群)
アメリカ精神医学会DSM-Ⅳによると、PMSは、「黄体期の最後の週の殆どの時期に症状が存在し、卵胞期の開始後数日のうちに軽減する」のが特徴。
[PMSの症状]
症状としては、①月経前の身体的症状としては、乳房のハリ、肌荒れ、浮腫があります。②月経前の精神症状としては、ⅰ)イライラ、怒りっぽい、ⅱ)抑うつ、希望喪失、自己否定的な思考、ⅲ)著明な感情の不安定:悲しみ、涙もろさ、拒絶感、ⅳ)眠気、疲労、食欲の変化があります。
[PMSの原因]
PMSの原因は、月経周期と精神症状に関係がある事から、①エストロゲン-プロゲステロン不均衡説が一つとして考えられています。エストロゲンには、気分高揚作用や抗うつ作用があり、抗うつ剤同様に躁を来たす可能性があります。プロゲステロンには、気分の安定化作用があります。実際、黄体機能不全や排卵困難、PCOS等のプロゲステロン分泌不全又は、エストロゲン-プロゲステロン両者の分泌不全を伴う症例が多く見られます。
②潜在的な甲状腺機能低下の関連が、PMSの原因として注目されています。T3、T4、TSHの基準値は正常であっても、TRHテストでTSHの増加が過大な状態は、十分に潜在的な機能低下を示唆する所見です。臨床では、T3、T4の値が正常範囲であっても、TSHが基準値内の上限、T3、T4が正常値の下限の場合も、機能低下と考えます。
[PMSの治療と栄養療法]
治療ですが、三重大学精神科小森らの論文によれば、「若年性周期性精神病に対してプロゲステロンを使用し、更年期に発症した非定型精神病やうつ病に対してエストロゲンを用いる」。又、肝臓に於けるホルモン代謝の異常により、高エストロゲン状態が生じるので、これ等に対しては、腸肝循環のトラブルの関与を疑うのと同時に、イソフラボン(美容通信2016年8月号)でバランスをとるという戦略もありかなと。
- 潜在性甲状腺機能低下症に対して
- 蛋白質/アミノ酸の供給:チロシンが、特に重要。生体では、フェニルアラニンから生成されます。
- 合成過程に必要な栄養素:鉄、亜鉛等のミネラルが、特に重要。膜障害がある場合は、積極的な補正が必要です。
- 女性ホルモンのバランス補正など
- イソフラボン(美容通信2016年8月号)
- γ-リノレン酸
- ビタミンD(美容通信2013年3月号)
- プロゲステロンクリーム(美容通信2015年9月号)(美容通信2010年8月号)
- DHEA、pregnenolon等の利用(美容通信2010年9月号)
■甲状腺と肝臓
基本的に、甲状腺は、プロホルモンT4(thyroxin)を分泌します。肝臓や筋肉等で、生理的により強い活性を示すT3に変換されます。この変換酵素はiodtyronin deiodinaseと呼ばれ、局在と調節の異なるDio1とDio2と言う2種類の酵素があります。Dio1は、肝臓に強く発現し、T4をT3に変換する主要な酵素です。ですから、肝臓がイカレていると、T3に変換が出来ず、パワーが発揮出来ません。Dio2は、光刺激によって視床下部に発現し、T3を誘導します。この事からも、概日リズム総司令塔のメラトニン(美容通信2017年1月号)の子分であるコルチゾールの分泌(美容通信2015年8月号)にも、大いなる関係性がある事が理解出来ます。
低血糖
■夜間低血糖と精神症状
第47回欧州糖尿病学会(2011年9月Lisbon, Portugal)によると、米、英、仏、独の18歳以上の1086例を対象に、「重篤でない夜間低血糖が、個々人の生活、健康等に及ぼす影響」をネット調査したところ、低血糖を起こした当夜の精神症状については、大部分の患者さんで睡眠の質に影響があり、13%は途中覚醒後は入眠が困難な状態だったそうです。又、発作を起こした翌日は、22.7%は遅刻や終日勤務が出来ず、31.8%は会議や作業を休んでしまったそうです。頭痛や遅延感覚、疲労・倦怠感、仕事への悪影響(仕事が出来ない、或いは上手く行かない)等の訴えが目立ちました。
患者さんの感情への影響としては、低血糖自体への恐怖や、「2度と目覚める事が出来ないのではないか」と言った怖れ、罪悪感、不安がありました。
■低血糖症に付随する症状
症状は、血糖値に依存するものではなくて、寧ろ激しい症状の時は、意外と血糖値は正常だったりする事が多いのが現実。
HAAF(hypoglycemia-associated autonomic failure)と言う概念~繰り返される低血糖による自律神経調節障害です。抗インスリンホルモンの反応性の低下が数日間継続します。特に、コルチゾールとエピネフリンの分泌低下が著しいのが特徴。脳内乳酸の上昇により、GABAレベルが上昇し、エピネフリンへの反応が低下。これにより、低血糖発作の悪循環が起こります。
■低血糖症に治療の考え方
糖質制限食だけでは、不十分。つまり、食後高血糖とその後の反応性の低血糖は、糖質制限食により防ぐ事は出来ます。しかし、空腹時や就寝時の低血糖の防止としては、糖質制限食だけでは不十分なんです。糖新生の為の回路を如何に活性化させるかが、重要なポイントになります。①副腎の機能、②筋肉量、③肝機能の3つです。
グルコース-アラニン回路は、肝臓から筋肉にグルコースを供給する代謝回路です。肝臓ではアラニンからピルビン酸に変換され糖新生によってグルコースが作られます。筋肉ではグルコースが解糖系によってピルビン酸に分解され、アラニンが作られます。グルコースとアラニンの両物質は、血液を介して循環しています。
BUNが低値の時は、この回路が十分に回っていない事を意味します。
副腎疲労の治療は、単に「とにかく疲れる。」人だけのものではない。
同じ系統の疾患群には、共通の治療アプローチがある
患者さんの病態の主原因が、3つのうちの何処にあるかによって、アプローチの方法が異なって来ます。
- 疲労系:疲労を主訴とする疾患。
- 免疫系:リウマチやアトピー等、通常ステロイドが治療に用いられる疾患。
- 精神神経系:統合失調症、うつ等の神経伝達物質が問題になる疾患。
例えば、アトピーやリウマチ等の免疫系疾患の際の、免疫の過剰反応には、必ず何らかの原因があります。その原因(隠れた感染や炎症、化学物質や重金属汚染等)を見つける事が、極めて重要になります。それを除去せずに、高くなった免疫状態だけをステロイド剤で抑える事(≒対症療法)が、病態を複雑にしています。つまり、この様な治療により、免疫を抑える為に、自然な免疫寛容のシステムが働かなくなります。又、ステロイドのフィードバックにより副腎が、萎縮します。ですから、この様な免疫系の疾患の改善にも、副腎疲労の治療が必要なのです。
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
関連ページ
関連するHISAKOの美容通信をピックアップしました。
来月号の予告
<アミノインデックス>で、年に1回の、お手軽な癌スクリーニングをしましょう。