皮膚の病気と漢方薬(漢方薬・下) | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2006年7月号

皮膚の病気と漢方薬(漢方薬・下)

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漢方薬は、体質改善のみならず。実は、攻めも守りも得意なんです。

 とうとう、7月になってしまった。
沖縄はとうに梅雨が明けてしまったようですが、東京は何時の事やら‥。
鬱陶しい季節ですが、夏はもうすぐ!
今月の特集は”漢方薬・下~皮膚の病気と漢方薬”です。
長らくお待たせしました(笑)。

アトピー性皮膚炎

 皮膚は内臓の鏡。 だから漢方業界では、皮膚の病気を皮膚だけの病気とは考えません。<体質改善したら、皮膚も良くなったよ!>って言うのが目標です。

ポイント1. あの”痒~い!”を先ず抑える。

 アトピー性皮膚炎に限った事ではありませんが、治療をしていく上で一番大事な事は、”掻かない!”。だから、痒みを抑えるお薬、つまり黄連解毒湯(15)などがファーストチョイスなの。これに勝る処方なんて、ございません(笑)。
  • 黄連解毒湯(15)
<成分>黄ごん・黄連・山梔子・黄柏 ”黄連”は、熱を取り、乾かす生薬。だから、赤く腫れ、熱感が強い湿疹に効果があるんです。先ず炎症を抑えなくっちゃ!て時に、出動する消防車のような漢方薬ですかね。漢方薬界では、結構、出番多し。因みに、元々、皮膚が”ぐじゅぐじゅ”じているのを”さらさら”に乾かしてくれる作用があるお薬なので、がっさがさって超乾燥肌には向きません。悪しからず。偶に下痢っピーになっちゃう人もいるのも、難点と言えば難点です。

乾かすと言っても、水気をさっとオシッコで流す訳じゃないから、汁気ぐちゅぐちゅの皮膚炎まで進化(!)されちゃうと、流石に辛い。そんな時は、石膏が入った消風散(22)!
  • 消風散(22)
<成分>石膏・当帰・地黄・牛蒡子・蒼朮・防風・荊芥・木通・胡麻・知母・苦参・蝉退・甘草
”石膏”が入っているものって、熱を取りながらも、全てを小水に流してくれるから、ジュクジュク派にも嬉しい。赤く爛れた地肌に、へとべとお汁が滲んだり、瘡蓋が散在する‥と言った、分泌物の多い、痒みや熱感の強い湿疹の定番です。夏場のブラかぶれにも。
  • 治頭瘡一方(59)
image281因みに、ガキの頭には、コレ! 名は体を表すではありませんが、素人でも字面を見れば何の薬か判っちゃう漢方NO.1。治頭瘡一方(59)です。
痒みが納まって来たら、温清飲(57)→柴胡剤と、徐々にステップ・ダウンして行きます。
  • 温清飲(57)
<成分>地黄・当帰・芍薬・川きゅう・黄ごん・山梔子・黄柏・黄連
四物湯と黄連解毒湯の合方です。
四物湯は、血の巡りを良くして、かさかさ枯葉肌に水気を齎してくれるお薬です。ですから、”内を温め、外の熱を清する”この漢方薬は、赤味を帯び熱を持った、超が付く程に痒~い、乾燥し切ってガザガザになった皮膚炎に服用下さい。
ここで注意をしなければならないのが、ステロイド剤を塗って取り敢えず炎症を抑えているような場合。”中に熱がこもって、外に現れてない”だけの話ですから、幾ら”渋紙様”の外観であったとしても、当然、飲むと坂を転げ落ちる様に症状が悪化します。‥だから、温清飲かな?と思っても、先ずは黄連解毒湯から始めるのが良い子のお約束です。
  • 柴胡剤
柴胡剤は、中和解毒剤の代表格! リンパ球を中心とした免疫学的な生体反応修飾剤なんです。その上、抗炎症・免疫調節、中枢及び自律神経調節、消化器症状改善etc.と、結構芸達者な一面も。駆お血剤と共に、慢性疾患の心強い友です。

勿論、症状に応じてステロイド剤を使いながら、場合によってはステロイド中止によるリバウンドを覚悟しながらの苦しい茨の道連れである事もありますが‥、仕方がないですかね。

ステロイドと漢方薬

image282  皮膚科領域でも、アトピー性皮膚炎を始めとする所謂難治性の病気に、ステロイドは良く処方されるお薬です。”あり得ないくらい(!?)”良く効くお薬なのですが、ずーっと使うと足抜けが出来ない=悪いヤクザかお仲間もどきってイメージから、怖い!→絶対、嫌!→親の遺言でステロイドだけは使うなと言われているとのたまう患者さんまで出現する始末(笑)で、”何でも良いから、ステロイド以外を!”なんてリクエストに、目が白黒してしまう事もあります。

 でも、必要な時には、ステロイドは使わざる得ません。唯、ステロイドの陰の顔=有害作用の軽減目的や、ステロイドの減量・離脱の段階で、漢方薬を併用するって選択はありです

 何で、たかが漢方薬風情がそんな大役を!と、思う方もいらっしゃるかもしれません。が、漢方薬は、ステロイドではないけれど(当たり前か!)‥、ステロイドに極めて近い作用を持ってるから。天然の生薬の中には、化学構造的にステロイド骨格を持つものって、結構と言うか凄く多いんです。ステロイド剤の工業生産の歴史を紐解くと、元々は、ステロイド剤は山芋なんかの天然生薬から抽出製造されていたんですからね。

 そもそもステロイドホルモンは、私達の体の中では、肝臓で作られるコレステロールを原料に副腎で作られる”貴女の体製の”お薬。ショックや怪我、ストレス等の非常事態が起こった時に、体を守る為の防御システムのひとつなんです。漢方薬の基本は、私達の体を良い状態に保つ事。だから、ステロイドホルモンを始めとする”体の中にあるお薬”の働きにも密接に関わっているんですね。色んな体のシステムを介して、ステロイド剤の長所を伸ばし、短所を正してくれたりetc.と、心強い女房役じゃない女房薬なんです。

ポイント2. 心理的増悪因子を排除しよう。

お子ちゃまとか、多感なお年頃のアトピー・キッズは、多少なりともストレスや親子&異性関係等の心理的な要因から、症状が不安定になりやすいもの。こんな時は、抑肝散(54)と黄連解毒湯(15)の併用が効果的です。

ポイント3. 体質改善

アトピーの体質改善‥はっきり言って、時間が掛かります。症状に応じてステロイド剤を使いながら、十全大補湯(48)や小建中湯(99)・黄耆建中湯(98)などの”補剤”で、別の角度からステロイド離脱が容易になる様な体質作りをしておく事ですかねぇ。因みに、”補剤”については、下記を参考にしてね。
補剤 image283
 漢方薬の妙味は、現代医療にないこの”補剤”の活用にあります。消化機能や免疫能の賦活剤の意味で、人参湯、補中益気湯、十全大補湯、六君子湯、真武湯、八味地黄丸etc.がその代表的なものになります。

まあ、漢方薬による治療は、サッカーに似ています。攻撃のFWは、”瀉(取り除くの意)”。守りのDFは、”補(抗病力を鼓舞する意)”。中盤を固める攻補兼務のMFは、”和剤”。この持ち味の異なる3種を如何に組み合わせるかが、漢方治療の面白さでもあります。FWが攻めあぐねたら、一旦DFやMFにボールを戻し、体勢を整えてから、もう一度攻撃♪とかぁ、ね。
攻める薬:体内の病理的産物を、発汗・瀉下・利尿等で速やかに取り除くのを使命とする炎のFW
○発汗剤・発表剤=急性熱性疾患の初期に麻黄や桂枝が大活躍。麻黄湯・葛根湯。
○清熱剤=消炎解熱し、体液の保持を図る! 白虎湯等の石膏剤や、黄連解毒湯の黄連剤。
○瀉下剤=治癒機転を鼓舞。大承気湯・大黄牡丹皮湯等の大黄剤。
○駆お血剤=微小循環障害や静脈系の血流を改善して、治癒機転を高めるお薬。桂枝茯苓丸・桃核承気湯etc.
○利尿剤=オシッコで流す。膠質浸透圧の調節もしてくれる。五苓散・猪苓湯etc.
守る薬:田中誠・宮本恒靖・三都主アレサンドロ・中澤佑二・中田浩二・坪井慶介・加地亮・駒野友一‥。この美容通信を皆が読んでる頃には、もう世界一が決まってるんだろうなぁ。
○表(体表)を守る=桂枝湯・桂枝加黄耆湯。
○裏(内臓)を守る
・消化器の機能を鼓舞=小建中湯・人参湯etc.
・副腎の機能を鼓舞=真武湯・茯苓四逆等etc.
・肝臓の機能を鼓舞=芍薬甘草湯・当帰四逆湯etc.
○半表半裏=血管・支持組織・リンパ球等の免疫調節システムを守る。小柴胡湯etc.
  • 十全大補湯(48)
<成分>地黄・当帰・茯苓・白朮・人参・黄耆・川きゅう・芍薬・桂枝・甘草
御存知、術後の体力増強・回復の定番薬。アトピー性皮膚炎の急性増悪期や、ベロベロとかぁ、ドロドロとかぁ、グジャグジャとかぁ、まあ、見た目的に如何にもこ汚らし~い!って状態に、抜群に効きますね。だから、ステロイド剤中止後のリバウンド(教科書には、”目を背けたくなるドロドロの”って平気でおぞまし~い言い回しをしてくれちゃいますが‥)、これを乗り切る為には必須です。
でも、地黄が含まれてるので、食欲不振とか、下痢っぴにゃんにゃんになっちゃう人もいる。尤も、地黄含有系としては、一番消化器系に負担が少ないお薬はお薬なんですが‥。
  • 桂枝加黄耆湯・小建中湯(99)・黄耆建中湯(98)
image527 <成分>小建中湯:芍薬・桂枝・大棗・甘草・膠飴・生姜
黄耆建中湯:小建中湯+黄耆
虚弱者の体質改善♪ 小建中湯は、ガキから爺婆まで、おねしょったれ、胃腸炎、喘息、紫斑病、老化による様々なトラブルと言った慢性疾患の体質改善に、頻用される定番漢方薬。
桂歌丸師匠の背中って、きっとこんなんだろうなって想像してしまう様な皮膚炎に効く。皮膚に艶がなく萎黄色で、薄紙の様にカッサカサ‥。小建中湯(99)も良いですが、プラス黄耆した黄耆建中湯(98)の方がアトピーの体質改善には優れるかな。
寝汗etc.を掻き易く、グジグジ系なら、桂枝加黄耆湯!

蕁麻疹

蕁麻疹については、以前の特集(美容通信2006年4月号)も参考にしてね。

    基本は、”痒み”を取り敢えず黄連解毒湯(15)で抑える

    そして、体質改善です。一般人の場合は、こんな感じかな。

胃腸が弱い山根君が、サバ喰って蕁麻疹になった!(急性で、ご飯が原因の蕁麻疹♪)

  • 香蘇散(70)
<成分>香附子・陳皮・紫蘇葉・甘草・生姜
食べ物による急性蕁麻疹には、これだね。

なんかさ~ぁ、胃の調子が悪い時に限って、蕁麻疹が出んだよなぁ。

  • 補中益気湯(41)
<成分>黄耆・白朮・人参・当帰・柴胡・大棗・陳皮・甘草・升麻・生姜
気力・体力共に磨耗したお疲れモード人に、強力なサポートを提供。
  • 六君子湯(43)
<成分>人参・白尤・茯苓・半夏・陳皮・大棗・甘草・生姜
裏技としては、香蘇散(70)を併用して、拗れた子を成敗!

便秘がちなら、先ずうんこを出すのがお約束。大黄剤や潤腸剤の登場です。

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  • 茵ちん蒿湯(135)
<成分>茵ちん蒿・山梔子・大黄
オシッコでも、うんこでも、何でもかんでも溜め込む吝嗇体質の人が蕁麻疹になったら、これを飲もう。

ストレスが全ての元凶!! 思い当たるものは他には無い! こんな人には”柴胡剤”が基本だけど、鬱っ気があるなら半夏厚朴湯(16)かねぇ。

  • 大柴胡湯(8)
<成分>柴胡・半夏・黄ごん・芍薬・大棗・枳実・生姜・大黄
感情の起伏は、不意に私を襲う‥。イライラに襲われる前に、体質改善!
  • 半夏厚朴湯(16)
<成分>半夏・茯苓・厚朴・紫蘇葉・生姜
良く香蘇散(70)と比較される半夏厚朴湯(16)ですが、虚証派御用達の香蘇散よりも、ちょっとばかし元気ハツラツ猪系実証族寄りって事がポイント。ストレス世代に圧倒的に支持多し。まあ、参考までに、人物像を描いてみましょう。心理的葛藤を身体表現にして開放するタイプ。精神的に行き詰ると、”弱い”所・”敏感”な所に、不快な症状として具体的に現れる。即ち、愁訴でガス抜きをしちゃってるのが本態で、ある意味末梢性気鬱とも。どっちにしろ、厚朴を飲まざる得ない人って、何か、顔の表情でも、筋肉でも、性格でも、”硬い(固い?)”んだよねぇ、本当に。

お血っぽいなら、桂枝茯苓丸(25)とか、桃核承気湯(61)、大黄牡丹皮湯(33)ですかね。

  • 桂枝茯苓丸(25)
<成分>桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬
ロシアの農婦のような‥。
  • 桃核承気湯(61)
<成分>桃仁・桂皮・甘草・大黄・芒硝
桃核承気湯(61)と大黄牡丹皮湯(33)は良く似ているんですが、まあ、端的に言いますと、限局的にどっか体の一部で押し留まってるようなら大黄牡丹皮湯(33)だし、これがもう、脳みそまで波及して大パニック!になっちゃったなら桃核承気湯(61)と区別します。<赤鬼みたいな顔をして、狂った様に掻き毟る>が、この漢方のキーワードではありますが、桂枝を含む処方が故に、却って痒みが酷くなる=泣きっ面に蜂現象も稀に見られる。
  • 大黄牡丹皮湯(33)
<成分>瓜子・牡丹皮・桃仁・・大黄・芒硝

”冷える”と出る様なら、真武湯(30)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)、当帰芍薬散(23)

  • 真武湯(30)image284.jpg
<成分>茯苓・芍薬・蒼尤・生姜・附子
  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)
<成分>大棗・桂皮・芍薬・当帰・木通・甘草・呉茱萸・細辛・生姜
  • 当帰芍薬散(23)
<成分>大芍薬・蒼尤・沢瀉・茯苓・川きゅう・当帰

”風呂上りに”蕁麻疹一発!消防車の出動です。

  • 黄連解毒湯(15)

デブには、防風通聖散(62)!

偏見と誹謗されようと仕方ありませんが、米国の猟奇的な連続殺人を犯しそうな‥ジャンクフードばっか喰ってそうな‥ちょっとオタッキーな贅肉ブルルンの白人の中年男って、映画で見る限りは、店晒しされた蝋人形みたいな、精気のな~い、小汚な~い皮膚をしている気がするんです。何か悪いものを只管溜め込んでしまった様な病んだ肌‥そして、体型。そんな彼が蕁麻疹になったら、私は迷わず、防風通聖散(62)を処方すると思います。‥でも、もし貴女がツムラの62番を処方されても、いじけないで下さい。あくまでも、誇張したイメージです、イメージ!
  • 防風通聖散(62)
<成分>滑石・黄ごん・甘草・桔梗・石膏・白朮・荊芥・山梔子・芍薬・川きゅう・当帰・薄荷・防風・麻黄・連翹・生姜・大黄・芒硝
麻黄を含んでいるお薬です。

註:麻黄(MAOH)=発汗、鎮咳、抗炎症、抗アレルギーetc.の多彩な作用があります。エフェドリンが含まれているので、狭心症・心筋梗塞の既往のある人には禁忌だし、胃腸の弱い人にも×。だから、この成分は、謂わば若者の特権だね。 グレてヤンキー化した皮膚の病気全般に効きます。体の中に溜まった悪い物を、汗やおしっこ、うんこと一緒に体の外に出しちまって、病気の治りを良い方に後押ししてくれる漢方薬。

火照って痒い癖に、汗も出やしない。なら、桂枝麻黄各半湯(桂麻各半湯)かな。

image285桂麻各半湯は、葛根湯(1)と共に麻黄を含んでいるお薬群で、ギャル系や若造系の湿疹や蕁麻疹にも効きます。電撃石化の攻撃と言うか、奇襲戦が得意分野なので、出遅れてはいけません。怒涛の如く、悪いものを汗やオシッコやうんこと一緒に体外に排出します。(因みに左図は、日本海軍不朽の名機、<A6M5 零式艦上戦闘機52型>! 言わずと知れた真珠湾攻撃から特攻終戦までを戦い抜いた、日本海軍の代表的戦闘機です。三菱製。) ‥でも、出遅れて散々拗らしちゃったら、防風通聖散(62)の登場です。

更に加えて言うならばですが、ガキには、小建中湯(99)か柴胡桂枝湯(10)。

  • 小建中湯(99)
虚弱者の体質改善♪ 慢性疾患の体質改善に、頻用される定番漢方薬で~す。
  • 柴胡桂枝湯(10)
<成分>柴胡・半夏・黄ごん・桂皮・芍薬・大棗・人参・甘草・生姜 守るも攻めるも自由自在! 攻守兼務のお薬です。

御婦人には、香蘇散(70)か、加味逍遥散(24)。

  • 加味逍遥散(24)
柴胡剤の代表格! でも華奢な貴婦人向けです。
  • 香蘇散(70)
胃腸虚弱な山根君をオバさんにして、小声でボソボソと要領を得ない事訴えるようなら、先ず処方!とも教科書には書いてある(←こんな言われ方したくね~よ!)。

爺&婆には、補中益気湯(41)か真武湯(30)。

  • 補中益気湯(41)
気力・体力共に磨耗した(?)老人に、強力なサポートを提供♪がモットーです。
  • 真武湯(30)
教科書にはこんな風に記載がされています。加齢によって胃腸機能が衰退し、生命維持の基本的エネルギー源である食物の同化作用の低下を基盤に(ココまでなら単に補中益気湯(41)で十分なんですが、ココに次の事柄が加わると、真武湯(30)じゃなきゃって御指名が入るのです! 加齢や久病による新陳代謝の低下と寒冷刺激によって臨床症状が発現するものを適応とす。‥附子の力って奴ですかね。

尋常性乾癬

image529”乾癬”の美容通信(美容通信2008年4月号)も読んでね。

はっきり言います。殆ど効きません
ちびまるこちゃんの小杉君なら、過食や偏ったご飯を改めて、黄連解毒湯(15)や、大柴胡湯(8)、防風通聖散(62)を飲めば、一時的(!)には効きますかねぇ‥。山根君やおじいちゃんの友蔵は‥、う~ん、難しい‥。
基本は、全身状態を勘案してでしょうか。
  • 黄連解毒湯(15)
斑疹が真っ赤!! ノリに乗ってる尋常性乾癬♪
  • 桂枝茯苓丸(25)
斑疹の色調が暗赤色、角質肥厚著明の時に飲みましょう。
  • 当帰飲子(86)
<成分>当帰・地黄・疾藜子・芍薬・川きゅう・防風・何首烏・黄耆・荊芥
斑疹が薄いピンクの桜色で、カサカサと剥がれ易い皮膚屑がペロペロ・ヒラヒラ♪
実は応用編として、人に言えないあんな所♪、つまりデリケートゾーンに汗をかいて、蒸れ蒸れ→皮疹に進化してしまった時の救世主でもあります。
  • 防風通聖散(62)
脂っこい食べ物、ジャンクフード、アルコール漬けetc.と、体の中からアメリカナイズされた不摂生の塊で、これで地獄に落ちた人用。

掌蹠膿疱症

unit015B15D ”掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)”の美容通信(美容通信2006年5月号)も参考にしてね。 はっきり言って、症状が激しく出ている時には、DuaLightが一番良いと思う。これに勝るものはないと思う。でも、漢方薬を併用するのも悪くは無いと思う。慢性の疾患だしね。
  • 越婢加朮湯(28)
<成分>石膏・麻黄・朮・大棗・甘草・生姜 紅斑と小水疱が主体の初期段階に、攻めて攻めて攻めまくる!
  • 三物黄ごん湯(121)
<成分>地黄・黄ごん・苦参 痛い!痒い!灼熱地獄‥皮疹の最悪を極めたら、これ。
  • 四物湯(71)
<成分>地黄・芍薬・川きゅう・当帰 慢性の消耗性疾患や”免疫がらみ”の拗れた病気用。治癒に向かいつつ、白ガサガサの落屑が目立つ時に最適です。

皮膚の乾燥・かゆみ

 皮膚病!って訳じゃないのに、お肌が乾燥してカサカサしたり、痒みが出たり‥、爺婆になる事は、若い頃は想像だにしなかった”乾燥・痒み”との苦渋の同居生活でもあります。生活から叩き直す(美容通信2003年12月号)のは勿論の事、塗り物系、その進化系としてのメソセラピー(美容通信2006年6月号)、プラセンタのお注射(美容通信2009年2月号)やビタミンCの点滴(美容通信2008年11月号)、オゾン療法(血液クレンジング)(美容通信2011年8月号))etc.を駆使するのは当然のお約束です。栄養療法(美容通信2007年3月号)だって忘れてはいけません。
 超カユカユ族なら、抗ヒスタミン薬の軟膏もありますし、炎症がバリバリ酷い状況なら、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の登場です。ですが、これって、取り敢えずの対処法。根本から治したいんなら、漢方薬も視野に入れるのは如何でしょう? 体液の停滞(水毒)により、水分代謝機能を持つ汗腺に少々破綻を来たしていると考え、これを是正してくれます。水の流れを良くして、痒みとの腐れ縁を、この際スパッと切ってしまいませんか?
  • 当帰飲子(86)
 老人性の皮膚掻痒症の定番中の定番。老化と共に、皮膚の脂分が枯渇して、カサカサになって痒くなる。冬が痒みの最盛期! 幾ら市販のクリームを買い漁って、塗り捲っても、ハタマタ孫の手で掻き毟っても、この渇きを誰にも止める事が出来ない‥。皮膚に内側から潤いを与えます。冷え性で、体力が衰え気味の虚証タイプにお奨めです。

>霜焼け

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 正しい名称は、凍瘡。寒さによって、手や足の指先や耳たぶ何かの血流が悪くなって、赤紫になる。‥あの痛痒さは強烈で、HISAKOは自衛手段として、今でも絶対晩秋の雨の日にはパンプスは履かないようにしている。大学の頃は、6年間学生玄関からは絶対入らず、(だって、バス停から雪の中を10分も歩かないと、玄関に辿り付かないんだもん!)、学生課のお兄さんの目を掻い潜って、バス停から徒歩1分の大学病院の正面玄関から出入りしていた位。自分の下駄箱に一度も触れる事無く卒業したのは、恐らくHISAKOだけではないとは固く信じてはおりますが‥。まあ、それ位に、霜焼けになり易い人(←寒さの度合いだけじゃなくて、体質や栄養状態にも縁るんです)にとって、霜焼けは恐ろしいものなんです。
 それに、酷くなると、凍傷になって腐りますからねぇ‥。そうなったら、切断ですよ、切断!(因みに、HISAKOがポリクリの初日に担当させられたのは、酒飲んだ挙句雪の中で寝ちまって、足が凍傷で腐ったオヤジだった‥。当然、緊急で足の切断手術!)
 漢方薬では、典型的な血のうったい(=お血)と考え、体を温め、お血を改善する処方を行ないます。でも、一緒にビタミンE含有軟膏も塗りませう。

  • 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(38)
気長に只管黙々と飲み続ける。呉茱萸を含む処方は、人によっては、”眠い””だるい”と感じる様ですが、症状が軽快する経過の兆候。諦めて、気長に只管黙々と飲み続ける‥。これが肝要(笑)。
  • 十全大補湯(48)
術後の体力増強・回復の定番薬は、霜焼けにも効く。

シミ

 シミ(美容通信2003年6月号)と一口には言っても、実に原因は多彩。紫外線の影響の他に、虫刺されやニキビ跡、外傷etc.後に生じてしまった炎症後の色素沈着、中年のおばさんに多いんですがホルモンの影響で起こる肝斑etc.‥。色んな方法を駆使して、日夜色素沈着と戦うのが美容外科医の使命とは思っていますが、やっぱ、使える手段は多ければ多い程嬉しいのが本音。
漢方薬業界では、血の巡りが悪いから、代謝されて落ちるものもへばり付いたまんま残っているんだと考え、駆お血剤を使います
  • 桂枝茯苓丸加よく苡仁(125)
<成分>よく苡仁・芍薬・桃仁・桂枝・茯苓・牡丹皮 生理前に濃くなるシミに効くが、イボにも効く。タコにも効く。魚の目にも効くそうだ。(←節操の無い薬だと非難しないように。)
  • 加味逍遥散(24)
<成分>当帰・芍薬・紫胡・白尤・茯苓・山梔子・牡丹皮・甘草・薄荷・生姜 更年期の特効薬と思われがちですが、ストレスが溜まりに溜まってキィ~っ!!!!!!!!!!ってなると、シミも連動して濃くなっちゃうってタイプなら、迷う事なく、No.24を飲みましょう。
  • 温清飲(57)

 四物湯含有のこの漢方は、血の巡りを良くして、かさかさ枯葉肌に水気を齎してくれるお薬です。保湿はシミ治療の第一歩。スキンサイクルが滞ったまんまだと、落ちるシミもこびり付いたまんまだもんねぇ。

イボ

  • 桂枝茯苓丸加よく苡仁(125)
 イボの友、よく苡仁。実証の定番はこのNo,125ですが、中間証にはよく苡仁煎にすると良いらしい。

ニキビ

image286  ニキビ(美容通信2003年11月号)の定番処方には、こんな漢方薬があります。そこで、ニキビ対抗色別選手権! 尤も、ニキビの大敵・便秘っ子なら、大黄甘草湯(84)の併用も必須事項。同時に、抗菌剤・抗生物質のクリームやローションetc.で炎症反応を抑えながら、漢方薬で体質を整える。まあ、使えるものは、親でも西洋薬でも使うと言った、ある意味、強かさも必要ですかねぇ‥。教科書には、2ヶ月程経過を見て、改善傾向が無ければ処方を変えるとありますが、意外にニキビが治る前に体質が改善されてるなんて事もままあって、一筋縄ではいかない所が、落ちそうで落ちない手強い男じみて興奮します(←!?)。

白コーナー代表

  • 当帰芍薬散(23)
<成分>芍薬・蒼尤・沢瀉・茯苓・川きゅう・当帰
適応は、竹下夢二の絵の様なちょっと生気の欠けた大人の女に出来るニキビかしら。生理の周期の具合によって悪化したりする、白ニキビさんに。 唯、胃腸があまりにも弱ってると、負ける‥。

赤コーナー代表

  • 黄連解毒湯(15)
 赤くてモリモリ痛いニキビさんに。
  • 清上防風湯(58)
<成分>黄ごん・桔梗・山梔子・川きゅう・白し・防風・連翹・甘草・枳穀・荊芥・薄荷・黄連
赤くてモリモリ痛いニキビだけど、特に脂ギッシュな、いかにも中坊って感じの奴かな。

黄色コーナー代表

  • 半夏瀉心湯(14)
<成分>半夏・黄ごん・人参・大棗・甘草・黄連・乾姜
不摂生な食事しかしないとか、ちびまるこちゃんの山根君体質の人で、口周りに出来るニキビがターゲット♪ 化膿っぽい黄色いニキビさんに。

青コーナー代表

  • 桂枝茯苓丸(25)
 悪いものは、全て流し去ってしまいましょう! 逞しい農婦の様なレニー・ゼルウィガーにニキビが出来るとしたら、間違いなくこれが適応です。生理の周期の具合によって悪化したりします。お血を伴う青ニキビさんに。
 因みに、ニキビが大出世して、フンケル・カルブンケル等、ドイツ人みたいな名前を名乗るようになったら、排膿散及湯(122)や十味敗毒湯(6)に変更するのも手です。
  • 排膿散及湯(122)
<成分>甘草・枳実・桔梗・大棗・生姜・芍薬
上り坂の若しくは絶頂期にいる化膿性の皮膚炎さんに。
  • 十味敗毒湯(6)
<成分>桔梗・柴胡・川きゅう・茯苓・土骨皮・甘草・荊芥・独活・防風・生姜
盛りを過ぎた、毛嚢炎の様な膿んだぼちぼち。あ、これ、薬疹にも効くんですよ。

抜け毛

 現代人の特権でもある抜け毛や円形脱毛症は、ストレスも大きな原因の一つ。悩みやストレスで気が乱れて滞ると、血の巡りが悪くなり、お血になります。そうなると、毛は抜けるし、新しい毛も育たない。‥精神的ストレスに立ち向かう力を高めよう!!

円形脱毛症

詳しくは、美容通信の”円形脱毛症”(美容通信2004年2月号)も読んでね。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(12)
<成分>柴胡・半夏・桂枝・茯苓・大棗・人参・竜骨・牡蠣・生姜・大黄
男性用。ちょいデブ系の熱血漢も、神経過敏になった挙句、円脱になっちゃうんです。毛が生えては抜け、やがて改善に向かいます。
  • 加味逍遥散(24)
女性用。

所謂ところの、ハゲ!

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  • 八味地黄丸(7)
<成分>地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂皮・附子
 爺じゃなくても、年喰ってくると、若い頃には想像だにしなかった色~んな問題が降りかかって来るものだ。インポにはやっぱりバイアグラ(美容通信2005年1月号)だとは思うし、ハゲにはプロペシア(美容通信2005年12月号)とミノキシジル(美容通信2004年2月号美容通信2006年6月号)に勝るものはないとは思うけど、健康保険の枠内で取り敢えずは足掻いてみたいと思うなら、ありだと思う。但し、じっくり腰を据えて飲んで下さい。

ダイエット・妊娠・出産etc.を契機に、薄毛が気になって‥

気にしている女性陣は、実は多いのよね。
  • 十全大補湯(48)
御存知、術後の体力増強・回復の定番薬! 体が元気になれば、毛も生えるさ!

皮膚科領域で良く使われる漢方薬達

皮膚科領域で良く使われる漢方薬達を纏めてみました。

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*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。


※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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