皮膚常在菌遺伝子定量検査 | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2019年3月号

皮膚常在菌遺伝子定量検査

腸内細菌叢と同様に、皮膚常在菌は、大きく分けると善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類で構成され、これ等がバランス良く整う事で、外部の刺激からお肌を守り、潤いを保つバリア機能の役割を果たしています。不適切なケアや生活習慣によってバランスが崩れると、乾燥やニキビ、アトピー性皮膚炎の悪化など、肌荒れやシミ等の様々なお肌のトラブルの原因となります。皮膚常在菌遺伝子定量検査”スキン マイクロバイオーム”は、皮膚常在菌に於ける代表的な菌(表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、アクネ菌、サーモフィルス菌)のバランスを菌種毎に定量して、その占有率を算出する検査です。癌や高血圧、糖尿病、肥満等の病気や体質のリスク傾向を判定する遺伝子検査と異なり、定期的に検査をする事で、肌状態の変化を確認出来ます。

 

 今月は、皮膚常在菌のバランスに着目した、新しい美容向け検査キット「皮膚常在菌遺伝子定量検査”スキン マイクロバイオーム”」のご紹介です。定期的に施行する事で、健康な素肌作りの指標となります。

皮膚の常在菌

常在菌について

 私達人間の細胞は約60兆個の細胞で出来ていますが、私達の体の表やら中やらに共生している常在菌の数は、そんな数じゃありません。口腔内には約100億個、腸内には約100兆個(美容通信2012年8月号)(美容通信2014年1月号)、皮膚全体では凡そ1兆個の常在菌が棲息しています。お母さんのお腹の中では無菌だったのに、生れ落ちると、その途端に菌の定着が始まります。共存共栄関係の始まりです。

 これらの常在菌の種類や数は、何処(部位)に棲息しているかによっても変わって来ます。例えば、乳酸菌やビフィズス菌は代表的な腸内細菌ですが、彼らは、実は、口の中には生存しておりません。適材適所とは若干意味が違う気がしないでもないですが、常在菌って奴らは、菌によって住む場所が異なり、そこで様々な働きをしてくれます。そこに更に、健康状態や加齢等の様々な要因が加わり、百花繚乱の様相を呈します。

 皮膚の常在菌は、大きく分けて、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の三種類。夫々の代表選手が、表皮ブドウ球菌【善玉菌】、黄色ブドウ球菌【悪玉菌】、アクネ菌【日和見菌】です。

 これらの皮膚常在菌がバランス良く整う事で、外部の刺激から肌を守り、潤いを保つバリア機能の役割を果たしてくれます。つまり、腸内フローラと考え方は全く同じで、良いバランスの為の菌活、育菌が大切です。特に、表皮ブドウ球菌が激減してしまう様な悪いケアを続けていると、アルカリ性を好む病原性の強い黄色ブドウ球菌や真菌(美容通信2004年9月号)等が大きな顔でのさばるようになり、皮膚のバリア機能が崩壊します。唯でさえ、木枯らしが吹きすさぶ乾燥(美容通信2003年12月号)の時期は、表皮ブドウ球菌にとっては過酷な季節でもあり、皮膚はアルカリ性に傾きやすくなります。表皮ブドウ球菌の住処である角質層をこそげ落す様な(自殺!)行為を続けると…「ずいずいずっころばし ごまみそずい 茶壺に追われて とっぴんしゃん 抜けたら どんどこしょ 俵のねずみが 米食ってちゅう ちゅうちゅうちゅう おっとさんがよんでも おっかさんがよんでも 行きっこなしよ 井戸のまわりで お茶碗欠いたのだぁれ」的な、意味不明・支離滅裂な肌状況に陥ります(笑)。例えば、長過ぎる入浴タイム、頻回の洗顔、洗顔料の過剰使用等々…。後述の、界面活性剤の皮膚常在菌への影響をご参照下さいませ。

■皮膚常在菌達の仁義なき戦い

 皮脂腺から分泌される皮脂は、その60%以上をグリセリド(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド)や脂肪酸で構成されています。因みに、ブリタニカ国際大百科事典によれば、グリセリドとは、グリセリン (プロパントリオール) の脂肪酸エステル。天然に油脂として広く存在。結合している脂肪酸基の数に応じて、モノグリセリド (1個) 、ジグリセリド (2個) 、トリグリセリド (3個) の3種類があります。トリグリセリドで、脂肪酸基が同一種類のものが単純グリセリド、2種類以上のものが混合グリセリドです。

 表皮ブドウ球菌等の皮膚常在菌は、有機物質を分解する事で、エネルギー(ATP)を生成します。脂肪酸とグリセリンからなるトリグリセリドを基質として、加水分解、合成、または転移反応を行う”リパーゼ作用”はその一つで、皮膚常在菌はリパーゼ作用を有しており、これによりエネルギーを生成しています。

 トリグリセリドから遊離されたオレイン酸やプロピオン酸等は、pH5~6あるので、皮膚表面は弱酸性に保たれます。弱酸性志向の善良なる表皮ブドウ球菌やプロピオニバクテリウム等の常在菌連中は、当然ハッピー♪ ところが、神経質な洗い熊みたいに、必死でクレンジングや洗顔料で洗うなんて日々が続くと、菌だけではなく、未だ剥がれ落ちるには早い=未熟な角質細胞や細胞間脂質まで洗い流され、乾燥から皮脂も枯渇してしまいます。表皮ブドウ球菌等の善玉菌連中は、ただでさえ仲間が下水道に流される人口流失!に加え、エサ(皮脂)不足から力尽き、弱酸性を保てなくなってしまいます。ところが、捨てる神あれば拾う神あり?で、バイ菌の種類によってその嗜好性は様々。弱酸性が嫌いで、アルカリ性大好きの、黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌等の病原菌達の天下到来です。こうなると、湿疹皮膚炎の類いは勿論、化膿性の炎症や食中毒旋風に見舞われるのは、単に時間の問題です。

 他には、皮膚トラブルを増大させる原因としては、運動不足も挙げられます。エアコンの効いた快適な生活に慣れ、汗を搔く機会がなくなると、恐ろしい話ですが、汗の搔き方すら人間は忘れてしまうものなのです。汗腺の機能(美容通信2017年12月号が落ちてしまうんですね。つまり、体温調節と言う必要性に駆られ、エクリン汗腺から流れ出る、サラサラの心地良いいい汗は、99%が水分。残りは、塩分やミネラル、乳酸、尿素です。人間を始めとする、神様が作った生物は、非常に効率良く出来ているので、体にとって大切な成分はリサイクル出来るように、汗腺には、ミネラル等の再吸収システムが完備されています。ところが、忘却の彼方に置き忘れ、挙句に汗腺が錆付いちゃうと、ミネラルたっぷりのねばねばした、黄色ブドウ球菌が泣いて喜ぶアルカリ性の(悪い)汗しか出ません。湿疹・皮膚炎が惹起されて、当たり前になってしまいます。

 後、化粧品に含まれる防腐剤も常在菌を殺してしまうので、要注意です。

■生活習慣チェック

 善玉菌を減らしてしまう生活してませんか? チェックポイントが多い人は、皮膚常在菌のバランスを「皮膚常在菌遺伝子定量検査”スキン マイクロバイオーム”」で検査して、真実の菌の状態に目を向けるべき!?

  • 洗顔の時に、顔をゴシゴシ擦ったり、1日3回以上洗顔する。
  • 防腐剤や保存料が配合された化粧品を使っている。
  • 過剰な保湿を行っている。
  • ストレスだらけの人生。
  • 殆ど慢性化してしまった、睡眠不足。
  • 脂質や糖質の多い食生活が続いている。
  • 冷えを感じる事があるが、放置!
  • 運動はしない。汗もかかない。
  • 肌を紫外線に曝しまくる生活だ。

 

主だった常在菌達

 皮膚の常在菌は、体の部位や健康状態、加齢によっても変化します。人口密集地では、皮膚1cm2に10万個以上の菌が存在するんだそうです。代表的な皮膚の常在菌としては、臨床的には下記の4種類が重要とされていますが、実は2009年にサイエンス誌に掲載された論文では205種が同定されているんだそうです。

■表皮ブドウ球菌【善玉菌/保湿】

 健康的な素肌をサポートしてくれる大事なバイ菌さん。非病原菌です。皮膚の保湿機能に関与して、バリア機能を保つ働きをします。

 表皮ブドウ球菌は、皮脂を分解して、グルセリンと脂肪酸に分解します。脂肪酸は酸性です。表皮を弱酸性に保つ事で、雑菌の侵入等をブロックし、バリア機能の一翼を担います。また、感性症やアトピー性皮膚炎の原因となる黄色ブドウ球菌の繁殖を抑てくれる、抗菌ペプチドも産生します。

 皮脂と汗(美容通信2017年12月号)と表皮ブドウ球菌が分解した成分が混ざり合って、NMF(天然保湿成分)(美容通信2015年2月号)(美容通信2003年12月号)の産生をサポートして、肌の潤いを保ってくれます。

 表皮ブドウ球菌が減少すると、皮膚はアルカリ性に傾きます。そうなると、アルカリ性が大好きな黄色ブドウ球菌(←病原菌‼)がメキメキ勢力を拡大し、挙句の果てにトラブル勃発します。

■サーモフィルス菌【善玉菌/乾燥からの保護】

 セラミド(美容通信2003年12月号)を産生してくれる偉いバイ菌さん。粉砕した菌体を皮膚に擦り付けただけで、角質層のセラミド量が増加した!って報告もあります。

 サーモフィルス菌には、セラミド生成酵素であるスフィンゴミエリナーゼがあり、スフィンゴミエリン(脂肪酸)からセラミドを産生します。

 セラミドは、角質層で水分を保持する大役を担っています。サーモフィルス菌を粉砕したものを皮膚に塗布すると、セラミド量の増加やアトピー性皮膚炎の改善が認められます。

 また、AKクリーム(美容通信2015年2月号の様なセラミド配合成分の化粧品に極めて類似した、皮膚の保湿機能の働きをするので、最近注目株のバイ菌です。

■アクネ菌【日和見菌/ニキビ・保湿】

 人の皮膚では最も多く存在し、皮膚の毛穴やTゾーンに多く住んでいる菌です。

 アクネ菌は表皮ブドウ球菌と同様に、皮脂を分解して、グリセリンと脂肪酸に分解します。脂肪酸は酸性であり、皮膚を弱酸性に保つ働きをします。

 但し、皮脂が過剰な状態になると、ニキビの原因になります。アクネ菌は空気が嫌い(嫌気性菌)。毛穴に皮脂が詰まると、空気が遮断されて心地良い環境の下、食糧貯蔵庫である毛穴には大量の餌(皮脂)が山積み状態ですから、そりゃあ、アクネ菌が大繁殖しない方が変ってもんでしょう。アクネ菌は皮脂を大量に摂取→脂肪酸の過剰増殖を来たし、それが毛穴の炎症=ニキビとなります。

 兎に角、優勢な方に加担するのが日和見菌の日和見菌たるところ。善玉菌が優勢ならば、皮膚を弱酸性に保つ役割を果たしてくれますが、皮膚の常在菌のバランスが崩れて悪玉菌優勢に転じると、肌トラブルの大いなる原因になります。

■黄色ブドウ球菌【悪玉菌/アトピー性皮膚炎】

 アトピー性皮膚炎の症状がある人の皮膚に共通して多く存在する菌です。

 黄色ブドウ球菌は、皮膚がアルカリ性に傾き、表皮ブドウ球菌が少なくなると繁殖して、炎症等を引き起こします。酷い場合は化膿したり、とびひになります。

 黄色ブドウ球菌が皮膚にいても、高が知れた性悪度なので、表皮ブドウ球菌が存在している肌の状態で、健康な皮膚が保たれていて、一定の菌量を越えなければ、悪影響は及ぼせません。

 

皮膚常在菌遺伝子定量検査”スキン マイクロバイオーム”

マイクロバイオーム(細菌叢)

 私達人間様に棲息する微生物集団「マイクロバイオーム(細菌叢)」。腸内のマイクロバイオームが、腸内細菌叢(腸内フローラ)(美容通信2016年9月号)(美容通信2017年5月号)(美容通信2012年8月号)(美容通信2014年1月号)(美容通信2013年8月号)。皮膚のマイクロバイオームが、皮膚常在菌叢と呼ばれています。

 私達の生活環境に応じて、各々のマイクロバイオームは異なり、そのバランスによって、皮膚のコンディションは大きく左右されます。健康な皮膚は、健康なお腹と同様に、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスが保たれています。

 

皮膚常在菌遺伝子定量検査”マイクロバイオーム”

 従来の方法では、皮膚常在菌層の解析が中々難しかったんですが、技術の進歩に伴い、細菌叢から十把一絡げ的にまとめてDNAを抽出し、定量PCR法で、皮膚常在菌を菌種毎に定量。その占有率を算定出来るようになりました! 快挙です!! この検査は遺伝子検査に分類はされますが、疾患や体質のリスク傾向を判定する、一生に一回する遺伝子検査(美容通信2014年11月号)(美容通信2008年2月号)とは異なり、定期的に検査を行う事で、肌の状態の変化を確認する方法です。癌の早期発見目的で遺伝子の変異を検査する遺伝子検査(美容通信2018年10月号)(美容通信2011年12月号)(美容通信2011年11月号)と、同じ立ち位置と考えて下さい。

■自分の皮膚常在菌のバランスを知らないまま、勝手な思い込みケアでドツボにハマる?

 自分の皮膚に棲息する常在菌バランスも知らないまま、勝手な思い込みケアの挙句に、皮膚本来の機能を却って損なっていた!なんて笑うに笑えないような話は、実は良くあるお話。しかし、化粧品メーカー等の絶え間ない企業努力により、幼い頃より常識ってレッテル貼られて刷り込まれていると、「ほらね!」って、目に見える証拠を揃えた上で解決策を提示しないと、患者さんは納得してくれないもんです。

 皮膚常在菌遺伝子定量検査は、皮膚常在菌に於ける代表的な菌のバランスを調べる検査で、その結果に応じたスキンケアの提案が可能になります。年齢を重ね、生活習慣やストレス等によって、乾燥やかさつき、シミ、毛穴の開き等の様々なトラブルに見舞われてしまったお肌の救済策を、皮膚に常在する菌から考える検査です。

 癌や高血圧、糖尿病、肥満等の病気や体質のリスク傾向を判定する遺伝子検査と異なり、定期的に検査をする事で、肌状態の変化を確認出来ます。

■検査で調べる4種類の菌

 私達の体にいる常在菌の数は、あまりにも膨大で、腸内には約100兆個、皮膚には約1兆個いるんだそうです。大きく分けると、人に福をなす「善玉菌」と、害をもたらす「悪玉菌」、情勢によって善玉菌にも悪玉菌にも加勢する、節操のない大勢派?現実主義者?の王道を極める「日和見菌」の3つに分類されます。これ等のグループは全く孤立した存在ではなく、夫々の菌が相互に影響しあって、バランスを保って共存をしています。

 健康な皮膚には、表皮ブドウ球菌を始めとする善玉菌がわんさか棲みついており、弱酸性の環境が保たれます。これにより乾燥や悪玉菌から皮膚を保護=健やかな肌の確保!になります。悪玉菌って名前が呪われていますが、その多数派を占める黄色ブドウ球菌も、表皮ブドウ球菌がバランス良く存在している状況下では、幾らアトピー性皮膚炎と言えど、一定の菌量を超えない限りは悪さを働けないんです。日和見菌は、善玉菌や悪玉菌よりもぐしゃっと棲息しているもので、フツーは存在しているだけでも皮膚を弱酸性に保ってくれるはずなのですが、ちょっとバランスが崩れると、一気にニキビ等のお肌のトラブルの原因菌に躍進します。つまり、バランスをどう取るかが全てです。

 検査で調べる菌は、以下の4種類です。

  • 表皮ブドウ球菌:善玉菌で、保湿に関与します。
  • 黄色ブドウ球菌:悪玉菌で、アトピー性皮膚炎の人の皮膚に定着しやすいだけでなく、菌が産生するエンテロトキシン(菌体内毒素)は、皮膚の炎症を増悪させたり、皮膚のバリア機能を低下させる作用を有し、これが症状増悪の一因とも言われています。
  • アクネ菌:日和見菌で、ニキビの原因にもなれば、保湿
    に働いたりと、本当に日和見主義者(笑)。
  • サーモフィルス菌:善玉菌で、乾燥からの保護に関与します。

 因みに、検査でその他の菌として結果に表示されるのは、4種類以外の菌全部を一括りにしたグループで、言葉通りのその他の菌です。

■検査の手順

 採取は、寝起きの状態で実行します。顔を洗ったりすると、下水道にターゲットが散逸してしまう可能性があるので、洗顔前の採取がお約束です。勿論、化粧品も菌の棲息状態に影響しますから、化粧品の使用直後の採取はご法度です。

 その他のご法度としては、抗生物質が含まれている軟膏等を塗ってたり、飲んでたりすると、その影響を受けて、正しいデータを得る事が出来ません。傷や腫物、湿疹や炎症等、お肌に異常がある部位も、菌の偏在が異なる場合がありますから、採取場所としては避けておくに越した事がありません。

 何らかの事情で、この検査を複数回利用する場合は、なるべく同じ時間帯での採取をお願いします。

 

【具体的な手順】

  • 採取棒を袋から取り出します。その際、綿棒の先端が、何かに触れてしまわない様に十分に注意して下さいね。

  • 採取補助液入りチューブの蓋を回し開けて、採取棒の先端を十分に浸して下さい。

 *採取補助液入りチューブと試料保存液入りのチューブは、似ているので、取り間違えには十分注意!

 *採取補助液入りチューブは使用したら破棄ですが、お住いの自治体のごみ分別に従って下さいね。

 *採取補助液の組成は、実は、ソフトコンタクトレンズ用保存・すすぎ液です(笑)。害はありません。

  • 採取棒という名の綿棒の先っぽを頬っぺたに当て、皮膚の表面をぐりぐり撫ぜ擦ります。綿棒に染込んだベタベタの採取補助液で、皮膚表面で安穏と棲息している常在菌どもを、根こそぎごきぶりホイホイの粘着面で捕獲するイメージで、20回くらいねちねちと面を変えながら、左右の頬っぺたから採取します。
  • 試料保存液入りチューブの蓋を開け、採取棒の先端を中に入れて下さい。
  • 採取棒の持ち手の細くなっている箇所で、ボキっと折れます。試料保存液入りのチューブの壁に押し付けるようにして、へし折って下さい。

  • へし折ったら、試料保存液入りチューブのキャップをしっかり締めて下さい。
  • チャック袋に入れて、しっかりジップロックしちゃって下さい。

■検査結果は?

 検査した4種類の菌とその他の菌の存在比率を、日本人の平均的な菌バランスと比較出来ます。それを踏まえた上での、スキンケアの提案の付録付き♪

HISAKOの皮膚の常在菌を大公開!

HISAKOの検査結果

■HISAKOの皮膚常在菌バランス

  • 表皮ブドウ球菌の検査結果(善玉菌:保湿):普通肌(0.8%)Vs HISAKOの肌(0.5%)⇒HISAKOの負け!
  • サーモフィルス菌の検査結果(善玉菌:乾燥からの保護):普通肌(0.1%未満)Vs HISAKOの肌(0.2%)⇒HISAKOの圧勝!
  • アクネ菌(日和見菌:ニキビ/保湿):普通肌(53.9%)Vs HISAKOの肌(43.9%)⇒逆境に若干弱めのHISAKOです
  • 黄色ブドウ球菌(悪玉菌:アトピー性皮膚炎):普通肌(0.1%未満)Vs HISAKOの肌(0.2%)⇒HISAKOの悪の勝利!?

 

皮膚常在菌のバランスを保つ為の6つのポイント

1.ストレスを溜めない様にする

   ストレスが溜まる(美容通信2015年11月号と、男性ホルモン等が増加して、皮脂の分泌量が増えて毛穴が詰まります。そうなると、皮膚常在菌のバランスが崩れて、アクネ菌が繁殖し、炎症を引き起こしてニキビ等の肌トラブルの原因になります。現代社会に於いてストレスを切り離して生活する事は難しいですが、ストレスから始まる悪循環に嵌ってしまうと、ホント、ロクな事が事が起こりません。睡眠や食事を疎かにしないようにしましょう。

2.睡眠

   皮膚の新陳代謝に必要な成長ホルモン(美容通信2018年9月号)は、午後10時~午前2時の間に活発に分泌がされます。この時間に睡眠が取れないと、新陳代謝がスムーズに行われず、皮膚の乾燥から常在菌のバランスが崩れます。理想の睡眠時間は午後10時(美容通信2017年1月号)ですが、日々の生活の中でそれを実現するのは大変です。しかし、食事をバランス良く摂ったり、沢山歩いたりと、熟睡できる環境(美容通信2015年8月号)を確保しましょう。

3.体を冷やさないようにする

   皮膚に棲みついている常在菌にとって、人肌の温度こそ、心地良く生存に適した温度。ところが、血行が悪くなって体温が下がる(美容通信2014年10月号)(美容通信2015年3月号)と、途端に菌も元気がなくなってしまいます。その挙句に、肌のターンオーバーが乱れて角質が厚くなって肌がごわついてしまったり、毛穴が開いたところに皮脂が入り込んだりしてニキビの原因になる事も。

   常在菌にきちんと仕事をしてもらう為には、安倍総理の”働き方改革”ではありませんが、働く人の職場を整え、働きやすい環境を整備する事が大切です。血行を良くして、体を冷やさないようにしましょう。

4.化粧品に頼り過ぎない紫外線対策

   紫外線を浴び過ぎる(美容通信2003年7月号)と、皮膚のバリア機能が低下して、乾燥。皮膚がアルカリ性に傾き、表皮ブドウ球菌にとっては住みにくい環境になってしまいます。日焼け止めを塗った(美容通信2003年8月号り、飲む日焼け止め(美容通信2012年10月号)を利用して紫外線を防ぐのが、所謂王道とはされてはいますが、モノによってはその原料があまりにも刺激的過ぎて、敢え無く合掌なんて笑えない事態も。日傘や帽子等の使える物は何でも使って、化粧品依存症を少しでも軽減しましょう。

5.汗を搔く

   善玉菌である表皮ブドウ球菌は、皮脂や汗を餌にして、増殖する過程で皮脂膜を産生します。皮脂膜は天然ベールのバリア機能を有していますから、適度な汗(美容通信2017年12月号)は肌の保湿に繋がります。運動不足やエアコン等による温度調節は、汗を搔き難い状態にして汗腺機能を低下させる要因の一つとなります。日常生活に於いて、積極的に運動や半身浴(美容通信2015年2月号)を取り入れて、良い汗を搔きやすくする事をオススメします。良い汗掻きましょ。

   体温の上昇により搔くサラサラとした良い汗は、エクリン汗腺から分泌されるので、少量の塩分などを含んだサラサラとした無臭のモノ。円滑な体温調整を行います。これに対し、ベタベタする汗は、アポクリン汗腺から分泌されるものです。脂肪分が含まれているので、蒸発し難く、細菌によって分解されると悪臭を放つと同時に、皮膚表面をアルカリ性にしてしまうので、悪玉菌天国♬ 痒みや湿疹等に繋がります。ベタベタする汗を搔いたら…さっと洗い流し、弱酸性の化粧水なのでpH調節。

6.季節の変わり目にスキンケアを見直す

   季節の変わり目には、外気の温度等が変わって、皮脂量に影響します。おでこの夏の皮脂量は、冬に比して倍近く変わるそうです。元々、脂っ気のない輩では、更に激減。かっさかっさ。皮膚常在菌は乾燥が大嫌い。クリームや乳液と言った疑似餌を撒いてでも、ご機嫌を取ってあげなければいけません。

界面活性剤の皮膚常在菌への影響

合成界面活性剤

 合成界面活性剤は、洗濯用洗剤、台所用洗剤、柔軟仕上げ剤、頭髪用・皮膚用洗浄剤として、私達の日常生活では当たり前過ぎるほどの化学物質です。HISAKOなんかも、実際どれくらい使っているのかと改めて問われると…、大量を超えてどっぷり浸かっている…。

 厚生労働省の「家庭用品に係る健康被害モニター報告」によると、皮膚科系の報告件数のうち、合成洗剤や洗浄剤による皮膚被害は毎年上位を占めているそうです。被害報告をお上に直訴する程では、ねぇ…って軽微なものを含めると、一体どれだけの被害を被っているのか、その把握すら難しいと言うのが現状でしょう。界面活性剤により皮脂膜が脱落! 挙句の結果が、進行性指掌角皮症(KTPP型)の発症に至ります。界面活性剤の細胞膜機能消失作用や刺激作用により、皮膚のバリアが損なわれる為です。それどころか、界面活性剤には抗菌作用のあるものもあり、特に陽イオン系は、その抗菌作用目的に、洗濯用洗剤や化粧品等には、わざわざ(!)添加しているのが実情です。

 皮膚常在菌は、Staphylococcu属やPropionibacterium属が大半を占め、密集する事で、真菌(美容通信2004年9月号等の微生物の侵入を防ぐ働き美容通信2016年9月号があります。界面活性剤の使用により、この微妙な常在菌のバランスが崩されると、皮膚にトラブルが十分引き起こされる可能性があります。身の回りで使用される界面活性剤は、皮膚に接触する機会も多く、抗菌作用を有する陽イオン系以外にも、陰イオン系や非イオン系の一部でも、皮膚常在菌等に対する生育抑制が確認されています。…生き難い世の中と嘆いても仕方がないので、賢くかわして美肌を守るしかありません。

■陽イオン系界面活性剤

 陽イオン系には、殺菌性、脱臭性、吸着性があり、医療用合成洗剤に、殺菌剤、柔軟剤、帯電防止剤として添加されています。髪の毛や皮膚のリンス剤として、最近生産量が増加の一途を辿っている現状を考えると、皮膚の常在菌を殺菌して、バリア機能の低下の一つの理由になっているものと思われます。

 代表的な陽イオン系物質は、塩化セチルピリジウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウムです。中でも、塩化セチルピリジウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムの4物質は、薬事法でアレルギー反応を起こす可能性があるとした表示指定成分です。

■陰イオン系界面活性剤

 陰イオン系は、ハウスホールドや台所を含む一般的な洗剤だけでなく、シャンプーや洗顔料にも多く使われています。オレイン酸カリウム、1-ペンタスルホン酸Na、1‐デカンスルホン酸Na、ブチルナフタレンスルホン酸Na、ドデシル酸Na、ドデシル硫酸Na、ドデシルベンゼンスルホン酸Na、ヘキサデシル硫酸Na等があり、界面活性剤生産量の半分以上を占める大多数派です。合成洗剤中には、5~30%と、そこそこの高いパーセントで含有されています。また、洗濯時に於ける界面活性剤の通常使用濃度は0.01%(100μg/ml)ですが、報告によれば、100μg/ml以下の少ない量でも、常在菌には悪影響を及ぼす事が分かっています。陰イオン系の殺菌作用は決して強いものではありませんが、皮膚に直接付着する可能性が高く、濃度によっては、病原菌は発育可能にも拘らず、皮膚常在菌は発育出来ないなんて、笑うに笑えない事態も起こりえます。

■非イオン系界面活性剤

 非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアラート、ポリキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ドコシルエーテル等があり、主な用途としては、化粧品用乳化剤、消泡剤、抑泡剤、活性剤(農薬)、シャンプー、家庭用液体洗剤、スキンケア・ヘアケア用品、潤滑剤、洗浄剤、化粧品用増泡増粘剤、濃縮型粉末洗剤・液体洗剤、洗剤の増泡増粘剤等が挙げられます。非イオン系は、陰イオンと比較して、洗浄力は弱い分、皮膚に対する刺激性や経口毒性が弱いのが特徴です。泡立ちが少なく、すすぎ性に優れた物が多いので、台所用洗剤や衣類用洗剤として、陰イオン系と共に使われます。ですから、台所用洗剤による所謂手荒れは、陰イオン系だけではなく、非イオン系との共犯罪とも言えます。界面活性剤は、浸透力が強いと、目や皮膚への刺激性も強くなり、非イオン系のアルキル基や酸化エチレン鎖が長くなるほど、目や皮膚への刺激性が弱まるとされています。

 非イオン系は、カビに対し生育促進作用を示すとされていますが、実はタイプによって異なります。脂肪酸系は、アミド系を除いて、室内、洗濯槽に見られるカビ全般に育成促進作用があります。高級アルコール系は、洗濯槽に多く見られるカビに対してのみ生育促進作用を示したとの報告があります。唯、言えるのは、非イオン系は、製品使用によって、皮膚常在菌等には殺菌効果を示す一方で、洗濯機内部に棲息するカビについては生育促進と言う、ろくでもない極みみたいな二面性を有しているのは事実だって事です。

 

 


 

*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。


※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

 

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機能性医学の観点から、予防と治療を考えます。

<機能性医学~皮膚と認知症と、ついでに老化>です。