インプロスカースティックは、 保護・保湿・遮光(SPF50+) を一つにまとめたスティックタイプの傷あとケア製品!旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2027年7月号

インプロスカースティックは、 保護・保湿・遮光(SPF50+) を一つにまとめたスティックタイプの傷あとケア製品!

インプロスカーパッチは、CE(ヨーロッパ)やFDA(アメリカ)で承認取得済の、長時間着用可能なシリコンシートで、洗い流しや塗り直しの必要がないのが特徴です。防水加工の為、装着したまま入浴が可能で、連続装着時間は最長7日間。
インプロスカースティック50は、パッチ同様にスティック形状の瘢痕治癒製品ですが、世界で唯一(この原稿を書いている、2025年9月現在)SPF50と、日焼け止め成分(ミネラル系/物理的遮断成分:酸化亜鉛・酸化チタン)を含有しており、瘢痕治療と瘢痕部の色素沈着予防を同時に実現出来る画期的な(ニッチな!)製品です。塗布後は乾いた状態で液だれがないので、上眼瞼にも安全に使用が可能です。インプロスカースティック50コンシールは、インプロスカースティック50のカラースティック版で、創傷の赤味を自然な色味でカバーしてくれます。

 昭和30年頃になると合成糊、昭和45年頃には日本初となるスティック糊が登場しました。 この「スティック糊」を日本で初めて生産したのは、トンボ鉛筆です。1990年代に入ると、ヨーロッパで、手を汚さないで貼れる糊「テープ糊」が発売され、日本でも販売されるようになり、カートリッジ交換可能なタイプや小型化したタイプ等々と様々な用途に合わせたテープ糊が販売されています。…創傷用のシリコンスティックを見掛けると、いつも、トンボのスティック糊を思い出してしまうのは、HISAKOだけでしょうか?

作用機序

シリコン未使用の瘢痕

 皮膚(美容通信2027年4月号)とその創傷治癒の過程(美容通信2017年11月号)(美容通信2004年5月号については、以前特集をしてますのでそちらをご参照下さい。

 損傷部分の皮膚の水分保持能力は、当たり前ながらダダ下がり、極度の水分蒸散が起こります。これにより、①過剰な線維芽細胞の活性、②瘢痕部位へのコラーゲン放出、③瘢痕組織の増加が起こり、傷の修復が阻害されてしまいます。

 

シリコン使用の瘢痕

 酸素の透過性が高く、水分を保持する能力に優れるシリコンが、傷跡の上に半透明の覆いを形成する為、第二の皮膚として働きます。更には、組織のモデリングを促進し、線維芽細胞とコラーゲンの過剰な増生を抑制し、傷跡の成熟を促進する環境を整えてくれる働きがあります。

 勿論、ケロイドや肥厚性瘢痕の発生に関与する、機械刺激シグナル伝達系をきちんと阻止するだけの能力はありませんし、発症してしまったケロイドや肥厚性瘢痕の治療として用いるには、はっきり言って無理。そもそも、シリコンクリームやシリコンジェルには、湿潤効果以上のものは殆ど期待出来ないと言うか…期待する方が間違っています(笑)。しかし、症例を選べば、つまりニッチな製品ではありますが、湿潤効果(+日焼け止め+赤味隠し)と言う点で評価した場合、実に有用な隙間製品だと思います。

image1229 つまり、ケロイドや肥厚性瘢痕の発生をきちんと予防する為には、術後や外傷後に主がどの様に動き回っても、傷だけは全く動けないと言う状況が理想です。毛細血管が消失し、完全に白くなるまでの治療後1~5年間程度は、後療法や自己管理がお約束なんです。この為には、線状の傷に対しては、簡便で安価な3Mのマイクロポアや、image258透明で目立たないアトレスケアを使用する必要があります。面状の瘢痕に対しては、CICA-CAREの様なシリコンジェルシートやポリエチレンジェルシートを使用します。

■製造販売会社の提供するチャンピオン症例

 まあ、この症例の具体的な経過が示されていないので不明ではありますが、インプロスカー スティック50塗布後5ヵ月後の写真です。悪くない以上の結果ですね。環境の保持がいかに大事なのかを物語る症例でもあります。

使用方法

使用開始について

 傷が完全に上皮化して閉創してから、つまり、瘡蓋や浸出液が無く、皮膚が完全に再生している状態になってから、使用開始です。手術後の場合は、抜糸後の皮膚がしっかり再生してから使用します。傷口が開いていたり、出血や浸出液がある状態では、使用不可。生傷に対する使用は禁です。

使用期間について

 傷が閉じてから、なるべく早い時期から開始し始めるがポイントで、肥厚性瘢痕やケロイドの予防効果が高まります。しかし、過大な期待は禁物で、あくまでも、陰性電荷の関与、物理的刺激の除去、湿潤効果等により、傷跡の成熟を促進するだけです。しかし、スティック製品にはSPF50の紫外線カット効果があり、世界初の特許取得済シリコンベースの創傷用スティックですし、更には、このカラースティックには、創傷の赤味を自然な色でカバーするプラスαの効果が加味されています。眼瞼の手術後や顔面の擦過創等の際には、特に後者は、液だれを心配する必要がなく、保湿/紫外線防御/赤色カバーと3拍子揃った、非常に有用な製剤と言えます。

 推奨使用期間は、1日12~24時間装着で、最低2~3ヶ月間。出来れば、6~12ヶ月間です。

使用上の注意

■インプロスカー パッチ

 インプロスカー パッチは、貼る前に十分患部を乾かしておきましょう。連続使用可能日数は、7日間です。防水加工の為、装着したまま入浴が可能です。

■インプロスカー スティック

 インプロスカー スティックは、清潔な肌にご使用下さい。お肌が完全に乾いた状態で使用します。汗や水に強い仕様の為、運動中でもシリコン層がしっかり保護されるので、通常は朝と夜の1日2回の塗布で十分です。しかし、摩擦や洗浄後(手洗いや運動、着替え後)に追加塗布が必要です。日光に当たる場合は、2~3時間毎に重ね塗りが推奨されます。お化粧をする場合は、スティックを塗布して完全に乾燥してから、メイクします。就寝前は、長時間触れたりする事が少ない為、特に有効とされています。小さなお子様にも使用可能です。

インプロスカー スティックの使用方法

  スティック製剤を塗布後、十分乾燥させる事で、瘢痕の表面に薄い膜(フィルム)を形成します。この膜は、洗浄や摩擦(例・衣服が瘢痕部に擦れるetc.)によって物理的に剥がれるまで、そのまま保持されます。この為、1日の塗布回数は、傷跡の部位や患者さんの活動状況によっても変わります。例えば、眼瞼下垂手術等の上眼瞼の術後では、日中傷跡を殆ど触る事なんてないので、通常は朝と夜の1日2回の塗布で十分です。しかしながら、手や手首、関節等の瘢痕の場合は、洋服で擦れたり、手洗い、その他の活動によって頻繁な摩擦が生じる為、1日に3~5回の塗布が推奨されます。

製造販売会社が提供するチャンピオン症例

 以下は、製造販売会社が提供するチャンピオン症例です。それも、(記載はありませんが)傷の治りがネズミ級に恐ろしく良い白人と思しき症例です。最高でこの程度の結果で、私達黄色人種では、多少劣るのが常!と考えてもらうのが無難かな。しかし、湿潤効果だけで傷はこれだけ落ち着く!と考えると、如何に適切なケアの重要性が分かると言うものです。

  • インプロスカーパッチ

 シリコンの使用後、患者さんの瘢痕は有意に収縮し、組織の弾力性が改善しました(Ahn ST et al. Topical Silicone Gel for the Prevention and Treatment of Hypertrophic Scar. Arch Surg 1991; 126: 499-504)。

 以下は、チャンピオン症例!!!!の供覧です。

  • 傷跡の管理(L. Téot et al.(eds.), Textbook on Scar Manegement, 2020)

  • 肥厚性瘢痕の予防と治療の為の局所用シリコンゲル(Ahn ST, Monafo W, Mustoe TA. Topical silicone gel: a new treatment for hypertrophic scars. Surgery. 1989; 106: 781-7.)

  • 肥厚性瘢痕の新しい治療法としての局所用シリコンゲル(Ahn ST, Monafo W, Mustoe TA. Topical silicone gel: a new treatment for hypertrophic scars. Surgery. 1989; 106: 781-7.)

  • 傷跡の管理(L. Téot et al.(eds.), Textbook on Scar Manegement, 2020)

  • 腹部形成術

  • 豊胸手術

  • 豊胸手術

 

インプロスカースティック50

  • 眼瞼下垂

  • 外傷(左半顔)

  • 外傷(右手首)

  • 腕の手術後(68歳男性)

  • 首の手術後

  • 基底細胞癌の切除

  • 外傷(右側額)

 

 


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

*使用中や使用後、刺激またはアレルギーによる赤み、かゆみ、痛み、腫れ等の異常が現れた場合、使用を中止し、医師に相談してください。

 

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