内出血や青タンに塗る!ネオケラスキン | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2020年1月号

(皮下)内出血や青タンの改善用外用薬

打ち身(怪我)や、「良く分からないけど、気付いたら出来てた!」って青タン(皮下内出血)は勿論、ヒアルロン酸注射や糸によるリフト(スレッドスーチャー)、静脈瘤の硬化療法、レーザー照射、スキンローラー、ダーマアブレーション、脂肪融解注射等のメソセラピー等の、様々な施術や手術等の付録と言うか…嬉しくない合併症として起こってしまった青アザに、ネオケラスキンは効きます。予防的な使い方もあります。薬ではなく、単なる化粧品の範疇ではありますが、それなり以上に効きます(笑)。

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、内出血とは、体内の血管が破裂する等して皮下で出血する現象の事だそうです。一般的には、顔面下顎や腕、足の打撲による内出血は、軽度のものを除き、3日間冷やし、その後は温めるのが基本治療。最初に冷やすのは内出血自体の拡大を抑える為で、血管を収縮させて、血液がどんどん漏れ出してくるのを塞ぐだけでなく、痛みを和らげる効果もあります。3日程度で治癒傾向に転じるので、温めて血管を膨張させ血流を促すと、内出血の吸収を早め治りが良いとされています。クリニックでは、YAGレーザー(美容通信2013年9月号)等を照射して、吸収を早めたりする治療を行う事もありますが、お家でお手軽になら、ネオケラスキンって選択もありです。

ラクトフェリンの鉄キレート作用

ネオケラスキンの主成分は、ラクトフェリン♪

 ラクトフェリンは、主に母乳中に存在する糖蛋白質で、涙や唾液等の多くの分泌液中にも存在し、鉄に対する強いキレート作用があります。

■鉄をキレートするとは?

 キレート(美容通信2006年11月号)とは、様々なミネラル分(特にカルシウムイオンや鉄イオン等の金属イオン)を封鎖し、様々な金属イオンによる弊害をなくする事です。左図の様に、分子の立体構造によって生じた隙間に金属を挟むその独特なお姿から、「蟹のハサミ」を意味する chela (ラテン語 chēla、ギリシャ語 chēlē)からキレートと名付けられました。お宝の山から、狙った鉄イオンだけをUFOキャッチャーで掴んで、GETする行為に良く似ています。

 キレート剤は、合成キレート剤と内因性キレート剤に分けられます。

 合成キレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(美容通信2006年11月号)や、デフェロキサミン、クリオキノール等が挙げられますが、EDTAは最近は経口もありますが、カクテル点滴が一般的で…、「内出血がぁ!」なんて局所的な需要には、ちょっとそぐわない(笑)。デフェロキサミン、クリオキノールに至っては、毒性があるので、現実的には×。

 内因性のキレート剤としては、ラクトフェリンがあります。

■強力な鉄のキレート力の秘密

 ラクトフェリンの主な特徴は、2個の鉄イオンを取り込める分子立体構造をしているので、輸送及び吸収の調節が可能で、バイオアベイラビリティが高い事にあります。

 1939年に、牛乳中に含まれる「赤色タンパク質 (レッド・プロテイン)」として初めて報告されました。その後、1960年に人間と牛さんのおっぱいから精製され、アミノ酸配列が決定されました。牛さんは689アミノ酸から、人間は692アミノ酸から成る1本のポリペプチド鎖で、これがNローブとCローブと呼ばれる球状のローブを構成しており、αヘリックスで繋がっています。右図は、Wikipediaから拝借した組み換え型ヒトラクトフェリンの図です。夫々のローブは、1個の鉄イオンと強力に結合しており、ラクトフェリンの粉末が赤色を帯びているのは、結合しているこの鉄の所為なんですね。この2つのローブから成るラクトフェリンの立体構造は、血漿中の鉄輸送蛋白質であるトランスフェリンや、卵白の鉄結合蛋白質であるオボトランスフェリン(コンアルブミン)と同じです。が、ラクトフェリンの鉄イオンに対する親和性は、これらの蛋白質より100倍以上高い。つまり、ラクトフェリンは、生体内で鉄輸送蛋白質というよりも、鉄をとっ捕まえて、周囲の環境から隔離する優秀なキーレート剤(UFOキャッチャー!)なんですね。補足しますが、ラクトフェリンは、中性又はアルカリ性でpHで鉄をがっちりキレート(2原子)し、酸性pHで放出しますから、単に掴んで離さないだけのスッポン型キレート剤ではなく、本当に優秀なUFOキャッチャーなんですね。

ラクトフェリンの、その他の作用

 ラクトフェリンには、微生物学的観点から局所投与薬としての開発が先行していましたが、近年は抗菌や抗ウィルス、抗真菌、抗炎症等の作用が明らかになっています。これ等は、必ずしも鉄依存性の機序に基づくものではありません。最近は、ラクトフェリンの柔軟なUFOキャッチャー的な特性、つまり、中性又はアルカリ性でpHで鉄をがっちりキレート(2原子)し、酸性pHで放出する性質が高く評価され、抗貧血薬としての全身投与に関する先端的研究が進められているようです。

抗菌作用

 ラクトフェリンには、強力な抗菌活性があります。グラム陽性・グラム陰性に関係なく、多くの細菌が育つ為には、鉄の存在が欠かせません。ラクトフェリンは、この発育に必須の鉄を奪い去り、細菌が増殖出来ない様に封じ込めてしまいます。更には、この鉄依存性のメカニズムとは別に、ラクトフェリンは、グラム陰性菌の細胞膜の主要な構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)と結合し、細胞膜構造を脆弱化すると言う荒業!を駆使します。それだけではありません。ラクトフェリンは、緑膿菌によるバイオフィルムの形成をも阻害します。ラクトフェリンをペプシンで分解した、部分ペプチドの「ラクトフェリシン」に至っては、細菌の細胞壁に傷害を与え、ラクトフェリンの10倍以上強力な抗菌活性を示すとも言われています。 母乳の中でも、とりわけ出産後数日間に分泌される初乳には、ラクトフェリンが多く含まれています。免疫系が未熟な状況の赤ちゃんは、お母さんのおっぱいを飲んで、免疫グロブリンやラクトペルオキシダーゼ、ラクトフェリン等を体内に取り込む事で、外敵から身を守っていると考えられています。

 ここで面白い現象なのですが、乳酸菌やビフィズス菌等の腸内細菌(美容通信2019年11月号)(美容通信2014年1月号)は、生育の鉄要求性が低くいので、ラクトフェリンにやつけられないんです。それどころか、寧ろ、その増殖を促進するんだそうです。ガキんちょにラクトフェリンを与えると、うんこ中のビフィズス菌の検出頻度が上昇すると言う報告もあり、ラクトフェリンは腸内フローラの改善に有効に働いている(美容通信2012年8月号)んですね。

 

抗ウィルス作用

 ラクトフェリンは、C型肝炎ウイルス(HCV)だけではなく、B型肝炎ウイルス(HBV)・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)・単純ヘルペスウイルス(HSV)(美容通信2005年5月7日号)・ヒトサイトメガロウイルス(CMV)・ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)の複製を阻害する事が明らかになって来ています。また、ラクトフェリンは、消化管細胞の表面に結合して、ノロウイルスやロタウイルスの細胞への感染を防ぎ、例え発症してしまったとしても、症状を緩和するって報告もあります。

 

免疫系に関する作用

 ラクトフェリンが免疫系に及ぼす作用については、様々なのもが報告されています。列挙しますと、白血球の一種である好中球の分泌顆粒にも含まれており、炎症反応や細菌の感染の際には、血液中に放出され、免疫反応の一翼を担っているようです。また、経口投与されたラクトフェリンが、腸間膜リンパ節及びパイエル板で、免疫細胞に作用する可能性も指摘されています。ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の細胞障害作用や、マクロファージの貪食作用は、ラクトフェリンにより活性化が増すとされていますし、B細胞やT細胞の増殖を促進する作用もあるようです。これらの免疫系の細胞に対するラクトフェリンの作用は、抗菌活性と同様に、生体防御に寄与していると考えられています。ラクトフェリンは、細菌由来の炎症物質であるLPSと強力に結合する事で、椅子取りゲームではありませんが、LPSがマクロファージと結合するのを阻害し、炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-6の産生を抑制する=抗炎症作用を有します。

 

創傷治癒促進作用

 ラクトフェリンは、真皮を構成する線維芽細胞や表皮を構成する角化細胞(ケラチノサイト)の、細胞遊走を促進します。それ以外にも、線維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進します。皮膚疾患モデルマウスを用いた実験系ではありますが、局所投与で、創傷の治癒が促進され、褥瘡が予防されるとの報告があります。

 

抗酸化作用

 過酸化水素から、諸悪の根源と称されるヒドロキシラジカルが生産される反応(美容通信2017年10月号)を触媒するのが、鉄です。ラクトフェリンは、生体内で過剰になった遊離の鉄イオンを取り除く(キレートする)事で、ヒドロキシラジカルの産生を抑制すると考えられています。実際、ラクトフェリンを経口あるいは腹腔内に投与したマウスに、X線を全身照射すると、ラクトフェリンを投与しないマウスと比較して生存率が上昇したんだそうです。ラクトフェリンの鉄補足作用により、ラジカルの産生が抑制されたと推測されています。

安全性の高い外用薬「ネオケラスキン」の秘密

鉄に対する強いキレート作用を有する「ラクトフェリン」

 前述の通り、鉄に対する強いキレート作用があり、フィラー(ヒアルロン酸等)注入、メソセラピー、硬化療法、レーザー治療、スキンローラー、ダーマブレーション、鼻形成術等の施術後に生じる青タン(アザ)に適応があります。

 

メタロプロテアーゼによるキレート作用(亜鉛やカルシウムをキレート)

 コラーゲン等の組織の細胞間に存在する、所謂”細胞外基質蛋白質”を分解する酵素の一種。【腹が減っては戦が出来ぬ】ではありませんが、亜鉛やカルシウム等の金属原子がないと、そもそも反応が進まない!って性格の持ち主(酵素)達なので、「メタロプロテアーゼ」と名付けられました。つまり、皮膚の老化に繋がる重金属(鉄、鉛、亜鉛)の皮膚の沈着物を根こそぎ除去する=キレート作用があり、お肌のアンチエイジングにだけでなく、ヒアルロン酸等の注入フィラーの持ちが良くなります(半減期が延長)。創傷の治癒、血管の新生等にも、関与が報告されています。

 

構造上の特性~リポソーム型送達

 製薬業界用語ですが、「バイオアベイラビリティ」と言う用語があります。人体に投与された薬物のうち、どれだけの量が全身に循環するのかを示す指標です。生物学的利用能とも言われます。薬物を静脈内に直接投与すると、そのバイオアベイラビリティは100%です。しかし、飲むとか塗るとかの方法では、全身循環に至るまでに不要な吸収や初回通過効果(薬剤の一部が肝臓で代謝されること)を受ける多分だけロスが生じ、その分だけバイオアベイラビリティは低下しちゃいます。優秀な塗り薬と評される為には、被れたりしないとか安全性が高い事は当然ですが、このバイオアベイラビリティが高くなきゃ、単に役立たず!に堕してしまいます、はい。

 ネオケラスキンは、ナノ脂質封入ラクトフェリン♪ リポソーム型送達で、成分の吸収・浸透・拡散が促進され、高いバイオアベイラビリティが保たれています。

■リポソームとは

 リポソームは、ギリシャ語のLIPOS(脂肪)とSOMA(身体)に由来します。

  リポソームは、リン脂質からなる数10~100nmの粒径をもつ微小なカプセルで、その内部に様々な分子を封入する事が出来る上に、生体適合性や生分解性にも優れているので、その発見以来、薬物や生理活性物質の理想的な運搬体と考えられてきました。リポソームは、そのサイズから、体内の標的部位に薬物を選択的に送達する、部位特異的キャリアに適しています。左図は、Wikipediaから拝借した図ですが、単層リポソームには、様々なターゲティングリガンドを表面に付着させたものもあり、お薬の治療効率を更にUPさせる工夫がなされています。

 細胞膜構造とナノ脂質構造は非常に類似しており、ナノテクノロジーにより、薬物を機能性ナノ脂質に封入する事で、優れた保護と高いバイオアベイラビリティが保たれます。

プロトコール

適応症

  • 美容医療:フィラー注入、メソセラピー、二―ドリング、レーザー及び高周波(RF)治療後の傷、硬化療法による変色
  • 美容外科手術:鼻形成術、脂肪吸引、眼瞼形成術、フェイスリフト
  • ホームケア:目の下のクマ、血管所見(赤ら顔、毛細血管拡張症、酒さ(酒皶))、シミ

使用法

 皮膚に塗布し、優しくマッサージしましょう。

用量

 1回につき0.15ml。と言っても、治療を行う部位の大きさによって左右されてしまいますが…。

頻度

 美容医療用として使用する場合は、施術後に1回塗布するだけでも十分な効果が得られる事が多いとされています。が、美容外科的な治療であれば、ホームケアとして、患部に2回(朝と夜)塗る事が推奨されています。

 化粧や包帯は、本剤が完全に吸収された後に行って下さい。

 


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。


※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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