HISAKOの美容通信2014年8月号
ホクロ除去するなら、レーザー?それとも手術?
ホクロ取り(除去)する方法は、大きく分けて①レーザーか、②手術しか選択肢はありません。
でも、どっちかが断トツに優れた方法かって訳ではなく、一長一短。
さて、あなたはどちらを選びますか?
ふと、思い立ったその日の為の、「ホクロの手術&ホクロのレーザー」の特集です。
ホクロ(黒子)の一生
ホクロ(黒子)は、皮膚に出来た黒い点で、後天性の色素性母斑(母斑細胞母斑)って言います。ホクロ(黒子)も、最初はシミかソバカスかって楚々とした風情の茶色い点(斑)として人生の第一歩を踏み出し、徐々に大きさと色調を増して、堂々たる貫禄を備える様になります。教科書的には、単純黒子を、色素性母斑とは全く次元の違うものと差別!してるものもありますがぁ、近頃は、単純黒子は色素性母斑のスタート地点(初期病変)と考える方が主流かな。 一生を簡単に纏めるとこんな感じかな。- 初期
- 前期
- 中期
- 後期
- 晩期
ホクロ(黒子)は、ある日、ある時、突然に、何もなかった肌に出現し、どんどん、どんどん濃くなります。出来たばかりの頃は、本人にも、「ホクロ(黒子)の誕生に立ち会った!」的な感動も認識もなく、ちっちゃなシミが出来た位にしか思っていません。この段階で病院に来られても、医者にも、”小さなシミ”なんだか”ホクロ(黒子)の初期段階”なんだか、良く分りません。それ故、白か黒かを医者に迫った所で、「ま~、どっちもありかなぁ」的な緩い診断しか付けれませんから、のらりくらりと断言を避けて、ホクロ(黒子)の初期状態に準じた治療をしちゃうか、しっかり予防線を張った上でシミに準じた治療をするか、どっちかです。少なくとも、HISAKOはそうしてます。
そのホクロ(黒子)は良い子?悪い子?普通の子?
”ホクロ(黒子)”って言い方は、元々一般用語であって、医学用語ではありません。先述の通り、医学的には、組織学的に母斑細胞母斑って名前の茶アザの一種なんですがぁ、中身は一緒でも、大きさが直径15mmを超えると、一般人は最早「ホクロ(黒子)」って呼ばずに、「アザ(痣)}呼ばわりします。だから、ホクロ(黒子)が、つまり母斑細胞母斑が悪性化する事は基本的にあり得ないんですが、ホクロ(黒子)は一般用語で、皮膚に存在する茶色又は黒色の斑点状の物の呼称でしかないので、母斑細胞母斑以外の性悪な連中共もさり気なく混じってて当たり前。世の中では、老人性のイボ(脂漏性角化症)もホクロ(黒子)呼ばわりされているし、その他、何時の間にか年と共に悪に手を染めてしまった系、その多くは基底細胞癌なんですが、稀に極悪非道の悪性黒色腫もいたりします。
だから、病院では、そのホクロ(黒子)は良い子(良性)か、悪い子(どうみても悪性)か、普通の子(悪性の可能性がある)かを先ずは考え、治療方針を決定します。この時のポイントは、形状と色調の2つ。
- 形状について
②隆起状である。
③形状に凸凹部分があり、辺縁不正の状態である。
④周辺にサテライト(衛星状の小母斑)がある。
①と②は良性、③、④になるほど、悪性化の可能性が高くなる…。
- 色調について
①茶色又は薄い茶色。
②隆起したホクロの中央部にのみ茶色の色調が見えるか、又は全く茶色の色調が見えない。
③濃い茶色で黒色に近い。
④ホクロの周辺に発赤した皮膚炎症状がある。
①と②は良性、③、④になるほど、悪性化の可能性が高くなる…。
併せて、ダーモスコピー(美容通信2008年3月号)を使うと、鑑別診断度がUPします。
ホクロ(黒子)の取り扱い方
悪性の心配がこれっぽっちもない、正統派のホクロ(黒子)は以下を読み進めていただく事にして、悪性の可能性のあるものについて一言。最初から覚悟して、可能な限り広い範囲で切り取って捨ててしまおう。レーザーは、ブツが無くなっちまうので、不良かもと疑念を抱いた時点で適応外!の方法になります。お顔の場合、基底細胞癌疑いなら辺縁から5~10mm離して、悪性黒色腫疑いなら10~15mmは離して切除ですかね。お顔以外だと、もっと過激に広い範囲を切除します。ホクロ(黒子)の2大学問~組織学と人相学
ホクロ(黒子)に関する2大学問について、解説します。組織学
由緒正しきホクロ(黒子)は、組織学的には母斑細胞母斑です。母斑は無限大はあり得ませんが、巨大って接頭語が付いちゃう位にデカいものもありますが、ホクロ(黒子)と名乗れるのは数mmから精々15mmの小さいものだけ。母斑細胞母斑は、母斑細胞の集落(医学的には「集塊」とか「胞塊」って表現ですかね)が何処にあるのかによって、①境界母斑junctional nevus、②真皮内母斑intradermal nevus、③複合母斑compound nevusに分けられます。
しかしながら、レーザーで焼いて蒸発させちまおうとなると、これは実用的な分類ではなく、単なる学者の自己満足の世界(笑)。それでAckermanさんは、考えた。そして提案したのが、立体構造的な視点によりホクロ(黒子)を4型に分ける、以下の分類です。
ミーシャー(Miescher)母斑
顔のホクロ(黒子)と言えば、その殆どがコイツと思って間違いはありません。少なくとも、95%以上!真皮内に楔状に奥く深くまで病巣が入り込んでいるので、切除ではなく、炭酸ガスレーザーで焼いて蒸発させちまおうと考えると、真ん中を深いトコまでしっかりこんがり焼く必要があります。ところが、しっかりこんがり深い所まで焼くって事はぁ、術後の陥凹瘢痕になり易いって事でもあり、なるべく被害を最小限に留める為には、その直径で3倍は広く滑らかに削る必要があります。
炭酸ガスレーザの焼きが生温い!と、当たり前ですが、ホクロ(黒子)は再発します。しかし、それはホクロ(黒子)の一生のうちのどの段階でレーザー治療を行うかによっても、その度合いは異なります。 ホクロ(黒子)の一生でも触れましたが、ミーシャ―母斑と言えども、発生直後の小さい時は比較的浅い所にしか生息していません。ところが、成長に伴い、どんどん真ん中が深くなり、20~30歳位の小娘世代にある、直径2~3mmの、平坦か僅かに隆起した程度のホクロ(黒子)が、一番始末に悪いんです。この時期の母斑細胞は、持ち主と同じで、成長期にあり、刺激に対してと~っても感受性が高いっちゅ~うか、敏感。レーザー治療で確実に殲滅しないと、生き残りの一派がタリバンも真っ青級の過激派と化し、活発に再発が起こります。
ところがミーシャ―母斑と言えども、私達人間と同じで、年を取ると性格が丸くなる(笑)。つまり、単なる婆化を大人女子❤と言い繕える年頃に良く認められる、大きく隆起したホクロになると、(ホクロ)人生同 様下り坂(!?)なのか、一頃の勢いはなくなっているので、例え取り残したとしても、再発は寧ろ稀になります。
更に、女子か男子か…、最早性別が不明な(笑)世代になると、色素生産能も、被刺激性も、有るんだか無いんだか、生きてんだか死んでるんだか(笑)レベルに下がってるので、深部の母斑細胞を安心して残して撤退出来ます。つまり、危険を冒して深追いする必要が全然ないって事で、寧ろ傷跡を最小限にする為に敢えて残して撤収なんて、大人の余裕をかます事だって出来ちゃうのです。
クラーク(Clark)母斑
体や手足のホクロ(黒子)の大多数は、クラーク母斑です。母斑細胞の集落は、比較的浅いエリアに分布しているので、炭酸ガスレーザーの格好の餌食と誤解されそうですが、実は、どっこい、物凄~く手強い奴。この母斑細胞は妙に尖がった野郎で、色素生産能、被刺激性がと~っても高く、少しでも細胞を残したら最後、激しい逆襲って名前の再発に悩まされます。それに、元々、体とか手足なんてもんは、傷の治りが悪く、顔と同じ深さで焼いて蒸発させたとしても、傷が残り易いって特徴があるからです。だから、四の五の言わずに、切られちゃって下さい。ウンナ(Unna)母斑
比較的稀なタイプ。首とか体とかに出来る、桑の実状に盛り上がったホクロ(黒子)の事。黒子の癖に、黒いって事は稀で、褐色~常色って事が多いかな。この子は、皮膚の表面にモリモリ♪って出っ張って、自己主張の塊みたいな感じだけど、実は軽薄って言うか…、母斑細胞は真皮の浅い所にしかいないので、炭酸ガスレーザーの格好の餌食です。唯、病変部の中央の毛包に沿って、意外に母斑細胞が深くまで落ち込んでいる事もあるので、侮ってると、中央だけ点状に再発!なんて目に遭うかも。スピッツ(Spitz)母斑
ガキんこの顔とか足に良く見掛ける、ドーム状に盛り上がったホクロ(黒子)。色は紅色から黒色までと、様々。人相学
以上が、教科書に普通に書いてある病理組織学のお話。ところが世の中には、”活きぼくろ”だとか”死にぼくろ”なるものがあり、活きぼくろとは、黒くて艶があり、盛り上がり気味のホクロなんだそうです。恐らく、複合母斑compound nevusを指してるんだと思いますが、このホクロ(黒子)は、災難病災訴訟を受けても克服可能な吉祥ホクロとされています。反対に、死にぼくろは薄茶色で艶がなく平らなんだそうです。多分、初期の段階、つまり単純黒子で、前期の境界母斑junctional nevusまで到達していないだけじゃないかと思いますが、何故かは良く分んないんですが、不運招来の暗示になるんだそうです。それ故に、この警告を真摯に受け止め、誠心誠意努力に励めば、運命は好転する…。ホクロの人相学とは、ホクロ(黒子)の部位色調によって運勢的な意味があるってもので、中国4000年の歴史が生んだ統計学の副産物で、科学的な意味はないと思うけど、迷信もそれなりの裏付けがあると尊ぶ人もいるので、HISAKO的には、まあ、お好きにってスタンスでしょうか、ね。唯、人相学で患者のホクロ(黒子)の切除を「する」か、「しない」かを決める病院(医者)なんてないと思いますがぁ(笑)。 前額中央にあるホクロ(黒子)は、「浮き沈みの激しい波乱万丈人生」とか「凶吉の落差が激しく、天国と地獄の両極端を行き来するジェットコースター人生」を暗示するホクロです。演歌歌手の千昌夫や、HISAKOの大嫌いな菅直人元総理大臣が、このホクロ(黒子)の代表格でしょうか。
千昌夫は、Wikipediaによると、陸前高田市の農家の次男に生まれ、父親を小学4年生の時に亡くしました。高校中退から1965年以前まで、北海道岩見沢市にて左官職人志望として働いていた時期があり、道産子のHISAOにとって、千昌夫はとっても親近感を覚える演歌歌手です。1965年、作曲家遠藤実に入門。ここからは、一気に幸せ街道をまっしぐらで、同年9月5日、「君が好き」でデビュー。「星影のワルツ」(1966年3月24日発売)が1967年秋頃より大ヒット。続く、「君がすべてさ」、「アケミという名で十八で」「懐かしの人」「北国の春」「望郷酒場」「夕焼け雲」「味噌汁の詩」「津軽平野」等、続々ヒット曲が生まれ、歌手としての黄金時代を迎えます。そして、バブル期には、本業を遥かに凌ぐ、日本有数の資産家として名を馳せました。「歌う不動産王」とか「ホテル王」と呼ばれる程に、世界各地にマンションやビル等を所有し、一時はホノルルの殆どのホテルが千昌夫の持ち物だったんだとか。しかし、大金持ち時代は長く続かず、1991年のバブル崩壊と共に借金が膨れ上がり、2000年2月4日に個人事務所「アベインターナショナル」は経営破綻(東京地裁に特別清算を申請、負債総額は1,034億円)。不動産投資の失敗で膨れ上がった借金について、「利子は一日5,000万円です」と本人が困った様子もなく、開き直ったようなコメントを当時のテレビ番組で語っています。1,000億円を超える借金を抱えていると言われていましたが(但し、自己破産は行っていない)、その借金の殆どは旧長銀から借り入れた金であり、一時国有化による公的資金投入で一時期3,000億円を超えた借金は、1,000億円にまで棒引きされ、その後民事再生法の適用により2002年「6年間で約1億5,000万円を返済すればよい」という事になりました。既に、それも完済しているみたいですね。 そして、菅直人。市民運動の旗手の、栄光とその後の転落は皆さんも御存じの通りですよね?
鼻のホクロ(黒子)
鼻のホクロ(黒子)は、どっちを向いてもロクな事が無いって、救い様のないホクロ(笑)。 鼻翼部のホクロは散財ボクロ。鼻根部は責任ボクロなので、日本の、いや世界のトップに立ちたいならいざ知らす、小市民の生活を謳歌したいなら、ない方が気楽。その他の鼻のホクロは、男(女)運が無いんだそうですが、HISAKOにはないにも拘らず、何故未だに嫁に行けてない(笑)のは何故だろう…。医学的にも、ともすれば隆起性で悪目立ちするし、大きく育つ速度も速いとくるから、見付け次第直ぐに成敗しとくのが得策ってもんでしょう。デカくなってから切除となると、場所が場所だけに、多少なりとも形態的な犠牲を患者さんに強いる羽目になっちゃいます。
頬骨のホクロ(黒子)
頑張りボクロで、自己実現の可能性を高めてくれる強運の星なんだとか。ふ~ん。口元のホクロ(黒子)
貫地谷しほり、安室奈美恵、深津絵里、平子理沙、菅野美穂、瀬戸朝香、藤井リナ、吉瀬美智子、竹内結子、南野陽子、椎名林檎、ローラ…。芸能人、口元、ホクロでググると、まあ、「女性の人気ボクロ」と言われるだけに、出るわ出るわ。ホクロ(黒子)の治療~レーザー編
ホクロ(黒子)を完全に除去する為には、そこにある母斑細胞を完全に撲滅する必要があります。がぁ、残念ながら、レーザーでは撲滅は無理。息の根を止める所まで追い込まないのが、レーザーってモノなので(笑)。(Qスイッチ)ルビーレーザー(美容通信2013年12月号)
”初期”と”前期”になら、一応適応はあります。と言っても、精々「色が薄くなる」だけで、照射後テープを貼ったりとか、まあ、所謂ところのお世話を焼かなくても良いっていうのが特徴でしょうか。1~2ヶ月して赤味が消えた時点で、「残る色素が気になれば、又、照射すりゃあ良いしぃ」って感じです。何度か治療を繰り返したところで、特に問題が起こる訳ではないし、まあ、治療を繰り返せば、完全に色がなくなる事なんか(殆ど!)あり得ないけど、徐々に色は薄くなる。フォトフェイシャル(IPL)(美容通信2003年5月号)とか、レーザーフェイシャルとか…、この手のものは、程度の差はあれ、どれも一緒ですかね。それに、ホクロ(黒子)の再発なんて日常茶飯事だし(笑)。それを承知の上で、敢えて選択するなら、それも十分ありだと思うけど。あ、言い忘れたけど、盛り上がりは改善されません、当たり前ですが。小さいので、麻酔すらせず、精々が冷やすだけで照射しちゃいます。
ロングパルスとか、ノーマルモードとか、短パルスetc.と色んな呼び方はありますが、取敢えず非Qスイッチモードの事で、HISAKOのクリニックにあるQスイッチルビーレーザーの器械も設定モードを変えると、非Qスイッチ照射が可能です。以前Qスイッチと非Qスイッチの話はしたので忘れちゃった人は美容通信2013年12月号を読んでおくんなまし。非Qスイッチモードは、照射時間が長くなる代償(笑)として、大きなフルエンスで照射が可能となるので、ホクロ(黒子)治療に向いていて、1回の治療での色素除去率が高くなります。 唯、既に過去の治療で色が結構薄くなっちゃってるけど、深い所にちょっとだけ色が残っている様な場合は、非Qだと全く無反応なんて事も多く、苦肉の策ではありませんが、渾身の力を込めて、つまりMAXの出力でQルビ照射に切り替える事もあるけど、ね。
炭酸ガスレーザー
焼いて蒸発させる方法ですが、超簡便なので、世の中のホクロ(黒子)治療のファーストチョイス的な存在とされています。大きさの上限は特にはありませんが、顔の様にそこそこ周りの皮膚がしっかりとしている時は、元の病変の大きさに比べて、直径にして2~3倍になる位に、大きく広く滑らかなすり鉢状に削るのが炭酸ガスレーザーのお約束ですから、結構施術後の絆創膏は大きく貼っちゃいます。だから、一度に複数個のホクロを取ると、その後のお世話がとっても大変だし、顔の大半を絆創膏が占める!なんて事になり、フランケンシュタインの再来か!?と世間を騒がせる事にもなりかねません。何たって、極々浅いタイプのホクロなら約10日間、前述の顔のホクロ(黒子)の95%以上を占めるミーシャ―母斑なら、約20日間は絆創膏生活ですから。
ホクロ(黒子)を炭酸ガスレーザーで焼いて蒸発させちまおう
炭酸ガスレーザーによるホクロ(黒子)取りの結果を左右するのは、多くはレーザーを照射する医者の腕に掛かっていると思われがちですが、あんまり関係はありません。基本的に、どんなヤブ医者でも大丈夫♪的なコンセプトで、最近の優秀なレーザーは作られていますから(笑)。寧ろ術後のケア、つまり、傷が上皮化するまでと、上皮化してからのケアが大事で、イメージ的には、レーザー手技:傷が上皮化するまでのケア:上皮化してからのケア=3:4:3って、個人的には思っています。まあ、後述する手術(切除)でも、これは一緒ですがねぇ。なので、説明もへったくれもあんまりないんですがぁ…。局所麻酔して、強めのパワーでちゃっちゃっと削っちゃいます。ゆっくり時間を掛けて丁寧にすると、炭酸ガスレーザーの最大の欠点である熱損傷(当たり前だけど、メスで切る手術にはこれが無い!)が周囲組織に広がり、却って色素沈着や瘢痕化の原因になり易いんです。決して、O型牡羊座の性格が故の削り方って訳ではないんです。
後は、元のホクロよりもデカくすり鉢状に削る位かな。顔だと、ホクロの直径の3倍は広くなだらかに削ります。予め患者さんには説明してはいるんですが、施術後に鏡を見せると、絶句する人は…、います。 傷が塞がる(上皮化する)までのケア前述の如く、少しでも傷跡(あと)を小さく、目立たなくしたければ、兎に角、”傷を乾燥させない!”の一言に尽きます。「キレイな傷の治し方」(美容通信2013年4月号)や「創傷治癒」(美容通信2004年5月号)の復習にもなっちゃいますが、乾燥は傷跡(あと)の敵です。
- 創傷治癒の論理Ⅰ~上皮化と収縮
①周りの正常な部分から表皮細胞が寄って集って来る。そして②下から、つまり皮膚の付属器(毛包や汗腺)の切れ端からも表皮細胞が湧いて来る。この2つを合わせて”上皮化”と言うんですが、深い傷だと、皮膚の付属器の断端が無い! だから、上皮化は①だけに頼らざる得なくなります。しかしながら、そうなると、どうしたって傷が塞がるのに何週間も掛かり、こんな無防備な状態で長期間ふらふら歩きまわる=生命の危機!となりかねないので、私達はデカい傷なら小っちゃくしちまおうって、ずる?力技?を使っちゃうんですよね。これが”収縮”です。確かにこの方法は、上皮化に要する時間を大幅に短縮する事が可能となりますが…、 瘢痕拘縮(ひきつれ)を始めとする様々なキレイじゃない!傷跡の原因となります。
炭酸ガスレーザーで治療をホクロ(黒子)を除去した後の傷は、多くはⅡ度熱傷(美容通信2009年1月号)に相当します。真皮の一部は失われてはいるけど、深層は残っているので、それがつっかえて収縮したくても収縮が出来ず、唯々、上皮化が7~10日掛けて粛々と遂行されるのを待つのみになります。しかしながら、ホクロ(黒子)の腫瘍細胞が深く真皮の深い層まで入り込んでいると、メラメラと闘志が湧いて「理が非でも焼き尽くしてやる~ぅ!」って奥深くまで突き進んでしまいたくなりますが、その深さはⅢ度熱傷に相当します。つまり、②の皮膚付属器からの上皮化は起こらないので、主に傷の収縮と、生じた肉芽組織の上に周りからの侵出して来た上皮化に頼る羽目になります。つまり、そんな時は他のレーザーを併用したり、すぱっと切除に方向転換をした方が無難ですかね。
- 創傷治癒の論理Ⅱ~瘡蓋(カサブタ)は厳禁!
傷が塞がってから(上皮化後)のケア
前述の通り、上皮化後のケアも侮れません。唯、ケアと言っても何かをすると言うよりは、余計な事をしないで、兎に角とっとと炎症を抑える事が大切です。つまり、放置プレイ(笑)。精々、「日焼けは嫌なので、(左図の)エアウォールUVを施術後の赤味や色素沈着がなくなるまで、貼といてねぇ❤」かな。飲む日焼け止め(美容通信2012年10月号)って手もあるけど。希望により、トラネキサム酸の内服と併せて、ハイドロキノン(美容通信2003年7月号)やトレチノイン(美容通信2005年2月号)、ASVC(美容通信2009年10月号)と言った塗り物系を処方する事も多いです。但し、これは、好い加減にちゃら~んと塗れる患者さん限定です。何故かって? 炎症性色素沈着を起こしている部位に、これらの外用薬を「効けよ!」とばかりに力を込めてガシガシ塗り込んじゃうと、この一途さが新たな炎症を引き起こし、更なる色素沈着を引き起こしちゃうから。…一途とか、生真面目さが却って仇になる事もあるんですよ、人生って。炭酸ガスレーザー治療の後は、若干の陥凹が残る事もありますが、急がず、慌てず、無策の策を貫いていると、時間の経過と共に回復して来る事が殆どです。少なくとも、傷が赤いうちは、手を拱いて見ているだけが良いみたい。ここで慌てて手を出すと、余計な炎症が漏れなく付いて来ちゃうので、却って良い結果が出なくなってしまいます。普通の肌と同じ色に戻った段階で、未だ陥凹が残っていたら、漸く重い腰を上げ、レーザーによる削り(面取り)(美容通信2010年11月号)や切除手術等の他の治療方法の適応を考えるって言う暢気さが大事なんです。
要らないオマケ(合併症)が付いて来るかも
好むと好まざると、偶に要らないオマケが付いて来る事もあります。合併症って奴です。- 残存・再発
- ケロイド・肥厚性瘢痕
肥厚性瘢痕は、場所や年齢、個人差等の”体質”が物凄く関与する(美容通信2004年5月号)もんですが、基本的に、真皮の浅い層までの傷では、肥厚性瘢痕になりたくてもなれません。真皮の深い所まで傷が出来れば、多かれ少なかれって程度の差はありますが、肥厚性瘢痕は必発です。それ故に、ホクロ(黒子)の母斑細胞を何処まで追いかけて成敗するか…は、何時も医者にとっては悩ましい命題にはなりますが、同時に、患者サイドでも、傷を深くしない為の術後ケアがしっかり出来ないと、長らく肥厚性瘢痕に悩まされる事になります。
場所的には、口周りは、場所柄安定が保ち難い場所なので、肥厚性瘢痕になり易く、どの医者も、「しっかり焼き殺してしまうにゃんこ♪」なんて考えず、浅め浅めのアプローチで逃げちゃいます。それでも肥厚性瘢痕になってしまう事もままあり、そんな時は、少量のステロイドの注射を瘢痕内にちょろっと注入したりします。
- 傷の赤味
この赤味は創傷治癒過程(美容通信2004年5月号)(美容通信2013年4月号)の炎症が、単に長引いちゃってますね~ぇって代物なので、兎に角、余計な刺激をせずにほったらかしにしておくのが最善の策です。赤味の程度や持続期間は、傷の深さや場所、個人差なんかで結構違っては来ますが、最終的には数年以内で消えるものです。
どうしてもって患者さんに求められれば、そりゃあ、赤味を抑えるレーザーやフォトフェイシャル(IPL)(美容通信2003年5月号)を駆使して、強制終了を掛ける事もありますし、ステロイドのシールを貼ったりはします。赤味を抑えるレーザーやフォトフェイシャルは、炎症を別に鎮静化させる訳ではなく、単に炎症の結果起こってしまった毛細血管拡張を破壊するだけで、本質とは全然違うお話に過ぎません。ステロイドの外用薬は、確かに炎症を抑える働きはありますが、副作用で毛細血管が拡張して寧ろ赤味が目立っちゃう可能性も無きにしも非ずだし…、悩ましい方法ではあります。本音を言うと…「ストレス(美容通信2010年12月号)を無くして、自前のステロイドがぎょうさん作れる環境を整えて、とっとと寝ろ!」(←ステロイドは夜の10時から合成が始まり、お昼の12時で分泌が終了しますが、何時までもたらたら起きてると合成が始まんないぞ~っ!) 「ダイエットはするな!」(←コレステロールはステロイドの材料です!)なんだけどな。
- 色素沈着
部位別にちょこっと補足
- 顔のホクロ(黒子)
そして、最低でも週に1回は病院に来て、傷がちゃんとモイストな湿潤環境に保たれているか、HISAKOにチェックされて下さい。傷が乾燥していれば、クリニックのスタッフから、これでもか!これでもか!って位にボコボコに文句を付けられ、瘡蓋(カサブタ)なんぞが出来てた日にゃ~、HISAKOに容赦なく瘡蓋を引っ剥がされます。瘡蓋(カサブタ)を残して治すより、多少治るのが遅くなっても、陥凹が少なくて済んでくれた方がましだから、幾ら恨まれても、心を鬼にして剥ぎ取ります。人はそれをドSと勘違いしますが、全く違います!
傷の赤味は、平均で、半年は続くものと思って下さい。 ホクロ(黒子)が再発したり、陥凹が目立つ時は、再度炭酸ガスレーザーを照射しますが、それは炎症が収まって、皮膚の色が普通の色に戻ってからのお話です。…唯、ホクロがと~っても深い所まで達しているようなら…、一定以上の深さまで削れば、どうしたって、瘢痕になりますから、「どうしますかねぇ」って、患者さんと鳩首会議します。「切除で」と、一言患者さんが言ってくれると、随分医者としては気が楽になるんですがぁ。
- 鼻周りのホクロ(黒子)
後、他の顔の部位に比べて赤味が、1~2ヶ月位ですが、ガツッと悪目立ちします。
- 髪の毛と眉毛の中のホクロ(黒子)
- 眼瞼縁のホクロ(黒子)
あっ、施術の際は眼球保護用のコンタクトレンズするんで、その積りで!
- 唇のホクロ(黒子)
- 体のホクロ(黒子)
傷の治りがうんざりする位に悪い場所なので、しっかり絆創膏を長期間(1ヶ月弱)は貼るつもりで。上皮化するのに2~3週掛かるのはザラだし、傷跡の赤味や色素沈着も、消えるのには1~2年とと~っても長く掛かります。
傷跡が万が一盛り上がってしまったら…、放置プレイに徹するのが原則です。瘢痕って代物は、数年の経過で白くなり、最終的には厚みも可也目立たなくなるものです。短気を起こして、炭酸ガスレーザーで盛り上がりを削ると、その傷跡は必ず肥厚性瘢痕になります。短気は損気の、代表的な部位が体幹なのです。
- 足裏と掌のホクロ(黒子)
ホクロ(黒子)の治療~手術編
再発しない状態になって初めて完治となる訳ですが、確実に完治を目指すなら、手術による切除が一番!単純切除法
シンプル イズ ベスト!を実践するが、この単純切除法です。紡錘形に切って取って縫う(紡錘形切除法)
最も基本的手術方法です。多少傷は長くなりますが、自然に無理なくシワのに紛れて分らなくなる方法で、どんな人にもどんな場所にも的な万能型。紡錘形じゃなくて、楕円形に切って取って縫う(楕円形切除法)
楕円形にした分、紡錘形に切るより傷跡の長さが短くて済むのが特徴です。これで、3,4mmは短くなる!ので、何処のホクロ(黒子)に対してもしてしまいたくなりますが、適応部位には制限があり、皮膚の厚部分か、皮下脂肪が薄く疎性結合組織がない部位のみが適応です。くり抜き縫合法
楕円形切除の、更に進化系がコレ。鼻や上口唇、下口唇等の様に厚い皮膚の部分だけと、場所は更に限られますが、dog earにもならずに縫い合わせる事が可能になります。くり抜き半寄せ法
上記3つの方法と全く発想が異なり、「別に、完全閉鎖に拘んなくて良いじゃ~ん。程々の寄せ具合で手術終了しちまおう」って、一見、マニアックな形成外科医とは思えぬ(笑)、好い加減な手術方法です。ですが、大きいホクロ(黒子)を切除したからと言って、その傷を完全に閉鎖する必要があるかと問われると…、そりゃあ、無理なく寄せられるのならそれに越した事はないと思います。ですが、無理矢理寄せる事で、周辺の小鼻(鼻翼)や唇等の自由縁や解剖学的な境界線が変形を来すとしたら…、そうまでして完全閉鎖に拘る必要なんてないですよね? つまり、ホクロ(黒子)の手術の神髄は、大きさと部位によっては、完全な切除には拘るけれど、完全な縫合には拘らない。ホクロの腫瘍細胞が無くなり消える事、そしてそれにより生じる変形が最小限度に留まり傷跡(瘢痕)が出来る限り目立たない状態に落ち着く事が、世の為、人の為になる! まあ、極めて町医者的な発想ですが、正論ですよね。場合によっては、多少とも寄せるの多少どころか、全くくり抜いたまんまで皮膚が上がるのを待つなんて言うのも、全然ありなんです。 人間の体は素晴らしい能力があるので、穴の周囲から皮膚が伸展して、どんどん穴が縮まり、数日から1週間後には完全に傷が閉じちゃいます。場所的には、皮膚が厚い部位、皮下の疎性結合組織が殆どない部位なんかで、自由縁が近くにある部位、つまり鼻、鼻翼、上口唇、下口唇等の大きいホクロ(黒子)の切除手術の際に良く使われる方法です。
くり抜き巾着縫合法
前2つの、くり抜き縫合法とくり抜き半寄せ法の、脳みそを使わないバージョン(笑)。つまりどの方向に傷跡が残るかなんて事を全く考える必要もない場所、例えば、眉間の下の方とか鼻は、巾着縫合で中縫いを緩く掛けて、そのまま皮膚を縫い合わせるか、dog earになっちゃった所をちゃちゃっとトリミングして縫い合わせる方法。多くの場合は、図の様な三叉路様になりますかね。局所皮弁法、そして植皮法
単純に縫い合わせられない!時に考える次の手が、局所皮弁法です。①回転皮弁法、②前進皮弁法、③菱形皮弁法、④皮下茎皮弁法、⑤crown excision法が代表的な局所皮弁法です。ホクロ(黒子)も、上口唇や鼻翼部、眼瞼部の様な、解剖学的範囲が狭い部位や自由縁が存在する部位に、もしもデカいホクロがあったなら…、最後の手段はパッチワーク。(全層)植皮術の適応です。つぎあての布は、周りの布と似通ってる方が違和感がないので、①鼻、上口唇、前額部、頬部の穴には、耳の前とか、下顎の裏側とか、鎖骨上窩から取って来るし、②瞼なら、耳の後ろとか、反対側の瞼から取って来ます。
部位別にちょこっと補足
額と眉毛のホクロ(黒子)
額のホクロ(黒子)は、基本的に傷が横ジワに紛れて分んなくなる様にと、傷跡が水平方向になるようにデザインして、紡錘形切除又は楕円形切除します。ですが、眉頭に近いホクロは、目晦まし的発想の下、三叉路状の複雑な縫合線にした方が、長い一本線よりマシだよね。ちょうど眉間のど真ん中なら、因業婆みたいな縦ジワに紛れる様に垂直方向に切除します。唯、あんま眉間のホクロがデカいと、単純に切除した時、両津勘吉みたいになるので、傷を長くしても前進皮弁の方がマシ 眉毛の中なら、原則くり抜きで、それでdog earが目立つのなら修正って感じかな。 眉毛ハゲは極力避けたいので、中縫いはしない→抜糸は他の部位に比べて遅い。
眉毛の上とか下にずれていれば、眉毛と平行線に処理しちゃいましょ。
瞼のホクロ(黒子)
眉毛寄りの皮膚の厚い部位は楕円形切除でもOKですが、原則的には、瞼のホクロ (黒子)は紡錘形切除です。傷跡が、自然のシワの方向になるように寄せます。但し、眼瞼縁のホクロは、完全切除は端から諦めて、炭酸ガスレーザーで焼いてしまいます。何年かして、又、目立って来たら焼こうね♪とチャラい対応(笑)。
下眼瞼部の大きいモノは、σ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┰ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ) ベー(兎眼)になりそうなら、前進皮弁にしちゃうけど。
ほっぺたのホクロ(黒子)
紡錘形切除が基本ですが、皮膚の厚い所は楕円形切除でも行けちゃうかな。なるべく若々しくって希望があれば、下側だけを剥離して、傷跡が微妙に上に凸を描く様にします。鼻のホクロ(黒子)
鼻のホクロ(黒子)の切除はくり抜き縫合法が基本。兎に角、変形を来さない事が最重要事項なので、その為には、縫合線の方向は勿論、完全縫合を目指すよりは、少し寄せる程度の半寄せ法に留めるのも辞さない潔さ?適当さ?を要求されます。唯、鼻の穴(鼻翼縁)に掛かって出来てるホクロ(黒子)は、縫縮すれば、漏れなく変形が付いて来ます(笑)。限界は切除幅5mm程度で、それ以上になると、鼻の穴の左右差が目立つようになるので、局所皮弁か植皮って選択になっちゃいますかね。
傷跡の赤味は、半年~1年と、体質によっても幅はありますが、何時かは必ず消えてしまいます。
豊齢線辺りのホクロ(黒子)
何故かは良く分んないんだけど、豊齢線辺りのホクロって、あっ!っと言う間にデカく育つ。大きくても、傷が長くなる事承知で紡錘形切除法します。そうじゃないと、結構高頻度にdog ear出来ますから。上口唇や赤唇部のホクロ(黒子)
基本的にdod earになり難い部位なので、楕円形切除でも十分。シワの方向はどうしたって縦方向なのですが、鼻の下が長いスケベ系(←嘘です。単に年取ると伸びるんです、はい)の人は、シワ方向に縫い合わせて縦長を助長するより、それ以上長くしないぞ!の心意気で、水平方向に縫い合わせる事だってあります。赤唇縁に近く、縫合に拘ると赤唇の形状が変形を来しちゃいそうなら、敢えて縫縮を行わず、くり抜き法だけで上皮化を待つなんて方法もありかな。ホクロって、皮膚の細胞が次々とホクロに進化して大きくなったのではなくて、ホクロの細胞が増殖して、周囲の皮膚を押しのけてデカくなった状態なんです。だから、お邪魔虫ののホクロをくり抜いて切除するだけで、押し退けられていた周囲の皮膚が本来の場所に戻って来るとでも言うのかな、穴がしゅるしゅるっと見てる間に小さくなるんです。前述の創傷治癒過程に於ける”上皮化と収縮”の”収縮”とは、全く違う現象です。「どんだけ邪魔だったんだか!?」と思わず感心してしまいますが、それはさて置いて、手術で最悪瘢痕が出来たとしても、元々のホクロよりはず~っと目立たないサイズにはなるので、唇のラインが乱れるより遥かにましなのです。 但し、赤唇部は炭酸ガスレーザーに軍配が!
下口唇やおとがいのホクロ(黒子)
楕円形切除かくり抜き法で十分。寄せる方向はシワの方向だけど、オトガイの辺りは結構複雑なシワの出来方をするので、ケースバイケース。唯、顔の輪郭線上は、シワの走行に拘って輪郭線に平行に寄せると、二重顎、三重顎っぽく見えるので、ここは敢えて垂直にしますが。体とか、手足とかのホクロ(黒子)
顔以外は、バリエーションが無いと言うか…、横方向に紡錘形切除がお約束です。*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。