光とアンチエイジング | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2018年6月号

光とアンチエイジング

太陽の下で遊ぶだけで、寿命は約2年延びる。2016年に発表された衝撃的な論文ですが、ビタミンDと屋外の運動の重要性について述べています。紫外線(昼間のブルーライト)は、不眠症の改善だけでなく、ビタミンDの生合成に必要であり、ビタミンDは骨の健康のみならず、ステロイドホルモン様の免疫調整ホルモンとして、又、花粉症や蕁麻疹、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患の治療、風邪やインフルエンザの予防、癌の治療及び再発予防、更には血管の健康維持、アンチエイジング(老化防止)等々にも有効です。更に、屋外での活動に関連して、最近、近視の進行との関連性で注目の、紫外線の一種であるバイオレットライトについても言及しました。

 HISAKOが形成外科の世界に足を踏み入れた30年前は、世の中は「光老化、光老化」(美容通信2003年7月号)一辺倒で、紫外線を如何にブロックするかでした。時代は変わりつつあります。今や、「光老化を予防しながら、紫外線の恩恵を如何に受けるか?」です。オゾンや、ビタミンCや水素等の抗酸化物質を駆使しながら、色々な提案が出来たらと思う今日この頃です。

太陽の下で遊ぼう!

太陽の下で遊ぶだけで、寿命は約2年延びる。

 太陽に当たらないようにしている女性は、太陽に沢山当たる女性よりも、2年ほど寿命が短い

 一昨年発表された、衝撃的な!論文です。 Lindqvist PG, Epstein E, Nielsen K, et al. Avoidance of sun exposure as a risk factor for major causes of death; a competing risk analysis of the Melanoma in Southern Sweden cohort. J Intern Med. 2016; 280: 375-87. 

 唯、長らく美容通信の読者をしている皆様には、当たり前過ぎて、何が衝撃なんだかぁ状態だとは思いますが(笑)。勿論、光老化(美容通信2003年7月号)(美容通信2003年8月号)って言葉があるくらいですから、日焼けはお肌には悪いです。この論文の中でも、メラノーマ(美容通信2013年10月号)だけが、太陽に当たる事で増加する疾患としています。約3万人の大規模コンフォートに於いて、メラノーマ以外の全ての癌は、太陽に当たっている人の方がずっと発現率が低く、更には心血管障害も少なく、寿命も長かったんだそうです。

ビタミンDと運動の関係から、お外遊びを考える。

ビタミンD

image536 何故、太陽の下で遊び呆けていた輩が、癌にもならず、長寿を享受するのでしょうか? 理由の一つとして考えられるのは、ビタミンD(美容通信2013年3月号)です。以前特集しましたが、ビタミンDは、骨の健康のみならず、ステロイドホルモン様の免疫調整ホルモンとして、又、花粉症や蕁麻疹、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患の治療、風邪やインフルエンザの予防、癌の治療及び再発予防、更には血管の健康維持等々と、様々な効果効能が謳われております。北欧に比べると、赤道に近い国の方が、メラノーマ以外の癌の発症率が低い事は良く知られています。うつ病やメンタル面でもビ201303imageタミンDの影響は、近年注目の的です。

 右の図は、ビタミンDの代謝経路です。ビタミンDは食事からも摂取されますが、実はこの経路は少数派で、主には、皮膚に紫外線B波(UVB)が当たる事によって、コレステロールを原材料として、体内で生合成(100~90%!)されています。

 現代人の多くは、ビタミンD不足です。25(OH)ビタミンD濃度は、50~80ng/mlが推奨される値とされてはいますが、HISAKOのクリニックは検診の病院ではなく、まあ、アレルギー性の疾患でそもそも来院してる患者さんしか採血はしないですから、値が悪いのは当たり前ですが、20ng/m未満lの人が殆ど。恐ろしい低値の人ばかりです。日焼けが大好きな白人が多いイメージのボストンですが、そこでの研究によれば、成人女性の約半分は30ng/ml以下だったんだそうです。美白信仰が強いアジア人、特に日本人女性の多くは、ビタミンD不足だと断言しても間違いはないでしょう。

 

運動

 もう一つの可能性として論文で述べられているのは、運動美容通信2017年2月号)との関連性です。多くの人は、のび太君と違って、太陽の下で惰眠を貪るより、お散歩(通勤時間も含む!)やスポーツで体を動かしますから、健康的なライフスタイルを維持している可能性が高くなります。

ブルーライト再考

昼間のブルーライトも味方に付けちゃえ!

  朝のお散歩の重要性については、最近色んなところで取り沙汰されていますが、屋外の活動との関連性で忘れてはいけないのが、サーカディアンリズム(美容通信2017年2月号)です。

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 サーカディアンリズムは、単なる体内時計って軽視されがちですが、実は代謝に直接関係する重要な因子だって事が解明されつつあります。例えば、同じカロリーを摂取しても、サーカディアンリズムが正常なら肥満にはなりませんが、これが狂うとデブ化します。

 夜のブルーライトの性悪話については、最近のトピックスの一つですし、HISAKOもクリニックで患者さんに良く話をします。が、実は、昼間ブルーライトが十分でない事も問題となります。

 ここで、ブルーライト復習をしておきましょう。ブルーライトとは、波長が380~500nmの青色光で、私達人間様の目で見る事が可能な光=可視光線の中でも、最も波長が短く、強いエネルギーを有しています。

ブルーライトとは

 パソコンやスマートフォン等のLEDディスプレイやLED照明には、このブルーライトが多く含まれています。ですから、夜中にスマホを弄ってるだけで、強烈な光刺激に晒され、サーカディアンリズムの司令塔であるメラトニンの生合成が抑制されてしまいます。不眠症(美容通信2015年8月号)のみならず、老化や癌、肥満や眼精疲労(目の疲れ/痛み)、鬱等の精神的な面にも影響を及ぼします。下図を見て下さい。ブルーライトの明るく強い光のシグナルは、網膜から脳へとダイレクトに届き、アドレナリンは、セロトニンやコルチゾール等の心の状態に影響するホルモンを刺激します。サーカディアンリズムによる体調の変化も、心に大きな影響を与えます。

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 夜はブルーライトを浴びないようにするのは当たり前ですが、お昼間は反対に浴びまくる事も大事です。メリハリをつける。ところが、現代人は、お外で過ごす時間が極端に少ないんです。HISAKOには、近所の公園に棲息するキタキツネやエゾリス達の野外観察って大義名分があるので、吹雪でもスノーシュー(西洋かんじき)履いて朝散歩に出かけます(笑)が、あまりにも寒いと、二枚重ねのモンベルのダウン手袋すらかじかんで(註:「かじかむ」、「かじける」は、古語として、1千年以上もの歴史があり、日本書紀を始め、様々な文献に登埸する言葉です。江戸後期頃からは、「凍える」って意味でも使われるようにはなんたんですが、温暖化に従い、他の地域ではかじかむ様な寒さ自体が激減→極寒の北海道には残った≒北海道方言に認定された)、早々と撤収!してしまいます。HISAKOの様に、”キツネやリスに会わない日は、1日の屋外滞在時間は1~2分!”なんて人はあまりいないかも知れませんが、数十分以下の人は結構多いはずです。

 ブルーライトの水晶体の透過率は、加齢と共に低下し、60歳では若い頃の30%程度にまで衰えます。これは、端的に言えば、若者が2時間外で遊んで十分なブルーライトを浴びれるとします。しかし、60歳にもなれば、その3倍の6時間以上も外で遊び続けないと、唯、こうなると遊びじゃなくて、最早苦行でしかないけれど、それを果たさないと、十分なブルーライトを補えないって事になります。年を取ると睡眠の質が悪くなり、睡眠時間も短くなる事が知られています。でも、それって、サーカディアンリズムの立場から言えば、単にお昼間のブルーライト不足の一言に尽きちゃうんです。実際、白内障の手術をした人は、術後にブルーライトの透過率が改善するので、不眠症が大幅に改善する!なんて論文もあります。

 サーカディアンリズムの乱れは、乳癌や前立腺癌等の癌リスクを高める事が分かっており、太陽の光を浴びる=神楽岡公園や見本林でエゾリスやキタキツネと戯れる!?事で、サーカディアンリズムが改善し、ひいては癌の発症が減るのではないかと思われます。

お外遊びと、最近激増中の近視のお話

屋外の環境と近視の関係

201303image15 お外遊びと近視の発症も、大いに関係があります。

 ここ数年で、世界的に近視の発症率が上がっています。世界一視力が良いとされ、控えめな時でも6.0や7.0、場合によっては10.0を超えるとされるマサイ族の人々には、到底信じられない異常事態!だと思いますが、中国、韓国、日本では、高校卒業時には8割以上の人が近視なっているんだそうです。欧米でも、従来は20%程度だった近視が、今や40%超え。世界中で、近視族がどんどん?めきめき?ぐんぐん?増殖しているんだそうです。2050年には約50億人にも上ると言う、怖~い予測も報告されています。 近視は不便極まりないものですが、進行した高度近視になると、失明の危険もぐ~んと増してしまいます。日本でも失明率の第5位、中国では既に失明率の第2位が、この高度近視によるものなんだそうです。そうなると、如何に近視の進行を抑えるか? これがと~っても大切なお話になって来ます。

 でも、何で、近視の人が、こんなにも急激に増えちゃったのでしょう? 近視の原因は遺伝と環境とされていますが、遺伝子がこの50年間で急激変貌した!なんて事は考え難いですから、原因は環境しかありえないですよね。やっぱ、パソコンやスマートフォンが元凶なんだ!と短絡的に納得してしまいそうですが…、実は、過去の疫学研究ではこの考え方は否定的で、どうも違うみたいなんですね。昨今の10年間で最も注目されている疫学因子は、ナント、”屋外環境”なんだそうです。毎日屋外で2時間以上過ごす人は、近見作業が多くても近視にならないんだとか! 最近中国で行われた介入検査でも、1日40~80分、外で子供たちを遊ばせる事で、近視の進行が抑制された!って報告がなされてます。眼科領域でも、俄然注目株の”外遊び”なんですね。

 

バイオレットライト

 最近の研究により、近視の進行の阻止に於けるお外遊びの効用の本体がは、太陽光に含まれるバイオレットライト!なんだそうです。論文によれば、太陽光に含まれるバイオレットライトは近視の進行を抑制しますが、バイオレットライトがないと近視が進行したんだとか!

 少しこの論文にターゲットを絞って、解説しましょう。慶應義塾大学 医学部眼科学教室(坪田一男教授)、光生物学研究室(主任研究員:栗原俊英特任講師)の鳥居秀成特任助教らは、一昨年(2016年)の12月26日、ヒヨコを用いた動物実験とヒトの臨床研究を通じて、波長が360~400nmの光(バイオレットライト)が近視進行(眼軸長伸長)を抑制することを世界で初めて発見しました。

  今回研究グループは、屋外環境に豊富にあるバイオレットライトに着目し、実験近視モデルのヒヨコを用いて研究しました。その結果、バイオレットライトを浴びたヒヨコの目では、近視進行を抑制する遺伝子として知られている「Early growth response 1(EGR1)」が上昇しており、バイオレットライトが近視進行を抑制するメカニズムとして、EGR1が介在している可能性を示唆しました。また、ヒトの臨床研究からも、バイオレットライトを透過するコンタクトレンズを着用している人の方が、透過しないコンタクトレンズを使用していたり、メガネを着用している人よりも、眼軸長伸長が抑制され、近視の進行も抑制される事も示唆されました。因みに、メガネは窓ガラス同様、バイオレットライトを殆どブロックしてしまいます。つまり、メガネを掛けると近視が進む!って都市伝説は、実は正しかったんです。従来の眼科医の「眼鏡を掛けても近視は進みません」って立場は、完全に覆されてしまいました。(ああ、今度眼科を受診したら、バイオレットライト透過のコンタクトレンズに変えてもらおう! ヤバいヤバい、今使ってるの、UVカットだわ…。)

 恐ろしい事に、現代社会に於ける窓ガラスは、HISAKOのクリニックもそうですが、殆どがUVプロテクト。360nm以下の紫外線を遮断するばかりでなく、大事な400nm以下のバイオレットライトも、無情にも!ブロックしているんです。開放的な大きな窓のお部屋で、終日気持ちの良い引きこもり族を堪能する…。日常的に使用しているLEDや蛍光灯等の照明には、バイオレット光が殆ど含まれていませんから、お家であれ、オフィスであれ、学校であれ、屋内メインの現代社会は、バイオレットライトを失った社会とも換言出来ます。これが、近年の近視の世界的な増大の大きな要因だったんですね。

 「バイオレットライトのサプリメント、どこかで売ってないかしら?」なんて真剣に思いつつ、HISAKOが形成外科の世界に足を踏み入れた30年前は、世の中は「光老化、光老化」(美容通信2003年7月号)一辺倒で、紫外線を如何にブロックするかでした。時代は変わりつつあります。紫外線は、シミやたるみ(美容通信2014年11月号)、皮膚の悪性腫瘍(美容通信2013年10月号)であるメラノーマ等の原因である事は紛れもない事実ですから、皮膚本来のバリア機能を損なう様なケアを改め、塗る日焼け止め(美容通信2003年8月号)に頼るのではなく、皮膚本来の機能を助けてくれる、亜鉛やビタミンA等の食事を含めたサプリメント(美容通信2007年3月号)(美容通信2011年4月号)や抗酸化ビタミンが本体である201210image1飲む日焼け止め(美容通信2012年10月号)、酸素利用率の低下を改善するオゾニールの様なオゾン化オイル(美容通信2017年4月号)やオゾン療法、高濃度ビタミンC療法(美容通信2016年11月号)や水素(美容通信2017年10月号)、ホルモン補充療法(特に、男性ホルモンの低下は、お肌に悪い!)(美容通信2010年9月号)等の、多岐に渡ったアプローチを組み合わせる。まあ、「原点に戻ろう」なんだなぁと、この10数年、所謂外からの美容皮膚科的なアプローチに限界を感じて、体の中からのアプローチにシフトして、更には原点回帰の診療内容の変遷を思うHISAKOでした。


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。


※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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来月号の予告

<グルタチオンの深遠なる新世界2017年版>です。

リポソーマル界のトップリーダーである、クリストファー・シェード博士の最新アップデート情報です。