HISAKOの美容通信2016年9月号
酵母菌は、遅延性フードアレルギーの原因?
ウィリアム・ショー博士の特別セミナー第二弾は、腸内細菌叢を乱すイースト菌(酵母菌)のお話と、その挙句に起こってしまった遅延性のフード(食物)アレルギーの話です。 遅延性のフード(食物)アレルギーは、アトピー性皮膚炎やニキビ、ドライスキン、慢性疲労、うつ、月経前症候群、下痢や便秘、肥満等々の様々な症状を引き起こします。イースト菌(酵母菌)やクロストリジウム属菌等の腸内の微生物が、何故繁殖をしてしまったのか?そして、その治療はどうすべきか? 有機酸検査(OAT)は、腸管内で酵母菌や悪玉細菌から生じた種々の副産物を調べる検査です。
原罪。
原罪(げんざい、英語: original sin, ラテン語: peccatum originale)は、キリスト教内の西方教会に於いて最も一般的な理解では、アダムとイヴから受け継がれた罪の事。 小麦が悪い…、牛乳が悪い…。 人類は進化の過程で、快適な生活の代償として、様々な慢性疾患を得、今こうして苦しんでいるのかもしれません。
様々な病気に、イースト菌(酵母)が関与している!
下記の様に、様々な病気に、イースト菌(酵母)が関与しています。
- 統合失調症
- アルツハイマー
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- 線維筋痛症
- 慢性疲労症候群
- HIV感染
- 大腸炎
- うつ病
- PMS(月経前症候群)
- 膣内イースト菌感染症
- 間質性膀胱炎
- 発作
- 過敏性大腸
- 癌
勿論、慢性疾患であるアレルギー性の疾患、つまり、花粉症(美容通信2005年3月号)やアトピー性皮膚炎(美容通信2007年4月号)、脂漏性皮膚炎(美容通信2004年9月号)、蕁麻疹(美容通信2006年4月号)、ニキビ(美容通信2003年11月号)、肌荒れ等にも、十分に関与している症例も多々あります。
何で?がここからの本題です。
腸内の微生物
物事には功罪があります。抗生物質もそうです。
広く普及している抗生物質の治療が腸内の微生物に対し、どのような悪影響を及ぼいしているかについては、様々な報告がありますが、The Journal of Infrction and Immunologyによると、ペニシリン経口投与の動物実験を行ったところ、善玉菌を含めた嫌気性菌総数が1/1000に減少したそうです。善玉菌が死滅した分だけ悪玉菌の急激な増殖が認められただけでなく、悪玉菌が腸内から腸管周囲のリンパ節まで移動し、更なる感染症の引き金になったそうです。
抗生物質の悪影響は他にもあります。因みに、腸内には細菌(好気性菌・嫌気性菌)の他、酵母菌、真菌類の微生物が増殖しています。ですから、抗生物質が、腸内細菌を殆ど死滅させる程のパワーの持ち主だと、事態は更に深刻になります。腸内環境が酵母菌だらけになっちゃう!だけでなく、それまで他の細菌達と分け合っていた食べ物を、全て酵母菌が独占出来ちゃう❤それどころか(!)、酵母菌は、抗生物質のエールを受け、かえって繁殖旺盛になる可能性すら指摘されてるんです。
上の図を見て下さい。通常の体内で酵母菌や細菌から作り出される代謝副産物の濃度は、とても低いレベルです。抗生物質の服用により、腸内の酵母菌や細菌の数が、極端に増加し、ひいては大量の代謝副産物の産生、そして腸管から血管へ吸収される事になります。副産物は血液を介して全身を循環し、最後には濾過されて尿へ排泄されます。
これらの代謝副産物の産生に加え、酵母菌細胞は、腸管の内壁に小さな傷?取っ掛かり?を付けて、まるでツタが家の壁をベタ~っと侵食する様に、着床をします。酵母菌から分泌される様々な消化酵素により、腸管の内腔は消化され、そこから正に付け込むんです。この時、菌体が分泌する酵素には、以前特集したホスホリパーゼA2(美容通信2016年7月号)、カタラーゼ、酸性又はアルカリ性ホスファターゼ、コアグラーゼ、ケラチナーゼ、分泌性アスパラギン酸プロテアーゼ等があります。
酵母菌の腸内膜への浸潤も、度重なれば、お洒落な倉敷のアイビースクエアどころか、ジェリーの大好きなスイスチーズを髣髴とさせる有様と化してしまいます。つまり、通常ではちゃんと消化されていない食べ物が、腸内膜を通り抜ける事なんてありえません。ところが、酵母菌によって破壊されてしまった腸内膜の絨毛細胞の間隙から、不消化の食物分子が吸収されちゃうなんて、通常ではありえない!事が当たり前に起こるようになります。これが、Leaky Gut Syndrome(腸管ダダ漏れ症候群)と呼ばれ、以前(美容通信2012年9月号)(美容通信2014年1月号)にも、又、後述する遅延性フード(食物)アレルギーの引き金となります。不消化食物が破壊された腸内膜を通り抜けてしまうと、免疫システムにより異物とみなされてしまうので、IgGやIgEの抗体が作られ、様々なアレルギー反応、つまり即時型や遅延型の反応が引き起こされます。後述する抗酵母菌療法を行うと、多くの場合アレルギー反応が改善されるのが確認されています。酵母菌の増殖を抑える事が、破壊された腸内膜部分の回復を促し、それが腸内からの不消化物のダダ漏れをなくす事に繋がり、免疫システムの発動の必然性をなくしてくれるからなんですね。…そう考えると、抗生物質の乱用に端を発した、まあ、文明病と称される所以が理解出来るともいうものです。
クロストリジウム属菌と、その代謝副産物HPHPA
クロストリジウム属菌
クロストリジウム属(美容通信2013年8月号)には、多くの菌が属しています。代表的なものには、破傷風菌C.tetaniや、食中毒の原因ではありますが、美容の大いなる友(シワ(美容通信2003年10月号)や、ボトックスリフト(美容通信2011年3月号)、毛穴・オイリースキンの改善(美容通信2010年11月号)、小顔(エラボトックス)(美容通信2010年4月号))であり、又花粉症の辛い鼻水の特効薬(美容通信2011年5月号)だったり、時には多汗症の治療、肩こり・首こりの治療(美容通信2012年12月号)、偏頭痛の治療(美容通信2013年5月号)、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の治療(美容通信2008年1月号)等に使われる八面六臂の大活躍のボツリヌス菌C.botulinum、下痢っピーの原因となるウェルシュ菌C.perfringensやディフィシル菌C.difficile、壊疽を引き起こすウェルシュ菌C.perfringens、ノーヴィ菌(C.novyi)、C.bifermentans、ヒストリチクス菌C.histolyticum、セプチックス菌C.septicum、ファラックス菌C.fallax等があります。その他多くのクロストリジウム属菌は、腸内の正常な常在菌にもかかわらず、可哀そうにも、名前すらない!のが現状です。約100種類以上ものクロストリジウム属菌が、胃腸管内には存在しています。
クロストリジウム属菌は、熱にも抗生物質にも、非常に抵抗性のある胞子を形成するのが特徴です。クロストリジウム属菌は嫌気性菌なので、確実に息の根を止めるには、酸素の暴露が一番です。多くの抗生物質、例えば、ペニシリンやアンピシリン、テトラサイクリン、セファロスポリン、クロラムフェニコール等に抵抗力を有しているので、これじゃあ、ダメ。メトロニダゾールやバンコマイシンで治療後、ラクトバシラス・アシドフィラス菌を補充するのが、一般的な制御方法とされています。唯、多くの症例では、メトロニダゾールやバンコマイシンを省略して、いきなり、ラクトバシラス・アシドフィラス菌を補充するだけでもいけちゃうなんて報告もあります。結構、クロストリジアの集落形成を抑制するみたいです。ですから、先ずは、プロバイオティックス療法(美容通信2012年8月号)や乳酸菌生成エキスである”アルベックス”(美容通信2016年2月号)で足掻くのも、全然ありの選択なのです。
クロストリジウム属菌の代謝副産物HPHPA
消化管内のクロストリジウム属菌の異常フェニルアラニン代謝産物が、3ヒドロキシフェニル、3ヒドロキシプロピオン酸(HPHPA)です。HPHPAが、異常神経伝達物質構成の指標として考えられています。
上図を見て下さい。HPHPAには、元になる物質が2つ考えられます。フェニルプロピオン酸と3-ヒドロキシチロシンです。この2つの化合物は、神経物質性の作用が大きくあり、動物や人間に異常な行動を引き起こす可能性があります。
HPHPAは食品から得られるアミノ酸、フェニルアラニン(美容通信2015年11月号)から生じます。復習にもなりますが、フェニルアラニンは殆ど全ての蛋白質に含まれており、これらの蛋白質は、腸内で消化酵素によりアミノ酸に分解(美容通信2010年1月号)されます。フェニルアラニンは必須アミノ酸なので、健康を損なわずに、食生活からフェニルアラニン摂取を制限する事は出来ません(美容通信2016年6月号)。フェニルアラニンは、その代謝経路で、神経伝達物質であるドーパミンとエピネフリンに転化されます。
特定のクロストリジウム属が多く繁殖していると、腸内で、フェニルアラニンが、フェニルプロピオン酸或いは3-ヒドロキシチロシンに転化されてしまいます。どちらの化合物も、更に転化されて、3-ヒドロキシフェニルプロピオン酸となり、最終的にはミトコンドリア内の脂肪酸を酸化する酵素が、これをHPHPAへ転化してしまいます。
論文によると、尿中に高濃度のHPHPAを排出している患者さんに、クロストリジウム属菌を殺すバンコマイシンやメトロニダゾールで治療を行うと、2~3週間程で、HPHPAが尿から殆ど除去される事が分かっています。ところが、クロストリジウム属菌は胞子形成菌です。胞子(芽包)とは究極の守備体制の一つで、この胞子形成状態になっている細菌を殺す事はまずもって不可能です。漂白剤MMSは、胞子を唯一殺せる最終兵器とされてはいますが、使用時の胃腸粘膜のダメージは計り知れません。アルコールハンドワイプの様な、一般的な消毒剤によって殺されていない胞子は、寧ろ胞子拡散を助けるとか、症状のないキャリアは、胞子を拡散するとか、様々な可能性すら示唆されていて、再発を如何に防ぐかが大きな問題となっています。実際、薬剤投与を中断すると、腸内で残党は勢いを再び取り戻し、その代謝副産物であるHPHPA濃度が急激の増加する事が知られています。
自閉症の患者では、症状が見事に、この値の推移に一致します。バンコマイシン等を6~8週間投与され、順調な発育過程を取り戻した子供達が、薬剤の投与中止後、2週間程で再び発育過程が退行を示した(「明らかに目に見える行動の劣化!」)等との具体的な報告も、多数散見されます。唯、高濃度のHPHPAは、自閉症の患者だけから検出される訳ではありません。500mmol/molクレアチニン以上のHPHPA値が測定される場合、その殆どの患者さんで、神経系、精神系、消化器系の疾患を有しています。
過剰ドーパミンの毒性
尿中のHPHPA値が高い場合、尿内ドーパミン代謝物であるホモバニリン酸HVAのモル比が、尿内エピネフリンとノルエピネフリン代謝産物であるバニリルマンデル酸VEA濃度に対して、増えています。つまり、この増加はHPHPA形成過程から生じる副産物が、ドーパミンからノルエピネフリンへの転化経路を阻止している可能性を示しており、これがひいてはドーパミンの過剰に繋がると考えられています。
ドーパミンは、他の神経伝達物質と比較して、非常に反応が良い分子であり、ドーパミンの分解は、自然に酸化種を生成します。ドーパミンニューロンでは、ドーパミンの実に90%以上が、大量の格納庫(小胞)に安全に保管されています。しかし、如何に大量の格納庫とは申せ、キャパには限界ってものがあります。格納庫からあぶれた細胞質のドーパミンは、酸化ストレスに端を発した神経変性の原因になる事が分かってます。
カンジダと、酒石酸&アラビノースの親密な関係
酒石酸は、酵母菌に由来する化学物質の一つで、コロニー形成の著しい侵襲性カンジダ症の、間接的なマーカーとして知られています。
アラビノースも、侵襲性カンジダ症の間接的なマーカーの一つで、アルドースと言う糖の一種です。酵母菌特有の糖です。
酵母菌と真菌、これらをどう制御するか?
繰り返しになりますが、アレルギー性の疾患は勿論、統合失調症、アルツハイマー、全身性エリテマトーデス(SLE)、線維筋痛症、慢性疲労症候群、HIV感染、大腸炎、うつ病、PMS(月経前症候群)、膣内イースト菌感染症、間質性膀胱炎、発作、過敏性大腸、癌等の様々な疾患に於いて、酵母菌と真菌からの副産物が、しばしば増加している事が知られています。これらの微生物の生態とその制御方法を知る事は、私達の健やかライフを全うする為にはと~っても大事なんです。
因みに、真菌は、酵母菌、カビ、キノコetc.を含むグループです。つまり、酵母菌は真菌ですが、多くの真菌は酵母菌ではありません。悪しからず!
抗真菌剤の代わり?若しくは、友としてのプロバイオティクス
プロバイオティクス(pro=for+biotic=life)(美容通信2012年8月号)は、腸内の酵母菌、真菌、細菌の異常な過剰増殖を抑制する治療に使われる微生物です。
抗真菌剤を使う時には、常にプロバイオティクス製品、若しくは”アルベックス”(美容通信2016年2月号)の様な乳酸菌生成エキス等との併用がお約束です。酵母菌は腸内生体系の一部であり、他の生物の繁殖を抑制しています。なので、抗真菌剤だけを服用しちゃうと、酵母菌は死んだけど、他の輩が蔓延っただけ!?的な、悪玉菌過剰増殖に陥ります。
所謂、処方箋不要の抗真菌剤達
本チャンの抗菌剤は、お薬ですから、当然ながら病院で処方してもらうしか方法がありません。
でも、もどきなら、アマゾンでポチっても、近くのスーパーで買っても、簡単に手に入れる事が可能です。例えば、ニンニク、ニンニクエキス、グレープフルーツ種子エキス、オレガノ、カプリル酸又はそのオイル形状のマクトンオイル(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、Tanalbit(カプセル剤)、ゴールデンシール(goldenseal)(ハーブの一種)、アロエヴェラ・ジェル(米国産アロエ)、ラクトフェリン(乳成分)等があります。
●ニンニク
強力な抗真菌作用があります。ニンニクの主成分はアリルスルフィニルアラニンですが、ニンニクを擦り潰したり、食べたりすると、アリシンって化合物に変換します。アリシンは、低用量では静真菌作用を持ち、酵母菌や真菌の発育を遅らせます。高用量では、カンジダ・アルビカンスを死滅させます。
●カプリル酸とマクトンオイル(MCT:中鎖脂肪酸トリグリセリド)
カプリル酸は、様々な食品に含まれる脂肪酸です。代表格としては、ココナッツオイルが挙げられます。40年以上前から、カプリル酸には抗真菌活性がある事は、広く知られています。
●コロイド銀
銀は、はジェリーや食器に使用される金属です。コロイド銀は、銀の懸濁液で、腸の殆ど全ての微生物(酵母菌、細菌、原生動物、ウィルス、寄生虫)を殺します。つまり、善玉菌を含めて、腸内に生息する生物を殺傷するって事で…、銀が重金属って事も…、手放しで大歓迎とは言えない理由にはなります。
●ラクトフェリン
ラクトフェリン(美容通信2012年8月号)は、人間を含めて多くの哺乳類が持っている、鉄と結合出来る蛋白質です。ラクトフェリンは、鉄と結合していない時のみ、カンジダに対して殺人鬼となり得ます。機序としては、恐らく、ラクトフェリンが鉄を奪い、カンジダを飢え死にさせる事が本体ではないかと考えられています。
●ビオチン
ビオチン(美容通信2009年11月号)は、HISAKOのクリニックでは、ほぼ強制的(笑)に摂取を勧められる、必須ビタミンの一つです。ビオチンは、多くのサプリメントにまるでお約束のように入っている、鉄板の栄養素ですが、一般的には、最もお値段が張る!ビタミン剤と言えども、その量は”一日の推奨摂取量”(RDA)に遥か及びません。それに、腸内細菌がビオチンを産生しているって事実を考えると、腸内細菌にもダメージを与える抗生物質の投与は、ビオチンの欠乏を引き起こす切っ掛けになってしまう可能性が非常に高いと言わざる得ません。
唯、皮肉にも、ビオチンは人間のみならず、酵母菌を含めた他の殆どの生物にとっても、重要な栄養素です。酵母菌はビオチンを得て発育しますが、心強い事に、それにより、より侵入度の高い菌糸体にまで進化を遂げる事はないみたいです。ご安心下さい。一般的には、酵母菌の過剰繁殖を最小限に抑える為に、抗真菌治療開始の1週間後から、ビオチンと他のビタミン剤を併用します。
食事制限による酵母菌抑制~糖分は駄目よ!
皮膚科(美容通信2011年4月号)は勿論、内科でも、眼科でも、婦人科でも、まあ、何処の科(美容通信2015年10月号)に問題があって受診をしても、必ず言われるのが、「糖分は、駄目よ!」。兎に角、「ろくでもない奴!」と、目の敵にされています。
単糖には、酵母菌過剰増殖への刺激作用があり、腸内酵母過剰増殖の抑制には、糖分除去は必須です。ヴァルガスらは、砂糖水を与えたマウスが、水だけを与えたマウスの200倍の量のカンジダ酵母を腸内に持っていたとの実験の報告をしています。似たような結果は、酵母菌関連の病気の人々の治療に於いても、多数報告がなされています。糖分除去の原則は、「甘いものは食べない」です。制限される食べ物を挙げると、飴玉、アイスクリーム、ケーキ、パイ、炭酸飲料水、kool-Aid(粉末清涼飲料)、果汁(フルーツジュース)があります。
天然であれ精製であれ、はちみつ、シロップ、果糖、製糖を含め、全てのタイプの糖分が、除去の対象になります。酵母菌の排除を早めるには、果物を1ヶ月くらい前から食べないようにしておくって、予めの準備段階が必要です。勿論、糖分が多いデザートは、無期限に排除です。
麦と乳製品も、グルテン・カゼイン除去の一環として排除されている場合の主な炭水化物源としては、じゃがいも、とうもろこし、米、山芋、サツマイモの他、お野菜では豆類やブロッコリー等があります。しかしながら、これらの複雑な炭水化物も、腸で単糖に分解され、酵母菌の餌となります。つまり、食事制限だけでは、酵母菌の顕著な過剰増殖を制御するのは難しく、何らかの抗真菌薬の併用が必要です。しかし、糖質制限をするのとしないのでは、倍近い効果の開きがあったそうです。
酵母菌死滅反応=ヘルクスハイマー(Herxheimer)反応
通常、抗真菌剤を使い始めてから、3~4日位は、体調が少し悪くなる事があります。極度の疲労や発熱です。腹がガスでパンパンに張った感じになったり、吐き気や、嘔吐、湿疹、頭痛、鼻詰まり等の症状も、出る事があります。酵母菌の過剰増殖が著しい場合は、1週間位続きます。
何でか?は、未だ良くは分かっていませんが、恐らくは、酵母菌が死に往く過程に於ける、断末魔の叫びなのでしょう。毒素を満たした水風船がバチ~ンと割れて、中の悪い輩が一気に放出された…異常な有機酸や、その他の毒性副産物が、その正体です。体は当然ビックリはしますが、粛々と毒物は代謝され、おしっこになって体から出て行ってしまいます。実際、最初抗真菌剤が投与されると、尿中内の異常有機酸の濃度が高くなり、その後、酵母菌が全て死滅するにつれて濃度も下がり出し、毒性の有機酸がそれ以上放出される事はありません。
因みに、この反応は、酵母菌に限らず、腸内で過剰増殖している数種類の細菌が同じ様に治療されても、起こります。
この様なヘルクスハイマー反応がでないように、若しくは出ても軽く済むようにするには、幾つかのアプローチが提唱されています。
抗真菌剤の使用前に、下拵えとして、2週間前から、糖分を含む食べ物は排除する事。しかしながら、これだけでも、軽いヘクスハイマー反応を呈する症例もあるみたいです。糖分は、本当にカビの敵!なんですね。
ビタミンB6を予め服用しておくのも、かなり有効です。有害なペントシジンの形成を防止してくれます。
有機酸検査(OAT)で、原因検索をしよう
有機酸検査(OAT)は、腸管内で酵母菌や悪玉細菌から生じた種々の副産物を調べる検査です。これ等の副産物は、腸管から血液中に吸収され、最終的にはおしっこへと濾過されます。端的に言うと、お買い物の際のレシートをチェックするような検査ですから、正確な消化器系イースト菌と細菌の評価の他、重要な神経伝達物質、栄養指標、グルタチオンの状態、シュウ酸代謝等も分かります。
つまり、例えば、頑固なニキビの原因が、どうも腸管内の酵母菌や悪玉菌の増殖に起因する、遅延性フード(食物)アレルギーかも知れないって話になったとします。しかしながら、検査を行わなわないと、原因が酵母菌と悪玉細菌の両方にあるのか、片方だけなのかが判別出来ません。つまり、酵母菌には問題がないけれど、細菌クロストリジウムの過剰増殖が原因の患者さんに、抗真菌治療を行うと、細菌の問題が更に悪化する可能性があります。腸内の微生物は、仁義なき椅子取りゲームをしているようなものですから、敵に塩を送る様な行為はしてはなりません。
朝一番のおしっこを少量取るだけで、74(+2)の代謝産物マーカーを調べる事が出来ます。痛くもないし、手間の取らない超簡単な検査なのです。しない手はないでしょう。
- HPHPA、クレゾール、4-ヒドロキシフェニル酸、毒性クロストリジアマーカー
- ドーパミン、ノルエピネフリン不均衡
- カンジダ及び菌類検査~有機酸検査、大便菌培養/感応性検査
- 菌類~高シュウ酸問題の主要因
カンジダの診断は、しばしば苦慮をします。上記の様な疾患に於いては、カンジダの感染ではなく、腸管での異常増殖だからです。酵母菌は、腸管で均等に増殖するなんて優しさは持ち合わせず、普通は、幾つかの集団又は”巣”を作る形態で生息しています。なので、便培養を行っただけでは、剥がれ落ちた細胞のしかカウント出来ないため、後述する尿中の有機酸検査と一緒に行うのがお約束とされています。)
遅延性フード(食物)アレルギー
腸内細菌叢と遅延性フード(食物)アレルギー(美容通信2012年9月号)については、以前も(美容通信2014年1月号)特集しましたが、免疫系の大部分は、腸管の内部やその近隣にあり、病原性微生物が腸管から他の部分に侵入する事を防いでくれます。従って、免疫系の欠陥は、腸管にいる酵母菌等の微生物の過剰増殖に繋がる事になります。つまり、逆もまた真なり。唯、抗生物質の乱用は、腸内の多くの正常な微生物をも死滅させる為、酵母菌や細菌(クロストリジウム属)の様な、異常な微生物の腸管内増殖を許す切っ掛けになります。勿論、糖分(炭水化物)の多い食事をしていると、酵母菌の過剰増殖が悪化する事もあります。一筋縄ではいかないのが、現実です。
原罪~小麦Wheaそして牛乳に関する考察~遅延性フードアレルギーの観点から
アダムとイブから受け継がれた罪を、一般的には原罪と称します。ですが、様々な病気の根源として言うのなら、原罪は小麦と牛乳断定しても構わないのではないかと思います。麦と牛乳の登場は、私達の進化の過程を振り返ると、比較的新しく、1万年前にトルコで”鎌”が穀物の収穫で使われた時期に、恐らく中近東で、多くの私達の祖先が初めて食べ物として利用したと考えられています。この時期以前は、私達の祖先は野生植物、魚、動物、虫等の様々な物を食しておりました。北ヨーロッパ、アジア、北アメリカを覆っていた氷河が退くと共に、文明は中東からヨーロッパへ拡がりました。農業技術を持った人達は、こぞって、彼らの大切な財産である乳牛と穀物用の食種を伴って、新天地へと散らばりました。
小麦は、イネ科の植物で、主要タンパク質はグルテンです。グルテンは高濃度のグルタミンとプロリンアミノ酸を含んでいます。グルテンは、小麦以外にも、大麦、ライ麦、ライ小麦にも含まれていますが、同じ穀物でも、コーンやオート麦、米、そば、キヌアには含まれていません。
牛乳の主な蛋白質は、カゼインです。
これ等の食物が原罪とされる理由は、私達がこの比較的新しい蛋白質に対し、きちんとアミノ酸まで代謝する能力が欠けている事に尽きます。全く代謝が出来なかった多くのヨーロッパの原住民は淘汰されました。致死量にまで至らなかった人々は生き残りましたが、後述のような様々な疾患を呈する人の多くは、おしっこの検査で調べてみると、不完全レベのペプチドが多量にある事が分かっています。通常、蛋白質が食べ物として摂取されると、消化系の酵素により、より小さなサイズのペプチドに分解され、更に、アミノ酸にまで分解されて、腸内膜を通り血中に吸収されます。おしっこにペプチドが多量に残存していると言う事は、この過程が上手く行っていない事を示しています。
尿中ペプチド検査は、酵母菌治療の評価だけでなく、良い動機付けにもなります。
因みに、それを裏付ける恐ろしい話を一つ。牛乳と麦を主食にする民族に、3000年前、つまり、一番最後に侵略された西アイルランドでは、他国に比べて牛乳と麦の過敏性が高く、これに関連するとされる統合失調症やセリアック病の発症率が、世界で一番高い国になっています。また、東インド諸島の原住民が、穀物摂取量の多い西洋食生活を取り入れる前までは、事実上統合失調症はなかったとの報告もあります。
小麦に関する研究
小麦に関連する病気としては、代表的なものとしては以下が挙げられます。
- 自己免疫疾患:セリアック糖尿病、紅斑性狼瘡(ループス)、MS etc.
- ペプチド代謝の変化:中毒
- アレルギー:IgG、IgE
- 免疫機能の変化、サイトカイン
- 消化器疾患:セリアック病、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、神経障害
セリアック病
グルテンの蛋白質は、小腸の内側にある上皮のバリアに悪影響を及ぼします。つまり、上皮の表面に破綻をきたしたり、粘膜の平坦化してしまい、それを切っ掛けに複雑な自己免疫(抗原)応答が始まってしまうのです。(Niewinski, 2008)
”リーキーガット(腸管壁ダダ漏れ症候群!)”になる切っ掛けになってしまいます。
ゾリヌンと呼ばれる蛋白質は、腸管内のバリアを破綻させ、リーキーガットを引き起こします。分子量の大きいペプチドが、絨毛を介して、血液内に一気に流入してしまいます。(Center for Celiac Research)
leaky gut synromeと酵母菌問題について
酵母菌は、二つの形態での生息が可能です。浮遊性の単細胞形態か、コロニー(集落)形態かです。酵母菌はコロニーを形成する際、ホスホリパーゼ(美容通信2016年7月号)やプロテアーゼ等の酵素を分泌し、酵母コロニーを腸壁に付着させる為、腸管の内層を分解します。酵母菌によって出来た穴は、 ”リーキーガット(腸管壁ダダ漏れ症候群!)”と言う状況を生み、そこでは不消化の大きな食物分子が血液中に吸収され、食物アレルギーを起こします。
根底にある酵母問題が制御されると、腸の穴は治ります。そうなれば、不消化の食物が血中に入る事は減り、食物アレルギーの数は減るでしょう。
グルテン感受性と、神経性疾患については、こんな報告(Neurol Neurosurg Psychiatry 2002; 72: 560-563)もあります。
十二指腸のセリアック-バイオプシー検査を行ったっところ、グルテン感受性のある神経系疾患の患者さんの、なんと1/3で、絨毛の萎縮が認められました。しかしながら、免疫系疾患がこの病気の本質であるにも関わらず、腸のダメージが殆どない患者さんもいるのも事実です。ショー博士のクリニック(グレートプレインズ研究所)では、セリアック病の検査(抗トランスグルタミネーゼ抗体)で陰性だったり、平らな粘膜の持ち主にも関わらず腸内バイオプシーで陰性だったとしても、グルテンフリーの食事療法を患者さんに奨めているそうです。
因みに、IgG検査で大麦に陽性反応が出た患者さんの99%は、セリアック病は陰性の結果でした。
抗体について
抗体は、4種類
抗体には、4種類あります。
- IgG:病原菌が持続的に侵入する事で産生される抗体で、食物アレルギーに関わっているとされます。
- IgA:鼻腔内膜や消化器官内膜を病原菌から守る働きをする抗体です。
- IgM:病原菌が体内に侵入して来た時、免疫系によって最初に作られる抗体。防御システムの初期段階の働きを担います。
- IgE:様々な種類の最も知られている、所謂”アレルギー”に関わっているとされる抗体です。
IgEとIgGの2つのフード(食物)アレルギー
以前、遅延性フード(食物)アレルギー(美容通信2012年9月号)の特集でも触れましたが、復習です。
IgEが原因とされる即時型と、IgGが原因とされる遅延型があります。
- IgEが関与する即時型アレルギー
即時型の反応で、原因となる食べ物を食してから短時間(直後~1時間)で、症状が出現します。ヒスタミンの遊離が起こる為、発疹やくしゃみ、息苦しいだとか、赤いだとか、痒いだとか様々なアレルギー症状です。つまり、私達が”食物アレルギー”と聞いて、一般的に想像する典型的な反応が、このIgEを介した即時型です。アナフィラキシーショックの原因になります。皮膚プリック検査でも、簡単に判定が出来ます。
- IgGが関与する遅延型アレルギー
通常ヒスタミンの遊離を伴わないので、所謂”アレルギー”とセットで考えられがちな、皮膚プリック反応も起こらないし、IgEの様に、健康保険の対象となる検査でもありません。アナフィラキシーショックにもなり得ません。遅延型反応なので、アレルギー反応って事すら気付いていない人が大多数です。食べてから6時間から24時間後して、漸く症状が現れます。症状と言っても、IgEの様な華々しさはなく、どちらかと言うと地味なボディブロー系。花粉症やアトピー性皮膚炎、ニキビ、脂漏性皮膚炎等々の慢性疾患や、精神疾患について、臨床的に非常に有用性が高いとされる検査になります。
付録までに、衝撃的な論文を幾つかピックアップしておきます!
レポート1.慢性的に飛行を繰り返す未成年者の食事分析(Schauss AG. Critical analysis of th又e diets of chronic juvenil offendesrs. J. Orthomol Psych. 8: 149-157, 1979.)
- 慢性的非行未成年者は、コントロール群に比べて、牛乳をより多く飲んでいた。
- アメリカの未成年の刑務所で、牛乳の代わりにオレンジジュースが供給された後、反社会的行動が激減した。
- 牛乳を飲むようになると、再び問題行動が増えた。
レポート2.自閉症と統合失調症の腸疾患(R Cade et al. Autism and schizophrenia: Intestinal disorders. Nutritional Neuroscience 3: 57-72, 2000. Deps. of medicine, Physiology, Psychology, and Psychiatry, University of Florida, USA.)
- 自閉症と統合失調症患者両方に見られる異常ペプチド。
- 自閉症の87%、統合失調疾患の86%に於いて、グリアジン(麦)に対するIgG抗体。
- 自閉症の90%、統合失調症の93%の患者に於いて、カゼイン(牛乳)への高いIgG抗体。
- グルテン&カゼインフリー食事療法実施3ヶ月で、自閉症患者81%に著しい改善。
レポート3.食物アレルギーと幼児期の自閉症の関連性
- 36人の自閉症患者にみる、牛乳(もしくは皮膚検査で陽性だった食べ物)を除去する食事療法の有用性。
- 8週間後の除去食の食事療法により、患者の問題行動の症状に改善が見られた。
- 特定のIgA抗原が、カゼイン、ラクトアルブミン及びβ‐ラクトグロブリンで高濃度。
- カゼインに対しての高値のIgGとIgM。
最も一般な食物アレルギーIgG
食物アレルギーの原因となりやすい食べ物って、当然ながらあります。唯、アメリカに追随するのが舎弟・日本の宿命とは言いながら…、やっぱ喰うもんはまだまだ違うぞと思ってしまうHISAKOでした(笑)。
- グルテン(小麦、ライ麦、大麦)
- カゼイン(牛乳、乳製品)
- 大豆製品
- 柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)
- ピーナッツ
- チョコレート
- 卵
- パン酵母、ビール酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)
- 砂糖
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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