NMN派?NAD+派?|アンチエイジングの為の点滴療法 | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

NMN派?NAD+派?|アンチエイジングの為の点滴療法

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、長寿遺伝子群(サーチュイン)を活性化させる事が確認され、アンチエイジング医療が盛んなアメリカではNMN点滴やNAD+点滴が普及しています。
NMNはNAD+の生化学的前駆体であり、私達にはニコチンアミドアデニンヌクレオチド(NADHおよびNAD+)を生成する酵素が存在しています。本来は生体内でも生成されていますが、加齢に伴ってNMN生成能力の低下により、NAD+も減少し、その結果、細胞核の損傷やミトコンドリアの活性低下が進んでしまいます。
…NMN点滴で補うか? NAD+点滴で補うか? はたまた、NR若しくはNMNサプリメントを服用するか? あなたは、何派ですか?

 サプリメントでNAD+Pro300を飲んでも、NMN点滴やNAD+点滴を行っても、どれも、体に燃料が補給され、エネルギーと認知能機能が高まり、気分が上がり、老化の衰えを回復させる効果があると言われています。プロのアスリートが自然にパフォーマンスを向上させたい場合や、学生が記憶力を向上させたい場合にも、役立つ可能性もあります。現在分かっている効果は、認知機能の向上、エネルギー活性化、体重の増加防止及び体重管理の補助、老化現象の緩和、記憶力の向上、皺の減少、炎症や痛みを軽減、気分の向上、鬱症状の軽減、運動能力の向上、筋肉や健康維持の補助、肌全体の美しさ向上等です。

長寿遺伝子

LIFE SPAN:老いなき世界

 NMN点滴やNAD+点滴についての講習会に参加すると、必ず引用されるのが「LIFE SPANの老いなき世界」。だから、講習会に参加した医者共は、半強制的に読む事?購入する事?を強要されてしまうんです(笑)先ずは、amazonに掲載されている本の紹介文をそのまま抜粋します。

 【人類が迎える衝撃の未来!】
人生100年時代とも言われるように、人類はかつてないほど長生きするようになった。
だが、より良く生きるようになったかといえば、そうとはいえない。
私たちは不自由な体を抱え、さまざまな病気に苦しめられながら晩年を過ごし、死んでいく。
だが、もし若く健康でいられる時期を長くできたらどうだろうか?
いくつになっても、若い体や心のままで生きることができて、刻々と過ぎる時間を気に病まずに、何度でも再挑戦できるとしたら、あなたの人生はどう変わるだろうか?


 ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者である著者は、そのような世界がすぐそこまで迫っていることを示す。
本書で著者は、なぜ老化という現象が生物に備わったのかを、「老化の情報理論」で説明し、なぜ、どのようにして老化を治療すべきなのかを、最先端の科学的知見をもとに鮮やかに提示してみせる。
 私たちは寿命を延ばすとともに、元気でいられる期間を長くすることもできる。
 老化遺伝子が存在しないように、老化は避けて通れないと定めた生物学の法則など存在しないのだ。
 生活習慣を変えることで長寿遺伝子を働かせたり、長寿効果をもたらす薬を摂取することで老化を遅らせ、さらには山中伸弥教授が突き止めた老化のリセット・スイッチを利用して、若返ることさえも可能となるだろう。
 では、健康寿命が延びた世界を、私たちはどう生きるべきなのだろうか?
著者によれば、寿命が延びても、人口は急激に増加しない。また、人口が増加しても、科学技術の発達によって、人類は地球環境を破壊せずに、さらなる発展を目指すことができるという。
 いつまでも若く健康で生きられれば、年齢という壁は消えてなくなる。
孫の孫にも会える時代となれば、私たちは次の世代により責任を感じることになる。
 変えられない未来などない。
 私たちは今、革命(レボリューション)の幕開けだけでなく、人類の新たな進化(エボリューション)の始まりを目撃しようとしているのだ。

 

 最近の研究によれば、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、長寿遺伝子群(サーチュイン)を活性化させる事が確認され、アンチエイジング医療が盛んなアメリカではNMN点滴やNAD+点滴が普及しています。老いなき世界の、最初の突破口になるかも知れません。

 

長寿遺伝子の存在と役割り

 研究により、ヒトゲノムにはこれまで二十数個の関連遺伝子(長寿遺伝子)が見つかっており、これらは、体内で監視ネットワークを構成し、血液中に蛋白質や化学物質を分泌して、細胞間や臓器間での情報の共有をしています。例えば、私達が何を食べているか、どれくらい運動しているか、それは一日のうちでどの様な時間帯なのか等々の情報を基に、環境が厳しければ、じっと嵐が過ぎ去るのを頭を垂れて待てと指示し、状況が好転した暁には、とっとと成長して仲間を作れと指示します。つまり、単に寿命を長くするだけではなく、寿命の質を左右する元気遺伝子とも言える性質を有しています。

■サーチュイン

 長寿遺伝子の代表的な遺伝子群が、生殖(増殖?それとも拡大?と訳した方がピンと来るかしら?)とDNA修復を調整するサーチュイン遺伝子群です。現在、7種類のサーチュイン遺伝子が見つかっています。

SIRT1

核内受容体PPARγのコファクター1(PGC1α)の活性化で、糖新生、脂肪酸酸化、及びミトコンドリアの活性化を促進します。

SIRT2

SIRT2は、SIRT1と同様に非常に強い脱アセチル化活性を示す酵素で、PEPCK1の脱アセチル化を介した糖代謝や、FOXO1の脱アセチル化を介した糖代謝の制御が見出されています。また、SIRT2は癌抑制遺伝子である事が示唆されており、SIRT2のノックアウトマウスでは発癌率の上昇が認められています。

一方で、中枢神経系でのSIRT2の働きも大変興味深いものがあります。パーキンソン病は加齢に伴い発症が高まる神経性疾患で、神経細胞変性にはα-synuclein蛋白質の蓄積と封入体形成の関与が示唆されています。神経細胞に於いて、SIRT2を阻害すると、α-synucleinの封入体形成を抑制し、神経毒性が軽減される事が分かっており、神経性疾患に対する創薬標的として注目されています。

SIRT3

ミトコンドリアでは、多くの蛋白質がアセチル化されており、エネルギー代謝に関わる蛋白質が多く含まれていますが、SIRT3を欠損させたマウスでは、他のサーチュイン(SIRT4とSIRT5)存在下でもミトコンドリアに局在する多くの蛋白質のアセチル化が亢進する事から、SIRT3はミトコンドリアの主要な脱アセチル化酵素であると考えられています。

SIRT4

SIRT4の発現は、様々なDNA損傷ストレスによって誘発され、これによりグルタミン酸デヒドロゲナーゼを介したグルタミン酸の補充反応が抑制される事で、細胞の増殖が停止します。反対に、SIRT4の欠損は、細胞の増殖抑制やDNA修復に異常を来たし、染色体異常を蓄積させます。

SIRT5

SIRT5は、1型カルバミルリン酸合成酵素(CPS1)を脱アセチル化して、尿素回路を制御する事が知られていますが、一方でNAD+依存的にリジンの脱スクシニル化活性と脱マロニル化活性を有する事も知られています。

SIRT6

これまでに、SIRT1~SIRT7まで全てのノックアウトマウスが作成されているが、SIRT6のノックアウトマウスは最も顕著な早期老化様症状を示す事が知られています。SIRT6のノックアウトマウスは、生後約2~3週までは正常に発育しますが、その後急速に、皮下脂肪の低下、骨密度の低下、脊柱彎曲、リンパ球の減少などの老化様症状を呈し、約1ヶ月で死に至ります。

SIRT7

癌細胞でSIRT7の発現を抑制すると、足場非依存性増殖能の低下や、マウスでの腫瘍形成能が著しく阻害される事から、癌細胞の増殖や形質維持に働いていると考えられます。一方で、SIRT7が結合している遺伝子には数多くのリポソーマル蛋白質が含まれており、又、SIRT7はrRNAの転写制御への関与も報告されている事から、蛋白質合成系を制御している可能性が示唆されています。

 

 サーチュインは、脱アセチル化酵素です。脱アセチル化とは、ヒストン(真核生物のクロマチン(染色体)を構成する主要な蛋白質で、長い DNA分子を折り畳んで核内に収納する役割を持っています)等の蛋白質からアセチル基を外す事を言います。ヒストンが脱アセチル化されると、DNAにヒストンががっつり巻き付いてしまうので、DNAの情報の判読が難しくなり、蛋白質の合成がSTOPしてしまいます。反対に、アセチル化されると、あたかも100均で売られているシャンプーのボトルストッパーみたいにアセチル基が結合して、DNAへの巻き付きが緩みます。その結果、遺伝情報の判読が可能になり、蛋白質の合成が始まります。つまり、サーチュインは、遺伝子のスイッチのON/OFFの仕組みを司っており、エピジェネティクス的な調節機能に於いて極めて重要な役割を担っています。そして、進化の過程で、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と言う分子を利用して、効率良く仕事をする技を習得したんです。後述しますが、爺婆になるにつれ、悲しいかな、そのNADが失われ、そのせいでサーチュインの働きが衰え、それが老齢に特有の病気を発症してしまう大きな理由の一つと考えられています。

 サーチュイン酵素は、ストレスに曝されると、例えば、老化に伴う主だった疾患(糖尿病、心臓病、アルツハイマー病、骨粗鬆症、癌等々)やアテローム性動脈硬化症、代謝異常、潰瘍性大腸炎、関節炎、喘息等の慢性炎症などもこれに含まれますが、増殖ではなく、只管修復に心血を傾けながら、嵐が去るのをじっと待つようにと、私達の体に命令します。マウスの実験では、サーチュイン酵素を活性化する事で、DNAの修復が進み、その結果、記憶力が向上し、運動持久力が高まり、太り難くなると言う結果が報告されています。

 こうした作用の根底にあるのは、かなり単純なサバイバル・プログラムであり、サーチュインは他の長寿遺伝子と比べて、ちょろい(笑)と言うか…人為的な働きかけをし易い特徴があります。

■サーチュイン以外の長寿関連遺伝子

 サーチュイン以外の長寿関連遺伝子で、研究が非常に進んでいる遺伝子群は2組あります。TOR(ラパマイシン標的蛋白質)を作る遺伝子群とAMPK(AMPK活性化プロテインキナーゼ)と言う酵素を作る遺伝子です。前者のTORは、複数の蛋白質からなる複合体で、成長や代謝を調節します。後者のAMPKは、代謝をコントロールする機能を持ち、エネルギーレベルの低下に対処する為に進化したと考えられています。これらも、サーチュイン同様に、人為的に調節する方法についても、可成りの事が分かって来ています。

 

過度なストレスは、長寿遺伝子を働かせる

 細胞を再起不能なまでに踏み躙るようなストレスは論外ですが、軽やかな?幾つかのストレス因子は、長寿遺伝子を働かせます。例えば、運動や、たまに絶食をするとか低蛋白質の食事を摂る、高温や低温に晒される等々です。この様なホルミシス効果を疑似的に作り出す様なお薬が、既に何種類か開発、販売されています。

エピゲノムの安定化が、鍵!

老化遺伝子なんてものは、ない!(らしい)

 老化の症状に影響する遺伝子は、既に見つかっています。老化を防ぐシステムを制御する長寿遺伝子も突き止めらています。しかし、老化の原因となる単一の遺伝子は未だ発見されていません。恐らく、これからも発見はされないと思われます。何故なら、私達の遺伝子が、進化の過程で、敢えて老化を選択する必然性がなかったからです。

 

遺伝子のスイッチを調節するエピゲノムのメカニズム

 サーチュインは脱アセチル化酵素です。前述の様に、サーチュインは、ヒストン上に付加された化学物質(アセチル基)を外して、転写因子が結合出来ないようにする=DNAの情報を読み取れないようにする事で、遺伝子のスイッチのON/OFFの仕組みを司っています。この際、どの遺伝子のスイッチを入れ、どの遺伝子をオフのままにしておくのか? この調節をする仕組みと構造の総称が、エピゲノムです。ゲノムは確かに大事な基本ではありますが、私達の生命活動を実際に舵取りをしているのはエピゲノムなのです。分かり易い例としては、芋虫は人にはなれないけれど、蝶?蛾かな?にはなる。まあ、どっちでも構わないけど(笑)、ゲノムの配列自体は全くそのままで、変態の過程でエピゲノムが変化すると、蝶だか蛾だかに羽化するんです。

 

サバイバル回路に於けるサーチュインの役割

サバイバル回路を構成する重要な要素:低エネルギーを感知するセンサー(SNF1/AMPK)・転写因子(MSN2/DAF-16)・NADとサーチュイン・ストレス耐性・長寿

 老化の情報理論によれば、DNAが損傷されるような深刻なダメージが頻回に起こると、厳しい環境下でも生存する為の知恵「環境が厳しければ、じっと嵐が過ぎ去るのを頭を垂れて待て。状況が好転した暁には、とっとと成長して仲間を作れ」であるサバイバル回路が酷使され、細胞のアイデンティティを損ない、それが老化の原因となります。

 若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→DNAの巻き付きと遺伝子調節(エピゲノム)の混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死

 このどれか一つでも人の手で働きかける事が出来れば、人間がもっと健康で長生き出来るって事なんです。因みに、一卵性双生児の研究からは、長寿に対する遺伝子の影響は10~25%なんだそうです。思いの外、DNAの影響は少ないんです。

 放射線(自然放射線やレントゲン、CT、MRI、PET検査等)以外にも、食物の中の発癌物質、煙草、環境中の化学物質、活性酸素等により、一日1細胞当たり1万から100万箇所の頻度で、私達のDNAは損傷を受けているそうです。しかも、細胞が自らのDNAを複製する度に、46本ある染色体の夫々が何らかの形で損傷を受けますから、私達はある意味、生きて存在しているだけで、1日に2兆回あまりもDNAが傷付いている計算になります。

 私達には、幸いにもDNA損傷を修復する機能があり、DNAが損傷を受けると、修復酵素が駆け付けてこうした傷を修復します。この修復が体にとって最優先事項ですから、エネルギーは修復に振り分けられ、二の次以下と判断された他のエピゲノムを調節する作業は当然STOPします。これが、俗に言うサバイバル回路です。しかし、進化の過程で、サーチュインの業務内容は拡大し、前述のヒストンだけでなく、細胞分裂や細胞の生存、DNAの修復、炎症、ブドウ糖の代謝、ミトコンドリア等の様々な機能を調節を行う蛋白質から、アセチル基を取り除く事を生業とするようになりました。つまり、遺伝子の制御を通して、細胞がアイデンティティを失わない様に、又最適な状態で機能出来るようにするサーチュインの多くの通常業務が、DNAの損傷の前では、二の次として後回しされるようになったのです。サバイバル回路は短期的には非常に効率的な仕組みですが、度重なるDMAの損傷が続くと、本来の持ち場である遺伝子と損傷したDNAの間を、サーチュイン等の酵素が頻繁に行ったり来たりせざる得なくなり、間違った遺伝子が間違った場所で働いてしまうミスタッチが次第に増えてしまいます。これが、老化です。心臓病や癌、痛み、虚弱等々は、エピゲノム情報の喪失なのです。

 この様なサバイバル回路を発動させる非常事態は、度が過ぎると、本来のサーチュインの通常業務が妨げられ、生命体としての存在自体が破綻します。が、運動や、たまに絶食をするとか低蛋白質の食事を摂る、高温や低温に晒される等々の、極々軽いホルミシスなら? 寧ろ、生存に対しプラスに働きます。前述の様に、ホルミシス効果を疑似的に作り出す様なお薬が、既に何種類か開発、販売されています。広い意味で言えば、ケミカルピールングヤフォトフェイシャル等々の美容皮膚科的な施術も、疑似ホルミシスとも言えます。

 

エピゲノムを安定させれば、若返りも不可能ではない

 2018年にA. Dasらが発表した論文によれば、NAD濃度を高める分子を高齢のマウスの餌に混ぜて投与したところ、突如として若いマウス顔負けのマラソンランナーに変身してしまったそうです。NADはサーシュインが働く上で不可欠な物質です。投与によりSIRT1酵素が活性化され、血流の不足している筋肉の領域に新たな毛細血管を形成し、必要な酸素を運ぶのと同時に、乳酸や有害な代謝産物を筋肉から除去したからだと考えられています。

 サーチュインが活性化された結果、前述のマウスのエピゲノムはより安定した状態になりました。しかし、未だにどの様な機序でもって生じたのか、その全てが解明されている訳ではありません。サーチュインを活性化する分子にしても、何が最適でどれくらいの量が良いのか、未だ結論は出ていません。体内でNADに変化する化学物質がこれまでに数百種類も合成され、それらを使った臨床試験が幾つも進められています。とは言え、デビッド・A・シンクレアが「LIFE SPANの老いなき世界」の中でも述べているように、全ての結果を待つまでもなく、これまでに解明された事、つまり、サプリメントでNAD+Pro300(美容通信2021年12月号)を飲むのも、NMN点滴もNAD+点滴も、活用するのはありだと思います。

サーチュインの燃料となるNAD

NADは、サーチュインの燃料

 サーチュインは、化学物質で活性化が可能です。NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)も、このサーチュイン活性化化合物(STAC)の一つです。サーチュイン活性化化合物は何百も確認されていますが、NADには他のサーチュイン活性化化合物にはない利点があります。7種類あるすべてのサーチュインの活動を高めてくれます。

 NADは、端的に表現すると、サーチュインの燃料です。十分な量のNADがなければ、ヒストンからアセチル基を外せないし、遺伝子も制御出来ないし、寿命も長く出来ません。ふた昔ほど前、一世を風靡したレスベラトロールですが、サーチュインを活性化させて寿命を延ばせたのは、NADがあってこその話だったのです。しかしながら、残念な事に、脳みそを始め、血液や筋肉、免疫細胞、膵臓、皮膚、微細な血管の内皮細胞等に至るまで、年齢と共に、全身の臓器でNAD濃度は低下します。

 

NADを増加させるNRとNMN

 2003年、ビタミンB3の一形態であるNR(ニコチンアミドリボシド)が、極めて重要なNADの前駆体の一つである事が発見されました。また、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は人間の細胞内だけでなく、アボカドやブロッコリー、キャベツ等の食物にも含まれている物質で、前述のNRがNMNに変換され、それがNADに変なります。NMNはNRよりも安定しており、マウスの実験では、NRを使った場合には認められなかった様々な健康効果が確認されています。

 NAD増強分子は、マウスの様々な病気を治す効果を有しているだけでなく、老年期に与えてもマウスの寿命を延ばします。最新の研究によれば、私達人間に対しても、マウスと全く同じではないにしろ、似たような健康効果を齎すと強く示唆されています。NAD増強分子(メトホルミンやラパマイシンも含む)が適度なストレスを作り出す事で、長寿遺伝子が働いてエピゲノムの変化を抑制し、その結果、老化の原因となる細胞のアイデンティティを損なう事態が回避されるからと考えられています。

■NAD増強分子による生殖能力回復の可能性

 理科かな?生物かな?、まあ、どちらの授業でも構わないんだけど、「女性は決まった数(約200万個?)の卵子を持って生まれ、卵子の大多数は思春期前に死滅する。残ったもののほぼ全ては、月経時に放出されるか、単に時と共に死んでしまう。やがて卵子が底をつくと、もう女性には生殖能力はない」と習ったはずです。

 ところが、NAD増強分子によって、衰えた卵巣の機能を回復させる可能性が示唆されています。月経が再開したとか、馬が生殖能力を取り戻した等々の事例は幾つも報告があります。化学療法剤で卵子を全て破壊したマウスや、既に閉経した恒例のマウスを使った幾つかの動物実験で、生殖能力がよみがえる事が確認されています、2004年、ジョナサン・ティリーが、ヒト幹細胞は卵巣にも存在し、高齢になっても新しい卵子を作り出せると、大胆な仮説を提唱しました。この仮説が正しければ、これ等の報告の理由がすんなりと説明出来そうですが、まだ仮説の域を出ていません。しかし、もしこれが事実ならば、卵巣の老化を遅らせ、修復し、若返らせるように働くメカニズムを利用して、他の臓器でも同じ事をするのが将来的には可能となるかも知れません。

NMN点滴派?NAD+点滴派?

NADの復習

 NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、全ての生物種に存在する補酵素であり、枝豆、ブロッコリー等の様々な栄養源に含まれています。因みに、100mgのNMNを食べ物から摂ろうと考えると、40Kg(約2000房)もの大量のブロッコリーを食する必要があります。NMNはNAD+の生化学的前駆体であり、私達にはニコチンアミドアデニンヌクレオチド(NADHおよびNAD+)を生成する酵素が存在しています。本来は生体内でも生成されていますが、加齢に伴ってNMN生成能力の低下により、NAD+も減少し、その結果、細胞核の損傷やミトコンドリアの活性低下が進んでしまいます。

 報告によれば、体内のNAD+は10歳代の後半をピークに減少し、40歳代でピーク時の半分にまで減少します。世界中の抗老化研究者の間では、このNADの減少が、人間を含め、マウス、線虫等の生物の老化の引き金になるという事が共通認識になりつつあります。機序としては、①サーチュイン遺伝子の活性化と、②ミトコンドリアの活性化が考えられています。

 前述の通り、NMNの摂取により、NADに変換され、老化や寿命をコントロールする酵素であるサーチュインの働きが活性化されます。サーチュインの遺伝子は長寿遺伝子とも呼ばれ、哺乳類にSIRT1から7まで7種類のサーチュインがありますが、中でも重要なのがSIRT1で、血糖値を下げるインスリン分泌を促進し、脂肪代謝を促したり、神経細胞を守り行動記憶を制御するなど、老化や寿命のコントロールに非常に重要な役割を果たしています。

 NADは、サーチュイン遺伝子の活性化以外にも、体内でエネルギーを産出する際に起こる酸化還元反応の際に電子伝達を行う補酵素の1つで、ミトコンドリア機能を改善する事が知られています。ミトコンドリア(美容通信2017年7月号)は細胞の中に存在し、消化吸収した栄養素をエネルギーに変換してくれる有り難い共存共栄者!で、ナント、私達の体重の約一割を占めていると概算されています。しかし、加齢によってNADが減少すると、細胞にエネルギーが効率よく届かなくなるので身体機能が低下し老化の原因になってしまいます。

 繰り返しになりますが、NAD+に依存する主な生理作用を、以下にまとめて列挙しますね。

  1. ゲノム安定性
  2. 遺伝子発現
  3. 免疫と炎症:人体のNAD+レベルは、感染時の免疫反応の程度と効果を決定する事が研究で明らかにされており、感染時にNAD+が増加すると、マクロファージの酸化的リン酸化が促進され、感染症の原因菌を中和する能力が高まるそうです(美容通信2021年1月号)。また、NAD+はマクロファージの発現を増加させるだけでなく、NAD+とその前駆体の細胞レベルが高いと、TNF-αやIL-6等の炎症マーカーの出現(美容通信2021年8月号)(美容通信2021年4月号)が著しく減少するんだそうです。
  4. エネルギー代謝
  5. サーカディアン・クロック(概日時計)(美容通信2019年10月号)(美容通信2020年5月号):概日時計の正確さと有効性は、細胞内のNAD+レベルにも起因し、不足により、概日リズムが乱れ、日中の眠気や浅い眠り、ホルモンバランスの乱れ、気分の変調等の影響が出ます。
  6. 心臓血管機能:心臓の代謝活動の維持に必要なだけでなく、一過性の虚血発作や心筋梗塞などの重大なイベントの発生時に、障害からの回復に役立つとされています。また、NAD+の欠乏は、心肥大や線維化等の心疾患を引き起こす可能性が示唆されています。
  7. 腎臓機能
  8. 肝臓機能
  9. 神経機能:NAD+とその前駆体は、脳卒中等の重大な神経学的イベントの後に、脳の神経細胞を保護する効果がある事が分かっています。体内のNAD+が正常レベルに保たれている事は、脳神経細胞が正常に機能し、生存する為に不可欠です。更に、NAD+の補給が、アルツハイマー病等の一部の神経変性疾患の治療や予防に効果があるのではないかと推測はされていますが、これについてはまだ確定的な結論は出ていません。

 

NADをどう補う?

 外因的に投与されたNMNが細胞に入る為には、ニコチンアミドリボシド(NR)に変換され、再びリン酸化されてNMNに戻る必要があります。NMNは、更に、NAD+に変換されるプロセスが必要になります。

■サプリメントと点滴

 サプリメントでNAD+Pro300を飲んでも、NMN点滴やNAD+点滴を行っても、どれも、体に燃料が補給され、エネルギーと認知能機能が高まり、気分が上がり、老化の衰えを回復させる効果があると言われています。プロのアスリートが自然にパフォーマンスを向上させたい場合や、学生が記憶力を向上させたい場合にも、役立つ可能性もあります。現在分かっている効果は、認知機能の向上、エネルギー活性化、体重の増加防止及び体重管理の補助、老化現象の緩和、記憶力の向上、皺の減少、炎症や痛みを軽減、気分の向上、鬱症状の軽減、運動能力の向上、筋肉や健康維持の補助、肌全体の美しさ向上等です。

 NADを合成するビタミンB3由来のサプリメントとしてはNR(ニコチンアミドリボシド)(NAD+Pro300)がありますが、NMNとの比較では、NRは口から摂るとかなりの割合で腸内細菌で分解されてしまい、サーチュインを活性化するまでには至らないと考えられています。但し、若干!のミトコンドリア機能の活性はUPさせてくれます。だから、飲まないより飲んでる方が、体が軽くなる的な感じがして、良いんです。だから、HISAKOも多くの患者さんも、飲むのを止められないと言うか…止めたくないんです。まあ、その程度の実感かと言われると…そうなんですが…。NMNも腸内細菌で分解されますが、その前に、かなりの速さで血中に取り込まれて、NADに変換される事が分かっています(←逃げ足が速い(笑))。論文によれば、小腸を介して15分位で体内に吸収されるんだそうです。NMNのサプリメントは、HISAKOのクリニックでも取り扱い予定です。お楽しみに! 因みに、サプリメントは朝食前に服用します。

 NMNは経口投与でも点滴でも、NAD+に変換されるプロセスが必要になります。なので、NAD+の方が利用しやすいと言う意見もありますが、NMNに比べて細胞膜への浸透性が悪いとの指摘もあり、未だにNMN派が良いのか、NAD+派が良いのか、結論が付いていません。唯、現在日本で流通しているNMN点滴用の製剤は研究用の試薬です。NAD+点滴用製剤は米国薬品方の医療用医薬品であり、プロトコルが既に確立されています。

■NAD+点滴の実際

 一般的に、健康な成人であれば、1ヶ月に1回の点滴で十分な成分(NAD)を補給し、最適な健康状態やパフォーマンスを維持する事が出来ます。が、多くの場合は…、まあ、ばりばり健康な成人が高いお金を払ってまでNAD+の点滴をしたい!と思うはずもななく(笑)、脛に傷のある大人が点滴希望者の殆どですから、隔週(2週間に1回)行います。NAD+点滴により体内に取り込まれた成分は、2~3週間体内に留まります。ですから、ホメオスタシスが達成された後は、その良好な健康状態を保つ為に、月1回の点滴で維持を図ります。また、疲労やその他の臨床的な懸念が生じた時にのみ、スポット的に点滴する人もいます。もっとエネルギッシュな人生を!と思う人の場合は、最初は月に数回、その後は1、2ヶ月毎に点滴を継続する事が多いです。殆どの人は、1回の施術でも効果を実感しますが、継続する事で、良好な状態が最大で2週間持続すると考えられています。

 一般的な治療頻度は下記の通り。

  • Intensive(集中):1日1回NAD+250mg~500mgを、3~10日間連続で行います。その後、standard(①250mg/②500mg)かminimum(125mg/所要時間1.5時間)に移行します。
  • Standard(標準):250mg~500mgを、2週間~1ヶ月に1回行います。
  • Minimum(最低限):1ヶ月に1回125mgを行います。

 NAD+点滴中は、NMN点滴と比べて、長時間の点滴です。標準的な250mg(standard①)だと、2~3時間。500mg(standard②)だと、3~4時間程度掛かります。副作用としては、胸が締め付けられるような感じを抱く場合があります。又、軽い吐き気や頭痛を訴える患者さんもいますが、これ等の症状は通常の点滴の速度よりも遅くする事で軽減できます。副作用としては、精々これくらい。ダウンタイムも殆どないのが特徴とされています。

 因みに、NMN点滴も上記のNAD+点滴に準じますが、150mgだと20分弱。maxの500mgでも、40分位の時間で済んでしまいます。

 NAD+点滴について、現在のところ、禁忌/注意事項は報告されていません。勿論、NAD+点滴に対して過去にアレルギーの症状があった場合は、適応がありませんし、妊婦さんや授乳期の女子、お子ちゃまに対する安全性に関するデータ自体がないので、これまた、適応がありません。

 現時点では、他の薬剤との相互作用は報告されておらず、施設によっては、高濃度ビタミンC点滴等との併用で、更なる効果を上げているようです。


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

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来月号の予告

ストレスと老化~テロメアの話です。

<テロメア>