経口CGRP受容体拮抗薬ナルティーク|片頭痛発作の治療と発症抑制の両方の適応を有する日本初の薬剤!旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2028年1月号

経口CGRP受容体拮抗薬ナルティーク|片頭痛発作の治療と発症抑制の両方の適応を有する日本初の薬剤!


ナルティークは、片頭痛発作の治療と発症抑制の両方の適応を有する日本初の薬剤(経口CGRP受容体拮抗薬)です。

 片頭痛(美容通信2013年5号)は、日常生活に支障をきたす一次性頭痛(頭痛の原因となるような何らかの疾患がない頭痛)で、比較的頻度の高い疾患です。日本では、成人の約8.4%が片頭痛に罹っていると報告されています。片頭痛による頭痛は、発作的に起こり4~72時間持続し、片側性のズキズキと脈打つような拍動性の痛みを特徴としています。片頭痛の名称の由来は片側が痛むこととされていますが、実際には4割近くの患者さんが両側性の頭痛を経験しています。非拍動性の片頭痛発作と言うものもあります。頭痛発作中は感覚過敏となって、普段は気にならない様な光、音、臭いを不快と感じる事も。吐き気や嘔吐を伴う事も多く、階段昇降等の日常的な動作によって頭痛が増強する為、日常生活に支障を来す事もあります。

ナルティークには、片頭痛発作の治療と発症抑制の2つの効果!

 ナルティークは、片頭痛発作の治療と発症抑制の両方の適応を有する日本初の薬剤(経口CGRP受容体拮抗薬)です。片頭痛発作時に頓用で使用する事で、急性期治療の効果が認められるだけでなく、隔日(2日に1回)服用する事で、片頭痛発作の発症抑制効果が期待出来ます。

 以下に、4つの特性を図示します。

片頭痛の発生機序~三叉神経血管説

 ナルティークは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体に対して、CGRPとの拮抗作用を示す低分子化合物です。この様な薬剤クラスは、ゲパントと総称されます。

 CGRPは、人の体内に広く分布する神経ペプチドで、37アミノ酸で構成されており、主に、疼痛を伝達する三叉神経侵害受容求心性線維内に含まれています。活動電位が三叉神経に伝わると、CGRPが放出され、それが受容体に結合する事によって、片頭痛の病態に重要な役割を果たす事が知られています。  

 片頭痛の発生機序の詳細は未だ不明な点もありますが、三叉神経血管説が広く受け入れられています。三叉神経血管説では、何らかの原因で活性化した三叉神経節由来の求心性線維から、強力な血管拡張作用を有する神経ペプチドであるCGRP等が放出され、硬膜血管の拡張を来します。また、同じく受容体を有する肥満細胞の脱顆粒を誘導し、更なる血管拡張や血管透過性の亢進、血漿蛋白質の漏出を伴う神経原性炎症を来します。更に、これ等は、逆行性伝道により、三叉神経終末の更なるCGRP等の遊離促進を来し、広範な炎症による末梢性感作を誘導します。血管拡張は、侵害刺激である痛みのシグナルとして三叉神経系を順行性に伝導し、脳幹の三叉神経脊髄路核で二次ニューロンに伝達され、そこから視床を介して高次の中枢へと投射され、痛みとして知覚されます。

 ナルティークは、経口投与可能なCGRP受容体拮抗薬です。ナルティークが、CGRPの受容体結合を阻害する事によって、血管拡張や神経原性炎症の誘導を阻害し、引いては痛みを含めた片頭痛に於ける臨床的な諸症状を軽減させると考えられています。

  1. CGRPによる誘発される血管拡張の阻害(頭蓋内動脈拡張の正常化)
  2. CGRPにより誘発される神経原性炎症のカスケードの遮断
  3. 三叉神経から三叉神経脊髄路核へ至る疼痛のシグナル伝達の阻害

 また、ナルティークによるCGRP受容体拮抗作用は、血管拡張を阻害する一方、ヒト冠動脈及び頭蓋内動脈に対する収縮作用を認められませんでした。

ナルティークOD錠の作用機序

 繰り返しになりますが、CGRPは、人の体内に広く分布する神経ペプチドで、37アミノ酸で構成されています。大きくalpha-CGRPとbeta-CGRPに分類され、両者は37アミノ酸配列のうち3アミノ酸配列が異なります。両者の体内に於ける分布には重複もありますが、beta-CGRPが腸管神経系に分布するのに対し、alpha-CGRPは中枢並びに末梢神経系に主に分布しています。

 一説では視床下部の活性化が想定されていますが、何らかの原因で、最終的に頭蓋内の硬膜血管周囲に分布する三叉神経に刺激が加わると、三叉神経を構成する無髄線維(C線維)からCGRPが放出されます。これが、同じく三叉神経の有髄線維(Aσ線維)に分布するCGRP受容体と結合する事で、より早いシグナルとして順行性に痛みが伝わり、三叉神経脊髄路核で二次ニューロンに乗り換えた後に、視床を経てより高次の中枢に投射する事で痛みが知覚されます。

 一方、頭蓋内の三叉神経終末部では、CGRPによる硬膜血管の拡張や肥満細胞の脱顆粒による炎症(神経原性炎症)の誘導は、三叉神経に於ける末梢性感作を誘導します。同時に、逆行性伝導を介した更なる三叉神経の活性化は、より広範な血管拡張と炎症を誘導し、これ等は既に感作されている三叉神経系を痛みのシグナルとして順行性に伝達します。

 三叉神経の無随線維(C線維)のシグナル伝達は遅いですが、三叉神経節や神経幹でC線維から放出されたCGRPは、有髄線維(Aσ線維)の細胞体やランビエ絞輪部に分布する受容体と結合する事で、有髄線維によるより強く早い痛みとして、三叉神経系から脳幹の三叉神経脊髄路核に情報を伝えます。

 

 ナルティークは、上図の如くに、CGRP受容体に対するCGRPの結合を濃度依存的に阻害し、三叉神経終末に於ける硬膜血管の拡張や神経原性炎症の抑制と共に、C線維からAσ線維へのCGRPを介した痛みのシグナル伝達を遮断する事で、痛みを含めた片頭痛の臨床的な諸症状を軽減すると考えられています。

 ナルティークのカルシトニンファミリー受容体に対する選択性について検討した試験から、CGRP受容体に対する強い阻害作用を有する以外に、AMY1受容体に対する阻害作用とAMY3受容体に対する弱い阻害作用が示されています。AMY1及びAMY3受容体の主なリガンドであるアミリンの生理機能には、食物摂取の抑制、胃内容排泄速度の遅延及び食後のグルカゴン分泌の減少(美容通信2027年11月号)による体重減少が報告されています。AMY1及びAMY3受容体の阻害は、高カロリー摂取による体重の増加を齎す可能性が想定はされていますが、ラットとサルを用いたリメゲパント硫酸塩水和物による反復投与毒性試験では、薬理作用を示すと想定されれる用量に於いても、摂取量や体重の増加は認められていませんのでご安心を!

適応となる患者さんは、こんな人だ! 適応とならないのは、こんな人だ!

適応となる患者さん

 ナルティークは血管収縮作用を持たないので、心血管リスクによりトリプタン製剤が使い難い患者さんや注射に抵抗のある方の発症予防に最適とされています。

■効果・効能

  • 片頭痛発作の急性期治療:片頭痛発作時に1錠服用
  • 発症抑制:隔日(2日に1回)1錠服用

 

適応とならない患者さん

  • ナルティークの成分に対し、過敏症の既往がある
  • 腎機能患者
  • 肝機能障害患者
  • 心疾患のある患者

   片頭痛は、虚血性脳卒中やその他の心血管疾患のリスクファクターです。非臨床及び臨床での検討により、リメゲパントによる心血管系リスクの増加は確認されてはいないものの、CGRPを阻害するリメゲパントの作用機序を踏まえると、片頭痛患者さんに於ける本剤の長期投与により、理論的には心血管系リスクが増加する可能性があります。

  • 薬剤乱用性頭痛(Medication-overuse headache[MOH])の発症リスクのある患者、又はMOHの既往のある患者

   低分子のCGRP受容体拮抗薬が、MOHを誘発する可能性は低いと示唆されています。

   齧歯類を用いた検討により、薬剤誘発性のCGRP増加が、MOHを生じさせる可能性がある事が示唆されています。トリプタン系並びにジダン系薬剤の様に、MOHを誘発する可能性のある薬剤の反復投与は、三叉神経節及び硬膜求心路の何れに於いても、CGRPの発現を増加させ、通常は痛みを伴わない刺激に対する過剰な痛み行動(アロディニア)に関連するCGRPの持続的放出を来し得るとされています。これ等の作用は、トリプタン系薬剤の休薬後も数週間持続(潜在的感作)し、CGRP受容体のアゴニストである切断ペプチドCGRP(8-37)の投与により回復しました。また、MOHモデルマウスに於いて、リメゲパントによる活性化された三叉神経節のCGRP作動性ニューロン数の減少、MOHの発生予防及びMOH状態からの改善が報告されています。

   ナルティークは、効能又は効果として片頭痛発作の発症抑制を有しており、日本人集団に対する投与として、非盲検継続投与期を含め最長52週間の臨床データの蓄積があります。その中で、ナルティークの投与に伴いMOHを発症した患者の報告はありません。

   更に、ナルティークと同じくCGRP又は、CGRP受容体を標的とする生物学的製剤は、MOHの既往がある患者に対して、踞尾精機治療薬の使用抑制によるMOHリスクの軽減が報告されている事から、同じ作用標的を有するナルティークにも、同様のMOHリスクの軽減が期待出来ます。

  • 妊婦

   妊婦及び妊娠している可能性のある女子は,治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ、投与します。ラットの胚・胎児発生試験に於いて、器官形成期の経口投与で、母体毒性が認められた用量に於いて、胎児毒性(胎児重量の低値及び骨格変異の発現頻度上昇)が認められ、胚・胎児発生に関する無毒性量の暴露量は、私達人間にナルティーク75mgを75mg1日1回投与した時の暴露量の46倍でした。

  • 授乳婦

   治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討して下さい。

  • 小児等

   小児等を対象にした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は、実施していません。

  • 高齢者

   特別な注意喚起はしていません。

 

併用に注意を要する薬剤等

 併用禁忌の設定はありませんが、併用注意な主な薬剤は下記の通り。

  • 強いCYP3A4阻害剤(クラリスロマイシン・イトラコナゾール・リトナビル等):本剤の血中濃度を著しく上昇させる恐れがあります。
  • 中等度のCYP3A4阻害剤(ジルチアゼム・エリスロマイシン・フルコナゾール等)
  • 強い又は中等度のCYP3A4誘導剤(フェノバルビタール・リファンピシン・セイヨウオトギリソウ含有食品・ボセンタン・エファビレンツ・モダフィニル等): 本剤の効果を減弱させる可能性があります。
  • P‐gp阻害薬(シクロスポリン・ベラパミル・キニジン等)

 

他の片頭痛治療薬とナルティークとの併用

 追加投与不可の為、発作が長引く患者さんには、他剤との組み合わせ検討が必要になる場合があります。

■トリプタン系薬剤

 用量又は投与頻度を調節する事なく、トリプタンと併用が可能です。

■CGRP関連抗体薬

  CGRP関連抗体薬による予防療法を継続中の患者さんに、投与間欠期に片頭痛発作が認められた場合に、ナルティークを急性期治療の目的で頓用する事は、安全性の観点から制限の必要はないと考えられています。

服用についての注意事項

用法及び用量

 1日1錠を超えて服用する事は、不可。水で飲むと吸収プロセスに影響を与える可能性がある為、水なしでの服用が強く推奨されています。

  • 片頭痛発作の急性期治療:1回75mgを片頭痛発作時に経口投与。同日中に追加の服用は不可。翌日以降は、予定通りに発症抑制の為の服用を継続します。
  • 片頭痛発作の発症抑制: 75mgを隔日投与。決まった時間に服用。飲み忘れの場合は、気付いた時点で服用。

 

副作用

  • 過敏症

   発現頻度は低いものの、呼吸困難や発疹等の過敏症が現れる事があります。投与から数日後に症状が現れ、遅延型の重篤な過敏症に至る事があります。

 その他、注意すべき副作用としては、以下が挙げられます。上気道感染 、尿路感染 、単純ヘルペス 、前庭神経炎 、白血球減少症 、好中球減少症 、鉄欠乏性貧血 、貧血 、食欲亢進 、うつ病。

薬物動態

 経口投与後、速やかに吸収され、約11時間の半減期を示します。

 健康成人の75mg投与時の薬物動態パラメーター(単回投与時)は、下記の通り。

  • 最高血中濃度到達時間(Tmax):1.75時間(中央値)
  • 消失半減期(T1/2):約11時間(外国人データ) この比較的長い半減期が、1日おきの服用による予防効果の維持を可能にしています。
  • 絶対的バイオアベイラビリティ:約64%

【食事の影響】高脂肪食の食後投与では、空腹時に比べCmaxが41%,AUCが32%減少。

【代謝経路】主に、CYP3A4、itibu CYP2C9で代謝。P‐gpの基質でもあります。

有効性と安全性(国内第Ⅱ/Ⅲ相試験)

急性期治療

■有効性

  • 主要評価項目

   プラセボ群に対するリメゲパント75mg群の投与2時間後の疼痛消失[投与2時間後に疼痛をなしと報告した患者]※の割合【検証的解析結果】。主要評価項目である、プラセボ群に対するリメゲパント75mg群の投与2時間後の疼痛消失[投与2時間後に疼痛をなしと報告した患者]※の割合について、リメゲパント75mg群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(群間差[リメゲパント75mg群−プラセボ群]19.4%、95%CI:12.0%, 26.8%、p<0.0001、Mantel-Haenszel検定、両側有意水準0.05)。※ 疼痛強度は4段階のリッカート尺度(0=なし、1=軽度、2=中等度、3=重度)で評価しました。

  • 副次評価項目

   リメゲパント75mg群については、副次評価項目は階層的ゲートキーピング法に従って検定の多重性を調整し解析しました。12項目の副次評価項目のうち、最初の6項目で統計的に有意でしたが、7項目めで統計的な有意差が認められなかった為、正式な仮説検定を終了しています。

■安全性

 有害事象は、ナルティーク75mg群で238例中22例(9.2%)、プラセボ群で229例中15例(6.6%)に認められました。

  • 副次評価項目

   主な有害事象(いずれかの群で1%以上)は、上咽頭炎(ナルティーク75mg群3例(1.3%)、プラセボ群2例(0.9%))でした。重篤な有害事象は、ナルティーク75mg群で1例(自殺念慮)に認められました。本事象は軽度であり、治療薬と関連なしと判断され、回復/消失したと報告されました。本試験はその性質上、投与中止に至った有害事象に関するデータの集積はありません。死亡に至った有害事象は、何れの投与群でも報告されていません。

 

発症抑制

■有効性

  • 主要評価項目

   二重盲検期の最後の4週間(Week 9~12)に於ける、1ヵ月あたりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量に於いて、ナルティーク群のプラセボ群に対する優越性が認められました。観察期間の平均片頭痛日数(SD)は、リメゲパント群で9.26(3.08)日、プラセボ群で9.04(3.14)日でした。

  • 副次評価項目

   副次評価項目は、階層的ゲートキーピング法に従って検定の多重性を調整し解析しました。7項目の副次評価項目のうち、1項目めで統計的な有意差が認められなかった為、正式な仮説検定を終了しています。

■安全性

 二重盲検期の有害事象は、ナルティーク群で247例中135例(54.7%)、プラセボ群で249例中102例(41.0%)に認められました。

  • 副次評価項目

   二重盲検期に於ける有害事象は、ナルティーク群で247例中135例(54.7%)、プラセボ群で249例中102例(41.0%)に認められました。主な有害事象(いずれかの群で2%以上)は、上咽頭炎(ナルティーク群21例(8.5%)、プラセボ群25例(10.0%))、コロナウィルス感染(ナルティーク群8例(3.2%)、プラセボ群4例(1.6%))、COVID-19(ナルティーク群7例(2.8%)、プラセボ群7例(2.8%))、インフルエンザ(ナルティーク群5例(2.0%)、プラセボ群5例(2.0%))、上腹部痛(ナルティーク群8例(3.2%)、プラセボ群2例(0.8%))、便秘(ナルティーク群7例(2.8%)、プラセボ群1例(0.4%))、口腔咽頭痛(ナルティーク群9例(3.6%)、プラセボ群8例(3.2%))、背部痛(ナルティーク群3例(1.2%)、プラセボ群6例(2.4%)、発熱(ナルティーク群6例(2.4%)、プラセボ群5例(2.0%))でした。重篤な有害事象は、ナルティーク群で2例(急性膵炎、COVID-19が各1例)であり、何れも治験薬との関連なしと判断されました。投与中止になった有害事象は、ナルティーク群で4例(急性膵炎、椎骨脳底動脈解離、子宮ポリープ、発疹が各1例でした。死亡に至った有害事象は、何れの投与例でも報告されていません。