HISAKOの美容通信2017年1月号
男性ホルモン補充だけじゃない!男のウェル・エイジング
モチベーションや持久力の低下や糖尿病、高脂血症、肥満、うつ、不眠、性欲低下等の男性更年期障害に対する、男性ホルモン(テストステロン)補充(美容通信2014年7月号)(美容通信2015年6月号)は、メンズヘルスケア外来の治療の王道です。でも、男性ホルモンの有用性は十分に理解はしても、例えば、既に前立腺がんで、ホルモン補充療法の適応外なんて人もいますし、ホルモン補充自体を希望しない患者さんもいます。細胞再生注射(フィロルガ4 in1(美容通信2015年1月号))や漢方薬(美容通信2005年11月号)、ザルディア(シアリス)の様な低用量のED治療薬等が有名ですが、今回特集したメラトニンや冬虫夏草のサプリメントも非常に効果的です。
男が男として存在する為には、やっぱり、男性ホルモン(テストステロン)の存在無くしては、成り立ちません。とは言え、男性ホルモンは男性だけのものではありません。女性にも、男性ホルモンは必要です。
今月号は、年齢と共に、悲しい事に低下する一方の男性ホルモンを、男性ホルモン(テストステロン)の補充以外(サプリメント)でどうサポートするかについて特集しました。ですから、殿方のみならず、大人女子にも今日から使えるアンチエイジング法、第一弾です。
眠れる森の美女だけじゃない! 健康長寿のメラトニン
メラトニンのアンチエイジングに期待される多彩な効果
メラトニンは、必須アミノ酸(美容通信2010年1月号)(美容通信2016年6月号)の一つであるトリプトファンからセロトニンを経て合成される分子量232のアミノ酸です。ホルモンの一つ(美容通信2010年9月号)で、大昔は内分泌の墓場などと揶揄された!脳の松果体から分泌されています。近年、網膜や脳(大脳皮質、縫線核等)、脊髄、消化管(小腸、胃等)、精巣、卵巣、水晶体、蝸牛、皮膚、骨髄、リンパ球に於いても産生される事が明らかにされています。メラトニンは私達人間様!の独壇場と思われがちですが、実は、動物・植物・微生物で広く普遍的に認められる天然の化合物です。生命調節に関わる重要な役割を、メラトニンが果たしているらしいんです。
メラトニンの血中濃度は1日のサイクルで変化しており、後述する等に、幾つかの生物学的機能に概日リズム(サーカディアンリズム)を持たせています。私達人間様では、メラトニンの血中濃度は昼に低く夜に高く、睡眠と関連していますが、夜行性の生物の場合も同様なリズムを示しています。
メラトニンは主として不眠症や時差ボケの解消等の睡眠障害の治療に利用されており、不眠症の特効薬的な面ばかりが強調されますが、実は多彩な効果を有しています。近年、強力な抗酸化作用を持つ事が報告され、骨代謝や中枢神経系に対する作用、抗腫瘍作用等の様々な生理作用が明らかにされつつあります。マウスを用いた研究では、メラトニンがフリーラジカルや活性酸素を消去し、延命効果を示し、又、加齢性記憶障害を抑制している事などから、アンチエイジングホルモンとして注目されており、今後は、認知症患者の治療への応用等も示唆されています。特に最近のトピックスとしては、メラトニンに破骨細胞の分化や機能を抑制する作用のある事、そして新規メラトニンの誘導体の中に破骨細胞を抑制し、且つ骨芽細胞を活性化させるもののある事が見出されており、骨粗鬆症の予防薬或いは治療薬への新たな展開が期待されています。
- 不眠症の改善効果(美容通信2015年8月号)
- 骨粗鬆症の予防
- 加齢性記憶障害(認知症)の予防
- フリーラジカルが関係した疾患(生活習慣病)(美容通信2016年11月号)(美容通信2016年7月号)の予防
- 高血圧/高コレステロール低下作用
- 発癌・癌細胞増殖抑制
- 免疫機能増強作用
最近ではメラトニンが免疫系に効く、発癌を抑える作用がある等、人体全体に関して大きな役割を果たしている事が分かって来ていますが、薬として特許出願するには新しい物質でなければならず、メラトニンのような人体の中に元々存在するホルモンでは構造上の特許権を取れないので、製薬会社にとっては大きな利益とは繋がりません。それ故に、メラトニンがどんなに重要な物質であったとしても、なかなか研究の対象として取り扱われないでいると、米山公啓も1997年の著書で指摘しております…。
不眠症の改善効果
■概日リズムの要、メラトニン
地球上のほぼ全ての生物には、24時間周期で繰り返される概日リズムが存在します。この体内時計によって睡眠や覚醒、ホルモンの分泌、血圧・体温調節等の生理活動が制御されています。概日リズムの異常は、時差ボケや睡眠障害などのリズム障害を引き起こすだけでなく、癌や生活習慣病、精神疾患などにも関わるとされています。
概日リズムの分子機構には複数の時計遺伝子が関わっていますが、その中でも重要なコアとなる遺伝子があります。これまでの研究により、体内時計の刻みを促進する因子(時計転写因子)としてBmal、Clockの2つの遺伝子群が、また抑制する因子(時計抑制因子)としてCryとPeriodの2つの遺伝子群が知られていました。概日リズムの分子機構は、これら時計遺伝子による転写翻訳フィードバックループ(TTFL)に基づいていることが知られています。これらは、脳内で明暗サイクルと同調しており、現在の地球の自転周期の24時間周期の環境に適応して進化したと考えられています。
右図の如くに、体の全身の器官には、時計遺伝子群が発現しており、私達の体はこれらの時計遺伝子の働きによってコントロールされ、時間帯によって分泌されるホルモンの種類や量、栄養素の吸収率などが異なります。ところが、各々の臓器を別個に取り出して培養すると、好き勝手に時計周期を刻み始めて、協調の欠片もないんです。この自由奔放な時計達を束ね、ちゃんと24時間周期に統制を取ってるのが、メラトニンらしいんです(←清原の場合は、「メラトニンではなくて、シャブだった!」なんて笑い話はありますが(笑))。しかしながら、今のところは、メラトニンがどんな手練手管を駆使しているのかまでは…、完全に解明はされてはおりません。
体内時計、体内時計と連呼しておりますが、実は、この体内時計は、地球の自転と同じ24時間なんかではなく、何故だか、どんな人でも1日25時間にセットされています。つまり、リセットしないと1時間ずつズレていくので、夜型人間になったり、朝起きるのが辛くなったりするんです。これじゃあ、雅子様ではありませんが、社会生活的にも支障が出てしまいます。
どうやってリセットするかって? 朝起きて朝日を浴びろ! これだけです。1日24時間の地球の自転に同調する不思議なメカニズムが発動し、この不具合の調整を勝手に図ってくれます。下の図を見て下さい。概日時計(SCN)から松果体への経路(化学と生物Vol.46.No.2,2008一部改変)を示しています。
しかしながら、上図を見たところで、「何のこっちゃ?」と言われてお仕舞いになりかねない(笑)ので、補足を加えますね。網膜によって受容された光情報は、主として網膜視床下部経路を介して、概日時計(人間様の場合は、約25時間周期!)のある視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus、SCN)に伝え、概日時計の位相を外界の光周期(24時間周期)に同調させます。SCNで生じた時刻情報は、新たな神経を介して上顎神経節を経て松果体に伝えられます。実は、この経路では、光刺激は上顎神経節の活動を抑制します。なので、夜間にのみノルエピネフリンが神経終末から分泌されて、松果体に伝えられる事になります。図では、面倒臭いので、無精者のHISAKOが勝手に点線で省略しちまったんですが、松果体細胞では、セカンドメッセンジャーであるcAMPの合成が促進され、その結果としてメラトニン合成の律速酵素であるAA-NATが活性化され、セロトニン→N-アセチルセロトニン→メラトニンへと合成が進みます。夜間の血中に分泌されるメラトニン量が上昇します。一方、昼まではAA-NATが殆ど産生されないので、当然メラトニンは少量しか分泌されず、明確な日内変動を呈する事になります。
つまり、夜間のメラトニンを減少させる最も強力な刺激は、光なのです。これまでの報告によると、個人差が大きいものの、2500lux以上の光照射を受けると、メラトニンの合成は抑制されます。因みに、光以外では、非ステロイド性抗炎症薬、カフェイン等の薬物や電磁波なんかも悪いって報告が仰山ありま~す!
メラトニンは、アミノ酸の1つであるトリプトファンから、4段階の酵素反応を経て生合成されます。生合成されたメラトニンは、細胞内で貯蔵されずに速やかに細胞外へと分泌される為、合成量がそのまま分泌量と相関します。メラトニン代謝の主要経路は、後述する様に、肝臓のモノオキシゲナーゼであるCYP1A2、CYP1A2、CYP1B1によって代謝され、更に、硫酸抱合を経て6-sulfatoxymelatoninとなり容易に対外へ排泄されます。この尿中の代謝物を追跡すれば、メラトニンのレベルとリズムを間接的に測定する事が出来る為、最近は簡便な評価方法として、尿中サルファトキシメラトニンの濃度を早朝尿で測定する方法が一般的です。と言っても…、アメリカにやっぱり検体は送らなくちゃいけないんですけどね。
■現代型不眠症(概日リズム睡眠障害)の治療には、メラトニンが有効
日中、強い光を浴びるとメラトニンの分泌は減少し、夜、暗くなってくると分泌量が増えます。メラトニンが脈拍・体温・血圧等を低下させる事で、睡眠の準備が出来たと体が認識し、睡眠に向かわせる作用があります。つまり、朝日を浴びて規則正しく生活する事で、メラトニンの分泌する時間や量が調整され、人の持つ体内時計の機能、生体リズムが調整されます。その為、不規則な生活や昼間太陽光を浴びないような生活を続けると、メラトニンが上手く分泌されず、不眠症などの睡眠障害の原因となる事は広く知られています。
又、メラトニンは幼児期(1~5歳)に一番多く分泌され、歳を重ねる毎に分泌量が減ってしまいます。爺婆になると、右図の如くに、松果体からのメラトニン分泌量が有意に減少してしまいます。そうなると、当然メリハリがつかなくなる、つまり昼夜のメラトニンレベルに差がなくなりますから、老人病院を訪れると、皆こぞってうつらうつら惰眠?を貪っている!って光景に出くわす事になります。
私達の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠(REM sleep)という質的に異なるふたつの睡眠状態で構成されています。レム睡眠は、眠っているときに眼球が素早く動く(英語でRapid Eye Movement)ことから名付けられました。”体の休息”時間とも呼ばれ、骨格筋は弛緩していますが、脳みそはバリバリの活動状態にあります。ノンレム睡眠はこれに対し、脳波活動が低下し、謂わば”脳の休息”時間と言えます。ノンレム睡眠は、睡眠の深さに従って更に4段階に分けられます。
下図は、睡眠脳波検査で測定した健常成人の典型的な夜間睡眠パターンを示しています(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理部 三島 和夫より)。
睡眠は深いノンレム睡眠(段階3と4)から始まり、睡眠欲求が低下する朝方に向けて徐々に浅いノンレム睡眠(段階1と2)が増えて行きます。その間に約90分周期でレム睡眠が繰り返し出現し、睡眠後半に向けて徐々に一回ごとのレム睡眠時間が増加して行きます。
唯、年齢と共に睡眠効率は下がります。下の図は、若年成人と老年者の典型的な睡眠経過を比較したものです。
若年成人に比較して老年者では、①就床時刻と起床時刻がおよそ2時間くらい早まる(睡眠相の前進)、②熟眠出来ない!(段階3+4、SWSの減少)、③中途覚醒(黒帯)の増加、④レム睡眠(青帯)潜時の短縮、⑤睡眠後半でのレム睡眠の持続性の低下が見られています。また、この睡眠経過図には示されていませんが、高齢者では、⑥早朝覚醒と⑦再入眠困難もしばしば起こります。寝付いてから3時間足らずで目が覚めてしまい、もう一度、眠ろうと努力しても、努力が報われない…つまり、悶々と布団の中で朝を迎えるって奴です。
因みに、睡眠潜時とは、消灯あるいは就床時刻から睡眠開始までの時刻の事を言い、眠気の強さや寝つきの良し悪しを示す客観的指標として使われます。睡眠潜時が30分を上回る場合は、寝つきが悪いと判断されるケースが多く、反対に10分を下回る場合は、寝つきが良いと判断されるケースが多いとされています。
不眠は、一般人口の4~5人に1人と有病率の高いcommon diseaseですが、近年不眠の長期化による抑うつ症状発現、QOLの悪化、耐糖能障害や高血圧発現のリスクの上昇等、心身への悪影響が大きい事が明らかにされ、治療対応の重要性が強調されています(「体内時計.jp」武田薬品工業より一部改変)。
睡眠障害には、夜よく眠れない不眠症のみならず、過眠症、概日リズム障害、睡眠時異常行動等の睡眠の量的・質的・リズム的に異常のある状態が含まれます。
現代型不眠症の王道とされる概日リズム睡眠障害は、前述の体内時計機能の障害により発症するもので、①睡眠相後退症候群と、②非24時間睡眠覚醒症候群があります。ですから、治療としてはメラトニンが著効を示します。
睡眠相後退症候群は、社会的に望ましい時刻に入眠及び覚醒する事が慢性的に困難となってしまい、多くの場合、完全に昼夜逆転と言うか…空が白み始める午前3時~6時頃になって、漸く眠りに付く。こんな状態だと、学校の試験や取引先との大事な打ち合わせがあろうとも、当然ながら決められた時刻に起床する事なんか不可能ですので、遅刻。例え、なんとか無理をして起床したとしても、午前中は眠気や頭痛・頭重感・食欲不振・易疲労感等の身体的不調の為に、勉学や仕事を行うことが困難です。つまり「使えない奴!」と、社会不適応者としての烙印を容赦なく押されてしまいます。因みに、大学生の中には、夜型の生活を続けているうちに、同様の睡眠・覚醒パターンになっている場合が見られますが、この場合は試験や遊びなどで、どうしても朝起床しなければならない時には、ちゃんと起きれる!という点で異なっています。治療としては、朝の高照度光療法や夜のメラトニン投与等で、生体リズムの位相を前進させる方法が有効です。
非24時間睡眠覚醒症候群は、通常の外部環境の下で、約25時間の睡眠・覚醒周期を示す障害です。一定の時刻に入眠し起床する事が著しく困難となり、寝付く時刻が毎日30~60分ずつ遅れていきます。その為、夜間に眠れている時期と昼と夜とが逆転して昼間に眠ってしまう時期とが交互に出現します。夜間の不眠と日中の過度の眠気、全身倦怠感により社会生活に支障をきたす時期が周期的に出現するのが特徴です。高度の視覚障害者で比較的多く報告されており、光による体内時計の同調が行われない事が原因であると考えられています。視覚障害のない症例も報告されており、病因については未だ解明されていませんが、夜の早い時間帯に光の影響を受けやすいため睡眠時間帯の後退が起こりやすいという説、あるいは体内時計の周期が長い為に、昼夜の明暗周期への同調が困難となるという説などが考えられています。寝付く時刻と覚醒する時刻が一定しないため、通常の社会生活が困難となります。治療としては、朝の高照度光療法、又は夜のメラトニン投与等で生体リズムの位相を前進させる方法が有効ですが、毎日覚醒する時刻が遅れていくので、朝の高照度光療法は困難な事が多く、メラトニン投与が第一選択の治療法となります。
ざっくりとまとめますと、私達人間様では、ガキんちょから爺婆に至るまでの健常者のみならず、上記の概日リズム睡眠障害や、その他の病気に嬉しくないオマケとして付いてくる睡眠障害に対し、程度の差はありますが、メラトニンの投与により、リズム障害の改善、入眠までの時間の短縮や睡眠の改善が報告されています。メラトニンの同調促進効果様様です。
メラトニンの抗酸化作用
メラトニンの抗酸化作用は、活性酸素だけでなく、一酸化窒素や過酸化脂質等の様々なフリーラジカルを消去出来る事が特徴です。血液脳関門も容易に通り抜けられるので、脳みその保護にも効果的!です。更には、その代謝物も侮る事なかれ! AFMKは、強力なフリーラジカル・スカベンジャー(フリーラジカルを掃除してくれる物質)でもあります。一粒で二度美味しいとは、正にメラトニンとその代謝物の為にあるような言葉なのです(笑)。
噂では、メラトニン1分子は4つ以上のフリーラジカルを消去出来るんだそうです。また、自分自身がフリーラジカルのスカベンジャーであるだけでなく、生体内の抗酸化に関わる酵素(グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドデスムターゼ、カタラーゼ等)の活性や遺伝子発現を高めるされていますし、更には、フリーラジカルを産生する酵素(リポギシゲナーゼ、一酸化窒素合成酵素etc.)については、反対に産生を抑制する効果も報告されていて、正に強力な抗酸化物質の名をほしいままにしております。
この様な多方面の抗酸化作用によって、メラトニンは細胞膜の脂質や細胞内の蛋白、核内のDNA、ミトコンドリアに於けるフリーラジカルによるダメージを防ぎ、その結果、これらの細胞成分の酸化によって生じる病気(癌、動脈硬化、神経変性疾患etc.)を防ぐ効果を発揮するんだそうです(美容通信2016年11月号)。参考までに、メラトニンのミトコンドリアに於ける抗酸化効果の模式図を載せときます。
概日リズムへのメラトニンの作用は、受容体を介した作用とされていますが、人では、これらのフリーラジカルの処理作用は、受容体やシグナル伝達を必要とせずに、薬理学的には濃度の高さにのみに関連し、抗興奮作用や抗炎症作用やミトコンドリアへの作用として、ラジカルの形成を減少し、抗酸化酵素の発現を増強し、酸化ストレスへの防御として作用するんだそうです。
骨粗鬆症の予防
「メラトニンが、高齢者の骨粗鬆症予防に有効かも」なんて話は、睡眠と絡めて、昔から実しやかに語られてきました。溶骨細胞(破骨細胞)という骨を分解する細胞が夜間に活性化し、造骨細胞(骨芽細胞)という骨を形成する細胞が日中に活性化するからです。現在では、メラトニンに破骨細胞の分化や機能を抑制する作用のある事、そして新規メラトニン誘導体の中には破骨細胞を抑制し、且つ骨芽細胞を活性化させるもののあることを見い出しており、骨粗鬆症の予防薬或いは治療薬への新たな展開が期待されている、とってもホットな分野です。
下図(化学と生物Vol.46.No.2,2008一部改変)は、これまでに明らかにされているメラトニンの破骨細胞に対する作用機序をまとめたものです。
■国際宇宙ステーション「きぼう」で行われた宇宙実験から(宇宙メラトニン研究会)
「何で宇宙で?」と疑問に思うんじゃないかなと思いますが、宇宙旅行と老化現象は非常に類似しており、加齢現象の解明には非常に有用な実験系とされています(←HISAKOの脳みそでは、宇宙飛行士になれ!と言われても実際問題無理ですが、みすみす老化加速現象を引き起こす実験系である宇宙旅行なんて、正に拷問以上の何物でもないと思ってしまいますが…)。骨に関して言いますと、1ヶ月で約1~2%の割合で骨量が減少し、地上の約10倍のスピードで、骨粗鬆症になりやすいんだそうです。
中々人間の骨を用いての実験は難しいですから、骨のモデル実験系としては、発生学的見地から、私達の頭蓋骨などで見られる膜性骨に近いとされるキンギョの魚鱗が使われるんだそうです。これを宇宙で培養し、破骨細胞に対するメラトニンの効果を観察したところ、「微小重力下で活性化した破骨細胞の働きを、メラトニンが抑制する」との知見が得られたんだそうです。更に、新規メラトニン誘導体であるブロモメラトニンを用いた動物実験では、破骨細胞を抑制する効果に加え、骨芽細胞を活性化するとの知見も得られ、将来、骨粗鬆症の治療薬として使用される可能性が示唆されたんだそうです。
■加齢性(老人性)骨粗鬆症をメラトニンは抑制出来るか?
4ヶ月齢のマウスにメラトニンを飲水に混ぜて16か月間投与し、20ヶ月齢に達した時の骨密度や骨強度と比較したところ、ある程度骨粗鬆症を予防出来たとの報告があります。それによると、マイクロアレイやリアルタイムPCRに於いても、破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞関連遺伝子の発現にも、メラトニン投与による影響が認められたそうです。
人間様での効果の検証をした論文(Amstrup et al,2015)もありました。メラトニンをヒトに1年間投与した際の大腿骨頸部密度を測定した結果です。
加齢性記憶障害
マウスを用いた研究では、メラトニンの長期投与により、フリーラジカルや活性酸素が消去されて、酸化ストレスが激減し、老化による記憶障害を抑制する事が分かっています。実際アルツハイマー病モデル(Tg)マウスを用いた実験で、5ヶ月間飲水にメラトニンを加えたマウスでは、有意に脳内のβアミロイドの蓄積が抑制されていました。人間様に於いても、軽度認知症患者さんや軽度~中等度のアルツハイマー病の患者さんにメラトニンを投与した複数の臨床研究で、効果が確認されています。
また、若齢マウスに於いて、メラトニンを長期ではなく、単回投与を行ったところ、長期記憶形成を増強したとの報告もあり、今後の研究の成果が待たれるところではあります。
メラトニンが多彩な作用を有するのは、多彩な受容体のお陰です。
メラトニンには、右図の様な多彩な受容体があります。
a) G蛋白質連結型膜レセプター(MT1、MT2)
b) 核レセプター(RORα/RZR)
c) 蛋白質(カルモジュリン、キノンリダクターゼ等)
d) フリーラジカルスカベンジャー です。
しかしながら、メラトニンの作用の多くは、細胞膜に存在するメラトニン受容体(Gタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor : 略してGPCR))を介して起こります。 メラトニン受容体には、MT1とMT2の2種類が知られています。メラトニンは受容体を介して、免疫調節作用、抗癌作用、心筋保護作用、エストロゲンの作用を阻害する作用等の様々な作用を発揮します。
メラトニン膜受容体(MT1、MT2)は、大脳皮質(MT1、MT2)や網膜(MT2)、視交叉上核(MT1、MT2)、下垂体(MT1)、骨(MT1、MT2)、肺(MT1、MT2)、胸腺(MT1、MT2)、心臓(MT1、MT2)、肝臓(MT1、MT2)、脾臓(MT1、MT2)、副腎(MT1)、腎臓(MT1)、小腸(MT2)、皮膚(MT1、MT2)、卵巣(MT1)、精巣(MT1)と全身に分布しており、メラトニンが生命調節に関わる重要な役割を果たしている事が示唆されます。
メラトニン増産計画!
■生活習慣の改善
前述の通り、夜中に強い光を浴びると、夜のメラトニンの合成が抑制されてしまいます。ここで、大いなる問題となるのが、現代人の友と言うよりは、寧ろ完全に依存症とまで断言してもあり!なブルーライトです。
ブルーライトとは、波長が380~500nmの青色光で、私達人間様の目で見る事が可能な光=可視光線の中でも、最も波長が短く、強いエネルギーを有しており、下図の様にパソコンやスマートフォン等のLEDディスプレイやLED照明には多く含まれています。
ブルーライトは、角膜や水晶体で吸収されずに網膜まで到達しますから、右図(West et al, 2011)の様に、激しくメラトニンの生成を抑制してしまうんです。結果、夜の光照射によって、メラトニンのリズムが悪化してしまいます。
従って、「東電の為に、どうしても夜も電気を付けて原発推進したい!」って奇特な方は、直接照明を止めて、間接照明やブルーライトカットの眼鏡(←HISAKOも、その昔、JINSのPC眼鏡、発売と同時に買いに走りました。花粉症用のとドライアイ対策用のもも、実は持ってます、ははは。)(Ayaki et al, 2016)を使用するだけでも、睡眠の質をUPしてくれます。塵も積もれば山となりますから、不眠・老化から脱却して、健康長寿ライフを謳歌したいのなら、細かく点数を稼いでいきましょう。
左図は、健康な高齢者、不眠の高齢者、光照射を行った後の高齢者のメラトニン血中濃度を比べた図(滋賀医科大学医学部睡眠学講座教授 大川匡子 )です。不眠で悩む高齢者が当たり前的に一番低くなっていますが、光療法を行った後は、健康な高齢者よりも高くなっています。また、別のデータで、健康な高齢者と認知症の高齢者のメラトニンの血中濃度を調べた研究結果(Mishima,1999)があり、これによると図と同様、健康な高齢者はメラトニンのピークが午前0時に来ますが、認知症の爺婆ではメラトニンの分泌リズムに振幅の幅があまりなく、どこがピークなのか定かではないなんてデータも出ています。
これは、メラトニンの分泌機能の低下というよりも受光量が減少している事がメラトニンの分泌低下の原因となり、高齢者の不眠を引き起こしている可能性を示唆しています。つまり、午前中に強い光を浴びると、夜のメラトニンが上昇する。多くの高齢者は社会の第一線からは引退した状態で、外出の必要性が減り、光を浴びる機会も少なくなる(光同調因子の減弱)。又、対人交流も限られるので、日中の活動性が低下することで運動量も減少し、社会同調因子の低下が著しく、メリハリのない1日を過ごしてます。いきなり睡眠薬に手を出す前に、生活習慣を見直し、先ずは午前中には屋外にお散歩に出掛けて強い光を浴びるのがfirst choice!!となります。例え、爺婆でなくても、若々しく健康に、メラトニン様の恩恵を受けたいと望むのなら、引きこもり状態で一日中屋内で生活し、夜も明るい蛍光灯の下で過ごすなんて、以ての外って事なんですよ。
■メラトニンの多い食べ物を食べよう
メラトニンは植物中にも種を問わず広く存在しています。下図の如くに、稲、大麦、小麦を始めとする様々な食用植物や、ハーブ等の薬用植物にも、メラトニンの存在が確認されています。
植物中のメラトニンも、メラトニン受容体を介した作用経路と考えられており、抗酸化作用と植物ホルモンの一種であるオーキシン様作用を持つ事が知られています。トマトを用いた実験では、メラトニンは種子や実生に多く蓄積し、葉や果実の発達に従って蓄積量が変化する事が示されています。またメラトニンの前駆物質であるAANATやOsIDOを添加する事で、蓄積量が増加し、動物と同様の生合成系が存在する事も分かっています。つまり、メラトニンが人間様に対する機能性物質である以上、その高含有の農作物を作る事は、即ち、私達人間様!の健康維持に役立つって事なんです。ニワトリの餌を介しての血中メラトニンの変化を示したものが右図です。人間様でもメラトニン含有量の高い野菜を2ヶ月間摂取した人は、早朝尿中メラトニン代謝産物濃度が有意に高いと言うデータもあります( J Pineal Res,2008)。頑張れ、日本の農家! 次なるTTP(環太平洋戦略的経済連携協定)戦略は、メラトニンだぁ!
今流行りのメラトニン受容体作動薬”ロゼレム”
日本で用いられている睡眠薬には様々な種類がありますが、その多くはベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。この種類の薬は睡眠を促す効果をもっている反面、眠りのリズムを調整する作用はありません。しかし2010年、人間の睡眠リズムを制御している「体内時計」に働きかけて、眠りをうながす睡眠薬が誕生しました。武田薬品のロゼレム(薬剤名:ラメルテオン)です。薬の力で強制的に眠らせるという機序ではなく、自然な眠りの機序を後押ししてくれるロゼレムはその安全性の高さが非常に評価されています。
が、です。単に睡眠薬としてなら、メラトニンもどきのロゼレムは、(他の睡眠薬に比べれば!)断然に良いお薬です。しかし、メラトニンやその徐放性剤とされるCircadinは、元々生体内に存在する物質ですから、当然ですが、体内には代謝経路がしっかりあります。ところが、人工合成した物質に過ぎないロゼレムに、本来メラトニンが持つ抗酸化作用や骨粗鬆症の予防、加齢性記憶障害(認知症)の予防、フリーラジカルが関係した疾患(生活習慣病)の予防、高血圧/高コレステロール低下作用、発癌・癌細胞増殖抑制、免疫機能増強作用等々の多彩なメラトニンの効果を期待してはいけません。それは、酷と言うものです(笑)。もどきはもどき。贋作は、幾ら精巧に出来てたって、所詮、贋作です。鳴門の大塚国際美術館は、確かに偉大なる!偽物の殿堂で、見る者を予想以上に圧倒しますが、それでもやはり偽物の集積に過ぎないのと同じです。
気力と体力を出すサプリ~HSA MD
メンズヘルスケア外来に於いては、治療の基本は、やはり男性ホルモンの補充療法です。しかしながら、男性ホルモンの補充でハゲちまったらどうしよう(AGA)とか、遠い将来前立腺癌になったらどうしようとか、その為の定期的な採血等の検査をしながらのfollow upにも拘らず、生理的にホルモンの補充療法自体を門前払いしてしまう人が、少なからずいるのも事実です。そんな時には、LHやFSHにフィードバックが掛からない、より自然な精巣刺激効果の持続する方法(サプリメント)が推奨されます。
HSA MDの3つのpoint
■point1. 冬虫夏草×特殊製法の商品
冬虫夏草は、中国では、古来より不老長寿の薬として知られており、中枢神経系や免疫能への作用、抗腫瘍作用効果の他、抗老化、性機能回復等の作用があるとされています。
HSA MDは、サプリメントとして日本で多く販売されている冬虫夏草子実体を粉末化した製品と違い、HSA菌(HIRSUTELLA SINENSIS A-KIN 中国で認可済菌種)から有用成分を濃縮抽出した事で、効果が飛躍的にUPしました。臨床治験によりますと、遊離型テストステロンを増加させ、副作用なく症状を改善する有用性が証明されています。
勿論、テストステロンは、男性ホルモンとは言いますが、男性の専売特許なんかではなく、女性にも、男性の1/10程度とは言え、存在し、身体機能維持の為に重要な働きをしています(美容通信2011年10月号)(美容通信2010年9月号)。だから、実はこのHSA MDは、熟年カップルが一緒に服用出来る!画期的なサプリメントでもあるのです。
[男性の適応症]
- ED(勃起不全)の改善。
- 体力の強化、疲労回復、抗老化
- 睡眠の改善
FTの上昇傾向と睡眠障害の改善に伴い、ノンレム睡眠とレム睡眠のリズムが改善。
- やる気の回復、うつ症状の改善
- 性欲、食欲増進
- 男性更年期障害の改善
- 不妊症の改善(原因の7割が男性側にある!とされています)
[女性の適応症]
- 血管や神経の保護作用による、認知症や神経障害の予防
- 生きる力や性欲、幸福感を回復
- 性行動をスムーズにする
- 肩こり、冷え症、目の疲れの緩和
- 抗老化、浮腫みや便秘の改善
- 女性更年期障害の改善
- 不妊症の改善 etc.
■point2. 安心安全!国内外での成分検査
成分検査は、国内外で徹底的に!実施しています。医薬品成分は検出されませんでした。
■point3. 臨床試験で有用性検証済
優れた有用性が証明されており、試験結果は、医学誌に論文掲載済!(「新薬と臨床」第65巻第1号,2016年1月10日発売号)
含有成分
■コルジセピンCordycepin
冬虫夏草の主成分。核酸系の抗生物質でDNAやRNAの合成を阻害する事で、悪性腫瘍の増殖抑制・アポトーシスを誘発する働きがあると言われています。
■アデノシンAdenosine
生体内で重要な役割を担っているDNAやRNAの塩基として、遺伝情報のコードに用いられています。また、生化学過程でもATPやADPの一部としてエネルギー輸送(美容通信2016年11月号)に関わったり、環状AMPとしてシグナル伝達に関わったりします。
■D-マンニトールD-Mannitol
糖アルコールの一種。砂糖の60%程度の爽やかな甘味があり、低カロリー♪ 水に対する溶解度が、単糖類中では最も低く、実質上の吸湿性がないので、粘着防止効果があります。
■アミノ酸17種類
必須アミノ酸8種類を含む17種類を配合。
■その他
水溶性多糖類、ビタミン類(B6)、ミネラル類(Zn、Cu、Fe、Se、K、Ca)
飲み方
1日に1~3カプセルを目安に、水またはぬるま湯で飲むって言うのが、まあ、一般的な飲み方です。が、技ありの応用編の飲み方も載せておきましょう。結構使えます。是非、お試しを!
■男性更年期の症状の急速改善
まあ、中々エンジンが掛からない時に、波に乗せる!的な攻め技が、これ。1日2カプセルを15日間、生真面目に飲み続ける。
男性ホルモンを高め、更年期の症状を総合的に改善していく飲み方です。波に乗りさえすれば、1日1カプセルとかに減量維持も可能です。唯、個人差はありますので、悪しからず!
■性機能を急速に回復!
今日はHするぞ!ってやる気満々だけど…、気持ちだけが先走りして、息子はその気0なんて時は、5~6時間前に2カプセルを一気飲み。唯、所謂ところのバイアグラやシアリスの様なED薬じゃありませんし、相手もある事ですし…、絶対って保証の限りではありませんです、はい。
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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来月号の予告
<男のウェル・エイジング第2弾!>です。
男性ホルモン(テストステロン)補充に加えると効果倍!増のノウハウを教えちゃいます。