睡眠の質の向上の為のホルモン補充|メラトニン/テストステロン 附・長期記憶の固定AMK他メラトニンの最近知見旭川皮フ形成外科クリニック

ホルモンから睡眠を考える~メラトニン/テストステロン

睡眠の質を高める為に、クリニックでは、メラトニンやテストステロン等のホルモン補充療法を行う事があります。特に、メラトニンは、単なる寝るホルモンから、記憶力の向上や認知症の予防、抗糖化作用等、新たな知見が目白押しのホルモンです。今月号では、最近のトピックスを睡眠の質の改善という観点からまとめてみました。

 近頃、年のせいか、とんと物忘れが激しくなり、「あの…あれ…その…」と名詞が出て来ない(笑)。「寝ている間に、記憶が固定される」。うちのにゃん連中も真っ青の寝る子は育つ状態のHISAKOに、果たしてメラトニン(の代謝産物AMK)は朗報となるか? 先ずは、読んでおくんなまし。

メラトニンで、物忘れから脱却しよう!

 夜の睡眠時に、記憶が固定される…。そのメカニズムにメラトニン(美容通信2015年8月号)が関与しているのではないか? 昔から言われてはいますが、未だにその機序の全容は解明されてはいませんが、どうもメラトニンの代謝産物であるAMKが関与しているようです。これで、試験前の勉強の効率が飛躍的にアップするかも!?

メラトニンレベルが低い人

 下の表(Rahman et al, 2010)を見てもらうと明らかなように、メラトニンレベルの低い人は睡眠の質が粗悪!なんですね。

sleep parameter First night Second night
LEMS Controls LEMS Controls
sleep onset latency 10.9±3.9 10.8±3.3 35.2±7.4 12.5±4.2
sleep efficiency(%) 84.2±3.5 86.1±2.6 68.9±2.8 89.3±2.1
slow wave sleep(%) 18.3±4.8 17.7±3.7 19.7±2.8 25.7±8.2
REM latency 88.1±16.7 58.8±11.9 193±3.3 76.4±7.2
REM(%) 17.8±2.2 20.3±4.3 13.1±3.3 23.6±2.7
Arousal index 8.3±2.5 8.7±1.5 6.9±1.3 8.4±2.1

 

 ちょっと表の補足をします。

  • sleep onset latency:入眠潜時と呼ばれるもので、覚醒状態から眠りに入るまでの所要時間の事です。眠気の強さや寝つきの良し悪しを示す客観的指標として使われます。メラトニンレベルの低い人は、表のように、寝付くまで普通の人に比べて約3倍の時間を要します。
  • sleep efficiency(睡眠効率):メラトニンレベルの低い人は、睡眠効率も明らかに下がっていますね。途中で目が覚める訳ですから、当然、睡眠の質は悪い事になります。
  • slow wave sleep:また、メラトニンレベルの低い人は、深い睡眠の時間が普通の人に比べ短くなっています。
  • REM latency:レム睡眠の比率も、普通の人に比べて半減しています。

■一度の強光照射によって、メラトニンのリズムは悪化してしまう

 しかしながら、一度の強光照射で、メラトニンの分泌のリズムはかなり乱れます。夜の10時くらいから朝の6時くらいまでの一般的な夜勤(美容通信2020年4月号)を例に取ってみましょう。事務所の蛍光灯(106lx)の下で勤務している場合は、翌日のメラトニンの分泌は1.8時間遅れます。しかし、コンビニ(9100lx)での深夜の時間帯の勤務では、メラトニンの分泌は3.2時間も遅れ、朝の10時頃にメラトニンの値がピークに達する…。そりゃあ、体内時計(美容通信2018年6月号)(美容通信2019年10月号)が乱れて当たり前だわな。

 

夜のブルーライトは性悪!?

 お昼間のブルーライトの是非は兎も角として、夜中にスマホを弄ってるだけで、強烈な光刺激に晒され、サーカディアンリズムの司令塔であるメラトニンの生合成が抑制されてしまいます。不眠症(美容通信2015年8月号)のみならず、老化や癌、肥満や眼精疲労(目の疲れ/痛み)、鬱等の精神的な面にも影響を及ぼします。

 下のグラフを見てもらえば明らかなように、ブルーライト照射は、メラトニンの分泌を強く抑制します。普通の白色光の約4倍、ブルーライトの照射により、メラトニンの分泌は抑制されます。

 対策は、HISAKOも持っているブルーライトカットの眼鏡。下の図は、メラトニンの代謝産物である尿中のサルファトキシンメラトニンの量を測定したものですが、明らかに、ブルーライトカット眼鏡はメラトニンの分泌を抑制しないのが明らか!

 実際、ブルーライトカット眼鏡は、睡眠の質を改善しています。下の表(Chronobiol Int, 2016)を見て下さい。睡眠潜時は、13.2から5.7と、1/2になっています。

  Control eyewear Blue-light shield eyewear p value
Sleep efficacy(%) 91.8±7.2 97.0±2.8 <0.05
Sleep latency(min) 13.2±10.8 5.7±2.7 <0.05
Wake up time after sleep onset(min) 23.3±22.0 7.7±9.5 n.s.

 

 唯、スマホやパソコンを夜見ざる得ない時には、ブルーライトカット眼鏡はメラトニンの分泌を妨げないのでお勧めではありますが…、皮膚にはブルーライトが降り注いだままなので、ちゃんとBNLSエンビオスクリーム(美容通信2022年2月号)を塗ったり、ヘリオケア360°(美容通信2022年8月号)を飲まないと、皺にはなっちゃうと思いますが(笑)。

 

メラニン投与で、睡眠は改善する

 論文(Ferracioli et al, 2013)によれば、メラトニンの投与により、睡眠潜時(入眠時刻)は7分も!短縮されたそうです。睡眠障害に悩んでいない人間にとっては、高が7分ではなく、凄い朗報でしかないんです。総睡眠時間は多少の改善、睡眠効率はまあ改善されています。

 

寝ている間に記憶が固定される←そのメカニズムは、良くは分かってはいませんが…

 寝ている間に記憶が固定されるの(=長期記憶形成の促進)は、どうもメラトニンがN1-acetyl-5-methoxykynuramine(AMK)に代謝され、これが記憶の増強効果を有しているからのようです。

 ざっくり纏めてしまうと、幾つかの実験から、海馬(記憶に重要な脳の部位)に於いて、メラトニンはAMK に変換されますが、このAMK は形成された短期記憶が消失しないうちに作用する事で記憶を固定し、長期記憶への移行を促進する物質であることが明らかになりました。更には、マウスも加齢によって記憶力は顕著に低下しますが、AMK は老年マウスで低下した記憶形成能力を改善する事も分かっています。メラトニンには抗酸化作用による記憶障害の抑制効果がある一方で、AMK に変換されて長期記憶を誘導する作用があるって事なんですね。

 2012年に発表された論文では、メラトニンが長期投与でフリーラジカルによる脳障害をブロックする事は知られていましたが、2019年にAMKが単回投与ではありますが、記憶増強剤として働く事が証明されました。以下は、興味がある人だけに読んで欲しいマウスでの様々な実験結果のお話ですが、私達人間に対するAMKの記憶促進効果の検証については、まだまだ現在進行形なんです。これについてもチョコと触れておきます。

■興味がある人限定!~若年マウスへのAMK投与による記憶形成促進効果について

 物体認識試験:江戸っ子たちは旬が到来する前の「初物」が大好き。見栄っ張りで新しもの好きの江戸っ子と同様に、げっ歯類も新奇性を好むって特性があります。物体認識試験とは、この特性を利用した学習記憶の評価方法です。恐怖情動等の強化因子を必要とせず、従来の評価法に比べて、人間の学習記憶に近い条件とされています。

 因みに、この物体認識試験に用いる物体は、3時間後には覚えていない。そんな程度の物体が使われます。

 ネズミさんは1回や2回新規物体に遭遇(1分間の学習)したところで、24時間も経てば忘却の彼方で、また、新規物体に向かって走って行きます。しかし、流石に、3回以上学習を繰り返すと、長期記憶が形成され、新規物体に興味を示さなくなってしまいます。ネズミさんも、女房と畳は新しい方がいいんですね(笑)。

 この忘れっぽいネズミさんに、1回の学習の後にAMK0.1mgを注射して、24時間後の行動を観察すると、なんと、記憶が形成されました。同様の学習効果は、メラトニンなら5mg、AFMKなら1mg必要だったそうです。

 メラトニンは、下図の如く、脳内で速やかに、つまり5分以内にAMKに代謝されます。

 メラトニンからAMKに代謝過程が進むのを、IODの競合阻害剤を投与する事で阻害してしまったら? メラトニンと併せてIOD阻害剤を投与した群は、明らかに記憶形成阻害が起こりましたが、AMKとIOD阻害剤を投与した群は、当たり前ですが、IOD阻害剤ではAMKが損なわれないので、記憶形成阻害が認められませんでした。つまり、記憶が形成(固定)される為には、メラトニンの本体ではなく、その代謝産物のAMKが必要って事なんですね。

 今度は、ネズミさんにAMKを何時注射するのが、一番学習効率が上がるのかを調べてみました。結果は、学習直後、若しくは15分後にAMKを投与した群が、最も効果のあるタイミングでした。つまり、AMKは、短期記憶から長期記憶への誘導を促進しています。

■興味がある人限定!~老齢マウスへのAMK投与による記憶力の回復効果について

 下図は、若齢(2ヶ月齢)と老齢(22ヶ月齢)マウスの海馬に於けるメラトニン、AFMK、AMKの夫々の濃度を調べた結果です。

 加齢に伴い海馬のAMKは激減します。2ヶ月齢の若いネズミさんは、前述の通り、3回学習を繰り返せばしっかり覚えているのですが…、年を取った老齢のネズミさんは覚えてないんです。記憶形成能が明らかに低下してしまっています。

 ところが、です。学習の15分後にAMK(1.0 or 10mg/Kg BW)を注射すると、長期記憶が回復するんです。とは言え、進行が進んだアルツハイマー病の様に、ニューロンが脱落しまってからでは流石に無理と言うものですが、軽度認知症とか、そのちょっと手前の段階なら、AMKは記憶形成の回復に役立ちます。

 じゃあ、AMKの投与により形成された老齢のネズミさんの長期記憶は、いつまで続くのか? 左図は、学習の15分後にAMK(1.0mg/Kg BW)を投与して、1日後と4日後にDI値を測定したものです。conterolは50%ですから、固定記憶の継続は認められはしますが…、時間と共に長期記憶は忘却の彼方へ。

 以下は、まだ現在進行形で結論は出ていない研究途中君のお話。老齢マウスの海馬で、RNA-seqを用いた遺伝子の網羅的解析を行ったところ、記憶形成に関連する遺伝子群は有意に低下(64%)し、また、体内時計の同調に関連する遺伝子群も有意に低下(77%)していたそうです。老齢マウスのmelatonin pathwayも有意に低下していたそうです。メラトニン自体は加齢と共に低下します。細胞達のメラトニンを受容する力も劣ってきます。つまり、シグナルも、シグナルを受け取る側もと、ダブルの低下で、体中のメラトニン受容体で障害が起こり、これが引いては死亡率に関与していると考えられています。

■興味がある人限定!~人間に対するAMKの記憶促進効果について

 現段階では、低用量のメラトニンの濃度でも、十分な記憶促進効果が得られるとされています。

 唯、上図はあくまでも単発投与の結果であって、連続投与でどうなるかは不明ではありますが。

 メラトニンのもう一つの作用に、抗酸化作用が挙げられます。1994年に発表された論文ですから、ものすごく昔から、メラトニンがフリーラジカルや活性酸素を消去するので、マウスは長生きする事が分かっています。2021年の論文でも、マウスのみならず私達人間も、メラトニン含有量の多い野菜や穀物を摂取していると、死亡率が有意に下がる事が報告されています。

 

認知症~メラトニンの作用に関する近年の報告

■AGEs分解促進作用

 AGEsについては、過去の美容通信(美容通信2019年11月号)(美容通信2015年10月号)も参考にしてね。

■認知症予防にも好影響!←これが結構侮れない、強力な作用らしい

 認知症については、過去の美容通信(美容通信2019年4月号)も参考にしてね。糖化は…怖いです、本当に。

  • β-Amyloidの神経毒性を減弱
  • β-Amyloidの凝集を抑制
  • Tauの凝集を抑制

  アルツハイマー病等の認知症では、脳の中にTauと呼ばれる蛋白質が蓄積して、神経細胞が壊れる事が知られています。

  • β-Amyloidのクリアランスを向上
  • 記憶障害の改善!

テストステロン

お爺ちゃんは寝たきり。…何故って、テストステロンが低下してしまったから

 寝たきり老人のお爺ちゃんになってしまった原因を挙げれば…認知症(18%)に、脳血管疾患(脳卒中)(16%)、高齢による衰弱(13%)、骨折・転倒(13%)、関節疾患(11%)、心疾患(心臓病)(4%)、呼吸器疾患(3%)、悪性新生物(癌)(3%)、糖尿病(2%)、パーキンソン病(2%)、脊髄損傷(1%)、視覚・聴覚障害(1%)、その他(13%)だそうです(厚生労働省「2019年国民生活基礎調査」)。赤文字で示した原因は、併せると約70%を占めていますが、これらは全てテストステロンの低下が関与しています。

 

LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)

 テストステロンの作用は様々(美容通信2015年6月号)(美容通信2014年7月号)で、筋肉や骨格の維持や造血、記憶等に関与していますが、テストステロンが低下してくると、寝たきり老人の憂き目に遭うだけでなく、男としての魅力が当たり前ですが低下を免れません。50~69歳の父親を持つ20~39歳の女性200人に、父親の魅力が減った理由を挙げてもらうと…、①イライラする事が多くなった/短気になった(17.7%)、②薄毛が気になる様になった(13.5%)、③神経質になった(12.5%)、④口臭・体臭が気になる様になった(9.4%)、⑤太った(8.3%)、⑥覇気がなくなった(7.3%)、⑦実年齢以上に老けた(5.2%)だったそうです。これらは、全てテストステロンの低下に関与するものばかりです。

 LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とは、加齢に伴うテストステロンの減少から引き起こされる病態を指します。

■不眠・睡眠障害とED(Erectile Dysfunction:勃起障害)

 EDとは、「性交時に有効な勃起が得られない為に、満足な性交が出来ない状態」です。30‐79歳の、性適齢期とされる日本男児の約1130万人が、中等度から重症のEDに相当するとされています。しかしながら、もっと問題なのは、お盛んなはずの20歳代の4割近くが、何らかのED、射精障害なんだそうです。草食系と一括りにして、将来の少子化を見て見ないふりをするか、バイアグラ(美容通信2005年1月号)を飲めばいいじゃ~んとオジサン的一刀両断の解決策を選択するか、田縣神社に神頼みツアーに出掛けるか、そもそも自らのテストステロンの減少を嘆くべきか…。

 EDのリスクファクターとしては、メタボリック症候群、うつ病、動脈硬化症・心血管障害、高脂血症、糖尿病、喫煙、LOH症候群、睡眠障害等が挙げられます。この最後に挙げた原因の睡眠障害は、特にテストステロンの減少との関連が指摘されています。論文(Transl Androl Urol 2020;9(Suppl 2):S178-S185)によれば、

   ①夜勤者は、IIEF5(勃起機能の評価スケール)が、2.8pointも低いそうです。

   ②不眠症があると、IIEF5が低いとのデータが出ています。

   ③睡眠時無呼吸は、EDのリスクを上げる事が分かっています。

   ④CPAPで、EDが改善します。補足ですが、CPAPとは、持続陽圧呼吸療法の事で、睡眠時無呼吸症候群の定番的な治療法です。鼻に装着したマスクから送り込んだ空気の圧で、空気の通り道を確保する治療です。患者さんに適した空気圧を設定する事で、睡眠中に気道塞がれるのを防ぎ、呼吸がスムーズに出来るようになります。

   ⑤CPAPにより、バイアグラやシアリスの様なPDE5阻害薬の効果がUPします。

■不眠・睡眠障害と下部尿路症状

 また、前述の論文(Transl Androl Urol 2020;9(Suppl 2):S178-S185)によれば、

   ①不眠症があると、IPSS(国際前立腺症状スコア)の値が悪いそうです。

   ②よく眠れると、IPSSが10ポイントも改善する!

   ③睡眠時無呼吸は、頻尿、尿意切迫感と関連します。

   ④CPAPで、下部尿路症状が改善します。

 左図は、夜間排尿回数と生存率のグラフです。夜間排尿回数が増えると、睡眠が十分取れず、これが引いては寿命の短縮に繋がるんですね。それだけではありません。転倒とも関係します。

 

  転倒あり 月2回以上転倒あり
過活動膀胱 40.7% 67.7%
time up and go 30.5% 45.8%
うつ 11.7% 15.3%

 テストステロンを補充すると、IPSS値は明らかに改善します。The Aging Maleに掲載された論文によれば、エナルモン250mg/mを12か月行った症例では、4ポイント近くIPSSは下がっています。更にテストステロンにより、加齢による膀胱の線維化も抑制されます。

■不眠・睡眠障害と不妊症

 不妊症の原因の約半数は、男性因子が関係しています。所謂青年世代の男性(25-40歳)は1440万人いますが、そのうちの2/3が女性とカップルになっています。右図は、レオナルド・ダ・ヴィンチと、その恋人であるサライ(小悪魔)ちゃん(ジャン・ジャコモ・カプロッティ)。同性愛者のカップルを生産性がないと某国会議員の先生がおっしゃいましたが、ルネサンス期を代表する芸術家であり、「飽くなき探究心」と「尽きることのない独創性」を兼ね備えた人物といわれているレオナルド・ダ・ヴィンチと、そのミューズのカップルを、生産性がないと一言で断じることの是非はさておいて、男女の5.5カップルに1カップルが不妊で悩んでおり、その原因の男女比はほぼ同数ですから…14,400,000×2/3×1/5.5×1/2=87万人の男性が男性不妊の患者数って計算になります。これって、同世代の糖尿病患者数よりも多いんです。

 不妊治療の基本は、激しい運動、加齢、深酒、喫煙、肥満、ストレス、食生活、不規則な生活(特に、寝不足!)等の酸化ストレス満載の生活を改める事とされています。

 精子数は、この40年間で、50-60%減少しているんだそうです。その全てが睡眠障害・不眠とは言いませんが、Sleepに掲載された論文によれば、睡眠不足により、元気溌剌な大学生が対象であっても、4.6%の精液量、25.7%の精子数の減少を認めたそうです。実際、夜勤者は、不妊症が3.6倍にUPするなんて報告もあります。

 でも、寝りゃあ良いかと言うと…、左図の如く寝過ぎも妊孕率を下げちゃうので、過ぎたるは及ぼざるがごとし。

■男と女の更年期障害

 下のグラフを見て下さい。女性は、45‐55歳の短期間に一気に女性ホルモンが減少し、底値に達してしまいます。男性は女性程ではないにしろ、所謂使い物になる(活性型)男性ホルモンは、灰色の曲線で示されている様にダダ下がり、40歳以降なら何時でも更年期!になるんですね。

 ストレスがあると、更にテストステロンの値は下がります…。

 

テストステロンには日内変動がある

■不眠症頻度には男女差がある!

 上図を見て下さい。不眠症頻度には男女差があります。更に特徴的な傾向としては、左図の如く、眠りの質にも男女差があり、男の方が質的にも劣っているんです。これはステロイドホルモンの分泌に関係していると言われています。

 日内変動の差が、睡眠の質の差に関与しています。テストステロンとステロイドホルモンは、逆相関の日内変動を呈します。

 

不眠症、睡眠時無呼吸症候群は、テストステロンの低下と相関

 左図の如く、テストステロンの分泌の日内変動の幅も、年を取ると減少します。が、寝そうになるとたたき起こして無理やり眠らせないと…、年を取った時と同様に、テストステロンの分泌の日内変動はなくなって、平坦になってしまいます。←実に意地悪な実験ですが!

 他の研究でも、不眠症に於いてはテストステロンの分泌が下がっています。

 睡眠時無呼吸は、結局夜眠れないって点では不眠症と同じで、テストステロンの分泌が下がるという報告が出ています。

 

 因みに、しかしながら、物には適量ってものがございまして、高過ぎるテストステロンは睡眠障害の原因にもなります。悪しからず!

 

不眠は肥満と関連し、肥満はテストステロン低下と関連する

 左図を見て下さい。肥満男子であるほど、テストステロンの値が低いことは良く知られています。平成28年の厚生労働省の国民健康・栄養調査結果の概要によると、日本人男性の31.3%が肥満(BMI>25:肥満)なんです。因みに、女性は20.6%です。

 実は、肥満と睡眠時間は関連がある(美容通信2020年4月号)事が知られています。右図の如くに、寝過ぎも寝不足もいけないんですね。

 肥満に関与するホルモンとしてはレプチンとグレリン(美容通信2019年2月号)(美容通信2018年9月号)が知られています。レプチンは、ギリシャ語で『痩せる』を意味するλεπτός (leptos) から命名された、ペプチドホルモンです。脂肪細胞によって作り出され、強力な飽食シグナルを伝達し、交感神経活動亢進によるエネルギー消費増大をもたらし、肥満の抑制や体重増加の制御します。グレリンは、レプチンに拮抗するホルモンで、視床下部に働いて、食欲を増進させる働きがあります。実際、グレリンの投与により、体重増加、脂肪組織の増大が認められます。この2つの拮抗するホルモンの分泌は、下記の様に睡眠時間と関連する事が分かっています。…寝過ぎも寝不足も肥満を助長しますが、単純に、レプチンとグレリンからだけでは、全てを説明は出来ませんが…。

  肥満(BMI≧30Kg/m2)だと、陰嚢の温度が上がって精子が不元気にって、それが不妊の原因になるだけじゃなく、慢性精巣上体炎や勃起不全、閉塞性睡眠時無呼吸、脂肪細胞の更なる増殖(これにより、テストステロンからエストラジオールへの末梢芳香族化が進むだけじゃなくて、炎症誘発性細胞質分裂↑&活性酸素種(ROS)↑により精子のDNAが断片化されたり、精子にエピジェネティックな変化をもたらします)、インスリンやレプチンに対する抵抗性等が高まります。日本人の4割近くの男子が、この悪のサイクルに陥っています。

 じゃあ、テストステロンの補充療法で、不眠や睡眠障害の改善が期待は出来るのではないか? 十分以上にあり得るのではないかとは考えられてはいますが、未だこれに関する論文自体がないので、何とも…。テストステロンの補充療法は、LOH症候群の治療から、不眠や睡眠障害の改善の可能性だけでなく、認知機能への効果、うつ症状の改善、女性への治療効果、DHEA療法の可能性、アンチエイジング効果と、新しい可能性が示唆されています。


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

*治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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