HISAKOの美容通信2020年4月号
睡眠に関する素朴な疑問[基礎編]
睡眠に対する素朴な疑問[基礎編]です。子供の夜泣き、夜更かし朝寝坊だけでなく、大人になっても、寝言や悪夢、寝汗、寝返りが激しい、朝型/夜型人間、夜勤明けの寝る技等々の、素朴な疑問にお答えします。
現代人は5人に1人が睡眠に対する悩みを抱えていると言われています。今月号は、所謂病気でもないし、些細な事なんだけど…でも、意外に皮膚に対して悪影響を及ぼしかねない睡眠に関する疑問とその解決策の提案です。
眠りは、何故必要か?
脳機能の回復
私達は、人生の約1/3を寝て過ごしています。体内時計(美容通信2019年10月号)に従い、規則正しい概日リズム(美容通信2017年1月号)(美容通信2018年6月号)、つまり夜はぐっすり眠り、朝目覚めて活動する。唯、睡眠-覚醒調節は、前述の体内時計による概日リズム調節だけではなく、覚醒時間の長さによって睡眠の質と量が決定される=ホメオスタシス現象があります。しかし、この眠りのルールが何らかの原因で破られると、不眠や日中の眠気等が生じ、所謂「睡眠問題!」が勃発してしまいます。
睡眠とは、単に脳みそが活動を停止しているだけの現象と思われがちですが、記憶の生理、脳の修復、ホルモンの分泌、免疫力の回復等、実はフル回転しているんです。特に、私達人間は、他の動物達と比較して、最も大脳が発達しており、高度の脳機能を発揮していますが、それだけに、睡眠が脳みその機能回復に非常に重要な役割を果たしている!と言っても、決して言い過ぎなんかではありません。
大脳皮質は、起きている間は常に休む事無くフル回転しており、絶え間なく入って来る生体内外からの刺激に反応しています。活動に伴って発生する産業廃棄物!ではありませんが、脳ニューロンが排泄する老廃物や有害物質、例えば、活性酸素等を除去する必要がありますし、ニューロンのメンテナンス(保護)もしていかなければなりません。
進化の過程から、睡眠の役割を考えてみましょう。地球上の全ての動物は、概日リズム(明期/暗期)に則った、エネルギーを確保する活動期と、それ以外の休息期を設けています。特に、大脳皮質の発達した恒温動物は、その体温を一定に保つだけでも、高いエネルギーを要します。ですから、四六時中エネルギー確保に奔走するよりも、少しでもエネルギーの浪費を抑えた、「”節約”って名前のおサボりタイムがあった方が、助かるわ~ぁ」…って事で、脳みその休息時間、つまり強制的不活動状態(代謝低下状態とも言う)である徐派睡眠システムを、進化の過程で獲得したんです。因みに、代謝率の高い哺乳類は、低い哺乳類に比較して睡眠時間が長く、代謝率(酸素消費量)と24時間の睡眠量には正の相関があるんだそうです。私達人間では、睡眠中の代謝率が、安静覚醒レベルより20%程度減少しているんだそうです。やっぱ、睡眠は、脳機能の回復だけでなく、同時にエネルギー節約の手段でもあるんですね。
レム睡眠とノンレム睡眠
大脳の発達が著しく、恒温性を確立している高等脊椎動物では、睡眠も、レム睡眠とノンレム睡眠に分化していて、夫々が役割分担しています。大雑把に表現すれば、ノンレム睡眠は大脳を鎮静化する為の眠りであり、レム睡眠は大脳を活性化させる為の眠りです。両者の性質は対照的で、且つ相互補完的。正に、陰と陽の関係です。
この2種類の眠りは、夫々約90分1単位ですが、これが何単位かまとまって交互に出現し、一夜を構成しています。睡眠前半は徐派睡眠が優勢であり、明け方近くになるにつれてレム睡眠とノンレム睡眠段階1,2の浅睡眠が増えて行きます。
■ノンレム睡眠は、脳みそと体の休息の為にある。
レム睡眠でない=ノンレム睡眠(笑)。ノンレム睡眠の構成は均一ではなく、4段階から構成されており、1,2段階は軽睡眠、3,4段階は深睡眠(徐派睡眠)です。徐派睡眠は、前述の通り、大脳皮質の活動が低下した状態です。
ノンレム睡眠では、副交感神経が優位となり、血圧や心拍数が低下します。脳みそだけでなく、体も休息している状態です。
右上図の如く、正常な睡眠では、最初にノンレム睡眠が出現し、睡眠前半の徐派睡眠中に、後述しますが、成長ホルモンの分泌がピークを迎えます。主に宣言的記憶等は、このノンレム睡眠中に、短期記憶から長期記憶に変換されると考えられています。少し補足しますが、宣言的記憶とは、端的に言えば、教科書を使った学習や知識です。学生時代を思い返してもらえば分かると思いますが、授業の内容なんて、授業が終わってしまえば、すっからかんに頭から抜けてしまいます(笑)。しかし、懐かしい豆単ではありませんが、予習復習、つまり、記憶術や反復練習の一種である active recall(積極的に思い出す事!)で頻繁にアクセスすると、記憶はそれだけ長持ちします。
■リアルな夢は、レム睡眠で見る。
ノンレム睡眠の時にも夢を見ますが、主にリアリティ溢れる夢を見るのはレム睡眠の時です。外傷後ストレス障害等様な、過覚醒や悪夢に悩まされる精神疾患では、ストレスによって、視床下部‐下垂体-副腎皮質軸(hypothalamic-pituitary-adrenal axis:HPA axis)のホルモン、カテコラミンが反応し、レム睡眠が活発になる為と考えられています。
子供の夜更かし・朝寝坊はロクな事がない。
下記の様な悪影響が、あっという間に雲散する! 早寝・早起きの効用は凄い!
慢性の時差ボケ(失同調)
私達人間は、野ネズミさん達と真逆の昼行性です。朝、紫外線を浴びる事で、地球の24時間周期と微妙にズレを生じていた体内時計を、地球時間に合わせ(同調)ます。ところが、本来は草木も眠る夜中に、スマホだか、タブレットだか、ネオンサインだか…まあ、何でも構わないんですが、兎に角煌々と光を浴びていると、昼間と勘違いして、生体時計の針が逆戻りし、地球時間とのズレが益々開いて来ます。
更に、この乖離に拍車を掛けるのが、夜更かし、朝寝坊に付き物の「朝ご飯を抜く」って行為です。腹時計って言葉を聞いた事があると思いますが、リズム形成を司る視交叉上核破壊の研究(←マウスの実験)から、胃腸には腹時計って体内時計があり、朝ご飯を食べる=食い物が胃腸に入ると腹時計のスイッチが入り、しっかりと目が覚めるんだそうです。
又、体内時計を左右するのは、朝ご飯を単に食べた!って行為だけではなく、それが何時か?ちゃんとしっかり食べたか?(美容通信2020年3月号)によっても左右されます。体内時計のリセット効果は、食事量にも左右されるので、しっかり朝ご飯を食べるとリセットされますが、夜遅くまでダラダラ食べて飲んでると、そもそもリセット機能が働きません。そもそも、夜型人間では、朝ご飯食べてる時間がないし、お腹も減りません。
こうなってしまうと、拗れに拗れが重なり、もう両者の溝を埋める≒同調は困難です。体内の様々なリズム(睡眠‐覚醒、体温、自律神経、ホルモン)がてんでんばらばらになり(内的脱同調)、あたかも時差ボケ(外的脱同調)状態に陥ります。疲労、食欲・意欲低下、作業能率の低下、昼間の活動量の低下等です。昨今問題となっている子供の不登校も、概日リズム睡眠障害と関係があるそうです。不登校の6~8割にリズム障害が認められ、障害の度合いが重度であればある程、欠席日数が多く、不登校症状の重症化・長期化と関連しているそうです。
明るい夜。
「明るい夜。」なんて表現をすると、ちょっと前の浅野忠信の映画みたいな響がします(笑)が、不夜城の住人では、生体時計の位相後退とメラトニン分泌抑制が認められます。メラトニンは、お昼間に燦燦と太陽の光を浴び、夜、宵闇に包まれ、光刺激から隔絶されると、その落差が大きければ大きい程、その分泌が促されます。ところが、夜も日が出たとされる中国の山東省の古代都市の様に、夜になっても明るいままだと、分泌は抑制されたままになります。メラトニンは、寝るホルモン(美容通信2015年8月号)として有名ですが、リズム調整作用、抗酸化作用(美容通信2017年1月号)、性的成熟の抑制作用がありますから、ゲームやYouTubeやLine等々で夜更かしをしていると、性的な早熟や発癌、脂質異常症等のロクでもない事態を招かねません。特に、1~5歳頃は、一生のうちでも最もメラトニン分泌が高い時期だけに、保護者の監督責任が問われます(笑)。
継続する睡眠不足問題
夜更かしは、睡眠時間の減少に繋がります。幾ら昼寝をしたところで、昼寝の時間が遅くズレ込めば、夜間睡眠時間は減少し、自ずと睡眠不足になり、認知機能の低下に繋がります。睡眠時間を4~6時間に制限すると、約2週間で丸2日間徹夜したのと同等に低下します。17時間ぶっ続けで起きていると、アルコールの血中濃度が0.05%程度の状態まで認知機能は低下するそうです。ピンと来ないかも知れませんが、路交通法で、酒気帯び運転の基準値となる呼気中アルコール濃度は0.15mg/Lです。これは、血中アルコール濃度に換算すると、0.3mg/mL(0.03%)に当たります。これは、純アルコール20g(ビール中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯)を飲んだ時の血中アルコール濃度0.2mg/mL(0.02%)~0.4mg/mL(0.04%)に相当します。睡眠不足では警察には捕まりはしませんが、実質的には免許取り消しレベルなんですよね。
因みに、国際比較で、日本の幼児、小学生、中学生の全ての年齢層に於いて、起床時刻には大きな差はないが、就寝時間は日本の子供の方が50~90分遅く、夜型化、睡眠時間現象は著明です。そりゃあ、睡眠時間が少なければ少ない程、夜更かしが過ぎれば過ぎるほど、学校の成績が悪くて当たり前ですから、日本の学力の地盤沈下は、まあ、必然ちゃあ必然なんですね(笑)。
運動不足が習慣化してしまう…かも
リズミカルな運動や朝日の光を浴びると、セロトニンの活性が高まります。セロトニンの活性が弱くなると、社会的な行動が減弱し、攻撃的な行動が増えます。
夜更かしは、内的脱同調を来たし、活動量の低下に繋がります。中高年のおじ様、おば様世代では、活動量の低下はアルツハイマー病の発症に関与しますが、ガキんちょでは慢性疲労症候群に罹り易くなると言われています。
生活習慣病の早期発症
成長ホルモンの分泌は、睡眠依存性で、寝入りばなの深いノンレム睡眠の時に、まとめてどぴゃ~っと1日の分泌量の7割方を放出(美容通信2018年9月号)します。成長ホルモンは脂肪の分解に関与しており、睡眠不足でホルモンの分泌量が減少すると、デブ化します。
更に、成長ホルモンの分泌を促すグレリンは、その食欲増進作用と成長ホルモン分泌促進作用の間には関連はないですが、睡眠不足が続くと、食欲抑制ホルモンであるレプチンが減少し、反対にグレリンが増加してしまう為、肥満に繋がります。
睡眠不足は、耐糖能低下、夕方のコルチゾール低下不良(スマホやタブレットで更に上昇)、交感神経系活性上昇(高血圧)、ワクチンの抗体産生低下(免疫能低下)により、如何に無垢な小学生と言えども、あたかも老化!と同じ現象が引き起こされてしまいます。
夜泣き
夜泣きには、実は、明確な定義すらありません。漠然と、乳幼児に起こる、然したる原因もなく、毎晩の様に決まって泣き出す現象の事を指します。
乳幼児の行動性不眠症
実は殆どの乳幼児は、毎晩1回以上、短い時間を起きているんだそうです。とっととそのまま眠りの世界に戻れればいいんですが、おっぱい(授乳)や揺り籠、抱っこetc.の親の助けを借りないと寝付けないと刷り込まれているもんだから、宥めて賺せよ!っと猛然と親に対して抗議する。まあ、その意思表示が「夜泣き」。特に、生後9か月も経ったし、まあ、面倒は見切れんから勝手にしろやと三行半?を突き付けられると、「泣く子(駄々をこねる子)は餅を一つ多くもらえる」ではありませんが、既得権の実力行使を図る(笑)。つまり、睡眠の開始と持続の、2つの問題が介在しているんです。
予防!と対策!!
先ずは、適切な睡眠衛生の構築から。
①早寝早起き、規則正しい生活リズム:疲れ過ぎは、却って×。夜中に睡眠が分断してしまう可能性がUPしてしまいます!
②適切な睡眠習慣:寝る直前は、外で遊ばせたり、テレビやビデオを見させたり…と、子供が興奮して”おだつ”(←三谷幸喜監督の映画「THE 有頂天ホテル」で一躍全国区に躍り出た北海道方言)事は避けます。生後6か月以降は、寝る前に何か食べるのも×です。お風呂でゆっくり温まったり、寝物語の様な、静かで楽しい寝る前の決まり事を行い、眠気があるけど起きてるうちにベッドに入らせたら、即行、親はバイバイ(@^^)/~~~。
③移行対象(睡眠補助具):ライナスの毛布ではないですが、親が側にいなくても子供に安心感を与えるので、与えてみる価値はあります。が、必ずしも万人が受け入れるものとは限りません。
④適切な寝室の睡眠環境
大切なのは、子供に一人で眠る事を覚えさせる。そうすれば、夜間に目が醒めても、親を当てにせず、勝手に寝れるようになります。いきなりは難しくても、徐々に徐々にです。寝付くまでベッドサイドで見守るだけから始めて、3~4日毎に距離を置き、そ~っとフェードアウト。あやしたり、揺すったり、抱っこすると、夜泣きは中々治りません。
睡眠時間とは?
睡眠時間が不足すると、肥満や糖尿病、鬱症状や自殺等のメンタルヘルス、事故等のヒューマンエラー等のハザードリスクが上昇します。多くの研究報告を総合的に判断すると、成人の大多数の健康にとって適切な睡眠時間は7時間前後と思われます。
成人の睡眠時間
■健康被害のリスクから考える
Kripkeらによる100万人以上を対象にした追跡調査によれば、睡眠時間が6.5~8時間未満の群が、最も健康被害の認められない群だったそうです。日本に於ける同様の追跡検査でも同様の結果で、6時間以下の短い睡眠時間も、9時間以上の長い睡眠時間も、健康被害のリスクは上昇したんだそうです。
日中に過度の眠気が生じない様に脳機能を清明に保つには、7~9時間の睡眠時間が適正とされています。
■肥満のリスクから考える
18~64歳のアメリカ人男女3158人を対象とした疫学調査によれば、8時間超~9時間以下が最も肥満率が低く、6時間以下の群では優位に肥満率が高かったそうです。また、コロンビア大学による成人約8000人を対象にした、10人以上にわたる長期調査でも、睡眠時間7~9時間の群に比して、4時間以下の群では肥満率が73%高く、5時間の群でも50%高かったそうです。
■死亡率から考える
日本人男女11325人の追跡調査によると、睡眠時間6時間未満の男性の死亡率は、7時間台の男性に比べてハザードリスクが2.4になります。睡眠時間9時間以上の群も、身体健康、精神健康、肥満、死亡率のハザードリスクも上昇傾向を呈します。
爺婆(高齢者)の睡眠時間
年寄りだから短い睡眠時間で十分なんて事は、単なる流言飛語。脳機能を適正に保つ為に必要な睡眠時間は、爺婆も青年も変わりません。ですから、年寄りになると、夜間の睡眠の質が悪化するので、その分日中の覚醒低下を引き起こり、昼寝と言うより、最早、「転寝」、「居眠り」をせざる得ない…だけ。
昔…懐かしいバブルの頃、5時から男がいた。
「5時から男」って、懐かしい言葉ですね。バブルの頃、高田純次が、盛んにテレビで栄養ドリンク”グロンサン”を宣伝していました。当時は、企業の多くが8時~17時を就業時間の定時としていたので、終業時間である5時になると元気になる≒仕事よりも遊びになるとイキイキするサラリーマンの象徴でした。
1日の中でもっとも体温が高く、活発に活動出来て、眠気が低い時間帯は、夕方5時~8時の間です。あの「5時から男」は正しいんです。この時間帯は、人が最も覚醒している時間帯で、睡眠禁止帯”forbidden zone for sleep”と呼ばれ、眠ろうとしても寝られません。サーカディアンリズムの影響で深部体温が高く、又、同時に、メラトニン分泌も開始をしていない時間帯だからなのです。
睡眠中の困り事。
寝汗が酷い
左図は、快眠ライフと睡眠学(滋賀医科大学睡眠学講座発行)より引用・抜粋したものです。
深部体温は、サーカディアンリズムの影響下で、約24時間周期の変動を示します。深部体温は、眠りに誘われるに従って徐々に下がりますが、更に、最初のノンレム睡眠時にガクッと低下を示します。交感神経活動が低下するので、皮膚の末梢動脈が拡張、血流量が増加→皮膚温が上昇(乾性放熱)します。同時に、発汗量も増加し、気化熱(湿性放熱)が奪われるからです。実は、酷い寝汗とは、このタイミングに、不幸にして中途覚醒してしまった時に気付くもので、睡眠前半に於ける中途覚醒が多ければ多い程、酷い寝汗を欠く可能性が高くなります。
寝室やお布団の中の温度が皮膚温よりも高いと、乾性放熱が上手く働かないので寝汗は増えますし、機能性汗腺が多いガキんちょや若者も、発汗量は増えます。
寝返り魔?
粗体動の一種である寝返りは、無意識の行動性体温調節の役割も兼ねているそうです。お布団の中の快適域は、温度33±1℃、相対湿度50±5%ですから、これを超えるような不意愉快な状況に陥ると、体温若しくは湿度調整の為に寝返り調整を図ると考えられています。他にも、体とシーツの接触面の温度と湿度が高くなり、皮膚温が高くなった時にも、寝返りを打ちます。基礎代謝量が高いお子ちゃまは寝返り度が高いですし、冬より夏の方が寝返りの回数は増えます。ですから、寝返りの多い人と少ない人の違いは、環境温湿度、基礎代謝量で決まる!んですね。
他には、寝具も影響します。ベッドよりも布団の方が動きやすいので、布団の方が寝返りが多くなります。体が沈み込む様な寝具や巾の狭いベッドは、睡眠の質を下げ、寝返りを増やします。
寝言
睡眠に関するお悩みNO.1は、先月も取り上げた不眠症(美容通信2020年3月号)(美容通信2015年8月号)です。若い女の子に関して言えば、お悩みNO.2に上げられるのが、実はこの寝言なんです。
3~10歳の位のガキんちょなら、約半分に寝言が認められるようですが、毎日寝言って子供は少なくて、1割にも満たないようです。しかし、成長に伴って自然に言わなくなり、大人になると、寝言人口は精々5%位。女性よりも男性に多く、大きな精神的なストレスに晒されていると、寝言を言ってしまうようです。
レム睡眠の終わりや、深睡眠が終わった後の軽睡眠で言ってしまうようです。
浅い眠り
■明かりをつけたまま寝ると、睡眠は浅くなり、肥満傾向が強まる
電気を煌々と点けたまま(200ルクス以上)寝ると、暗い部屋(3ルクス以下)で寝た時と比べて、メラトニンの分泌開始が遅れるだけでなく、分泌時間も短くなる事が知られています。高照度だけでなく、低照度の光でも、メラトニンの分泌は抑制されてしまいます。
光によるメラトニンの抑制は、照度だけではなく、波長(スペクトル)にも依存しており、短波長の光であればある程、メラトニンの抑制効果は強くなります。短波長の成分を多く含んでいる高色温度(白色)の蛍光灯は、低色温度(黄色)の蛍光灯よりも、メラニン抑制効果が高いんだそうです。
睡眠前半のメラトニンの分泌低下は、Ⅱ型糖尿病等の生活習慣病のリスクとなります。明るい部屋で睡眠を取る人の方が、脂質異常や肥満傾向のリスクが上昇するとの報告も出ています。
照明は、睡眠の質を下げるだけではなく、身体面に対し悪影響を及ぼす!ってエビデンスが集積されている以上、暗い部屋で寝ましょう。
■今時TVを点けっ放しにして寝る人は殆どいないとは思うが…、スマホやタブレット中に寝落ちする人は激増しているはず。
考えられる悪い事を列挙しますね。①寝る時間が、どんどん遅くなる。②情動的・生理学的覚醒反応が起こり、目が冴えまくり。③光暴露が概日リズムを遅延させる。
■ながら音楽?…結局は、雑音は眠りを妨げる
多くの研究報告によれば、実は、音楽によるリラクセーションによって入眠効果はある程度はあるようですが、睡眠中は寧ろ覚醒効果が強くなり、睡眠維持にはマイナスに働きます。実際、音楽を聴きながら仮眠を取ると、ノンレム睡眠第二段階の潜時は短くなるとの報告もあり、浅い睡眠になるようです。
音楽を雑音とするかどうかは議論の余地があり過ぎるのは承知していますが、睡眠中の雑音は睡眠を妨げます。一般に40dBを超えると睡眠に悪影響を及ぼすとされていますが、40dBとは、決して工事現場の大騒音なんかではなく、静かな住宅地・深夜の市内・図書館レベルです。因みに、日常生活で「静かだ」と感じるのは45dB(デシベル)以下とされています。
しかし、脳みそも然るもの引っ掻くもの。雑音刺激を調節して、睡眠を維持する脳機能も確認されています。脳波上での睡眠紡錘波の出現が、周囲の雑音から脳みそを保護し、睡眠を維持する機能があるんだそうです。恐るべし、鉄壁の防御機能!
■未だ見解が分かれる、音楽を用いた不眠治療
単なる不眠症から、パーキンソン病、統合失調症等の様々な疾患に付随する慢性不眠症までを対象にした音楽療法の無作為ランダム化試験では、ノンレム睡眠第二段階の短縮、レム睡眠の延長以外に、睡眠構築上の変化は認められなかったそうです。これは、被験者の好みの音楽であろうと、験者の趣味で勝手に選んだ音楽であろうと、全く統計上の有意差はありませんでした。
まあ、音楽にはリラクセーション効果があり、入眠時に於いて、不安・緊張の軽減は十分評価すべきなんでしょうが…ねぇ。
睡眠学習
寝ている間に、外国語を聞いて覚えた…。
ながら音楽(≒雑音!)同様、こんな夢の様な睡眠学習は、単に睡眠の安定性を妨げるだけ。十分な睡眠が、睡眠中の記憶固定に必要なのは多くの研究が立証するところで、現段階では、感覚刺激に頼らず、起きている間にしっかり勉強や練習をして、十分な睡眠を取るのが一番の学習法です。
因みに、夜しっかり寝ている間に睡眠学習なんて虫の良い事は不可能ですが、これが、仮眠中なら? 脳みそは、感覚刺激によっても睡眠中に学習します。嗅覚や音声刺激等の手掛かりを睡眠中に与える事で、起きている時に学んだ記憶が固定されるんです。例えば、経験のない楽器の練習の後、仮眠中に、練習をしていた曲を手掛かりとして聞いたグループは、聞かなかったグループよりも上達が早いが、これに相当します。
しかし、注意をしなければならないのは、これはあくまでも仮眠中のお話で、夜の睡眠中ではなく、また、英会話の様な意味内容を伴うものと音楽とでは、覚える記憶の性質が全く異なっており、同列には扱えません。睡眠学習は、基本的に不可能なんです。
良い夢、悪い夢
■悪夢であればある程、覚えてる
大人の50~85%は、時々悪夢に魘されるもので、それ自体は珍しくもなんともないんですが…、臨床上問題となるのは、急性若しくは外傷性ストレス障害に伴って出現する場合。外傷性ストレス障害を受けた患者さんの8割方!と、非常に高頻度に悪夢の訴えがありますが、半数の患者さんで3ヶ月以内に悪夢は消失してしまいます。しかし、残りの方は…恐ろしい事に、一生涯悪夢に悩まされる事もあるそうです。
夢は、レム睡眠だけでなく、ノンレム睡眠の時にも生じるものですが、鮮やか過ぎる悪夢は、多くの場合レム睡眠時に出現し、筋の通ったストーリーを持ち、あたかも現実に起こっているかのようなリアリティがあり、夢が展開するにつれて恐怖が果てしなく増幅され…、目が醒めても、不安感や不快感が残り、中々寝付けない…。
■情動記憶とレム睡眠
悪までも推論の域を出ませんが、レム睡眠は、感情による記憶の調節機能を果たしているのではないかと考えられています。つまり、経験した記憶に、感情と言う彩り(属性)を添える機能です。この匙加減が上手く行かないと、普通は、不要な記憶として忘却の彼方に処理されるべき記憶が、トラウマとして、濃縮される…。
■悪夢撃退!?
苦痛の程度や頻度、慢性化の程度にもよりますが、苦痛の程度が低ければ治療の必要はないとされています。治療としては、レム睡眠を短縮させる働きのある抗鬱薬を使ったりしますが、悪夢が世にも奇妙な夢に取り替わるだけみたいです。
朝型人間Vs夜型人間
朝型か夜型かは、ある程度遺伝的に決定されていますが、犬派Vs猫派の様にパッキンと白黒付けれる特性ではなく、緩やかに分布しています。
朝型/夜型の特性は、体内時計の指標となる深部温度や、メラトニン等の生理機能が示す一日の長さ(周期)や時刻(位相)と関連する事が知られています。朝型の人は、体内時計の周期が短く、位相が早くなっているのに対し、夜型人間はこの真逆で、周期が長く、位相が遅くなっています。それだけではなく、体内時計の発振を構成する時計遺伝子達の多型も関与していますし、双子ちゃんの研究による遺伝子的な影響は約50%と、ある程度生まれながらに運命付けられてしまっているようです。
朝型/夜型は、一生の間でも変遷します。思春期以前には概ね朝型の特性を示しますが、第二次性徴期に急速な夜型に舵を切ってしまいます。この思春期の夜型化は、悪いお友達に惑わされるお年頃(←魔が差した?)って訳ではないようで、人間以外の哺乳類でも認められる現象なんだそうです。しかし、この急速な夜型化は20歳前後でピークを迎え、徐々に徐々に朝型に軌道修正がなされます。
加齢と言った生物学的変化だけではなく、地理的要因(緯度経度)によっても特性が変化し、北半球では、南より北、東よりも西で夜型傾向が強まります。これは、体内時計を同調させる外的光環境が影響により起こります。つまり、ロッタちゃんやグレタちゃんの母国スウェーデンの様な高緯度地域では、日長時間の季節変動が大きく、光の同調因子としての作用が減弱する時期があります。例え同じダイムゾーンの日本国内でも、西に行けば行くほど、日の出/日の入りは遅くなります。
早寝早起きは三文の徳?得?を実践したければ、「朝陽に向かって走れ」。しかし、「夕陽には目を瞑れ」。
太陽の光と概日リズム
地球は約24時間の周期で自転しているので、これに伴い、自ずと地球上の環境も24時間周期の明暗リズムを繰り返す事になります。明るい暗いの光の変化は勿論、寒い熱い、喰うか喰われるか等々の様々な環境の変化を齎します。私達は、お昼間に活動する昼行性の生き物として、体温、自律神経、内分泌、意識レベル等々の生理学的な様々な要因が相互に関わりながら、地球の自転に適応した24時間のリズムを形成するように進化しました。この24時間の概日リズムは、実はきっちり24時間ではなくて、神様が寸足らずよりマシと考えたかどうかは知りませんが、補正余地を残した若干長めの設定になっています。
元々は地球の自転に寄り添う形で生じた24時間のリズムですが、実生活では、自転に従って行動しているなんて自覚は皆無で、寧ろお日様に操られて生体リズムは形成されて来ました。光は、概日リズムを規定する最も本質的な要素なのです。強い光(高照度光)を本来当たらない早い時間帯に照射すると、概日リズムの位相が前進します。つまり、体温やコルチゾールが早い時間帯から上昇をし始めるので、早起きになりますし、その分より早い時間から眠たくなり、早寝せざる得なくなります。反対に、後進すれば、夜更かし朝寝坊になります。朝陽や夕陽レベルの光でも、十分、位相の前進/後進が起こります。
■朝陽に向かって走れ!
朝陽の効用は、主に以下の2つとされています。
- 朝陽を浴びるだけで位相が前進し、24時間よりも若干長めになっている固有の概日リズムが、補正されます。寝付きを良くしたければ、朝陽を長い時間浴びるようにするだけでOK。更に概日リズムが前進するので、早々と眠気が訪れます。
- 450~550nmの波長で、肉眼的には青白く見える光は、概日リズムの位相変化に対して非常に強い影響を及ぼす事が知られていますが、この光は概日リズムだけでなく、脳みそを活性化させるそうです。つまり、朝陽を浴びるだけで脳の活動レベルが上がり、お昼間は頭冴えまくり(⋈◍>◡<◍)。✧♡。この様な日中の覚醒レベルの上昇は、夜間の睡眠を改善するので、一粒で二度美味しい系なんですね。
■夕陽には目を瞑れ。
夕陽も位相を遅らせるので、寝付く時間が遅くなります。夕陽を見た後に、非常に明るい場所に移動すると、更にこの傾向は強くなります。例え、部屋を薄暗くしておいても、パソコンやスマホでYouTubeやSNSしてると、画面から450~550nmの青白い光線攻撃で、位相後退が著しく、脳みそも興奮のあまり眠気が吹っ飛んでしまって当たり前。ロクな事がない。
厄介な問題…夜勤
効果的な夜勤シフトを考える
私達の概日リズムは24時間よりも長いので、交代制勤務の場合は、一日が長くなる方向のローテーション、つまり日勤(8:00~16:00)→準夜勤(16:00~0:00)→深夜勤(0:00~8:00)の正循環が望ましいとされています。
夜勤明けの日中に、上手く睡眠を取る方法
夜勤明けの日中の睡眠は、何時もの睡眠より短くなり、且つ中途覚醒が増える事が知られています。本来活動しているはずの時間帯に無理矢理寝ようとしているのだから、上手く眠れなくて当然なんですが…、まあ、そうだねの一言で片付ける訳には行きません。上手な足掻き方の提案です。
■どのタイミングで寝る?
日本では、夜勤を長期間に亘って続ける事は少なく、数日単位で日勤や準夜勤、深夜勤へと交代するローテーションの早い交代勤務制が一般的です。この為、夜勤に適した概日リズムに位相を合わせるのは現実的ではなく、日勤の生体リズムを如何に保つかに腐心した方が良さそうです。
次の勤務が再び夜勤の場合は、日中は出来るだけ起きていて、夜勤に近い時間帯に寝るようにします。そうすると、起きている時間が長くなり、その分、夜勤明けはするっと眠りに入り易く、睡眠の質も上がります。
反対に、次の勤務が日勤の場合は、先ず夜勤明け午前中の早い時間に寝る。この午前中のスムーズな睡眠の為には、夜勤明けの帰宅時からの下拵えが大切で、芸能人?って勘違いされちゃう位の完全防備、つまり、帽子やサングラス、日傘等で、なるべく朝の太陽をブロックします。そして大事なのは、何時までもたらたらと睡眠を貪らず、早めに睡眠を切り上げて、お昼間は屋外で太陽の光を浴びて遊びましょう。ちょっと寝足りないくらいにしておくと、その夜はぐっすり寝られます。
■睡眠環境の整備
本来は起きている時間帯である日中に睡眠を取るのですから、せめて5つ星の超高級ホテル並みの寝室環境を整えましょう。NYのプラザホテル並みのラグジュアリーな内装や調度品を揃えろって意味ではなくて、完璧な遮光、静寂、そして寒くも暑くもなく、適度な湿度、そして快適な寝具等の寝室環境です。窓に遮光カーテンを付けたり、シャッターを閉める等の遮光対策は、同時に騒音対策にもなります。睡眠中に目が醒める(覚醒反応)位の騒音とは、40dB以上の音とされていますが、前述の通り、40dBとは静かな住宅地・深夜の市内・図書館レベルであり、寝室内の壁のスイッチの操作音とほぼ同等です。飲み屋街で生まれ育ったHISAKOには、静か過ぎて落ち着かない、暗過ぎて落ち着かない(笑)レベルではありますが、騒音対策を極める為には、騒音の侵入口となる窓とドアには厚手のカーテンを付けましょう♬ 寝室を、自家製写真現像用暗室化してみて下さいね。
*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。
※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。
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来月号の予告
嘗て、栄養学は、「何を、どう食べるか?」だった。今は、これに「いつ?」が加わった。
時代は、最早、体内時計システムを考慮した<時間栄養学>です。