「慢性炎症は万病の元」を検証する | 旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2021年1月号

「慢性炎症は万病の元」を検証する

慢性炎症が、何故、糖尿病や癌、脳卒中、心血管疾患(心筋梗塞等)、精神疾患、関節リウマチ等の自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎等の慢性疾患の発症の引き金となり、又同時に増悪因子として悪循環に至るのか? 予防と治療を兼ねて、炎症について解説します! ついでに、新型コロナウィルス(COVID-19)の重症化のカギを握るサイトカインストームについても、超簡単に解説しておきます。つまり、炎症対策は、コロナ対策にも繋がります。

慢性炎症は万病の元とは言いますが、炎症って、知っているようで知らない人が多い。そこで今月号は改めて、炎症(急性/慢性)の総復習! 炎症を理解する事は、病気の予防にも役立ちます。

厚生労働省が指定する5つの病気

厚生労働省が指定する5つの病気

 ①糖尿病、②癌、③脳卒中、④心血管疾患(心筋梗塞等)、⑤精神疾患の5つを、厚生労働省は、要介護や寝たきりの状態になり易い病気として挙げています。そして、これ等の病気は今後も患者数の増加が見込まれる疾患でもあり、再発のリスクが高く、お互いに関連し合いながら増悪すると言う悪友関係にもあります。この様な悪友関係を断ち、QOL(Quality of Life)の向上を図る為には、分子栄養学的アプローチを通して、健康の自主管理、生活習慣の見直し、老化の抑制を進め、ポリファーマシー(多剤併用による弊害)を避け、フレイルやサルコペニアの予防(美容通信2018年9月号)(美容通信2019年2月号)(美容通信2020年8月号に繋げるしかありません。極めて、ベタな言い方ですが(笑)。

■日本人の死因

 下記の死因(厚生労働省・平成28年人口動態統計より)を見てもらえればお分かりの様に、日本人の死因の多くには、慢性炎症が関わっています。

  1. 癌(28.5%)
  2. 心疾患(15.1%)
  3. 肺炎(9.1%)
  4. 脳血管疾患(8.4%)
  5. 老衰(7.1%)
  6. 不慮の事故(2.9%)
  7. 自殺(1.6%)
  8. その他(27.3%)

急性炎症

 炎症とは、体の内外から侵襲を認識し、これに適切に対応し、体を防御する生理的な反応が炎症/免疫です。両者は、コインの裏表の様な表裏一体の関係にあります。

急性炎症の四徴候

 アウルス・コルネリウス・ケルスス(Aulus Cornelius Celsus、紀元前25年頃 – 紀元後50年頃)は、古代ローマの学者さんです。現存する著書”De Medicina”(医学論)で知られますが、これは失われた百科事典の極く一部に過ぎないと考えられています。『医学論』は、食事療法、薬学、外科的治療その他に触れた極めて初期の重要な資料であり、ローマ世界の医学知識を知る上で最上の資料の一つとされています。彼の百科事典の失われた巻は、おそらく農業、法律、修辞学、軍事等を扱っていたのではないかと推測されています。

「ケルススの4徴候」は、この”De Medicina”の第三巻に登場します。それによれば、生体内に炎症を引き起こす組織異常には、擦過傷等の外傷、打撲、病原体侵入、化学物質刺激、新陳代謝異常による組織細胞の異常変化、極端な温度環境、外耳道、肺等への水の浸入(この場合当該部位の発熱により気化排出を行う)等があります。生体にこれらの異常が生じると、①発赤、②熱感、③腫脹、④疼痛を特徴とする(急性炎症の)四徴候が現れます。更に、機能障害をを加えたものを、炎症の五徴候(ガレノスの五徴候)と呼ぶ事もあります。

 

炎症に関わる細胞達~白血球の仲間達

 炎症に関わる白血球達は、その活躍の場によって、大きく分けると二つのグループに分けられます。1つは、血液に由来するグループで、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、マクロファージ、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)がこれに属しています。彼らは、普段は血液の中を巡回していますが、有事の際は血管から組織に漏出し、そこ(組織)を主戦場とします。顆粒球と単球(組織デビューすると、出世魚ではありませんが、マクロファージに進化します)は、一旦組織に出てしまうと、もう二度と血液中に戻る事が出来ない=片道の燃料しか搭載していない神風特攻隊の様な存在で、組織に骨を埋めるしかありません。これに対して、リンパ球はしぶといと言うか…寿命が長~い白血球で、一旦組織に活動の場を移しても、他の仲間の様にそこで一生を終える訳ではなく、組織から、リンパ管、そして血液と、体の中をぐるぐる巡回し、体の何処かで異常事態が発生すると、現場に即行向かいます。

 もう1つのグループは、組織に由来する(在住する)連中で、肥満細胞、樹状細胞、組織マクロファージがあります。肥満細胞は、急性、Ⅰ型アレルギー言関与します。樹状細胞は、マクロファージのお仲間で、抗原提示に関与します。組織マクロファージは、組織の恒常維持に関与しています。つまり、老化したり壊れてしまった細胞や組織をお掃除して、フレッシュなものに入れ替えるのを助けてあげるのがお仕事なんです。

 

急性炎症の始まり 

 損傷を受けたぞ~!!!!!!!!!!!!!って狼煙を、肥満細胞やマクロファージが感知すると、肥満細胞は、エキソサイトーシスでヒスタミンやセロトニン等の炎症を起こす原因物質を脱顆粒します。その他にも、IL-6、TNF‐α、IL-1、PGE2、LTB4等のエイコサノイドの産生、分泌も促します。これ等の炎症メディエーターの作用により、血管が拡張し、血管の透過性が増します。これ等は主に細動脈で起こり、血流が増加するので、炎症の四兆候の熱感と発赤が生じます。血管透過性亢進とは、血管を裏打ちしている血管内皮細胞が収縮→細胞間隙が拡がるので、ここから好中球だけでなく、血漿成分もじわ~んと漏れ出し、腫脹や疼痛が起こって来ます。血漿の中には凝固因子も含まれているんですが、これ等は、壊れた組織や異物が正常な組織に悪さを及ぼさない様にと、袋詰めにして、隔離してしまう!なんて荒業をやってのけます。更には、好中球は細菌を貪食したり、殺菌物質を分泌して、原因物質の除去に勤めます。その後、やや遅れてお掃除隊、つまり単球→マクロファージが現場にやって来て、壊れた細胞や組織を綺麗に掃き清めてくれます(貪食)。マクロファージには、お掃除だけでなく、組織修復の為のサイトカインを分泌して、コラーゲン線維の合成や組織細胞の増殖を促すと言う建設的な側面もあります。

 右図の様な、これ等の一連の流れを一括りにして、「自然免疫」と言います。自然免疫は、即戦力とも言えます。

 

急性炎症を血液データから読む

 急性炎症の際の血液データでは、特異な所見が認められます。

  • 白血球、特に好中球(桿状核球)が増加し、核が左方移動する。

 

   好中球は、骨髄で作られ、芽球と言う非常に未熟な段階から分化分裂して成熟しますが、この過程で、上図の様に核の形がどんどん変わるんです。しかし、彼らにはテリトリーを遵守するって概念が普及しているので、幼若細胞(骨髄球・後骨髄球)は骨髄に留まって、血液中には出て来ません。ですから、血液中にいる好中球は、皆、成熟好中球、特に2分葉、3分葉が主流派なんですね、通常は。ところが、炎症が起きると、好中球がどんどん戦場に駆り出され、討ち死にしてしまいます。そうなれば、学徒出陣。普段は勉学に勤しむのを旨とする学徒(桿状核球)も戦場に駆り出されますし、場合によっては、骨髄にいる後骨髄球までも竹槍を持って参戦しなければなりません。つまり、より幼若な細胞が血中に現れる。これを核の左方移動と言い、急性炎症に於ける特徴的な所見です。

  • ALBが低下し、α1-G、α2-G、CRPが上昇。

   アルブミンが低下するのは、血管透過性が亢進して、組織に血漿中のアルブミンが漏出し易くなるから。それだけでなく、破壊されたアルブミンと、後述するヘモグロビンの蛋白質は、炎症性のサイトカインや好中球の増産の原材料として充てられてしまうので、減らざる得ないって側面もあります。

 マクロファージから分泌されるIL-6が、肝臓に作用し、CRPの合成が上昇します。CRPにはオプソニン作用、つまり、ターゲットに対して、貪食細胞の食欲をそそる味付けをする作用があります。CRPは炎症の程度に相関する値として良く知られていますが、実は、こんな粋な計らい指数だったんですね。

  • Hbが低下しやすい。

   骨髄では好中球の増産が必死に行われているので、赤血球の増産にまで手が回らなくなっちゃうだけでなく、また、アルブミンと共に、急性炎症と言う非常事態下では、炎症性のサイトカインや好中球の材料に回されてしまうからです。

  • 重症感染症では、白血球が減少(消費>産生)。

   炎症が起こると、マクロファージや顆粒球からコロニー増殖因子CFU-Gが分泌され、骨髄でも好中球の増産が進みますが、如何せん、生産よりも消費が嵩む重症感染症になると、白血球は減少してしまいます。

  • 障害臓器に由来する酵素が一過性に上昇。

   例・肝炎;GOT↑、GPT↑ 膵炎;アミラーゼ↑

自然免疫と獲得免疫

自然免疫から獲得免疫へ

 即時対応型の自然免疫では対応がしきれないような場合に遭遇しても右往左往しない様に、もしもの場合の備えとして、獲得免疫系にもシグナルが送らます。

 異物を樹状細胞(やマクロファージ)が貪食し、これを分解し、この一部(抗原決定基)を突起にぶら下げる=抗原提示します。リンパ球(ヘルパーT細胞)はこれを察知すると、B細胞を、抗体を産生する機能に特化した形質細胞に進化させちゃうんです。形質細胞は抗体をどんどん作るようになります。

 抗原提示の補足になりますが、樹状細胞には2種類のアダプターがあります。一つがMHCクラスⅡ。もう一つがMHCクラスⅠです。MHCクラスⅡは、ヘルパーT細胞に対し抗原提示をします。因みに、ヘルパーT細胞もキラーT細胞も一見区別は付きませんが、良く見ると、ヘルパーT細胞にはCD4って目印が付いていますし、キラーT細胞にはCD8って目印があります。MHCクラスⅡによって抗原提示されると、ヘルパーT細胞は活性化されます。キラーT細胞は、MHCクラスⅠに提示された抗原決定基によって活性化されます。どちらもT Cell受容体によって、情報を受け取ります。ヘルパーT細胞は、B細胞を活性化して形質細胞に変換しますが、キラーT細胞は、細胞障害性細胞とも呼ばれていて、ウィルス感染細胞や癌細胞を直接アポトーシスに導く作用があります。

 

獲得免疫の特徴

 活性化前の細胞をナイーブT細胞/B細胞と言うのですが、抗原に特異的なナイーブT細胞/B細胞のみが抗原提示を受け、クローン性にわ~っと爆増します。これがエフェクターT細胞/B細胞で、彼らは、特異的にピンポイントで強力にターゲットである微生物や細胞を集中攻撃します。

 獲得免疫のもう一つの特徴は、抗原が取り除かれてしまった後も、その一部はメモリーT細胞/B細胞として長期間残存します。そして、再び同じ抗原に遭遇した時に、即時に強力に反応します。これが免疫記憶です。

 

 生体は、先ず自然免疫で対象物を除去しようとします。これで片付けば問題はないのですが、もしこの自然免疫で手に余るような事態が起こると、獲得免疫の出番になります。自然免疫は、どちらかと言うと局所的反応です。獲得免疫は、リンパ球、これはリンパ管を通って全身性に循環するものなので、全身性の反応です。抗体も、血液に乗って全身を循環し、遭遇した異物に対して反応をするので、全身性に働くと言えます。

 

自然免疫に於ける異物の認識

 自然免疫は、何によって攻撃する対象物を特定しているのでしょうか? これは長らく謎とされていましたが、最近解明が進み、貪食系細胞はパターン認識受容体(PRPs)を持っていて、大雑把に攻撃対象を認識する事が分かって来ました。

 その認識対象となるのは、以下の体内外の2つの分子です。

  • 病原体由来分子PAMPs(pathogen-associated molecular patterns):細菌やウィルス由来のDNAやRNA、細菌由来のリポ多糖等を認識します。
  • 自己の細胞由来因子DAMPs(damage-associated molecular patterns):ダメージを受けた細胞から出て来る物質を認識します。自己の細胞のDNAの断片、RNA、ATP、変性蛋白質、コレステロール等です。

急性炎症と慢性炎症

 急性炎症と慢性炎症の違い。

  急性炎症 慢性炎症
炎症誘導因子 PAMPs、DAMPs(一過性) DAMPs、抗原の持続
全身状態 発熱、倦怠感、食欲不振 無症状の事も多い(但し、増悪時に症状が出現)
主体となる細胞 初期には好中球 マクロファージ、リンパ球
線維化 修復機転として起こる 線維化が進行している
加齢との関連 低い 高い
予後 多くは良好 臓器機能低下、発癌もある

 両者は全く別物で、慢性炎症は、現代型ライフスタイル(①身体活動低下、②偏った食事、③睡眠不足、④ストレスフル)と関りがあり、内臓脂肪を蓄積させて、インスリン抵抗性や慢性炎症を招きます。

慢性炎症

内臓脂肪蓄積と慢性炎症

 脂肪細胞は、元々エネルギーを蓄えているだけでなく、内分泌臓器としての役割も持っていて、アディポサイトカインを分泌しています。アディポサイトカインは、元々は代謝を整えて、体に恒常性を保つ働きをしているのですが、肥大した内臓細胞になると、アディポサイトカインのバランスが崩れて、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF‐α、IL-1、PGE2、LTB4等)を分泌したりとか、PAI-1(線溶抑制因子)を分泌したりとか、脂肪細胞に蓄えられているトリグリセリドがどんどん分解されやすくなって、脂肪酸として血中に遊離脂肪酸として分泌されやすくなったりします。

 こう言ったサイトカインが血管内皮細胞を傷害すると、血管が狭窄したりとか、スパスムを起こしたりして、臓器が虚血に陥ったり、血栓が形成されやすくなったりします。インスリン抵抗性が生じて、肝臓とかインスリン抵抗性の臓器とは肝臓や筋肉なんですけど、肝臓は血糖値を調整しているんですね。空腹時には血糖値が低下しない様に、糖新生を行っているんですが、インスリン抵抗性が生じて来ると、空腹時じゃなくても、常に糖新生が亢進した状態にある。その結果、高血糖状態が現れて来ます。筋肉は、グルコースを取り込んで、グリコーゲンに合成して、高血糖を防ぐ作用があるんですが、この糖の取り込みが低下してしまう。

 それから、肥大した細胞と言うのは、嘗ては脂肪細胞はトリグリセリドをどんどん取り込んで肥大して、際限なく大きくなれると言われていたのですが、脂肪細胞も生きた細胞ですから、どんどん肥大して来ると酸素不足に陥ったり、酸化ストレスが亢進して、細胞死します。その結果、死んだ細胞からDANPsと言う炎症を誘発するような物質が放出されて、これがマクロファージを活性化させます。その結果、マクロファージから炎症性サイトカインが分泌されて、更に脂肪組織を炎症に導くと言う悪循環に陥ってしまいます。

 

慢性炎症と線維化

 慢性炎症状態では、血管内皮細胞が障害されて、その結果、組織細胞が障害されます。更にそれが組織を虚血状態に導き、血栓が形成され、それにより、又、組織細胞が障害され…どんどんと悪循環になります。

 組織が障害されるたからと言っても、そのまま放置する訳にはいかないので、修復する為に、コラーゲンを作るサイトカインが分泌されます。線維芽細胞が活性化されて、コラーゲンをどんどん作ります。つまり、炎症を起こしてダメージを起こした組織がコラーゲンで置き換わる、その過程をリモデリングと言いますが、組織がダメージを受けてどんどんちっちゃくなると言うか、組織の欠損をコラーゲンによって置き換える様な生理的作用が繰り返される事によって、臓器が線維化=硬い組織で置き換えられてしまいます。その結果、活動する活動する部分、機能を持つ部分がコラーゲン線維によって置き換えられてしまうので、臓器の機能自体は低下せざる得なくなってしまいます。そう言った硬い臓器は、発癌リスクが高くなります。ダーメージを受けた細胞とか老化した細胞が取り除かれて、新しい細胞が作る時、未分化な細胞が分裂分化して成熟細胞になりますが、細胞の周りの環境が良い環境でないとちゃんとした分化が遂げず、癌化が進む事になります。つまり、生命予後の悪化です。この時、適切な栄養対策がなされないと、組織の修復が滞り、高度の線維化から臓器機能低下が進んでしまいます。

 

加齢と老化

1.免疫の老化

 加齢も慢性炎症と大きく関わっていて、免疫がまず老化します。マクロファージの機能が低下して、先ず、貪食能が低下するんですね。ダメージを受けた細胞から放出されるDAMPsが漏れやすくなってしまう。貪食され難くなった結果、そう言ったものが常に出てくる状態になって来る、それが慢性炎症を終息させないで持続させたり、DAMPsによって獲得免疫の機能が低下する事と相まって、自己抗体が産生されやすくなってしまう。

2. 細胞の老化

 老化した細胞はアポトーシスを起こして、マクロファージによって処理されるんですが、これが処理され難くなるという事と、老化した細胞では、NF-κBと言う核内因子が活性化されやすくなります。核内因子と言うのは、転写因子としてDNAに作用して、炎症性サイトカインの産生を亢進させます。炎症性サイトカインの産生亢進により、マクロファージが活性化して、マクロファージがダメージを受けた細胞や老化した細胞を貪食するんで、1つは生理的な反応ではあるんですが、マクロファージの機能が低下していると、貪食され難くなってしまうという事と、そうすると老化したりダメージを受けた細胞からDAMNPsが出て、それが又炎症の悪循環を起こすと言った事が起こり易くなります。

3.代謝の変化

 代謝亢進の機能が低下したり、内分泌系の機能低下する。インスリン抵抗性と言うのは、老化によってより起きやすくなってしまうのですが、それによって、異所性脂肪が蓄積されやすくなってしまう。インスリン抵抗性が増加すると、脂肪細胞からのトリグリセリドが分泌されて、遊離脂肪酸となって血中に分泌されるんですが、それが肝臓に蓄積されて脂肪肝になったりとか、骨格筋に蓄積されたりとかして、異所性脂肪が炎症を引き起こしやすくなります。

 

慢性炎症性疾患には、生活習慣、加齢、素因の3つが関係します

慢性疾患各論

 「免疫が全て解明されれば、病気がこの世からなくなる。」

 病気の主体は、免疫であり、免疫=炎症と言えます。本来、炎症は体にとっては悪い事ではありません。バイ菌が体に入って来た時に、それをやっつける為の正常な反応だからです。炎症がなければ、人間はあっという間にバイ菌にやられてしまいます。

 ところが、私達の現代のライフスタイルは、食生活の乱れやそれによる腸内細菌の乱れ、ストレス、睡眠障害、過食による肥満、運動不足等が原因となって、本来であれば必要のないと言うか、起こるはずもない慢性の炎症を引き起こすようになって来ました。病気になっても、体にばばっと急性炎症が起こって、そのサイトカインによってバイ菌をやつけて健康になると言うのが普通のメカニズムです。ところが常に体に慢性炎症を引き起こすと、体にありとあらゆる疾患、例えば、癌とか鬱とか、自己免疫疾患、サルコペニアとなってしまうので、ここを如何にコントロールをしていくのかと言うのが、病気にならない鍵とも言えます。

 

母体の炎症による胎児への影響

 炎症の状態は、CRP、血沈で評価します。しかし、炎症が長期に亘ると、ちょっとずつ貧血が進行したり、血小板の数値が上がって来たりします。この様なデータを示す人達は、大体が太っています。肥満と言うだけで、炎症性サイトカインが誘発されてしまって、こういうお母さんから赤ちゃんが生まれると、生まれる前に赤ちゃんの遺伝子を傷付けてしまっているかも知れません。成人であれば、60兆個も細胞があるので、それが1個や2個くらい傷付いたところで、アッと言う間に排除され、修復されてしまいます。ところが、胎児の細胞は一番最初は1個から始まります。これが2個、4個、8個、16個と分裂して増えて行くんですが、このこれから増えて行くぞって段階の細胞が傷つくと、体全体の細胞の遺伝子が傷ついた状態の生成物なってしまうんです。つまり、生まれる前からの炎症が病気に関わって来るんですね。

 

肥満と炎症

 脂肪細胞が増大するにつれ、そこから分泌されるサイトカイン分泌量が変化し、様々な病態が形成されます。

 

糖尿病(DM)

 膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンと言うホルモンの量が不足したり、効き難くなったり、血中のブドウ糖が増え過ぎた状態(高血糖状態)が長く続く病気が糖尿病です。唯、Ⅰ型糖尿病=インスリンが不足する人は稀で、殆どが効き難くなるⅡ型で、その前段階になるのが炎症性サイトカイン!です。インスリン抵抗性を悪化させるサイトカインとしては、TNFα、IL-6等の幾つかの炎症性サイトカインが挙げられます。肥満によって、炎症性サイトカインが増加し、インスリンが効き難くなる事が糖尿病に繋がります。

脳卒中・心筋梗塞

 肥満から動脈硬化になり、血管が詰まったり、破れたりすると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こします。

 壊死した細胞がマクロファージを活性化し、炎症性サイトカインを活性化し、炎症性サイトカインが増加し、更に炎症を促進し、慢性化させます。

癌と免疫

 癌細胞は、日々絶えず生まれています。それでも癌が発症しないのは、免疫系が癌細胞を見付けて、破壊しているからです。

■悪液質

 癌悪液質とは、癌による機能的な障害が進行した病態の事で、腫瘍細胞から放出される因子や腫瘍細胞に抵抗する為に、宿主組織から産生される炎症性サイトカイン類により、癌悪液質が生じると考えられるようになりました。

■対癌戦略としての炎症抑制

  • 癌細胞の数を増やさない
  • 正常細胞機能維持の為の栄養補給
  • ネクローシスからアポトーシス

   癌が何故悪いかと言うと、アポトーシスを起こさないから。アポトーシスとは、細胞の自己死の事です。本来人間は数ヶ月経つと、細胞は全て入れ替わって、フレッシュな状態=健康な状態で生きているのです。そのフレッシュに生まれ変わる状態を維持する為には、炎症を抑制するしかありません。癌細胞自体も炎症を引き起こしますが、癌の原因自体も慢性炎症である事が往々にして見受けられます。

  • 炎症を抑制する

 

精神疾患(鬱)

  1. ストレスを受けると、視床下部はCRH(コルチコトロピン遊離促進ホルモン)と呼ばれるホルモンを分泌します。
  2. CRHの刺激を受けた下垂体は、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)と呼ばれるホルモンを分泌します。
  3. ACTHの刺激を受けた副腎皮質は、コルチゾールと呼ばれるホルモンを分泌します。
  4. コルチゾールは全身に働きかけ、血圧や血糖を上げたり、免疫反応を鎮め、炎症を抑えたりする事で、ストレスに対抗します。

■ストレスが持続すると

 ストレスに対抗する為に、栄養(蛋白質、ビタミンC等)が消耗します。その結果、副腎皮質が疲弊し、コルチゾールの分泌が低下し、ストレスに対抗出来なくなります(美容通信2017年5月号)(美容通信2015年4月号)。その結果、鬱等の精神疾患の発症に繋がります。

 

自己免疫性疾患

 自己免疫疾患とは、免疫系が正常に機能しなくなり、身体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。代表的な疾患が、関節リウマチです。

■関節リウマチ

 多発性関節炎を主徴とする原因不明の慢性性疾患です。人口比は、0.5~1%(100~200人に1人)。女性に好発し、男女比は1:3~5。好発年齢は30~50歳です。

 メカニズムとしましては、関節リウマチは自己免疫疾患のひとつで、炎症性サイトカインにより滑膜が炎症し、軟骨や骨が破壊されたり、関節が腫れたり変形したりします。

 

口腔内の炎症

 本来は殺菌作用の為に、O2が白血球表面で多量に産生されます。生体防御って奴ですね。

 しかし、過剰な炎症は、侵入した細菌のみならず、自己の組織への障害を齎します。更には、口腔内環境は、歯周病や虫歯のリスクを高めるだけでなく、全身の不調や全身性疾患(アルツハイマー病、脳梗塞、心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病等)の原因になります。

 

アレルギー

 皮膚や粘膜のIgE抗体が過剰反応する事で起こります。

 アレルゲンと抗体が結合→ヒスタミン等の化学物質を放出→炎症。これが、アレルギーの機序になります。

 最近何かと話題の新型コロナウィルスですが、新型コロナウィルス自体が非常に強い毒性を持っている訳ではなく、これに対する一種のアレルギーなんですね。

COVID19 に対する画像結果■新型コロナウィルスと炎症

 新型コロナウィルスは重症化した患者が肺炎で亡くなると言うのが典型的でしたが、多くの患者で全身に症状が出ている事から、血管の炎症を誘発していると考えられるようになりました。例えば、エボラウィルスは強過ぎるので、あっという間に全身の臓器を侵して、死んでしまう。しかしながら、この新型コロナウィルスには、あんまりそう言う作用はありません。殆どの人は、ウィルスが体の中に入って来ても、免疫が正常に働いて、そんなに大騒ぎせずに体の外に出してしまいます。ところが、一部の、この新型コロナウィルスに大騒ぎをする人が、重症化してしまいます。ですから、欧米各国と日本では感染率も重症化率も変わって来ます。遺伝子の素因によって、ある物質に対して非常に強い免疫反応を起こす遺伝子もあれば、それを受け入れちゃう遺伝子もあるからです。例えば、マラリアに対し、黒人のある種の遺伝子を持っている人達はマラリアを発症しません。でも、その人達は鎌状赤血球症になる人が多い。つまり、遺伝子の素因によって、ウィルスや細菌に対して過剰反応をするものとしないものがあるって事なんですね。

  • 重症化のメカニズム1.サイトカインストーム

 新型コロナウィルスの重症化のメカニズムとしては、サイトカインストームによる血栓形成が関与していると考えられています。新型コロナウィルスに対する免疫反応の惹起→血管の炎症の引き金となります。

 若い方でも重症化するケースがあるのですが、これが相当すると考えられています。つまり、肺で免疫細胞が大騒ぎをし過ぎて、炎症性サイトカインを過剰に出してしまって、肺に過度な炎症を引き起こす事によって、重症化してしまいます。それが肺に炎症を起こすと肺炎だし、血管壁に炎症を及ぼすと血栓形成となります。

 日頃から免疫反応を惹起させやすい環境にある方、つまり常に炎症を起こしている方と言うのは、サイトカインストームを引き起こしやすいベースが整っていると言えます。

 コロナウィルスの重症度の話をしていると、大分重症化するポイントと言うかリスク因子が分かって来ました。幾つかありますが、遺伝子型、血液型も要因として一つあると考えられています。どうもA型を規定する遺伝子のちょっと隣にある遺伝子が、もしかすると重症化を左右するようなんですね。唯、遺伝子の素因は先天的なものなので、身も蓋もない言い方ですが、今更どうしようもない(笑)。しかし、まだ間に合う要因もあります。例えば、肥満、太っている人。それと関係しているのですが、糖尿病や高血圧も重症化の因子です。つまり普段から慢性炎症を引き起こしている人達は、静かな波のない湖面にいきなり荒波を立てるのは難しく、普段から細波が起こっている状態の方が、台風が起きた時に氾濫しやすいんです。慢性細胞を引き起こしていると、何時でも免疫細胞が行くぞ!って言う状態になっているので、そう言った方の方が、変な異物が入って来た時に、より強い炎症性、炎症正反応、サイトカインストームを起こしやすいと言われています。コロナウィルスでサイトカインストームを起こさない為には、普段から、炎症をしっかり抑制しておくことが大事だよ!って事なんですね。

  • 重症化のメカニズム2.単に、新型コロナとの力勝負に負けた

 まず、重症肺炎ですが、高齢者の場合、新型コロナウィルス自体に負けちゃって、肺炎を起こしてしまいます。

 

まとめ:慢性炎症は慢性酸化ストレス状態

 じゃあどうすれば慢性炎症を防げるかと言うと、痩せろ! 太っている人は痩せるだけで随分違うのですが、それ以外にも、どうすれば慢性炎症を改善できるのかと言うと、食べる食事、摂取する栄養によって、炎症にも抗炎症にもなります。きちんとしたものを食べれば炎症は抑えられます。分子栄養学的アプローチで炎症を抑制する事が、QPLに繋がります。

抗炎症対策

 炎症はコントロールすることが大事です。

 現代型ライフスタイルは、慢性の炎症を引き起こす悪い要因だらけ。①食事、②運動、③生活習慣、④栄養素の4つの拠点からアプローチを図ります。

 

食事

■炎症を引き起こす現代人の食事

 現代人の食生活の特徴としましては、

  1. 果物・野菜・食物繊維・プロバイオティクス→
  2. 精製食品・加工品(特に、乳化剤を多く含む食品)→

が挙げられ、これにより、下記の弊害が惹起されます。

  • 消化管への影響による炎症

   腸内細菌叢(美容通信2016年9月号)の攪乱(美容通信2019年11月号)→リーキーガット症候群→免疫系に対するエピジェネティクス変化→内毒素症・全身性の慢性炎症(美容通信2020年6月号

   食欲増進作用有→肥満

  • トランス脂肪酸並びに過剰な塩分摂取による炎症

   特に塩分の過剰摂取は、腸内細菌叢の攪乱を引き起こします。

■抗炎症対策としてのお食事

  • 適切な糖質量

   1日20~40g。1日70~130g。無暗な糖質制限は、筋肉の減少や腸内環境の乱れに繋がります。

  • 蛋白質を多く摂取

   質の良い蛋白質を1日1.0~1.5g/Kg摂取すると、筋肉の蛋白質合成や筋肉量の維持に繋がります。因みに、豚ロース肉1枚80gには、蛋白質15.4g。鮭の切り身1切れ70gには、蛋白質15.6g。ゆで卵1個50gには、蛋白質6.4gが含まれています。

  • 脂質も大切

   1日に必要なエネルギーの20~25%を脂質から摂るのが良いとされています。ω3系脂肪酸(美容通信2010年6月号)の多い青魚は、蛋白質も多く含まれています。

  • 食前に食物繊維を

   男性は1日20g以上、女性でも18g以上が目安です。

 

運動

 無理のない範囲で反復運動を行う事、そして、運動後に蛋白質を摂取する事で、更に効果的に!

  • ストレッチなら、無理のない、痛みがない範囲で10~20秒、持続的に筋肉を伸ばす柔軟体操がオススメ。毎日行いましょう。
  • 筋力トレーニングは、骨格筋の出力・持久力の維持向上と筋肥大を目的とした運動です。週に2~3日くらいが適当です。
  • 持久力トレーニングは、全身を長時間に亘り動かすトレーニングで、心肺機能を強化する運動です。所謂スタミナを付ける!って運動で、これも週に、2、3日が適当です。

■運動不足と炎症

 骨格筋は、サイトカインやマイオカインを産生・分泌する内分泌器官でもあります。これ等の物質は、概して、筋肉の収縮の際に産生・分泌され、全身性に対する抗炎症作用を齎してくれます。ところが、運動不足が続くと、蛋白質同化抑制増強、CRP↑、炎症性サイトカイン↑し、結果、インスリン抵抗性、脂質異常症、内皮機能不全、高血圧、サルコペニア発症が起こり易くなります。

 因みに、慢性的に運動不足の個人に於いて報告されている疾患としては、CVD、2型糖尿病、NAFLD、骨粗鬆症、癌、鬱病、認知症、アルツハイマー病等が挙げられます。

 

生活習慣

 寝不足や間食等、不規則な生活習慣の改善が大切。

■睡眠と炎症

 私達動物は、凡そ24時間サイクルからなるサーカディアンリズム(体内時計)によって決まったリズムの下、生命活動を営んでいます(美容通信2019年10月号)。サーカディアンリズムは、①脳内の前視床下部に位置するSCN(視交叉上核)に依存する中枢性と、②その他の臓器にある末梢時計によって制御される末梢性の2種類(美容通信2017年1月号)があります。

 生活習慣の乱れによる睡眠障害/寝不足(美容通信2020年3月号)、人工的な光(特にブルーライト!)(美容通信2015年8月号)、夜間の光への暴露により、サーカディアンリズムが乱れ、それが炎症へと繋がります。

 

栄養素

 必要な栄養素を摂る事で、身体のベースアップが図られ、引いては基礎代謝のUPに繋がります。

  • 総合的な栄養補給:蛋白質、ビタミン、ミネラル
  • 吸収力UP:消化酵素
  • 腹持ちUP:ホエイ+カゼイン(←蛋白質の血中濃度維持)
  • 腸内環境改善:乳酸菌、酪酸菌、ビフィズス菌

■栄養と炎症のモジュレーターとしての腸内細菌叢

 

 

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来月号の予告

二度と帯状疱疹には罹りたくない人達へ。

帯状疱疹のワクチンが発売されました。

<シングリックス>