抗酸化ビタミン~ビタミンA | 旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2005年2月号

抗酸化ビタミン~ビタミンA

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レチノイドはビタミンAの誘導体の総称で、強力な皮膚のターンオーバー促進作用があり、シワやシミを改善する目的で、美容皮膚科系のクリニックでは、定番中の定番の外用薬(クリーム)。
ニキビ治療にも用いられ、アダパレン(製品名・ディフェリン)は若手お笑い芸人柳原可奈子ちゃんのコマーシャルでも有名な保険適応薬です。

 さあ、改良版の未来のマデリーンとヘレナを目指して(?)、レチノイン酸を使いましょ。

先ずは、巷に氾濫するビタミンA関連用語の整理整頓

 ビタミンAが、老化にどうも効くらしい‥。そんな話を近頃良く耳にする。でも、ビタミンAだ、レチノールだ、トレチノインだ‥と単語を乱発されても、頭が混乱するばかりで、何が何なんだかよ~分からん。そんな貴女に、整理整頓から!
レチノイドとは、RAR(Retinoic Acid Receptor)及びRXR(Retinoid X Receptor)と親和性を持つ化合物の総称で、ビタミンAそのものの生物活性を持つ物質の事。

 レチノール、レチナール、レチニールエステル、レチノイン酸を始め、現在約2,000種を越える誘導体が作られていま~す。

  • この内、医療現場で多用されるレチノイン酸は、生理活性はビタミンAの約50~100倍で、ビタミンA類の生理活性の本体そのもの。

  • 200502image294 右図のように、all-trans retinoic acid(トレチノイン)、9-cis retinoic acid(alitretinoin)、13-cis retinoic acid(isotretinoin)等の幾つかの立体異性体があります。レチノイン酸は、誰でも血液中に極く微量流れているものなので、抗原抗体反応を起したり、アレルギー反応を起す事はありません。

     アメリカのFDA(日本で言うなら厚生労働省のようなお役所)が、肌の若返りと小皺の治療として認可したのがレチノイン酸。でも、白人に比べて繊細で肌理の細かい私達黄色人種のお肌には、ちょっと刺激的。万人向き、言葉を替えると中庸(一億総中流! 古いな、私‥。)を尊ぶ我が日本では、認可されないのよね(だから日本では、病院で調剤したり、病院が医薬品として認可されているアメリカの製品を輸入して、処方するのが一般的)。

  • 日本ではレチノイン酸の代わりに、化粧品なんかでは、効果が殆どないに等しいとまでは言わないけど、可也劣るレチノールが良く使われますね。

  •  レチノール配合を売り物にしている某S化粧品会社の化粧品でも、その弱いレチノールですら0.0075%しか含まれていないんだから、効果は推して知るべしなのよね。その上、値段が高いのがこのレチノールの欠点。でも、藁にも縋りたいなら、含まれてないより含まれている方がマシと考え、レチノール配合の化粧品を買いましょう。
兎に角、マニアな貴女へ~日本で許可されているビタミンAのお薬達
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 日本で認められているビタミンAのお薬は、結構、限られています。

 先ずは、飲み薬。日本では、チガソンってお薬が乾癬に、べノサイドってお薬が白血病に対して認可されているだけ。海外では、乾癬や白血病の他、ニキビや老化した皮膚に対しても、数種類のお薬が認められているんですが、ねえ。それだけじゃなくて、”癌”の治療にも効果があるらしいぞ(<癌細胞に対して正しい道を説く>=レチノイン酸の分化誘導作用)って事で、今、盛んに各製薬会社が開発に凌ぎを削っているそうな。請う、御期待!

 塗り薬としては、日本で許可されているレチノイドは、①レチノール、②酢酸レチノール、③パルミチン酸レチノールと言ったレチニールエステル。化粧品としては、100gあたり25万国際単位(重量換算で約0.04%)までの使用がOK。医薬品としては、超有名なエーザイのザーネ(レチノールとして100gあたり50万国際単位)が、ガサガサお肌(角化性皮膚疾患)に認可されている位かな。まあ、これ位のレベルでは、赤くなったり、かさかさしたりと言った副作用なんて出ようにも出られない分、お薬の効果も、所謂レチノイン酸(トレチノイン)の300分の1で、ビタミンAの効果を実感!には、はっきり言って物足りない。海外では、ニキビのお薬を始め、乾癬やAIDS患者に多いカポジ肉腫なんかに対しても、FDAが認可している薬は一杯あるんですがね‥。
 まあ、皮膚科だけじゃなくて、内科でも外科でもそうなんだけど、治療の効果とそれによって生じる炎症の量は、比例するの。炎症が少ないものは、其れなりの効果しかないのよ、端的に言っちゃうと。だから、レチノール・レベルでは、治療には使えない。でも、炎症を少なくするに越したことはないから、レチノイン酸(トレチノイン)ひとつだけで効果を得ようとするんじゃなくて、当然それだと炎症は大きくなりますからね、色んな方向から少しづつアプローチして、色んな方法を組み合わせて、より少ない炎症で最大限の効果を発揮させようと、私達医者は考え、工夫する訳。つまり、手術等の外科的な手法、レーザーやピーリング等の皮膚科的な手法、ホルモン療法等の内科的な手法の組み合わせて、最大限の効果を!なんですね。分ったかな?

 では、具体的に症例別にみて行きましょうか。あ、唯、解明されている機序については併せて解説してるけど、未だ未だ謎の部分も多いのです。順次、続報を待て!状態です。

小皺の治療

短気な人は、お断り。

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 マイルドなビタミンAを長期に使って、初めて効果を実感。でも、最低半年から1年の継続使用が必要なので、短気な人には不向きかも。


短期的効果

 尤も、使い始めて1ヶ月位すると、肌に透明感が出て来て、”!”って思います。が、この時点では小皺の改善は未だ未だ。皮膚の極く浅い所に働いて、年と共に低下してしまった新陳代謝の結果である積もり積もった角質を取り除(resurfacing)いてくれたから、つるつる・すべすべ肌になっただけ。でも、確かにこれだけでも、若返って見えるのも事実。嬉しくなって、地道に2~3ヶ月使い続けると、次第に、色白(昔の人は、”色白は7難隠す”と言いました)の、化粧ノリの良い、艶やかなお肌に進化します。

長期的効果

200502image305 ここで満足せずに、半年から1年使い続けると、漸くシワを司る真皮のレベルにも変化が! お肌にぷるるんと弾力が出て、縮緬ジワが確実に減ります。そして、灰色っぽいとか黄ばんだ老化した肌が、本来の良好な血色を取り戻して、薔薇色の若々しいお肌(rosy glow)に戻ります。皮膚ではこんな事が起こってるよ~ん。まあ、一言で言うと、紫外線によってお肌がどんどん老化して行くのを阻止!し、更に嬉しい事に、貴女の傷んでしまったお肌を本来の正常なに戻してくれる修復機能も持ってま~す。

  • 表皮では、
  •  有糸分裂を促進して、表皮の角化サイクルを正常化してくれるので~す。だから、表皮は肥厚し、角質はコンパクトに! つまり、余計な贅肉に埋もれた中年おばさん体型肌から、今は亡きJ(懐かし~い! ロマンスカーに乗って、毎週のように女友達と相模原から通ったもんだ、あの頃は。ははは)のドノヴァン様のようなしなやかなパンサー肌になる-註:あくまでも、イメージです。
     更に、表皮角化細胞間や角質に、粘液性物質(ヒアルロン酸)が沈着するようになるから、ガサガサ枯葉堆積状態からおさらば!

  • 真皮乳頭層では、

  •  線維芽細胞を刺激して、新しく生まれて来た細胞同士をきっちりと結合してくれる線維(anchoring fiber)を作ってくれるから、しっかりとした骨太の基底膜になります。土台がしっかりしなきゃ、表皮もちゃんと健康に育ちませんからね。  更に、線維芽細胞は、コラーゲンやエラスチンの産生を促進()して、ヘロってない、しっかりとした厚みのある真皮に構造改革!
     そしてそして、血行も改善してくれるから、薔薇色の肌の乙女も洩れなく付いて来ます。

保湿は、基本中の基本。

 しっかり保湿はしてね。保湿は小皺の治療の基本です。復習になりますが、私達の皮膚の角質には、①バリア機能と②水分保持機能があります。正常な皮膚の機能維持には、この角層の水分が如何に保持されているかが大事なの。特に気温が低く乾燥した関東の冬は、ドライスキンの元凶。そこに、後でも述べますが、ビタミンAによるレチノール反応が重なると、完全に砂漠。カラッカラの罅割れ大地になってしまいます。これは良くないですよね。しっかり保湿をして、なるべく小皺促進要素を排除せねば! この点、”RENOVA(レノバ)”は優秀です。ニキビをターゲットにしたレチン-A等の製品に比べ、抗老化つまり乾燥し易い年配層をターゲットにした製品なので、保湿力が売りなんですね。ありがたや、ありがたや。

ビタミンAの使い方読本

 さて、本題。治療のポイントは、始めはレチノール反応(反応性の皮膚炎)が出ます(使い始めて2週間位がピークかも)が、ビックリしないで使い続ける事。反応が超!が付くほど酷い場合は、塗る量や回数を減らす事もあるけど、基本はそれでも止めない。あ、ひょっとして、顔洗って、未だ水気が残った状態で使ってない? 塗って直ぐに、化粧水とか水気の物を付けてるとか? 特に”RENOVA(レノバ)”みたいにちょっと強めのビタミンAは、水気があると(まあ、濡れた状態って言うのかな)、すっと皮膚に浸透しちゃって、反応を強く起し易い場合があるの。顔を洗ったら、良く乾かしてから塗り、更に時間を置いてから化粧水!みたいな塗り方をするだけでも、結構違うのよね。超が付く”レチノール反応”っ子は試してみて。

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 でも、騙し騙しでも使ってるうちに、赤味やヒリヒリ感、乾燥感は、自然になくなってしまいます。でも、特に”RENOVA(レノバ)”みたいに、どちらかと言うとマイルドに分類されるビタミンAでも、ずっと使い続けると多少効きが落ちゃうのよね。偶に、プチ断食じゃないけれど、喝を入れるって言うのも○。例えば、3ヶ月毎日使ったら、1ヶ月お休みして、又塗り始めるみたいな。まあ、老化ってもんは、年を取れば取っただけ進行するものなので、死ぬまで上手くビタミンAを使いこなすだけで、永遠にピチピチ・ギャルは難しいですが、死ぬまで(年より)若々しい肌を保てます。

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他の治療法との併用

 尤も、ビタミンAと言えども万能薬ではありませんから、深くなってしまったシワにはコラーゲンやヒアルロン酸の注入を、笑いジワにはボトックス注射(美容通信2003年10月号)を、大きく垂れちゃってる場合はフェイスリフトを併せて行いましょう。勿論、他の小皺に効くフォトフェイシャルやプラセンタの注射(美白だけじゃなくて、保湿にも効くぞ!)、イオン導入等も併せると効果は絶大です。

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 まあ、でも、小ジワだけで悩んでいるおば様族は、世には殆ど皆無で、老化にシミ、くすみは付き物。特に、私達黄色人種は、お肌が黄色く見える位だから、当然メラニンが多い=有害な紫外線から皮膚を守ってくれているので、皮膚癌自体の発生率も低く、寧ろシミなんかの色素沈着の方が気になるのね。ところが、元々、老化に対するお薬としてアメリカで認可された”RENOVA(レノバ)”のようなレチノイン酸配合の商品は、白人用。彼女達の一大関心事であるシワ(真皮の変性)や皮膚の悪性化(皮膚癌)なんです。つまり、黄色い私達アジア人とはちょっと”老化”の視点がズレてるのね。だから、若返ろうとしてレチノイン酸だけを塗っても、物足りなく感じてしまうの。黄色人種には、黄色人種のレシピってもんがあります。レチノイン酸に、AHAと言ったケミカルピーリング剤や漂白剤を、お肌全体に塗る。白人は漂白剤を気になるスポットだけに塗るけど、私達黄色人種は全体に塗る。まあ、次のの”シミ”の内容とも被っちゃうけど、一緒に顔全体に塗ると、メラニンがムラムラに沈着しなくなるし、そもそも沈着し難くなるんだ。こう言った使い方は、私達美容外科業界では凄く一般的な手法だけど、それを分かり易く理論的に構築したのが、あのオバジ先生(Obagi skin health restoration)。そして、それをお手軽パックとして化粧品一式セットで揃えちゃったのが、”オバジのニューダームシステム”です。美容通信2004年12月号に、詳しくオバジ理論載ってます。

シミの治療

何で、シミに効くんだ?

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 メラノサイトのメラニン産生抑制作用は、ないと断言して良いでしょう‥。レチノイン酸のピーリング効果、角質剥離作用がシミの治療の本体とも思えないし‥、どうも、表皮角化細胞の増進促進及びそれに伴う表皮のターンオーバーが起こる事によって、脱色素効果が得られているんじゃないかと考えられています。つまり、角質がボサボサ剥げ落ちる=シミの改善の本質なのです! ボサボサ無くして、レチノイン酸で白くはならないのだ! 

 故に、どんなに”レチノール反応”が強くても、基本的(!)には炎症を抑える為にステロイドは使いません。ステロイドは、レチノイン酸の効果の本体である角化細胞増殖促進効果を妨げて、目的のメラニン排出効果を著しく損なうものだから。患者さんには、ひたすら、耐えてもらいます‥。が、あまりにも炎症が酷く、もう何日も痛くて眠れない!なんて泣きが入ってしまった場合には、使わざる得ないのも事実。‥出来れば、一時的にレチノイン酸の使用をお休みする位に止めておきたいんだよな‥、ぶつぶつ(愚痴)。

 そして、この機序こそ、漂白剤の併用なくして、レチノイン酸だけでシミは薄くはならない理由でもあります。え? 分からない? だって、ターンオーバーを上げるって事は、メラニンを外に排出するだけじゃなくて、その分、新しくどんどんメラニンの供給を受けてしまうって事でもあるんです。先にも述べた通り、レチノイン酸にはメラニンの流入を阻止出来ません。阻止するのは、漂白剤のお仕事です。Wで使って、メラニンの少ない新しい表皮にチェンジしちゃいましょ。

治療の基本計に、症例毎にプラスorマイナスの匙加減。

 他の漂白剤と上手く使い合わせて、シミ等のメラニン色素性疾患を効率良くノック・アウト! でも、色の薄い物は苦手だニャン。

 基本的には、前述の小皺の治療と同じですが、シミの部分だけはちょっと強めにレチノイン酸を投与して、治療に伴う色素沈着を予防する為に、広範囲に漂白剤を併用がお約束です。それに、状況に合わせて、足したり引いたり‥で、微調整。

万能薬ではない。

 スッキリしないお天気マーク付けられちゃったのシミの方、ごめんなさい。

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真皮性のメラニン色素沈着

 ”何で、シミに効くんだ?”でも書きましたが、レチノイン酸がお肌の外に摘み出せるのは表皮のメラニンだけ。基底膜より深い所に潜んでいる、謂わば真皮内のメラニンに対しては、殆どと言うか全く無力。レーザー等の他力も借りる必要があります。レチノイン酸単独では、治りません。
 例)

  • 真皮までメラニンが染み込んじゃった肝斑
  • ヴィンテージ級のアトピー性皮膚炎後色素沈着
  • 太田母斑
  •   真皮中層~深層のメラノサイトーシス。治療はレーザーが基本ですが、1回のレーザーで治る訳ではありません。何回かレーザーを照射しなければならないんです。レーザー治療に炎症後の色素沈着は付き物ですから、これを防ぐ意味で、レチノイン酸は必要です。基底層の炎症後色素沈着があると、次回からのレーザー治療の足枷になりますしね。
  • 遅発性太田母斑
  •    真皮浅層~中層のメラノサイトーシス。これ又、レーザーが基本と言われますが、可也の確率で炎症性色素沈着を来たすので、業界の困ったチャンとして有名。実は、元々基底層に高度のメラニン沈着がある為に、レーザーの泥沼化が勃発しているとの説があり、予めレチノイン酸で仕込みをするのが効果的とされています。勿論、レーザー後にもお使い下さい。 

角化の強い病変

 角質が厚いと、如何にレチノイン酸と言えども、お肌の中に中々到達出来ない! ここでも、レーザーは強い味方です。レチノイン酸単独では、治りません。

 例:脂漏性角化症(所謂、老人性のイボ)

これには、効く!

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 グリコール酸等のケミカルピーリングも、外用剤の補助的に行われています。レチノイン酸だけとか、漂白剤だけと言った夫々の単独使用より、漂白効果が高いんですね。でも、左図覚えている方も多いかなとは思うけど、シミは一種類じゃないんだよね。複雑!

老人性色素班

 効果がある! 特に、お顔は、得意中の得意です。でも、もりもりって盛り上がっている(過角化を伴う)タイプは苦手なので、予め炭酸ガスレーザーで仕込みをしておかないと、良い結果は出ません。   

炎症後色素沈着

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 アトピーさんや虫刺され、火傷、手術後etc.何かで強い炎症を伴ってしまって、ステロイドをどうしても治療で用いざる得ないような場合って、後から茶色く色が残っちゃ(=炎症後色素沈着:詳しくは、美容通信2003年6月号メラニンのお話の所を読んでね! でも、その機序については、未だ未だ不明の点は多いけどね)いますよね。元々、黄色い肌の私達は、白人に比べ色が付き易いの。これにも凄く良く効く! 普通は2~6ヶ月で、(特に日焼け何かしなければ)放っておいても自然に治っちゃう場合が多いんだけど、半年経っても未だ黒いぞ!なんて時は、お助けマンのレチノイン酸の登場です。勿論、一日でも早くって人にも、最適です。

 治療は、炎症性の色素沈着だから、炎症を激しく起こすのはタブー。同じシミでも、前述の老人性色素斑の治療より、シワの治療に近いマイルド系で、赤みを抑えつつが原則です。もし、ケミカルピーリングを加えるとしても、弱め弱めで行きますね。色素沈着が消えたら、漂白剤のみで維持します。
 特に、繰り返すけど、薄い色素沈着は苦手! つまり、あまりにも薄い色素沈着だと、一般にシミに対して行うレチノイン酸の積極的な攻撃は寧ろ逆効果になっちゃいます。同じビタミンAでも、”レノバ”よりずっとマイルドな”カイネレース”をチョイスして、じわ~っとじっくり気長に行きましょ。急がば回れです。

 唯、アトピーさんに限って言えば、慢性の炎症がもの凄く長く続いて、真皮までメラニンが染み込んでしまっているような症例だと、結果は残念ながら劣ります。

肝斑

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 前述の炎症後色素沈着のお仲間と考えられています。が、肝斑と一般の炎症性色素沈着との大きな違いは、原因(女性ホルモンの影響:肝斑の為に、女止める訳にはいきません!)を残したまま、つまり炎症が続いている状態で、治療をしなければならない事。つまりは、肝斑とは、積極的に攻めれば攻めただけ、炎症が相乗効果的に累積して、却って黒くなっちゃうへそ曲がりのシミなんです。

 炎症を宥めてくれる飲み薬が基本ですが、これにマイルド系のレチノイン酸で気長~に(!)アプローチ。3ヶ月から半年位すると、何か良さげかも‥と思い始め、1年位で結構目立たなくなる物が多いです、はい。でも、再発性があるので、紫外線対策(美容通信2003年8月号 [ch0])は怠りなくね。

 が、1年経っても、2年経っても、ぱっとしない肝斑があるのも事実。これは、肝斑でも、真皮にまでメラニンが染み込んじゃった年代物なんです。治療は、浅い層のメラニンをレチノイン酸で先ず除去しま~す。ここまでは、普通の肝斑と一緒。違いは、真皮のメラニンをレーザーで処理するって過程をプラスする点。でも、ヴィンテージでもヌーボーでも、肝斑は肝斑。レーザー等の炎症で色素沈着し易いから、レチノイン酸での仕上げは必要。つまり、サンドウィッチ療法が望ましいと、教科書には書いてある‥が。

扁平母斑

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 効果は落ちるけど、他に有効な治療法がないからなあ、これを選んじゃう。レーザーに付き物の白ブチ&黒ブチの危険性がなく、瘢痕も残さないのが、この治療法の賢いトコロ。確かに、再発率は高いけど(腫瘍だもんな、本体は!)、色が消えても、炎症後色素沈着のようにレチノイン酸をぶちっと中止してしまうのではなくて、執拗に使います。強めに、積極的にが、合言葉。


 場所的には、他の治療でもそうなんだけど、顔が一番効果がありますね。手足は、どうしても効果が落ちます。薬の吸収や、所謂傷の治りに関係する皮膚の血行の違いが、この差を生んだのです。

ニキビの治療

 小皺と同じく、マイルドなビタミンAの投与が基本です。当院では、アメリカでニキビの治療薬として認可されている合成レチノイドで、使用感の軽い(”レノバ”はおばさん向きなので、保湿重視です)”デファレン”って塗り薬を処方しています。これに、AHA(フルーツ酸)等の浅いピーリングと併用すると、効果倍増! 更に、内服や光治療等その他の治療とも併用(詳しくは、美容通信2003年11月号を読んでね!)すると、”単独より混合治療は効果が高い”との名言もある通り、大人の頑固なニキビ肌との決別の日がより近づきます。  でも、バリバリのニキビ跡にまで進化しちゃうと‥、はっきり言って、キツイです。(別に、ゴジラ松井の事を言っている訳ではありません!)

ニキビに効くのは、こんな理由。

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 レチノイン酸は、表皮角化細胞の増殖を促してくれるのと一緒に、分化を制御して角質を剥がれ易くしてくれるんです。って事は、 毛穴(まあ出口だわなぁ)を占拠している角栓(俗に言う”コメド”って奴です)を取り除いてくれるから、皮脂腺に溜まった脂(白ニキビや黒ニキビの正体)や膿(黄ニキビの正体)が、出る! 
ちっちゃい小ニキビ群も、脂がすぐ出るようになるから、そもそも出来ない&大きく育てない。
化膿止めの塗り薬も、染み込み易くなるので、薬効倍増(!?)
脂の工場のフル稼働を抑えて、皮脂の分泌抑制しま~す。
赤くなって、汁が出て来ちゃうような痛々しいニキビって、自分の浸出液でカブレちゃって、かえって炎症が酷くなっちゃうもんなんです。この悪循環を断つ!
ニキビ菌の発育にブレーキ。

赤くなって、がさがさするだけでなく、ニキビは、一時的に悪くなる人もいる。

 レチノイン酸によるレチノール反応は、ニキビの場合にも、当然、起きます。ニキビさんの悲しいトコロは、これだけじゃなくて、ニキビは一時的に悪化します。‥少なくても1ヶ月位は‥、悪くなる‥。

 どうしても、それが耐えられない!なら、同じレチノイン酸でも、”デファレン”を選びましょう。”デファレン”なら、”!!!”と涙を流す事なく、確実に白ニキビが減ります。

他の治療の前処置

 レーザー等の深いresurfacingを行う3週間前からスタートします。

  • 角質を薄くして、ムラを無くす。
  • 肌を刺激に慣れさせる。 
  • 表皮、真皮レベルの両方で、皮膚の創傷治癒能力を事前にUPしておく。

  •  まあ、仕込みって奴です。

     レチノイン酸の可愛い所は、仕込んでからも、優秀。

  • 表皮角化細胞の分裂を促す。
  • 線維芽細胞のコラーゲン産生を促進してくれる。

  •  だから、皮膚の上がりも速くなるので~す。勿論、漂白剤の併用は必須です。
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 激しい治療には炎症が付きモノ。でも、私達”イエローモンキーズ”は、白人みたくタフな肉食人種じゃない(笑)ので、極めてお肌もデリケート。つまり、炎症後の色素沈着が起こり易いんです。だから、積極的な治療の前に仕込みとして使いましょう。黄色い肌だからって、炎症後の色素沈着を恐れて諦めていた治療も、敷居が低くなりますから。

ケロイドの治療

 未だ何でなんだか分んないけど、ケロイドにも効くらしい‥。実際、ケロイドがめきめき大きくなっちゃうのをちょっと押し戻してくれたり、理性が誘惑に負けてしまうような痒みや、あの洋服が触れた時の堪んない痛みを楽にしてくれるんです。でも、今の所、原理は勿論、どんな使い方をすると一番良いのかすら分ってません。でも、ケロイドの一般的な治療法を併用するのが、良いみたいです。具体的には、レチノイン酸をケロイドの辺縁部に、中心部にはケナコルトの注射と言った具合ですかね。

副作用

 美しい花には、棘がある。レチノイン酸にも、副作用があります。

レチノール反応

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 繰り返すようだけど、ビタミンAで其れなりの効果を得ようとすると、”レチノール反応”って、赤味やガサガサが付きもの。まあ、これが、特に、多くの色素沈着の治療に於いては、作用の本体とも言える訳で、寧ろ起こってくれる方が望ましいんです。でも、これも一種の炎症反応ですから、気を付けないと、虫刺されと一緒で、炎症性の色素沈着を来たしてしまいます。だから、当然、日焼けは厳禁だし、特に色素沈着の治療の場合には、一緒に漂白剤を併用するのが望ましいと言うか、必須なんです。じゃあ、治療として他の治療と、例えばレーザー治療の様に激しく炎症を来たしてしまうようなものと組み合わせると、もっと相乗効果で炎症が酷くなって色素沈着を来たし易くなっちゃうから、止めた方が良いんじゃない?って良く患者さんから質問されるけど、必ずしもそうじゃない。ビタミンAは、炎症後の色素沈着には凄く効果的なの。だから、相反する現象が起こっているんだ(!)って事を知りつつ、うま~くビタミンAを使ってあげなきゃね。

慣れる‥。イヤ、飽きるんだ、きっと!

  ず~とぶっ続けに仕事してりゃ、そりゃ、効率は落ちるわな。ちょっと一息ついて、仕事再開。‥仕事も、ビタミンAも、一緒です。3ヶ月に1ヶ月位は、プチ断食。身も心もリセットし~ましょ。

赤ちゃんに問題がある?

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 ビタミンAの飲み薬で問題になるのが、催奇形性。だから、うちのクリニックでは、ニキビに対して飲み薬は処方は絶対しないし、今後も処方する予定もありません(社会生活が営めない位の酷い乾癬は、話が違いますよ!)。内服中は勿論、飲むのを止めてからも、女の人で2年半、男の人でも半年は避妊を徹底する必要があるんです。でも実際問題として、ニキビの治療薬として外国では認可されているし、日本でも処方しているクリニックがあるのは事実。まあ、要は、そのクリニックの考え方の違いなんですが‥。

 じゃあ、塗り薬はどうかって言うと、投与量・吸収率等から考えると、内服薬の精々数千分の1程度。非常に、とっても、物凄く、あり得ない位、低いんです。ですから、ビタミンA先進国のアメリカでは、<レチノイン酸”外用”では催奇形性はあり得ない!>と結論付けられており、もし仮に注意するとしても<”妊娠中の女性のみ”で充分>とされています。
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*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

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来月号の予告

今年も、イヤ~な”花粉症”の季節がやって来た!
付録でダニも付いて来る(笑)。