診療内容 詳細- 毛髪関連 | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

毛髪関連

髪の毛はなぜ抜けるか

育毛とは、ひとことで言えば「メンテナンス」。 昔は最新の設備を誇った新築マンションも、50年も経てば手入れが必要になってしまいますよね。そして、メンテナンス次第で住み心地や資産価値は変わります。どんなに内装をリフォームしても新築のマンションには戻りません。土台のコンクリートも、水道管も、ガス管も、古いままです。 髪の話に戻れば、5年前や10年前の毛量には戻らない。40過ぎの中年男性の頭が、中学生や高校生のようなフサフサの髪の毛には、残念ながら戻らないのです。だからこそ、メンテナンスが必要なのです。 生理的脱毛以外に、どのような理由で髪は抜けていくのでしょうか。代表的な原因を挙げていきましょう。  

加齢によるもの

老人性疎毛症とか、加齢変化ともいいます。いわゆるアラフォーを過ぎると、頭全体のみならず体毛の密度も減り、毛自体も細く痩せていきます。 毛の成長速度もゆっくりになるので、急激にハゲるわけではありませんが、なんとなく地肌が透けて見えるようになる。さらに年齢とともに脂気まで抜けてくると、髪からはつやもなくなり老けて見えます。 マイクロスコープで頭皮の状態を観察してみましょう。健康な髪は、一つの毛穴からお互いに支え合うように、3~4本の毛が生えています。 ところが、ボリュームの減ったアラフォー世代以降の方の頭皮を観察すると、1つの毛穴から生える毛は1~2本。さらに1本1本が痩せ細っているので、当然、髪のコシが失われたと感じられるのです。 1つの毛穴から生える毛の本数が減ったり、細くなったりする原因の一つは、毛周期(ヘアサイクル)にあります。発毛から、成長期→退行期→休止期へと進み、再び新しい髪が生まれてくる仕組みになっています。 個人差はあるものの、成長のサイクルは大体5、6年。しかし、年齢を重ねると、このサイクルのうち成長期が短くなります。 十分な太さに成長する前に寿命が尽きてしまう、毛包(毛髪を発生させる器官)がどんどん小さくなってしまうのです。すると当然、太い硬毛もだんだん細く短い毛になってしまいますよね。 毛包は毛周期を繰り返す度に成長期が短くなるので、ますます細く、色素も薄い軟毛に退化してしまいます。最終的には休止期から成長期に移行しない毛包も増えて、肉眼で確認できる軟毛の数も減っていきます。そして、老人性疎毛症になってしまうわけです。 女性の場合は40歳頃から、特に閉経後は成長期が短くなります。  

男性ホルモンによるもの

男性ホルモンが原因の脱毛、いわゆる“若ハゲ”とは、①思春期以降著明に増加する男性ホルモンの影響下に ②遺伝的素因を有する一部の男性の ③全頭ではなく頭頂部から前頭部に限って ④硬毛が軟毛に転換する変化です。 女性の場合には②は除きます。 まず、前頭部~頭頂部の毛包がミニチュア化すると、太い硬毛がだんだん細く短い毛になります。これらの毛包は、老人性疎毛症と同様の過程をたどります。つまり、毛周期を繰り返すたびに成長期が短くなり、ますます小さく、色素の薄い軟毛になり、最終的には、休止期から成長期に移行しない毛包も増え、肉眼で確認出来る軟毛の数も減り、男性型脱毛の完成となります。毛包は萎縮しますが、数自体はそのまま減りません。 では、毛周期のそれぞれの段階ではどんなことが起こっているのでしょう。 まず成長期です。成長期の毛は、毎日0.3~0.4mm伸び続けます。成長期のサイクルは大体5、6年と前述したものの、実際には3~7年と非常に個人差があります。だから、肩までしか髪を伸ばせない人もいれば、お尻の下までの超ロングヘアを作れる人までいるわけです。 次に退行期。それまで元気良く伸びていた髪の毛は、成長の終わり、ライフサイクルの終焉を迎えます。2~3週間の短い期間に成長を止めた毛は、急激に毛包部分が萎縮短縮して、死に至ります。 少しでも成長期を伸ばすことができたらいいのですが、まだそのメカニズムは不明。マウスではこの遺伝子の一部は解明されつつありますが、人間ではまだまだです。 休止期から成長期に移行する過程ではどうでしょうか。 死んでしまった毛は直ぐに抜けるわけではなく、毛包内に張り付いています。成長期に入って初めて、古い毛が新しい毛に押し出されて、抜け毛として発見されるのです。 だから、お風呂場や洗面所で束になった抜け毛を見て、心を痛める必要はありません。正しい反応は、「やった~! 新しい毛が生えるぞ!」ですよ。  

休止期脱毛

原因は多種多様に及びますが、大きく分けて急性と慢性があります。 それぞれの原因から見ていきましょう。
急性休止期脱毛
精神的ストレスが自律神経やホルモンバランスを乱し、血流が悪くなり、毛根に十分な酸素や養分を供給できなくなってしまいます。 ストレスがかかるのは以下のような場合ですね。
  • 高熱
  • 外科手術
  • 栄養不良
  • 大量出血
  • 出産後脱毛
  • ピル中止後
慢性休止期脱毛半年以上かけて進行し、軟毛化を伴わずに頭部全域に及ぶ疎毛(髪の毛の生え具合がまばらになること)として出現します。下記の原因が考えられますが、実は、明確な原因もなく、10年以上かけて頭髪が薄くなっていく場合もあります。●鉄欠乏性貧血 全ての基本。鉄と一緒にビタミンCを一緒に摂ると吸収率が向上します。 ●栄養障害 血液検査や尿検査で栄養状態を評価すると、一見健康そうでも栄養状態に問題がある人は多いですね。髪の毛を育てるために必要なビタミンやミネラルを、ちゃんと食事で摂れている人は、実はかなり珍しいのです。 特に、毛髪にとって大事な2大栄養素と呼ばれているのは、L-リジンと亜鉛。 リジンは成長に不可欠な必須アミノ酸で、体の窒素バランスを正しく保つ働きがあります。また、神経システムに直接入り込んで、免疫力を高める働きもあります。 中でも、L-リジンは、カルシウムの吸収、コラーゲンの形成(軟骨、結合組織、皮膚、爪、骨に含まれる)、骨組織の産生になくてはならない栄養素なのですが、残念ながら体内では生成出来ない必須アミノ酸なのです。ですから、食べ物やサプリメントで摂るしかないのです。 最近、このL-リジンが、薄毛、抜け毛、脱毛(男性ホルモン、アンドロゲンによる脱毛症、遺伝性の脱毛も含む)に対して効果があり、育毛効果もあることがわかってきました。さらに、増毛の友とされるミノキシジルの効果を増加させる働きがあることも判明しました。 これを受けて、アメリカでは、育毛・増毛治療の強力な助っ人として、後述の亜鉛、プロペシア、ミノキシジルと共に育毛のために大きな役割を果たしています。 亜鉛は、細胞分裂や分化に必須な栄養素。ビタミンAとタッグを組んで角化異常を改善してくれるので、薄毛、抜け毛、脱毛、枝毛などの髪の毛のトラブル解決には必須です。 特に男性にとっては、薄毛が気になる年齢と男性更年期の時期は重なるので、疲れやすい、情緒不安定などの不定愁訴にも効果があります。 他に、毛髪と関連のある栄養素は以下の通りです。 ビタミン群
    • ビタミンA
角化の正常化、フリーラジカル・スカベンジ。不足すると、脱毛しやすくなります。
    • ビタミン群
B1・B2(リボフラビン)・B6(ピリドキシン)・B12(コバラミン):蛋白質の合成には必須! 不足すると、フケが出やすくなります。単独で不足する事はないので、基本は複合ビタミンBとして摂取します。
    • ビタミンH(ビオチン)
アミノ酸の代謝には必須! 白髪も、フケも防いでくれます。不足すると、脱毛になります。
    • パンテトン
不足することはほとんどありませんが、毛髪に関わる大切な栄養素です。
    • 葉酸
蛋白質の合成、造血作用があります。
    • ナイアシン(ニコチン酸アミド)
こちらも不足することはほとんどありませんが、大切な栄養素です。
    • ビタミンC(アスコルビン酸)
血中ヒスタミン濃度の抑制、フリーラジカル・スカベンジ。
    • ビタミンE(トコフェノール)
フリーラジカル・スカベンジ、過酸化反応を停止して老化防止。不足すると、白髪になりやすくなります。 ミネラル
鉄の吸収を助ける、造血作用。不足すると、毛が縮れる、白髪になります。
    • マグネシウム
酵素の代謝を活性化。
    • リン
食品添加物、加工食品に使われているので、不足はありえない。摂り過ぎると、骨が脆くなります。
    • カリウム
pH、浸透圧の維持。
    • セレン
抗酸化作用による老化防止。 ビタミンもミネラルもそうなのですが、多ければよいというものではなくて、あくまでもバランスが大事。必要な物を必要な分だけ摂取する、それが栄養療法の基本です。 ●薬剤性
    • ビタミンA過剰
    • ミノキシジル外用薬開始初期
    • 心療内科で処方されるお薬。
全てではありませんが、中には高プロラクチン血症の副作用があるものもあります。プロラクチンには、毛成長抑制作用がある。メンタルケアで飲みつづけるうちに髪の毛がまばらになってきて、さらに落ち込む……という負の悪循環に陥ってしまう場合もあるのです。
  • 甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症
  • 肝障害・腎障害・悪性腫瘍・膠原病・梅毒
●急激な減量によるクラッシュダイエット  

頭皮自体に問題があるケース

頭皮に慢性炎症を来たす代表的な疾患には、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、尋常性乾癬、膠原病などがあります。毛包ないし毛母細胞に炎症がおよぶことで、毛髪の発育・成長に影響が出てしまいます。 感染が原因の病気としては、脂漏性皮膚炎、梅毒、ハンセン病、ウィルスによる感染症などが挙げられます。これらも炎症を引き起こし、毛包にダメージを与えます。  

薄毛・抜け毛治療のための検査

 

全身状態

栄養状態を含めた全身の状態をチェックするのは、育毛(薄毛・抜け毛治療)を始めるに当たって基本中の基本です。 特に、女性は男性と違って、一目見ただけで抜け毛の原因を同定するのが難しい場合がほとんどです。全身性の病気の表現の一つとして毛が薄くなる場合もあるので、原因となりうる病気を踏まえた問診は欠かせません。 また、甲状腺疾患(甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症)、膠原病、貧血、生理不順などを含めた一般的な病歴や家族歴は、問診では必ず聞かれます。 それに加えて、抜け毛に気づいたのはいつごろか、抜け毛が増える時期があるか、ダイエットや体調不良で急激に痩せたことがあるか、常用している薬(ピル、市販のサプリメント、健康食品も含む)の有無、家族や親戚に髪の毛が薄い人はいるかどうかも、大切なチェックポイントになります。  

ストレス検査

過度の精神的ストレスは、自律神経系、内分泌系、免疫系などに幅広く影響を及ぼします。自律神経の働きやホルモンの分泌を乱し、髪の毛にも影響があります。毛根の細胞機能を狂わせたり、免疫異常を起こさせて頭皮・毛根に炎症を生じさせてしまいます。  

頭皮の状態をチェック

マイクロスコープで、頭皮の健康状態をチェックしましょう。毛根の汚れや詰まりも一目瞭然です。  

薄毛・抜け毛治療の具体症例

脱毛・薄毛の治療にはたくさんの選択肢があるので、ここではモデルケースをとりあげて解説してみましょう。

症例1)58歳女性A子さん。

ハリも、コシも、ツヤもない。さらにボリュームもないから、髪型が全然決まらない。いわゆるびまん性(部分的でなく全体的に薄くなる)の薄毛です。

毎日のケア

●飲み薬(サプリメントを含む)
    • 漢方薬
定番の黄連解毒湯(おうれんげどくとう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)。血の巡りを良くして、体の澱みを流しましょう。
    • ビタミン剤他(サプリメント含)
そこまで食事を摂っているわけでもないのに太りやすい、中年太り状態のA子さん。脂肪も減らしたいという要望もあったため、“オーソプログラム・ダイエット”を選択しました。 単にカロリーを制限するだけでは、タンパク質やミネラル、ビタミンなどの脂肪燃焼に欠かせない栄養素も不足しがちです。また、これらの栄養素は健康な肌や髪の毛のためにも必須なのです。“オーソプログラム・ダイエット”では、糖質や脂質は制限しても、必要な栄養素はしっかり摂り入れ、体を健康な状態のまま脂肪燃焼を促進するダイエット法です。薄毛に悩む方には重要なダイエットの考え方ですね。
●ホームケア(塗り薬)
    • 塩化カルプロニウム(フロジン液)
朝晩2回、頭のマッサージをした後に、塩化カルプロニウムを塗って血流改善を図ります。
    • ミノキシジル
5%のミノキシジル(血管拡張剤、発毛効果もあるとされる。「リゲイン」などで有名)を使用。
    • ニゾラールローションのシャンプー混ぜ
ベースに地肌の乾燥があるA子さんは、ニゾラールローションをシャンプーに混ぜて週一回使用。頭皮がべたつく真夏は、毎日使っています。
    • 女性ホルモン外用薬(ル・エストロジェル)
かさかさして粉を吹いていた肌も、これでしっとり。つまり頭皮の乾燥(フケ)にも効果があるということです。

週に1回のクリニックでのベース・ケア

●スーパーライザー(近赤外線を使用して公選治療を行う治療器)
乏しくなった髪の毛と反比例して、脂肪はたっぷり。基礎代謝量と髪の毛の本数をUPする為にも、スーパーライザーを使用しています。週一のスーパーライザーは、星状神経節照射のみ。
 
●プラセンタ&ビオチン注射

月に2回のクリニックでのスペシャル・ケア

●頭皮チェック
抜け毛対策には、目に見える実感が必要です。毛穴を埋めていた皮脂や汚れの代わりに、ぱっかり開いた毛穴にお薬が染み込んでいく姿を見ると、効果を実感できるものですよ。
●スーパーライザー
月に2回は、毎週の星状神経節照射にプラスして、局所照射をします。血流を良くして、バイオ・クレンジング、メソセラピーの受け入れ態勢を整えておきます。
●バイオ・クレンジング
●液体窒素冷凍療法
●メソセラピー
●プラセンタ&ビオチン注射
 

症例2)42歳、男性Bさん。

頭皮の脂が気になる年齢、典型的な、髪の毛の薄い中高年男性です。

毎日のケア

●飲み薬(サプリメントを含む)
    • 亜鉛
亜鉛は、細胞分裂や分化に必須な栄養素。ビタミンとタグを組んで角化異常を改善してくれるので、薄毛、抜け毛、脱毛、枝毛と言った髪の毛のトラブル解決には必須です。特に男性の場合は、薄毛が気になる年齢と男性更年期の時期は重複しやすく、疲れやすい、情緒不安定などの不定愁訴にも効果があります。
  • 必須アミノ酸(L-リジン含)
  • ビタミンB群
  • ジオール
  • プロペシア
  • 禁煙パッチ
●ホームケア(塗り薬)
    • ミノキシジル
    • ニゾラールローション
ニゾラールローションは、普段はシャンプーに混ぜて使っています。が、週に1、2日はある出張の際は、ミノキシジルの代わりにニゾラールローションを併用して対処。
 

月に2回のクリニックでのスペシャル・ケア

  • 頭皮チェック
  • スーパーライザー
  • バイオ・クレンジング
  • メソセラピー
  • プラセンタ&にんにく注射
 

まとめ

髪の毛の悩みは男性だけに限りません。特に女性の場合、頭や毛髪だけにフォーカスしても薄毛・抜け毛の根本的な治療にならない場合もあります。 身体全体の状態を観察し、お一人ひとりに合った治療法を探すことが大切です。 身体の状態がわかると、症例1のように、ダイエットなど他のお悩みと合わせて治療をすることも可能になります。ちょっと薄くなってきたかなと感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。  

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