高齢者アスリートに学ぶ健康長寿の秘訣 | 旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2020年8月号

高齢者アスリートに学ぶ健康長寿の秘訣

「今更ながら、(高齢者)アスリートになりたいか?」と問われたら、HISAKOと同年代以上のシニア世代は、どう返答するでしょうか? HISAKOは、若い頃から恐ろしい程の運動音痴だったので、運動選手になろうなんてこれっぽっちも思った事がありませんでした。しかし、運動トレーニングには、神経‐筋システムの老化を阻止効果があり、「サルコペニア対策」として有効です。これに、体内時計を利用した時間栄養学を組み合わせているのが、年齢をもろともせずに活躍する、彼ら、高齢者アスリート達なんです。健康長寿の、アンチエイジングの秘訣を、参考にしない手はない!  

 高齢者スポーツの祭典「ねんりんピック」をご存知ですか? 高齢者を中心とするスポーツ、文化、健康と福祉の総合的な祭典である全国健康福祉祭の愛称です。 厚生省(現:厚生労働省)創立50周年を記念して昭和63(1988)年に開始されて以来、毎年開催されています。 長寿社会開発センターが、厚生労働省、開催地の地方自治体と共にねんりんピックを主催しています。

 まあ、何が言いたいかって言いますと、スポーツが健康寿命の延伸に果たす役割は、と~っても大きい! どこがどう良いのかを、ちょっとだけアンチエイジングの立場から解説しました。題して、<今更だけど、(高齢者)アスリートになりたい>です。

運動し過ぎると、老ける?

 「定期的な持続性運動が、加齢によるミトコンドリアの機能低下を抑制する!」のは周知の事実ではありますが、所謂”やり過ぎ”についてはどうなんでしょうか? 適度の範囲を超えた運動は、果たして悪か?

運動は、酸化ストレスを増大させる…が。

 酸化ストレスは多くの病気の切っ掛けであり、同時に増悪の要因です。ですから、予防的観点からも、酸化ストレスを抑える事はと~っても以上に重要なんです。

 酸化ストレスは、運動では勿論、その他には、煙草や紫外線、大気汚染、薬剤、心理的ストレス等でも生じます。運動をすると、全身の酸素摂取量は、安静時の10倍以上。活動筋組織に限定すると、ナント、安静時の100倍もの値になるそうです。酸素消費が嵩めば、その嬉しくない副産物の活性酸素も否が応にも増大する訳で、それらが私達の体の消去能力を上回れば、即、酸化ストレスの増大に繋がります。

 習慣的な運動で普段から鍛えている!人は、抗酸化能力は確かに高いです。が、激しい運動、まあ、それが高強度なのか、長時間なのか、はたまた両方なのかは分かりませんが、どちらにしろ、活性酸素が増加して、酸化ストレスが引き起こされるのは事実なようです。過ぎたるは猶及ばざるが如し。あくまでも”適度”な運動習慣が、抗酸化防御機能を良好に保ち、これが酸化ストレスの防止には重要なようです。

 

アスリートは、不健康な動物なのか?

 2020年の東京オリンピックは、延期で2021年に開催されるのか、幻で終わってしまうのかは、今の所、全く予想が出来ませんが、アスリートにとって最大の晴れ舞台である事は事実でしょう。多くのアスリート達は毎日血の滲む様な努力を続けており…ん? これって、HISAKOの様な運動には全くご縁がない(笑)人種から見ると、アスリートが日常的に行っている適度な運動(≒トレーニング)は、高頻度且つ超高度の酸化ストレスそのものじゃないのかぁ? 爺婆になったら、強度の酸化ストレスの挙句のロクでもない結果に陥っているんじゃないのかぁ? と不安に思ってしまいます。

Survival of the fittest: retrospective cohort study of the ... 左図を見て下さい(Br J Sports Med. 2015より引用)。近代オリンピックが始まった1896年から2010年までの、夏季・冬季オリンピックのメダリスト達(金・銀・銅)15000人を対象にしたコンホート研究によれば、一般人より長寿だったんだそうです。別の研究でも、トップアスリートは引退後も、心臓血管系の病気に罹るリスクや癌になるリスクが、一般の人よりも低いとの報告があり、その傾向は、特に持久性スポーツ(陸上競技の中長距離、クロスカントリースキー等)のアスリートに於いて顕著なんだそうです。

 その背景にどの様な要因が潜んでいるかは明らかにはされていませんが、アスリートは引退後も、一般人と比較してですが、①喫煙率が低い、②鬱病等の精神疾患の罹患率が低い、③日常的な身体活動量が多い、④経済的な面で比較的裕福、⑤トレーニングそのものと言うよりは、望ましい生活習慣を維持する/出来る人の割合が多い等が、理由として考えられています。少なくとも、現役時代のトレーニングによる酸化ストレスが原因で、その後の健康状態が悪くなる様な結果は報告されていません。

 

アスリート先生、アンチエイジングのコツを教えて下さい。

 体に降り掛かる酸化ストレスは、癌等の様々な病気のリスク要因です。確かに、運動により酸化ストレスは増大します。しかし、運動習慣がある人達は抗酸化力が向上しているので、増大してしまった酸化ストレスによる弊害を帳消しにしてくれるようです。それどころか、酸化ストレスは運動によっても増大しますが、運動しない事によっても増大!しますから、運動は適度であろうと過度であろうと、抗酸化能力の向上が期待出来る以上、◎って事になります。最近のマラソンブームを支える、「走り過ぎなんじゃない⁉」って陰口されるストイックな中高年ランナーさん、酸化ストレスによる健康被害は心配ご無用です。ご安心を!

 

マラソン(←持久性運動の代表格!)は、アンチエイジングの特効薬?

 運動は、しないよりした方が良いのは事実。しかし、だからと言って、その効果が無限大に運動量と比例して増大するはずもなく、一定の水準を持って頭打ちします。ランニングに限定した話になりますが、Leeらがまとめた報告によれば、健康長寿が期待出来るランニングも目安としては、推奨出来る1週間の上限として、①時間:≦4.5時間、②距離:≦48Km、③頻度:≦6回/週、④総負荷:≦50メッツ・時を挙げています。これ以上頑張っても、悪い事も起こらないけれど、良い事も起こらない…。この総説によると、日常的なランニングを継続する事で約3年、1時間のランニングによっては約7時間の長寿命効果があると推定されています。

 唯と言うか…当たり前の事なんですが、運動をすればするほど、生じる別のリスクもある。つまり、どういう事かって言うと、例えば、運動量が増えれば増えただけ、整形外科的な脚の故障(特に、膝関節!)が起きやすくなます。屋外で紫外線を大量に浴びれば、皮膚癌のリスクも上がります。これ等は、運動によって生じる酸化ストレスとは全く別個のお話なんですが、人生はそんなにシンプルに割り切る事は出来ません…。

運動トレーニングで、神経・筋システムの老化を阻止しよう

 年を取って、筋肉が委縮し、筋力が低下してしまう現象を、お洒落に”サルコペニア(美容通信2019年2月号)(美容通信2018年9月号)”と称しますが、実際自分の身に降りかかってしまうと、今まで当たり前に出来ていた事が出来なくなり、日常の生活の質は否が応にも落ちざる得ない…。運動トレーニングは、年齢に関わらず、身体機能の低下を抑制し、遅延させてくれるので、悪足掻きと自嘲せず、実行する価値は大いにあります。

 

サルコペニアで、何が起こっているのか?

 サイコぺニアの病因には諸説あり、決着が付いていませんが、最終的な症状は、筋肉量と筋力の低下です。

 サルコペニアの骨格筋組織では、筋線維の萎縮、筋線維数の減少、筋線維タイプグルーピングと言った特徴的な変化が現れ、これが筋肉量と筋力の低下を引き起こしていると思われます。因みに、似て非なるものに、廃用性の萎縮ってものがあります。使わなければ、萎縮する。ですから、老人に限らず、若者にも認められ、例えば、脚の骨を折ってギプスしてたら、脚の筋肉が落ちちゃったよ~ん( ;∀;)って奴が、これに相当します。この不活動に伴う筋委縮は、筋線維の萎縮は生じるものの、筋線維数には大きな変化は認められず、これがサルコペニアとの大きな違いです。運動神経側の変化が大きく関与しています。

■筋線維の萎縮

 サルコペニアによる筋線維の萎縮は、Ⅰ型線維(遅筋線維)に比較してⅡ型線維(ⅡA及びⅡB型線維:速筋線維)がより大きな影響を受けるんだそうです。因みに、速筋とは、字面が示すが如く、素早く収縮可能な筋肉で、一瞬の力(短時間で大きな力)を発揮するのに適しています。しかし、大きな力を発揮する反面、持久力(スタミナ)がなく疲れやすい筋肉でもあります。遅筋とは、ゆっくり収縮する筋肉で、強い力を発揮するには適しませんせんが、一定の力を長時間発揮する持久力があり、疲れにくい筋肉と言えます。

 運動単位の種類と特性について、先にさらっとまとめときますね。

  • S型:収縮速度は遅いが、疲労度は極めて少ないのが特徴。運動ニューロンのサイズ自体は小さく、支配筋線維はⅠ型。収縮タイプは持続型。張力は低い。
  • FR型:収縮速度はそこそこ速いにも拘らず、疲労度はそこまで酷く疲れ易いって訳でははない。運動ニューロンのサイズは中くらいで、支配筋線維はⅡA型。収縮タイプはそこそこのパワー型だし、張力もそこそこ高い。つまり、全てに於いて、速筋の割には遅筋寄りって言うのが特徴ですかね。
  • FF型:収縮速度は速い!だけに、疲労度も高い…。運動ニューロンのサイズは大きく、支配筋線維はⅡB型。収縮タイプは瞬発型で、張力も高いのが特徴。

 基本的に、運動単位の動員はサイズの原理に従っています。低強度の活動では、α運動ニューロンの細胞体が小さいS型が優先的に動員され、活動強度が高まるにつれ、F型(FR、FF型)が動員されて行きます。その為、身体活動レベルが低下する高齢者では、F型の運動単位を動員する機会が減り、これらの運動単位を構成するⅡ型線維が選択的に廃用性萎縮してしまったと考えるのが妥当なようです。

■筋線維数の減少

 運動単位の数は、60歳まではほぼ一定ですが、それ以降は急速に減少し、80歳代では50~60%の運動単位が失われます。

 運動単位の消失とは、α運動ニューロンの消失を意味します。唯、数あるα運動ニューロンのうち、どの運動ニューロンが消失してしまうかは、その細胞体の大きさで決まり、大きければ大きい程、粛清!の対象となります。つまり、FF型は最も大きなα運動ニューロンで構成されているの為、その支配を受けるⅡB型線維は真っ先に切り捨てられ(=脱神経支配)、消失してしまいます( ;∀;)。筋線維が消失した部位は、脂肪細胞や線維組織で置換されてしまうので、サルコペニアでは、筋組織そのものの減少だけでなく、筋内に含まれる脂肪や結合組織の割合が上がります。

■筋線維タイプグルーピング

 若者の筋肉では、色んなタイプの筋線維が比較的ランダムに分布しています。

 ところが、サルコペニアでは、同じタイプが、特にその傾向はⅠ型に顕著なんですが、群れをなして存在(筋線維タイプグルーピング)しています。何故こんな現象が起きてしまうかと申しますと、早々と脱神経支配を受けたⅡ型線維は、飼い主がいなくなった俄か野良猫みたいな存在なので、容易に、新しい飼い主に餌付けされ、飼い馴らされてしまいます。つまり、近隣に残存しているⅠ型線維を支配する運動神経から、sprouting(神経終末や、ランビエ絞輪からの神経軸索の分枝と進展)を介して、再支配されてしまうんです。拾われた猫が、早々に!その家の猫として馴染んでしまうのは、猫界では良くあり過ぎるお話で、犬と違って現金だとかの誹りも免れませんが、筋線維も猫みたいな性格(笑)なので、その特性もⅠ型線維と殆ど同化してしまいます。これが、グルーピング現象の真相です。

 しかし、新たな拾い主が年を取って、猫の世話まで手が回らない状況に陥ると、猫は再び野良猫に戻らざる得ません。筋線維も同じで、sprouting能力が低下し、脱支配が再支配の進行速度を上回るようになると、筋線維は常に脱神経支配された無法地帯に逆戻りし、何れ自滅の道を辿り、消失→筋線維数の減少へと繋がります。つまり、地域の野良猫は餓死。駆逐?自然淘汰かな?される…。

 

運動トレーニングすると、神経・筋システムにも良い事が起こる!

 近年、高齢者アスリートを対象にした研究が盛んになって来ています。

 Powerらは、走運動トレーニング(60km/週)を30年以上継続している60~70歳代の高齢者アスリートに対する研究を行っていますが、それによれば、高齢者アスリートの下肢の前脛骨筋の運動単位数は、同世代の運動とは無縁の単なる≒フツーの高齢者と比較して有意に多かっただけでなく、若者と比べても全く遜色がなかったそうです。つまり、継続的な運動トレーニングを行うと、加齢による運動単位の減少にどうやら歯止めが掛かりそうです。それどころか、フツーの高齢者では当たり前のように認められていた、jitterやjiggleと言う様な、異常とみなされる筋電図上の異常波形の出現が少なく、運動トレーニングは運動単位の量的な維持だけでなく、神経筋伝達能の機能維持にも関与しているようです。

 ところが、走るのにあまり関係がない腕の上腕二頭筋では、高齢者アスリートと若者の運動単位数には歴然たる差があり、高齢者アスリートもフツーの高齢者と大差ない単位数に激減していたそうです。つまり、、神経・筋システムに対する運動トレーニングのヘルスベネフィットは、使った筋肉だけの局所的な恩恵に過ぎないって事です。

 未だ、どんな運動トレーニングが一番お得なのかは結論が出ていませんが、比較的短時間に強い負荷を掛けてトレーニングするより、中等度くらいの持久性のトレーニングの方が、アンチエイジング的観点からは適しているようです。

 

寄る年波で、神経筋シナプスの構造は老化する。

 神経筋シナプスとは、運動ニューロンと骨格筋線維の繋ぎ目で、運動神経終末、シナプス間隙及び筋形質膜より構成されています。

 動物実験では、加齢による神経筋シナプスの構造変化が認められていて、前述のプレシナプス側の運動神経のsproutingも、その一つに挙げられます。他にも、通常なら、運動ニューロンからの刺激が神経終末にまで到達すると、”アクティブゾーン”と呼ばれる領域で、シナプス小胞が融合し、中に溜め込んでいるアセチルコリン(ACh)(←神経伝達物質)を、シナプス間隙に大量放出するもんなんですが、加齢により”アクティブゾーン”の構成蛋白質(Bassoon)の発現レベルが低下すると、円滑に事が運ばなくなります。加えて、ポストシナプス側でも、通常ならACh受容体がぎちぎちに密集(凝集)して待ち構えているものが、加齢により激しい断片化を呈しており、受け入れ態勢に難あり!になっています。

 加齢による筋委縮や筋力低下等の症状をはっきりと自覚する前に、神経筋シナプスでは、これ等の構造変化が既に起こっています。まあ、症状は、構造変化の結果、現れるものですから、考えてみれば当たり前なんですが(笑)。サルコペニアの攻略には、この神経筋シナプス構造の劣化をどう防ぐかが、重要な鍵となりそうです。

 

運動トレーニングで、神経筋シナプスの構造を若返らせよう!

 神経筋シナプスは、凝り固まった石頭なんかではありません。運動トレーニングをするかしないかで、容易に変容する、フレキシブル構造なんです。

 実験動物レベルのお話ではありますが、お年寄りマウスに1ヶ月間の自発!走トレーニングを課すだけで、筋の脱神経支配やACh受容体凝集の断片化etc.と加齢変化を起こしていた筋神経シナプス構造が、若返ったんだそうです。唯、走るのに使う脚の筋肉限定のお話で、走るのには関係が全くない訳じゃないけど、あんま関係ない首の筋肉なんかでは、全く若返り効果は認められなかったそうです。つまり、運動トレーニングの効果は限局的なんです。

 また、加齢によって低下したアクティブゾーンのBasson蛋白質の発現レベルが、2ヶ月間の等尺性筋収縮トレーニング(アイソメトリクス)で回復したって報告もあります。アイソメトリクスとは、「なんちゃっての空気(エアー)椅子」を思い浮かべていただければ良いかなと思います。壁を背中にして、あたかも椅子に座ったように股関節・膝関節を90度に曲げてキープするのが空気(エアー)椅子ですが、お尻や太ももの筋肉は身体を支える為に力を発揮していますが、筋肉の長さは変わらない(=等尺)。これが、等尺性筋収縮トレーニングです。この様なレジスタンストレーニングでも、ヘルスベネフィットは得られるようです。

 近年、骨格筋は、マイオカインと呼ばれる分泌因子を産生する内分泌器官としての機能が、注目される様になって来ました。特に、運動ニューロンに対して、survival効果を有するとされるBDNFやGDNFと言った神経栄養因子は、運動すると、筋での発現レベルが上昇するようです。これ等の神経栄養因子が、神経筋シナプスの構造維持に対してプラスに働く事で、運動単位の量的及び機能的維持に関与しているのかも知れません。

時間栄養学から考える、アンチエイジング

 時間栄養学については、以前も特集(美容通信2020年5月号をしていますので参考にしていただきたいのですが、体内時計(美容通信2019年10月号)って観点から、「何を?」だけじゃなく、「いつ?」を加味した一歩進んだ栄養学です。

朝食で、体内時計をリセットする

 私達の体内時計は、24.2~24.5時間位で回っており、地球の自転24時間よりもちっとばかり長くなっています。その為、毎日、この差額の時間を調整する必要があるのですが、この時刻合わせをしてくれるのが朝食です。つまり、長時間の絶食後に食べる食事(≒朝食)は、末梢時計の時刻決定因子として働いており、摂取時刻=活動期の開始時間との認識なんです。朝食による末梢時計のリセットには、1つの栄養素だけでなく、蛋白質(アミノ酸)と炭水化物(糖質)を組み合わせる必要があるとされています。インスリンが分泌されるような食事が、より体内時計をリセットしてくれるようです。

 夕食が21時以降になりがちな人は、17~18時に軽食を予めプチ晩ご飯として食べおきましょう。それにより、21時以降の夜遅い時間に食べざる得ない本チャンの晩御飯、多くは接待ご飯の事だったりしますが…、食べ過ぎやドカ喰いによる血糖値の急激な上昇を避ける事が出来ます。体内時計のリセット効果は、1日の中で一番長い絶食後に最初に食べる食事がキーポイントとなります。ですから、晩ご飯があまりにも遅くなり過ぎて、晩ご飯-朝ご飯の間より、昼ご飯-晩ご飯の時間が空いてしまうと、体内時計のリセットどころか大混乱!に陥ってしまいます。せめて、昼ご飯-晩ご飯の時間が長く開いてしまいそうな時は、晩ご飯を分割して、空腹時間の調整を図る事が肝要と思われます。

 

朝食の効果

 朝食を食べないと、ロクな事が起こりません。インスリンの抵抗性を引き起こし、Ⅱ型糖尿病のリスク、又、肥満のリスクを増加させたり、体重増加に繋がります。日本人を対象にした調査によっても、朝ご飯抜きで、その分夜遅い晩ご飯を食べている人達は、肥満、メタボリックシンドローム、蛋白尿(腎機能低下)のリスクが高い事が分かっています。特に注目すべきは、body mass index(BMI)が増えるに従って、晩ご飯を食べるのが遅い人達の割合が増える!んです。つまり、デブ度が増すって事なんです。

 もう一つ大事な事なんですが、そりゃあ、何も食べないより食べた方がマシではありますが、おにぎり一個、食パン一枚だけの朝ご飯は如何なものかと…。何を食べるか? バランスの良い朝ご飯を規則正しく食べるのは、王道中の王道です。

 

食べる順序と血糖値

 食べる順番も大事です。

 野菜を始めとするグリセミックインデックス(glycemic index : GI値)(美容通信2011年4月号)の低いものや、食物繊維を多く含む物から食べる。これは、血糖値の急激な上昇(食後高血糖、血糖値スパイク)と、その後に起こる低血糖を防いでくれます。つまり、同じ物を食べるのでも、コース料理と一緒で、ご飯やパン、麺類等の炭水化物の摂取を最後の方に食べる事を心掛けるだけで良いんです。血糖値が一時的にもポンと高い値に上がってしまうと、①インスリンを分泌する膵臓に一気に負担が掛かり過ぎて、膵臓がパンク状態になってしまうと、当然ながら、糖尿病のリスクが高まってしまいます。それ以外にも、②動脈硬化等の原因となる活性酸素の働きが、助長してしまう。③血管の炎症や血管壁の働きを低下させる。④頸動脈の血管壁が厚くなり、動脈硬化の進展に繋がる。⑤脳卒中や心筋梗塞等の発症のリスクを高める…等々のロクでもない付録が付いて来てしまいます。年齢で仕方がないって部分は…まあ、致し方ないモノではありますが、急激な血糖値の変化≒食べ方が悪いってだけで、血管の老化が加速してしまうのは、余りにも残念過ぎる…。健康診断ではこの点は、と~っても見逃されやすい点でもあるので、要注意ですね。

 

何時、食べる?

 1日に食べる量が同じであっても、それをどう分配して食べるのか? 12週間に亘って、晩ご飯の量を減らすor朝食の量を減らす実験をしたところ、晩ご飯の食べる量を減らした(=その分、朝ご飯をいっぱい食べた!)群では、体重が大きく減少し、胴回りも細くなったんだそうです。兎に角、寝る直前に晩ご飯を食べたり、朝ご飯抜き!とかの、所謂一般的な時間にご飯を食べると、一日の平均血糖値が上昇しちゃう様ではありますが。

 量ではなく、1日の摂取カロリーを揃えた介入試験でも、朝食を多くして夕食をその分減らした方が、その反対よりも、1日の平均血糖値は低値を示し、インスリンの分泌量も低いって結果が出ています。

 血糖値のコントロールの為には、朝食をしっかり食べる事が肝要なんですね。

 

食品成分による体内時計への影響

 お食事内容も、体内時計にある程度ではありますが、影響を及ぼす事が分かっています。例えば、高脂肪食は体内時計を逆戻りさせ(夜型にする)て、体内時計のリズムを減弱させる事が分かっています。コーヒーに含まれる程度のカフェインでも、体内時計は伸長するそうです。高食塩食では、末梢の体内時計が前進する(朝型になる)事が明らかにされています。

 

朝、昼、晩の三度の食事で、夫々に摂りたい物、注意点。

  1. 朝ご飯から晩ご飯を12~14時間以内にする=晩ご飯から翌朝食まで、最低10時間の絶食時間を設ける。
  2. 朝ご飯は、起きてから2時間以内に食べる。
  3. 朝ご飯:昼ご飯:晩ご飯のエネルギー比率は、3:4:3にする。朝ご飯多めで、晩は控えめのイメージ。

■朝食

  • 蛋白質を摂る:絶食時間が長くなると、筋肉の分解が始まる! フレイル予防策の鉄板です。
  • 蛋白質+炭水化物を摂る:体内時計のリセット効果をGETする為に必須。
  • 魚肉練り製品、魚の缶詰等を摂取する:ω3脂肪酸による体内時計のリセット効果と、中性脂肪を抑える効果があります。
  • 発酵食品を摂る:チーズやヨーグルト、納豆等の発酵食品は、吸収し易い蛋白質でもります。
  • 塩分を摂る:食欲増進だけでなく、腸での栄養素の吸収が促進されます。
  • カフェインを摂る:体内時計のリセット効果を期待して。

■昼食

  • 昼食はしっかり食べる:午後からの活動で、エネルギーを消費します。
  • 食物繊維を摂る:セカンドミール効果によって、晩ご飯の血糖上昇を抑制してくれます。

■晩ご飯

 血糖値が最も上がり易いのが、この晩ご飯って存在です。それ故に、食べる順番にも配慮が必要です。

  • 高カロリーになり過ぎない:夜は休息の為、エネルギーを要しない。
  • 食べる時間が遅くなりそうな時は、夕方にプチ晩ご飯って名前の分食をする。長時間の空腹は望ましくないので、その分断の意味合いがあります。
  • 大豆イソフラボンたっぷりのお食事を食べる。骨粗鬆症予防に大切。
  • 消化に負担が掛からない様に、寝る2時間前には、食べ終わる!
  • 適量だと、リラックス効果、血糖値上昇抑制効果が期待出来るアルコールを嗜む。
  • 心疾患と夜間の血圧に
    は強い関連性が認められる以上、血圧を下げる効果がある食べ物を食べるのは◎。

 

食品と運動のタイミング

 

 なんちゃってではない、本チャンのアスリートは、日々体を極限まで追い込んでトレーニングをしています。トレーニングで消費したグリコーゲンや、疲労した筋肉を素早く回復させる為に、運動終了後30分以内に炭水化物と蛋白質を摂取したりと、何を食べるかだけでなく、何時食べるか?ってタイミングも考慮して生活しています。

 フツーの健康人では、一晩絶食した後の早朝空腹時(=体内のグリコーゲンが枯渇した状態)に運動すると、体脂肪がめりめり燃焼します。これが、巷で噂のTrain lowって考え方です。最近は、Sleep lowなる考え方、つまり、1日に食べる糖質摂取量を減らない代わりに、朝ご飯と昼ご飯でこの1日分の糖質を食べてしまって、晩ご飯では糖質を0にする方法が注目されています。この方法だと、否が応にも、翌朝、朝飯前!のトレーニングは、グリコーゲンが枯渇してる状態にならざる得ません。

 アンチエイジングの為に最高のパフォーマンスを!って日々鍛錬するアスリートなんておらず、皆、オリンピックや世界選手権、ワールドカップ等の晴れの舞台の出場切符をGETする為に、時差のある世界各地を転戦しています。それどころか、オリンピック等では放映権や暑さ対策等により、通常では考えられない時間に競技が行われたりします。平昌オリンピックでは、欧米諸国のテレビのゴールデンタイムに合わせた競技スケジュールに対応する為に、フィギュアスケートやスピードスケートの選手達は、食事のタイミングから光をコントロールする等、体内時計の調整にも心を砕いていたんだそうです。

高齢アスリート達のご飯を参考にしよう。

所謂シニア世代の運動と食事

 適正体重の範囲の体格を維持する為には、様々な食品を組み合わせた食事を摂る事が大切です。例えば、筑波大学の運動栄養学麻見研究室の提唱するパーフェクト栄養型の食事は、割に、素人の私達でも実践し易い方法なので、是非参考に!

■パーフェクト栄養型の食事

 1日3回の食事に於いて、毎食、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物(果汁100%のフルーツジュースを含む)を、食べる人の適切な体格を維持出来る様に、体重測定しながら微調整して食べる食べ方の事。主食は食事量全体の1/2程度、主菜は食事量全体の1/6(食べる人の掌大のサイズが目安!)、副菜は食事量全体の2/6が目安とされています。全体量は、個々の生活状況に併せて、適正体重が維持出来るように調整します。

 HISAKOの様に、どちらかって言うと身体活動性に乏しい一般人生活では、中々、全部を食べ切るのは難しかったりするので、主食、主菜、副菜は毎食、牛乳・乳製品、果実は1日1回間食で摂る分食形式の方が現実的。

 身体活動量の多いスポーツ選手や、年齢と共に代謝が衰えてしまったご老人!では、ビタミンやミネラル類の消耗が多くなる事がしばしばで、ビタミン類やミネラル類の不足が起こらない様に、牛乳・乳製品や果物を毎回の食事に加える事が大切です。とは言いながら、スポーツ選手ならいざ知らず、食が細ったHISAKOの親達の様な高齢者達に完食せよ!って言ったところで、土台無理なお話。胃袋には限りがある!のはど~しようもない事実。ならば、3回で食べ切ろうとは大それた考えは抱かず、食べ切れなかった物は、潔く間食に回しましょう。例えば、主食少しに、牛乳・乳製品、果物なんて内容でも、全然ありなんですから。後は、夕食から朝食までの時間は、比較的長い絶食時間でもあるので、朝ご飯は、適当なお座なり簡単ご飯ではなく、主菜をたっぷり食べて、筋蛋白質の異化が亢進しない様に心掛けるのも大事かな。

 

因みに、高!高齢アスリートのご飯

  1. 高高齢アスリートの食事量は多く、殆どの栄養素等摂取量が非アスリートよりも多い。
  2. 高高齢アスリートと言えども、非アスリートと同じ様に、年を取るにつれ、栄養素等摂取量が減少する。

 高高齢アスリートであったとしても、食事摂取量は年と共に衰えざる得ません。それでも、非アスリートよりも。食事摂取量は多く、十分な量と質の食事が、日々のトレーニングや競技活動を行う身体を支えている事が推測されます。非アスリート高齢者の調査でも、認知機能正常者や日常生活活動度が良好な人は、栄養素摂取量が高い事が報告されています。まあ、ありきたりなまとめにはなりますが、何時までも動き続ける健康な身体である為には、非アスリートであっても、良く食べて、良く動くって事でしょうか。


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

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来月号の予告

アンチエイジングの観点から、<プロバイオティクス再考>です。