乾癬|コムクロシャンプー|オテズラ | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2019年9月号

乾癬の新しい治療薬:コムクロシャンプーとオテズラ

尋常性乾癬は、痒みや関節症状の他、紅斑、鱗屑等の見た目の変化が、精神的なストレスとなる事が少なくなく、患者さんの生活の質を押し下げています。特に、頭部は、乾癬の好発部位で、患者さんの半数以上で頭部に皮疹が認められるだけでなく、最初に症状が出るのが頭!って症例が結構多いんです。治療は、ステロイドや活性型ビタミンD3等の外用療法が主体とされてはいますが…、実際問題として、髪の毛が生えているだけに、患部である地肌だけに塗るのは難しい。髪の毛に付いちゃう! 更には、シャンプーのどさくさに紛れて、地肌に爪を立てフケをこそげ取ったり、強く擦ったりすると、ケブネル現象で症状は増悪するし。…そんな悩みどころ満載の頭部の乾癬に悩む患者さんに朗報です。最近、続々と新しいお薬が発売されました。特にお勧めなのが、コムクロシャンプーとオテズラ。
コムクロシャンプーは、クロベタゾールプロピオン酸エステルを0.05%含有する、頭部の尋常性乾癬に効能・効果を有するシャンプー様外用液剤なので、塗り薬にありがちな、髪の毛にお薬が付いてしまう、あの煩わしさがありません。
オテズラは、世界初の経口PED4阻害剤で、免疫システムを正常化させ、また、炎症反応を抑える事で乾癬症状を改善するお薬です。乾癬に対する経口治療薬としては、シクロスポリン以来、約25年振りの新薬発売です。効果は高いですが、その分と~っても管理のハードルとお値段が張る生物学的製剤と、外用療法の中間に位置し、幅広い患者さんに適応があります。更に、このお薬は、とっても柔軟な指向性があり、他の治療方法、つまり、クリニックレベルでの外用や紫外線療法等の、従来の治療と組み合わせが自由自在。これこそが、オテズラが、発売直後から、臨床現場で多用されている一番の理由ともされており、一時期の、生物学的製剤に非ずんばの風潮を変えたとも言われております。

 最近熱いのが、乾癬の治療業界。一時は停滞していた感(律速段階?)が漂っていたのですが、ここに来て、俄かに新薬がメキメキと市場に投入! 今回は、特に使い勝手が良さそげな、コムクロシャンプーとオテズラにスポットを当ててみました。

頭部の尋常性乾癬

乾癬って、何?

 乾癬(美容通信2008年4月号)は、表皮細胞の増殖・分化異常、活性化T細胞を主体とする炎症細胞浸潤、及び血管増生を特徴とする炎症性角化症です。頭部や肘部、膝部、腰部を中心に、境界鮮明な白い鱗屑がぴろぴろへばり付いた、角化性紅斑が特徴的過ぎて、誰が見ても一目で「乾癬にゃん♪」と診断出来ちゃいます。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら経過する、難治性の皮膚の病気です。我が国では、乾癬の有病率は0.4~0.5%と推計されており、欧米の2~3%と比して明らかに低いものの、最近は増加傾向にあります。男女比は、2:1。発症年齢は、20~60歳と幅広く、20歳代と40~50歳代の二峰性のピークがあります。

 見た目的に、①尋常性乾癬(皮膚症状のみ)、②乾癬性関節炎(皮膚症状+関節症状)、③汎発性膿疱性乾癬(皮疹に膿疱を混在し、全身症状を伴うもの)、④急性滴状乾癬(1cm以下の小型皮疹、感染症先行するもの)、⑤乾癬性紅皮症(全身の90%以上が乾癬病変)の5つの型に分類されます。尋常性乾癬は乾癬の90%以上を占める病型ですが、そのうちの76%に頭部に皮疹が認められます。頭部の尋常性乾癬は、乾癬の好発部位と言うだけでなく、フケの問題や、人目に触れやすい露出部である等の理由から、他人が思い描いている以上に心理的な闇が深い!とも言われています。頭部の乾癬治療は、ステロイドや活性型ビタミンD3等の外用療法が主体とされてはいますが…、精神的肉体的にちょっと~可なり問題あり( ;∀;)のQOL低下例や難治例では、全身療法(シクロスポリンや生物学的製剤等)を使用せざる得ない場合もあります。

 勿論、頭部の乾癬は外的な刺激で悪化しますから、洗髪方法や、シャンプーの使用法などの正しいケアも大事ですし、炎症性疾患である以上、炎症を抑える為には、①食事とサプリメント、②腸内環境改善、③重金属デトックス、④脳機能改善を軸にアプローチの4つの戦略(美容通信2017年5月号)(美容通信2019年4月号)を、自らの生活の中で実践する必要があります。繰り返しになりますが、後述する新しいお薬達もそうですが、結局は、薬なんてもんは、どんなに偉そうな事を言ったって、土砂降りの雨の中に傘を差す行為と一緒です。(二次被害を含めてって意味ですが)、土砂崩れをそれ以上酷くしないようにはしてくれますが、破壊された道路を修復してはくれません。工事のおじさんが毎日働ける環境が整えられ、おじさん達に工事の材料(セメントetc.)とお弁当が届けられ、しっかりとした舗装道路が再建された暁には、ちょっとやそっとの雨が降った位ではびくともしません。しかし、仮設道路レベルでは、そこそこの雨でも曝されると、土砂崩れの憂き目に遭ってしまうかも知れません…。

■病因と病態

 何でこんな事態に?についてのお話は、お薬と絡めて後述もしますが、端的に言うと、フツーは、皮膚の外側を構成する表皮細胞は、約4週間の周期で生まれ変わりますが、何故か乾癬の表皮細胞は気が短く、早世と言えば聞こえが良いですが、単なる先走り? つまり、3~4日と非常に短時間の周期に陥ってしまい、成熟する暇もなく、厚い皮膚が取り残されてしまいます。先走り、つまり炎症のオマケとして、痒みや毛細血管拡張による皮膚の赤味が起こります。樹状細胞やT細胞等の免疫に関する細胞と、そこから分泌される炎症性のサイトカインが関与しているとされています。

 乾癬は、HLA-Cw6以外にも、IL23遺伝子やIL23B遺伝子等の遺伝的な背景に、感染症や生活習慣(肥満、喫煙等)、薬剤、外傷等の様々な環境因子が複雑に絡み合って発症します。

 これ等の悪化因子により、樹状細胞(形質細胞様樹状細胞、骨髄系樹状細胞)やリンパ球(Th1細胞、Th17細胞、γσT細胞等)が活性化され、その落しだね?であるサイトカインが表皮を刺激し、症状がどんどん進行します。右図を見て下さい。あ、図の補足なんですが、ヒト循環血中の樹状細胞(DC)には myeloid DC(mDC)と plasmacytoid DC(pDC)の 2 つの主要なサブセットが存在し、mDCは、Th1(美容通信2019年7月号)を誘導するmDC1と、Th2を誘導するmDC2に分けられます。

 それだけでなく、本来は炎症を抑える役割を果たすはずの制御性T細胞が、病変部では何故か活性が低下してしまっているので、なかなか消火が進ます、炎症は遷延化します。サイトカインの中心的な人物がTNFα(Tumor Necrosisi Factor alpha)、IL-17(Interleukin-17)、IL-23等が重要な役割を果たしており、これ等が後述の生物学的製剤による治療の標的のサイトカインになります。

 

頭部の乾癬

 乾癬は、体や手足に、白くて分厚い鱗屑がべったりと貼り付いている、境界鮮明な赤い病変が特徴的とされますが、頭だけに出ているタイプだと、一見、単なる頑固なフケ!に勘違いされてしまう場合も無きにしも非ず。頭は乾癬の好発部位で、患者さんの半数以上で頭部に皮疹が認められるだけでなく、最初に症状が出るのが頭!って症例が結構多いんですね。乾癬を語る上で、頭はどうしても外せない最重要エリアなんです。

■頭部乾癬特有の問題点

 頭の乾癬に悩む患者さんに、「何が嫌?」って質問をすると、こんな答えが返って来ます。「フケ、衣服に付くフケ」が85.4%(134/157例)、「かゆみ」が72.0%(113/157例)、「赤み」が71.3%(112/157例)、「髪の見た目、髪の質感」が36.9%(58/157例)、「ヒリヒリ感、痛み」が35.7%(56/157例)、「脱毛、抜け毛」が26.8%(42/157例)。

  • 人の目が気になる部位だよね、頭って。
  • フケの所為で、好きな服が着れなかったり、美容院に行けない…。これを偉そうに表現すると、QOLの低下と言う。
  • 痒い!
  • 髪の毛が生えているので、薬を患部に塗り難い! 髪の毛に薬がベタベタ付いて…も~っ、イライラする。こりゃあ、ストレス以外の何物でもないわぁ。
  • なかなか治らない=難治性なので、漫然とステロイドを塗り続けるなんて事態に陥り、結果として副作用の憂き目に遭う。

■痒み

 乾癬の痒み自体は決して強いものではないですが、痒い事はやっぱり…そこはかとなしにそこそこ痒いもんだし、掻き毟れば掻き毟った以上の災いがブーメランのように我が身に降り掛かって来るものです。頭部の乾癬は、他の部位に比して痒みを伴う事が多く、特に春から夏にかけての、陽気が良くなって世の中がルンルンになる季節に増悪する…性悪な傾向があります。

■ケブネル現象

 ケブネル現象とは、ケブネルって先生が、馬に噛まれた乾癬の患者さんの傷が治る時に、噛まれた部位に一致して乾癬の病巣が発生する事を報告したのを切欠に、一気に知れ渡った現象です。乾癬は、外的な刺激により、病変が拡大、増悪(ケブネル現象)します。しかしながら、目先のフケや痒みに惑わされ、悪い事は十分に知りながらも、シャンプーのどさくさに紛れて、地肌に爪を立てフケをこそげ取ったり、強く擦ったりと、多くの患者さんは、刹那の快楽に身を委ねてしまいます…。

 

乾癬を病院で治療する。

 治療は、①外用療法(ステロイド、活性型ビタミンD3)、②内服療法(シクロスポリン、エトレチイナート、PDE4阻害剤)、③光線療法(ナローバンドUVB(美容通信2008年4月号)、エキシマライト)、④生物学的製剤等があります。基本的に外用療法が第一選択とされ、根性が座った頑固者には、併用療法で対抗をしますが、髪の毛って邪魔者がある頭部は…、光線療法は実際問題、無理!

■外用療法

  • ステロイド外用薬

   ステロイドは、即効性のある抗炎症作用、免疫抑制作用を有するお薬。だから、とっとと症状が完全するし、痒みにも鋭い切れ味。更には、構造式をちょろっと弄れば別物!って手軽さから、様々な強さや剤型がラインナップされていて、そこからチョイスが可能だし、何と言っても安い! 後述するコムクロシャンプーは、ステロイド外用薬は外用薬でも、シャンプーってところが、ミソ。

 まあ、奇跡の鉱物と持て囃されたアスベストと比較するのもなんですが、病院で保険で普通に処方されているステロイドは、製薬会社が大量生産した合成のステロイド。女性ホルモンの時にもお話したけど、特許の関係で、これ等の処方薬のお薬は、”天然”の生物学的同一ホルモン(ヒト固有ホルモン=天然(ナチュラル)ホルモン)ではない(美容通信2010年8月号)んです。構造式が似て非なるものだから、私達の体はきちんとそれを代謝(解毒)する酵素を持ち合わせていないので、長期にベリーストロングからストロンゲストレベルを使い続ければ、そりゃあ、皮膚の萎縮だ、毛細血管の拡張だ、ニキビが出来るとか、酒さ様皮膚炎だとか、わさわさ副作用が出て当たり前の代物。…まあ、取り敢えずはそれしか使うものが無いから、態々合成と明言する事もなく、使ってるんですけど(笑)。本当は、炎症押さえとくから、その間に、自分で抑え込むだけのステロイドなりなんなりを用意しとけよ!が最大の前提なんですけどね…。対症療法ですから。

  • 活性型ビタミンD3

   活性型ビタミンD3(美容通信2013年3月号)の外用薬は、効果発現までの時間が掛かるスロースターターで、痒みをロクに抑えてはくれないし、上記のステロイド外用薬のレベルで評価すると、精々ベリーストロング。しかしながら、所謂ステロイドの様な激烈なリバウンドなんてオドロドロしい事態も起こらない上に、再燃までの時間はステロイドより稼げる! 勿論、ステロイド外用薬の様な、皮膚の萎縮や毛細血管の拡張、易感染性等の嬉しくないオマケも無し。まあ、帯に短し 襷に長しの感ですが、これが頭の乾癬のファーストチョイスの外用薬達になります。

  • ステロイドとビタミンD3の配合外用剤

   まあ、いいとこどり系(笑)とも言う。ドボペットゲルは、最近登場した、頭部乾癬に特化した優れもの。

■内服療法

  • シクロスポリン

   シクロスポリンは、商品としては、サンディミュン、ネオーラル(美容通信2016年1月号等が良く処方されるお薬です。これ等は、T細胞からのサイトカインの産生を抑制する事により、免疫抑制作用を発現します。その為、高い臨床効果と高い止痒効果が得られ、後述の生物学的製剤と比べても、安価で、又、内服薬としての利便性の高さが売り。唯、血圧の上昇や、長期使用での慢性腎障害の可能性には注意が必要ですが。

  • エトレチナート

   エトレチナートは、レチノイド(美容通信2005年2月号)(美容通信2011年4月号の一種で、天然型・合成ビタミンA、及びその誘導体で活性を持つものです。シクロスポリンや後述する生物学的製剤は、免疫を抑制する系なので、感染症や悪性腫瘍のリスクのある人には使えないんですが、その点、このエトレチナートはその心配がないので、爺婆にも使えるのが○。催奇形性があるので、男子は投与中止しても半年、女子は2年間の避妊が必要です。

  • PDE4阻害剤(アプレミラスト)

   PDE4と言う酵素を抑える事で、免疫システムを正常化させ、また、炎症反応を抑える事で乾癬症状を改善するお薬です。乾癬に対する経口治療薬としては、シクロスポリン以来、約25年振りの新薬発売です。

 このオテズラについては後ほど詳しく解説しますが、イメージとしては、効果は高いが、その分と~っても管理のハードルとお値段が張る生物学的製剤と、外用療法の中間に位置し、幅広い患者さんに適応があります。更に、このお薬は、とっても柔軟な指向性があり、他の治療方法、つまり、クリニックレベルでの外用や紫外線療法(美容通信2008年4月号)等の、従来の治療と組み合わせが自由自在なところが嬉しい。これこそが、オテズラが、発売直後から、臨床現場で多用されている一番の理由ともされており、一時期の、生物学的製剤に非ずんばの風潮を変えたとも言われております。

■生物学的製剤(注射療法)

  生物学的製剤には、TNFαを標的としたレミケード、ヒュミラの他、IL-12/23p40を標的としたステラーラ、IL-17を標的としたコセンティクス、トルツ、ルミセフ等の保険適応のあるお薬があります。①高い有効性、②血中で分解される為、肝障害、腎障害が起こらない、③血液検査等をしょっちゅう行って、チェックする煩わしさがない、④どんなお薬とも相性が良い、⑤催奇形性がない等々の多くの優れた特徴があります。それ故に、これ等は中~重症の乾癬治療に於いては、なくてはならない存在なんです。

 しかしながら、何を言えば、お値段が高い。更には、日本では日本皮膚科学会の承認した施設、つまり、それなりの基幹病院でなければ治療を受ける事が出来ないので、その簡便性には問題があります。

 

生活の襟を正す。

 乾癬は、まあ、自分ではどうにもならない遺伝的な背景があるにはありますが、感性症だとか、肥満、お薬、煙草(美容通信2008年7月号)、ストレス等の切欠(美容通信2019年4月号)ってものがあって、初めて発症しますし、これ等があると、と~っても治療に難渋してしまいます。

■食生活

 炎症性の疾患の治療に於いて、栄養素の問題は非常に大きい(美容通信2007年3月号)。特に、亜鉛やビタミンAは、角化の正常化に必須(美容通信2011年4月号)とされています。

 乾癬の患者さんで、良く問題視されるのが、肥満の問題です。メタボリックシンドロームとの関連性が指摘されてはいますが…、脂ぎった高カロリーの肉食獣から、低カロリーの魚やお野菜を中心としたヘルシー系に変えたところで、乾癬が良くなったって事例は実は少ないんです。基本的に、バランスが取れた食事であれば十分なんです。

■酒と煙草と。

 煙草について言えば、煙草を吸う人の方が乾癬を発症する人は多いし、本数と重症度は比例するのも事実。しかし、お酒について言えば…、大酒飲みは確かに症状を悪くはさせますが、所謂適量では…全く問題がありません。

■感染症

 急性滴状乾癬では、溶連菌感染がその発症に関与している事もあります。上気道炎が切欠となっている思しき症例では、一般的な乾癬治療に加えて抗生剤の併用をしますし、慢性扁桃炎なら、扁桃の摘出も考えなければなりません。

■ストレス

 精神的なストレスで乾癬は悪化しますし、寝不足でも悪化します。副腎がステロイドを合成してくれるんですから、そりゃあ、副腎を虐める(美容通信2017年5月号)ような行為をすれば、災いが降り掛かって来て当たり前です。

■外的刺激

 乾癬は、外的刺激で悪化します。ケブネル現象です。

 

コムクロシャンプー

ズバリ、コムクロシャンプーの売りは何だ?

 コムクロシャンプーは、クロベタゾールプロピオン酸エステルを0.05%含有する、頭部の尋常性乾癬に効能・効果を有するシャンプー様外用液剤です。スイスのGalderma S.A.社によって頭部の尋常性乾癬に対する局所使用を目的とした治療剤として開発され、2004年2月に米国で承認されて以来、2016年11月時点で、米国及び英国を含む世界62の国又は地域で承認されており、今や世界のスタンダード的治療薬のひとつなんです。
 尋常性乾癬の治療法としては、全身的な副作用が少なく、軽症から重症までと適応範囲が広い外用療法が基本とはされてはいますが、頭は頭だけに…、結構、難物。患者さんの現在の治療に対する満足度はと~っても低く、QOLも障害されているという報告も多々あります。頭は、薬剤の経皮吸収率が比較的高く、ステロイド外用剤による皮膚萎縮等の局所性副作用に注意が必要とされ、あんま強いステロイドは使えない癖に、髪の毛や分厚い鱗屑に阻まれると言う激しいジレンマに悩まされます。

 ここからは、コムクロシャンプーの製造販売しているマルホ株式会社の自画自賛をそのまま引用させていただきますが、「以上を踏まえ、頭部の尋常性乾癬治療の課題解決を目指し、マルホ株式会社は本剤の国内開発をGalderma S.A.社より引き継いで実施した。結果、頭部の尋常性乾癬患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験において有効性が示され、認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と判断されたことから、コムクロ®シャンプー0.05%は2017年3月に製造販売承認を取得した」んだそうです。

 使った感想ですか? 意外にイケる。確かに、同時期に発売されたドボペットゲル程には切れ味はないんですが、ゲル基材と言っても、髪の毛に余計についてしまう不快感と言うか…その後の手間を考えると、このもどかしくもジトっと浸透して、完結する。それは、毎日の日常生活の中で外用薬を考えた場合、決して以上に悪くないんじゃないかなと。まあ、患者さんの好みにも分かれるところですが(笑)。個人的には、コムクロシャンプーにもドボペットゲルにも、合成の!ステロイドが含有されてますから、あくまでも外部からの助っ人である以上、それを心して使ってね。病院で出すお薬なんて、所詮は症状を抑えるだけの対症療法でしかなく、根本を治してくれる薬ではないのだから。

■製品の特徴

  1. 通常、1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水又は湯で泡立て、洗い流すというShort contact therapyを用法とした、クロベタゾールプロピオン酸エステルを含有するシャンプー様外用液剤です。
  2. 頭部に尋常性乾癬を有する患者さんでの、投与4週後のPSSI 75の達成率は29.5%、PSSI 50の達成率は57.7%でした。(国内第Ⅲ相臨床試験)
  3. 投与4週後のPSSIスコア及びPSSIスコア減少率は、プラセボと比較して有意な差(いずれもP<0.001、反復測定分散分析)が認められました。(国内第Ⅲ相臨床試験)
  4. 投与4週後の紅斑、浸潤/肥厚及び鱗屑の重症度スコアは、プラセボと比較して有意な差(いずれもP<0.001、反復測定分散分析)が認められました。(国内第Ⅲ相臨床試験)
  5. DLQI合計スコアのカテゴリが1段階以上改善した患者さんは、60.3%(47/78例)であった。(国内第Ⅲ相臨床試験)
  6. 国内第Ⅲ相臨床試験に於ける安全性評価対象78例では、副作用は認められませんでした。(承認時)

 

使用方法

 繰り返しになりますが、コムクロシャンプーは、乾いた頭皮に使用する「シャンプー様外用液剤」。通常、1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水又は湯で泡立て、洗い流します。

 実際の使用方法は下記の通りですが、このSTEP2の放置プレーが難関で、それがドロップアウトしてしまう原因とは囁かれてはいます。しかし、薬屋さんの聞き取り調査ではありますが、「15分待つことは許容できた」が83.3%(65/78例)なので、放置プレイは多くの患者さんにとって許容範囲なんでしょう。まあ、何もしないでジリジリ待つのは苦痛でしょうが、湯船に浸かって読書三昧なら、あっという間に時間が過ぎてしまいますからね。

■STEP1 コムクロシャンプーを必要量手に取り、乾いた頭皮の患部に塗ります。

  • 広げた手のひらに、お薬を出します。それから、手のひらからお薬を取り、医師から指導された箇所に塗って下さい。以上を患部全てに塗れるまで繰り返して下さい。…つまり、直接頭の上に薬をどぼっと垂らすような横着な塗り方はするな。塗る必要もない場所に、薬が流れて付着したら困るだろう。
  • 全ての患部に塗った後、爪を立てずに、穏やかに、患部に馴染ませて下さい。ケブネル現象を起こす様な、手荒な事だけはしないで!って、意味です。
  • 塗り終わったら、手を良く洗って下さいね。

【使用量の目安】

500円玉大 直径26.5mm

おおよそ500円玉3枚分で、頭皮全体に塗ることができます。

【注意】

  • 髪が濡れたたままお薬を塗ると、お薬が垂れて目に入る可能性があります。必ず乾かしてから塗るようにして下さい。
  • 万が一、目に入ったり、瞼に付いた場合には、直ちに水で良く洗い流して下さい。

■STEP2 患部に塗ってから、15分間そのまま待ちます。

 タイマーで、キッチリ15分の放置プレーを楽しみましょう。

【注意】

  • 待つ場所は浴室の外、中どちらでも構いませんが、浴室内やサウナ部屋なんかでは、室温が高いが故に汗ばんで、お薬が汗と一緒に垂れてくる可能性も無きにしも非ず。目に入ったり、瞼に付着したりしては大変ですからね。
  • 垂れるのが嫌だからと言って、シャワーキャップ等の頭皮全体を覆うモノは、トラブルの元です。使用厳禁です。

■STEP3 お湯又は水をかけて、爪を立てずに、優しく良く泡立てます。

 

【注意】

  • 強くゴシゴシとは、決して洗わないで下さい。乾癬では、擦ったり、掻いたりする事は、症状を悪化させる大いなる要因(ケブネル現象)である事をお忘れなく!

■STEP4 流し残しのないように、頭皮は勿論、手も全身も、抜かりなく洗い流します。

 髪のお手入れの為に、追加で他のシャンプーやリンス等を使用しても構いません。コムクロシャンプーは、乾いた頭皮に使用する「シャンプー様外用液剤」であって、本質的な意味でのシャンプーではないからです。頭の洗い方については、以前、頭皮毒デトックス(美容通信2016年4月号)でも特集しましたが、乾癬だからって、特別視をするものではありません。基本は一緒です。HISAKOのクリニックでは、洗い方指南~外部委託編ではありませんが、床屋さんになる為の学校で先生をしている床屋さんを紹介してます。う~ん、床屋さんも美容院も、ちゃんと洗うことは出来ても、他人に洗い方のコツを伝授するのが上手いかどうかは、全くの別問題なので(笑)。

【注意】

  • 洗い流す際、お薬が目に入らないように注意して下さいね。

オテズラ

オテズラって、どんなお薬?

 オテズラのパンフレットから、製品特性について記載された箇所を先ずは抜粋しますね。これで、細かい事は分からなくても、何となく全体像が掴めるはず。

  • オテズラ錠は、乾癬治療に於ける世界初の経口PDE4阻害剤です。
  • オテズラ錠は、局所療法で効果不十分な尋常性乾癬の症状を改善します。
    • 投与開始2週から、皮疹の改善が認められ、投与中その効果が示されました。
    • 治療困難な部位である、頭皮や爪の症状の改善が認められました。
    • 乾癬患者さんの痒みの軽減が認められました。
  • オテズラ錠は、関節症性乾癬の関節症状を改善します。
  • オテズラ錠は、1日2回投与の経口剤です。
    • スターターパックにより、初回治療の漸増投与を行う事が出来ます。
  • 安全性

   国内臨床試験では、オテズラの全投与期間中に、安全性評価症例241例中71例(29.5%)に副作用が認められました、報告された主な副作用は、下痢11例(4.6%)、腹部不快感9例(3.7%)、鼻咽頭炎8例(3.3%)、軟便6例(2.5%)、乾癬5例(2.1%)、悪心4例(1.7%)でした(承認時)。

 

オテズラの作用機序

 cyclic AMP(cAMP)は、炎症反応の制御に関与する細胞内シグナル伝達に於いて、非常に重要なセカンドメッセンジャーとして働いています。

 ホスホジエステラーゼ(PDE)は、細胞内のcAMPを、不活性型の5’AMPに分解する酵素です。私達哺乳類では、このPDEには11のファミリーがあり、色々な組織の細胞に、それぞれ特異的なPDEであるPDE1~11が備わっています。そのうち、PDE4は、主に単球、樹状細胞等の、炎症、免疫を司る細胞に発現しています。ですから、PDE4によりcAMPが分解され、細胞内のcAMPの濃度が下がると、TNF-αやIL-23、IL-17、IFN-γ等の炎症性メディエーターの産生は促進され、反対にIL-10等の抗炎症性のメディエーターの産生は抑制される。つまり、炎症反応が亢進し、炎上祭り状態に陥ってしまいます。実際、乾癬の患者さんでは、末梢血単球のcAMP濃度が低下しています。

 オテズラ(アプレミラスト、APR)は、PDE4に狙いを定めて阻害するお薬で、細胞内のcAMP濃度を上昇させ、過剰な炎症反応を抑制してくれるお薬です。①免疫系、特に制御T細胞(regulatory T細胞;Treg)と、②表皮細胞の2つの作用点から、このお薬の作用機序を補足しときますね。

■免疫系に対する働き

 乾癬がTh17細胞性疾患である事は間違いがなさそうですが、同時に、免疫抑制系のTregにも機能不全がある事も、昔から良く知られていました。つまり、Th17細胞系の”燃えさかる”炎症系だけでなく、抑制系であるTreg系の機能不全と言う、燃えさかる火を鎮静化する消防隊=抗炎症系にも問題があり、それが猶更に、免疫反応を増強しているのが乾癬って病気です。

 上図は、naïve T細胞の分化の方向と代表的疾患を示したものです。TregはTGF-βにより分化が誘導され、Th17はTGF-βとIL-6により分化が誘導されます。つまり、乱暴な言い方いちゃうと、TGF-βの存在下では、IL-6の有無が、免疫の増強と抑制と言う正反対の分化方向を決定しています。

  •  Tregの分化制御

   左図は、Tregの分化機構を表した図です。cAMPは、PKA(protein kinase A)-CRB(cyclic AMP-responsive element binding protein)を介して、Foxp3の発現を引き起こします。CPEBがCRE(cyclic AMP responsive element)に結合しようとしても、通常の細胞ではメチル化されているので、結合が出来ません。TGF-βは、この結合が出来なくなってしまっている部分を脱メタル化して、結合を可能にする働きがあります。この反応の領域(転写調節領域)は、TSDR(Treg-sepcific dermethylation region)って名前で呼ばれています。

   右図を見て下さい。Tregは、gap junctionって経路から、cAMPをTeffに移動させます。Teffの中では、cAMPは、PKAを介してCsk(C-terminal Src-kinase)をリン酸化し、この活性化されたCskはLck(lymphocyte-specific protein tyrosine kinase)を抑制します。Lckは、Teffの細胞内では、NF-ATやNF-κBの発現を増強し、結果的にIL-2等の転写に繋がります。IL-2は、T細胞の増殖にはなくてはならない存在ですから、cAMPはTeffの機能を低下させる事になります。

   また、Tregでは、転写因子Foxp3によりIL-2自体の発現が抑制されているだけでなく、IL-2とと~っても仲の良いCD25が発現しており、こ奴が周りのIL-2を奪い取ってくれます。これが、Tregの免疫抑制作用の機序の一つでもあります。

   cAMPは、この様に全体として、Tregの分化に働くのと同時に、Teffの作用を抑えるので、免疫抑制として働きます。cAMPを特異的に分解してしまうPDE4だけを、狙いを定めて阻害するオテズラは、Tregを介して免疫抑制作用を増強させてくれるんですね。この他にも、Tregには、adenosine受容体を介するcAMP依存性抑制経路もあります。

  • Th17細胞の分化制御

 

   IL-6は、STAT3(signal transducer and activator of transcription-3)を介して、転写因子HIF-1(低酸素誘導性因子hypoxia-inducible factor-1)を誘導します。また、HIF-1は、STAT3と共に、Th17細胞、γσT17細胞、ILC3のマスター転写因子であるRORγtを誘導します。更に、HIF-1には、Foxp3をユビキチン化して、プロテアソームで破壊する働きもあります。これにより、Th17系は上昇し、Tregは低下します。「…な~んだ、IL-6だけで事が済んじゃうんじゃ~ん。TGF-βなんかいらないじゃない!」と、思うかもしれませんが、実は、RORγtの転写調節領域は、Eomes(eomesodermin)で転写の抑制が掛かっており、この解除にはTGF-βが必要なんです。つまり、TGF-βの存在下で、IL-6はTh17細胞へ分化が可能になるって寸法なんです、はい。

   更には、Foxp3がRORγtを直接抑制する作用も知られており、Foxp3の発現に必須のcAMPが、Tregの増強を介して乾癬に於ける過剰な免疫反応を抑制します。

   つまり、cAMPを上昇させるのが役務であるオテズラは、Tregを介して”過剰な”免疫反応を抑制するだけで、シクロスポリンやメトトレキサート(←日本では保険適応外!)の様にT細胞全体を抑え込む”所謂、免疫抑制剤”ではないんです。だから、オテズラを処方するにあたって、事前の共生性の病原体であるB型肝炎、C型肝炎、結核等の内因性の感染症の再発の懸念が殆どないんですね。

■表皮細胞に対する働き

 乾癬の患者さんの表皮細胞では、β-adrenergic adenylate cyclaseの反応性の低下が知られており、表皮細胞のcAMPの増加が抑制されています。cAMPには表皮細胞増殖抑制作用があるので、乾癬の患者さんの肌は、どうしたって増殖系、つまり白い鱗屑がぴろぴろとへばり付きやすいんです。オテズラはPDE4を阻害するお薬ですから、この服用により、乾癬の患者さんの表皮細胞で低下してしまっているcAMPの増殖を促し、細胞増殖を抑制、つまり、白い鱗屑が積み上がる事態を回避してくれます。

 cAMPによる細胞増殖抑制のメカニズムについては、未だ、解明が完全になされている訳ではありません。が、①CBP/p300の奪い合い(partitioning)と、②Epac-Rap経路を介する制御の2つが想定されています。

  • CBP/p300のpartitioning

   乾癬では多くの情報伝達系が活性化されていて、炎症、表皮細胞増殖、急速な角化、細胞死の抑制等の、乾癬に特徴的な現象が引き起こされています。

   *PLA2(phospholipase A2):美容通信2016年7月号 *AA(arachidonic acid):美容通信2010年6月号

   上図の如くに、押し並べてシグナルが亢進している中で、唯一の例外がadenylate cyclase(AC)系で、cAMPの上昇にブレーキが掛かっています。cAMP-responsive element binding protein(CREB)の活性に必須のCBP/p300を、他の転移因子が共有しており、それを優先する過程で、cAMP系が抑えられるからです。ですから、cAMPの上昇は、CBP/p300のpartitioningを介して、nuclear factor-κB(NF-κB)やactivator proein 1(AP-1)を抑制し、乾癬に対する治療効果を表皮レベルで発揮する事になります。

  • Epac-Rap経路を介する制御

   表皮には、protein kinase A(PKA)を介さずに、直接Epac-Rap1を介してRaf-1を抑制する経路があります。cAMPは、extracellular signal regulated kinase(ERK)の抑制を介して、細胞増殖を抑制しています。この他、乾癬では、protein kinase C(PKC)が活性化されており、これがβ adrenergic反応性の低下が引き起こすuncouplingと言う現象が知られていますが、これも同様にcAMPの低下を介する乾癬病態の形成に繋がり、逆にオテズラがcAMPの上昇を介して、治療効果を発揮する理由にもなります。

   因みに、ステロイドには、β adrenergic受容体の発現を亢進し、cAMPの作用を強める働きがあります。

オテズラの安全性

 オテズラの特徴的な副作用には、下痢、軟便、悪心があります。下痢と言っても、感染性の腸炎の様な激烈な代物ではなく、腹痛もありません。PDE4阻害薬としての宿命で、腸内の水の分泌が高まる事が原因ですが、まあ、そのうち慣れます。多くは、飲み始めて4週間位で軽快します。なので、このオテズラは、最初からど~ん!!とではなくて、ゆっくり時間を掛けて増量がお約束。だから、スターターパックなるものが存在していて、10mg1日1回投与からスタート。毎日10mgづつの増量で、6日目に漸く通常量の30mg1日2回に到達するように設計されています。

 他には、頭痛ですかね。しかし、殆どの副作用の類は、軽症から中等症レベルで、投与開始2週間以内に発現しますが、お薬をそのまま継続しているうちに…いつか回復してしまっていた。そんな感じの経過を辿ります。

 

オテズラの効果

 PDE4阻害薬として、初めて乾癬の治療舞台に上がったオテズラは、主要な海外第Ⅲ相試験(ESTEEM-1)に於いて、30mg錠1日2回の投与で、主要評価項目である16週目のPASI-75達成率が33.1%(プラセボ5.3%)の効果がありました。又、国内の後期第Ⅱ相臨床試験でも、PASI-50達成率は28.2%でした。

 「このオテズラの成績をどう評価するか?」が一番大事なお話になるんですが、最近陰りは見えてもまだまだ主流派の生物学的製剤(PASI-75の達成率が70~90%!)、或いは、少し前までは内服療法の鉄板とされていたシクロスポリン(PASI-75達成率が60~70%!!)の高用量投与と比較すると…、かなり効果って点では見劣りします。実際、事前に患者さんに、「4~6ヶ月(!)かけて徐々に効果が発揮されるお薬だからね」って、十分過ぎる位に念を押しとかないと、クレームの嵐になりかねないってお薬です。

 じゃあ、何でオテズラ?って問われると、乾癬の治療の章でも述べましたが、効果はそれほど強くないけれど、それを補って有り余るほどの利点がある。つまり、安全性が高く、長期に服用が可能。更には、生物学的製剤の様に、日本皮膚科学会の承認したそれなりの基幹病院でなくても、HISAKOのところみたいなフツーの町医者でも処方が可能で、従来の治療と色々な組み合わせが自由自在とくれば、そりゃあ、全身療法のファーストチョイスとして町医者共に選ばれて当たり前なんです(笑)

 


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。


※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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