マスクにきびと肌荒れに、そうだ!漢方薬 | 旭川皮フ形成外科クリニック マスクにきびと肌荒れに、そうだ!漢方薬旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2022年5月号

マスクにきびと肌荒れに、そうだ!漢方薬

何時終わると知れぬコロナ禍。そして、例えコロナが収束しても、多分日本のニュースタンダードとして定着するであろうマスク…。マスク美人をアップさせる様々なテクニックが今時の上位検索ワードですが、外からはクールでミステリアスな美人に見えても、マスクの中は熱帯雨林。特に、これからの季節、高温多湿の日本では、マスクによるニキビと肌荒れが急増します。秘策は、東洋医学の漢方薬にあり! 桜皮を配合した十味敗毒湯の人気の秘密を解説します。

今月は、マスクにきびと肌荒れに人気の漢方薬”十味敗毒湯(桜皮配合)”について解説します。

熱帯雨林状態のマスクの中

熱帯雨林状態のマスクの中と…マスクの外で起こっている、由々しき事態

 マスクを着用した皮膚がどの様な変化をしているのかを検討した報告があります。マスクで覆われた部位では、角質水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)が上昇し、熱帯雨林?夢の島の熱帯植物館?赤ちゃんのオムツの中? しかも、皮膚バリア機能も低下するので、炎症が惹起され、赤味スコアの上昇、皮膚のpH値も上昇してしまっていました。

 それだけではありません。マスクを着けると皮脂分泌量が上昇します。それも、マスクをしていない部位の皮脂分泌量まで上がってたんです。皮膚温が1℃上がると、皮脂分泌量は10%上昇すると言われています。マスクの着用による皮膚温の上昇が、毛包脂腺系のトラブルに直結しているんですね。

 

熱帯雨林状態のマスクの中で、にきびがニョキニョキ育成される?

 にきびの原因は色々あり、決して一筋縄ではいくような代物ではありませんが、大きなものとしては、毛穴の閉塞、皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖が挙げられます。皮脂の増加は、にきびを悪化させるだけでなく、皮膚のバリア機能の低下を招き、皮膚炎を併発している症例も多々見受けられるようになります。マスクは、にきびと皮膚炎の混在の大いなる原因になります。

 

マスクが擦れる…。

 マスクが擦れる…。マスク自体による摩擦も、肌トラブルの大いなる原因の一つです。なので、如何に擦れない様にするかって、普段のマスクの扱いも重要になります。マスクを上にずらしてペットボトルの水を飲むとか、顎マスクや鼻マスクって、何気ない行動も擦れる原因になります。マスクを外す時も、耳からきちんと外す。つまり行儀が良い=マスクによる摩擦トラブルの回避の極意でもあるんですね(笑)。

 唯、気を付けても…不織布は、お肌にとっては悩ましい素材であるもの事実。内側にお肌に優しい布を一枚かませるだけで、被害を軽減出来ます。お試しあれ!

 

皮膚のpH値が上がると、どんな被害が?

 にきび肌のpH値を調査した報告によれば、にきびとは無縁肌!の人では、皮膚の平均pH値は5.09±0.39と弱酸性なんですが、にきび肌の人では、6.35±1.30と有意に上昇していたんだとか。肌が弱酸性である事は、皮膚のバリア機能の維持にはとっても大事なんです。なので、にきび肌の人は、若干のpHの補正目的に、アルカリ石鹸よりも、どちらかって言うと酸性よりの石鹸の方が望ましいって事ですね。

漢方薬は、マスクにきびの救世主となり得るか?

 にきびの治療については、実は、日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」なるものがあります。まあ、保険治療の根幹となるもので、急性炎症期には、過酸化ベンゾイル(ベピオゲルや抗菌薬との合剤デュアック)、アダパレン(ディフェリンゲル)、抗菌外用薬を主軸とした外用治療、維持期には過酸化ベンゾイル、アダパレンを主軸とした外用治療を推奨しています。

 が、実際問題として、過酸化ベンゾイル、アダパレンを使いこなせる日本人の患者さんは、殆どいません。因幡の白兎状態で、痒い、赤い、痛い、カサカサに乾燥する。統計では、医療機関を受診したにきびの患者さんの1/3は、初診だけで脱落しているそうです。健康な厚い皮膚には、ビタミンA(美容通信2011年4月号)と亜鉛が必須です。これ等柄の栄養素が欠けているから、角質を皮膚の上に分厚く乗っけて外敵から防御している≒毛穴を閉塞→にきびになる。毛唐と今時言っては怒られますが、過酸化ベンゾイル、アダパレンは、亜鉛や鉄を豊富に摂取している肉食人種の彼らだからこそ、ビタミンAを塗っても、痒くも、赤くも、痛くも、カサカサに乾燥もしない。彼らと同等にお肉を食している黄色人種でもない限り、残念ながら、使いこなせる日本人は殆どいないんです。…確かに、毛穴を塞ぐ角質を剥ぎ取ってしまえば、にきびをにはなれないけど…、外敵から防御する為の苦肉の策として乗せていた角質を剥いでしまえば、(そもそもの角質を乗せて守らなければならなかった)薄い脆弱な皮膚が露見するだけの話。

 じゃあ、抗菌外用剤はと言うと…、確かに刺激感はありませんが、バイ菌だけが全ての原因ではないので、効果も当然それなりで、満足感が低いのが現状です。それに、耐性菌の懸念もあります。

 HISAKOのクリニックでも、過酸化ベンゾイルやアダパレン、抗菌外用薬を処方しますが、栄養療法(美容通信2007年3月号)や漢方薬等の他の治療方法を併用してがお約束かな。今まで、散々栄養療法については特集してきたので、今回は漢方薬に焦点を当ててのお話です。

 

ガイドラインに於ける漢方薬の位置付け

 ガイドラインでは、推奨度C1に荊芥連翹湯(51)や清上防風湯(58)、十味敗毒湯(6)が、推奨度C2に黄連解毒湯(15)、温清飲(57)、温経湯(106)、桂枝茯苓丸(25)が記載されています。

 漢方薬は長く飲まないと効果がないってイメージがありますが、白黒付けるには3週間もあれば十分。若干長く飲んでみないと、が正しいんですね(笑)。特に、にきび治療の様な炎症性皮膚疾患に於ける漢方薬の役割は、所謂標準治療を継続出来るように、私達の状態を整える事にあります。西洋医学的な足す(+)治療ではなく、漢方薬に求められるのは引く(-)治療なんです。

 

にきびの増悪因子と十味敗毒湯

 にきびの一般的な増悪因子として挙げられるのは、以下の5つ。

  1. 皮膚バリア機能の低下
  2. 皮脂分泌の過剰
  3. 性ホルモンのバランスの乱れ
  4. 消化管の不調
  5. ストレス過剰

■皮膚バリア機能の低下

 十味敗毒湯は、にきび以外の適応としては、湿疹や皮膚炎なら、急性でも慢性でもOK。つまり、過酸化ベンゾイル、アダパレンを単体で使用するには刺激的過ぎて…二の足を踏んでしまいそうな、色んな原因が組み合わさってにきびに至ってしまった患者さん達に、取り敢えず安心して処方出来る漢方薬です。少なくとも、過酸化ベンゾイル、アダパレンの刺激症状を軽減はしてくれます。

 左の図を見て下さい。実際的には、にきび自体に対する治療効果は、過酸化ベンゾイル単独投与例と同等の結果にも拘わらず、十味敗毒湯を併用する事で、顔の赤味スコアが有意に低下しています。

 又、他の報告によれば、マウスの背中にアダパレンを塗布した事で誘発される乾燥、紅斑、掻痒感等の症状が軽減されたそうです。他にも、アダパレンの塗布により惹起されたIL-1αの増加を抑える事で、紅斑を抑制したとの報告もあります。

■皮脂分泌の過剰

 血中アンドロゲン高値がにきびを悪化させる事は、広く知られています。アンドロゲンレベルを低下させて皮脂の過剰分泌を抑制する目的で、抗アンドロゲン作用を有する芍薬甘草湯(68)や、皮脂合成を抑制する作用がある十味敗毒湯が良く処方されます。しかしながら、芍薬甘草湯は、低カリウム血症の副作用が懸念されるので、長期の使用は出来ません。

 右の図を見て下さい。十味敗毒湯エキスは濃度依存性に、皮脂合成を抑制しており、10μg/ml、100μg/ml、1000μg/mlの添加で、有意な皮脂合成作用を示しています。

■性ホルモンのバランスの乱れ

 にきびは、「ホルモン病」って異名もあるくらいで、にきびに悩む女子の8割が生理前の悪化を訴えています。この様な月経前に増悪するタイプには、桂枝茯苓丸を始めとする駆瘀血剤が効果的です。特に、浅黒く赤みが少し紫がかっているとか、月経困難症、頑固な便秘、抗生物質が効かない(←バイ菌が原因じゃないので、当たり前!)時には、駆瘀血剤が本領発揮(⋈◍>◡<◍)。✧♡

■消化管の不調

 皮膚と胃腸は、密接な関係があります。胃腸で吸収された栄養素が、皮膚の材料になるのですから、当たり前です。早喰い。ドカ喰い。溜め喰い。そして、体内時計を乱す(美容通信2020年5月号)遅い時間の食事…。食生活の是正が第一ですが、中々捗らない不摂生人には、六君子湯(43)や半夏瀉心湯(14)を飲みながら時間を稼ぐと言う苦肉の策も。

■ストレス過剰

 ストレスは、心身の不調を引き起こし、皮膚トラブルの原因となります。ストレスで悪化するにきびには、ストレスマネジメントの第一選択とされている柴胡剤を併用すると効果があります。柴胡剤の一つである柴苓湯(114)は、嚢腫性のにきびに有効であったとの報告がありますし、更には、内因性ステロイド様作用も有しているので酒さ様皮膚炎にも有効だったとの報告もあります。

 

因みに、十味敗毒湯には、桜皮配合のものと樸樕配合の製剤がある

 ツムラとクラシエの十味敗毒湯が大きく違うのは、生薬の種類です。どちらも10種類の生薬を使っていますが、ツムラは樸樕を使用しているのに対し、クラシエは桜皮を使っています。どちらも樹皮を起源とする生薬で、強い抗酸化作用を有していますが、桜皮には皮膚線維芽細胞からのエストロゲン産生誘導作用が報告されています。マスクにきびの際の処方では、クラシエに軍配が上がるのは、プラスαの効能として、皮膚炎の創傷治癒過程を早めてくれているからかも知れません。

赤ら顔

 難渋する病態の代表格に、赤ら顔が挙げられます。尋常性痤瘡(にきび)やアトピー性皮膚炎、酒さ等の慢性炎症性疾患によるもので、切れ味を誇る西洋医学では太刀打ちが出来ないなんて事も屡々以上(笑)にあります。

 漢方薬的に赤ら顔を分類すると、5つに分けられます。

①熱感・炎症を改善する:清熱剤

②微小循環障害・毛細血管拡張を改善する:駆瘀血剤

 顔面の紅潮には、清熱剤でもある程度の改善は見込めます。が、後もう一声、二声って時には、瘀血に対するアプローチを行います。例えば、短期間、越婢加朮湯(28)等の清熱剤で粗熱を取って、赤味がある程度治まったところで、駆瘀血剤を使ったりします。

③自律神経の乱れ(ストレス)を改善する:柴胡剤

④乾燥肌を改善する:血虚の改善

 皮膚のバリア機能が低下しているので、様々なモノに過剰に反応して顔がどんどん赤くなる。いつも皮膚がカサカサして、皮脂がない袖は振れない状態に欠乏している。…アトピー性皮膚炎の患者さんに多いケースですが、その様な場合には血虚を改善する十全大補湯(48)や当帰芍薬散(23)、四物湯(71)等が良く処方されます。

⑤脂性肌を改善する:内分泌バランスの改善

 内分泌のバランスを整える目的で、皮脂分泌を抑制する芍薬甘草湯(68)や十味敗毒湯(6)を用います。


 漢方薬は、状態が悪い時は1回に2倍量なんて飲み方も、あり。但し、3週間程度の期間限定の飲み方なんですが、ね。勿論、漢方薬だけでは十分な効果を得られない事が往々にしてあります。IPLやレーザー、ケミカルピーリング、ビタミンCの外用等々の、皮膚表面からのアプローチを併用したりする場合もあります。しかし、栄養やホルモン、腸内環境等の体内からのアプローチ無くしては、良好な結果は得られません。体の中と外からのアプローチは、必須項目なんです。

十味敗毒湯を極める

 十味敗毒湯は、皮膚の化膿性疾患、湿疹・皮膚炎、蕁麻疹等の皮膚疾患に幅広く用いられる処方です。江戸時代の外科医である華岡青洲の創方で、「瘍科方筌」に収載されていますが、「万病回春」の荊防敗毒散から6種類の生薬を除き、代わりに桜皮と生姜を加えて作られたものです。浅田宗伯は、原方の羗活を独活に、桜皮を樸樕に代え、更に連翹を加える処方を好んだそうです。

 現在の医療用漢方薬では、連翹は入っておらず、羗活ではなく独活を入れています。桜皮を入れるか樸樕を入れるかは、そのメーカーの考え方によって異なりますが、両者の臨床効果の違いは実は検証はされていません。唯、桜皮には皮膚線維芽細胞からのエストロゲン産生誘導作用が報告されており、マスクにきびの際の処方では、クラシエに人気があるのは、プラスαの効能として、皮膚炎の創傷治癒過程を早めてくれているからかも知れません。

臨床応用

 以下に近年の研究結果を紹介します。

■蕁麻疹

 抗ヒスタミン薬を1ヶ月以上服用している慢性蕁麻疹(美容通信2006年4月号)患者さんを、十味敗毒湯併用群と非投与群に分け、8週間観察したランダム化比較試験が報告されています。それによれば、蕁麻疹の重症度スコアや痒み等の自覚症状について、十味敗毒湯併用群では非投与群に比べて高い改善効果が認められたそうです。


【慢性特発性蕁麻疹に対する十味敗毒湯の臨床報告 Murota H, et al.: Chin J Inter Med 2017 Aug 17. doi: 10.007/s11655-017-2950-6

・対象:2021年1月~2014年3月に大阪大学医学部付属病院の皮膚科を受診し、蕁麻疹と診断され、次の条件を満たす15歳以上で、インフォームドコンセントが得られた患者21例

  ①1ヶ月以上罹患している蕁麻疹患者

  ②経口抗ヒスタミン薬を1ヶ月以上服用している患者

  ③日本皮膚科学会の蕁麻疹ガイドラインに於いて重症度スコアが3点以上である患者

・方法:対象患者を抗ヒスタミン薬(単独)群と十味敗毒湯併用群にランダムに割り付けた。十味敗毒湯併用群は、試験開始前より服用していた抗ヒスタミン薬に、クラシエ十味敗毒湯エキス細粒6.0g(分2、朝夕食前)を8週間追加投与した。試験期間中は薬剤の変更、追加、投与量の変更を禁止した。

・評価項目:

  ①主要評価項目:8週間後の蕁麻疹の重症度スコア(日本皮膚科学会)

  ②副次評価項目:痒みに対するVAS、痒みと皮膚の状態(膨疹・紅斑)に対する「簡易質問票スコア」、Skindex-16、有害事象を試験開始時、投与4週間後及び8週間後に評価した。

・解析計画:重症度スコアは、投与前後の比較をWilcoxon signed-rank testを用いて評価した。また、抗ヒスタミン薬(単独)群との比較にはMann-Whitney U testを用いた。痒みVASと簡易質問票スコアの群間比較は、Steel-Dwass multiple comparison testを用いて評価した。Skindex-16による評価は、Bonferroni’s multiple comparison test及びSteel-Dwass multiple comparison testを用いて解析した。統計学的有意差はp<0.05とした。

  • 重症度スコアに対する十味敗毒湯の効果(主要評価項目)

 8週間後の蕁麻疹の重症度スコアは、開始時と比較し、両群共に有意に改善しました(p<0.05)。8週後の蕁麻疹の重症度スコアは、十味敗毒湯併用群に於いて、抗ヒスタミン薬(単独)群と比較して有意に低下していました(p<0.01)。

  • 自覚症状に対する十味敗毒湯の効果(副次評価項目)

 痒みのVASは、両群とも有意差はありませんでした。痒みと皮膚の状態(膨疹と紅斑)のスコアの変化量は、抗ヒスタミン薬(単独)群と比較して、十味敗毒湯併用群に於いて有意に大きくなりました(p<0.05)。

  • Skindex-16を用いたQOLに対する十味敗毒湯の効果(副次評価項目)

 Skindex-16の総スコアは、統計学的な有意差は認められなかった。

  • 安全性

 本試験中を通して、調査薬剤に関連すると考えられる有害事象は認められませんでした。

■にきび

 「尋常性痤瘡治療ガイドライン(2017)」では、炎症性皮疹に対してはC1(選択肢の一つとして推奨する)、面皰に対してはC2(十分な根拠がないので(現時点では)推奨しない)とされています。しかしながら、竹村は、尋常性痤瘡(美容通信2003年11月号)(美容通信2007年11月号)と診断された女性患者44例に、十味敗毒湯と外用抗菌剤のクリンダマイシンリン酸エステル(ダラシンTゲル)を投与したところ、赤色丘疹、白色丘疹、膿疱は2週間後より改善が認められたそうです。開放性面皰と硬結も、4週間以降に改善が認められたと報告しています。

 又、瀬川は、十味敗毒湯をにきび治療の初診時から取り入れる事で、アダパレン処方患者の脱落率、定着率を改善する事が出来たと報告しています。


【尋常性痤瘡患者に対する十味敗毒湯(桜皮配合)の臨床効果 竹村司他:西日本皮膚科76(2); 140-146, 2014

・対象:2007年10月~2011年11月に外来を受診し、尋常性痤瘡と診断された女性患者44例

・方法:十味敗毒湯(クラシエ十味敗毒湯エキス細粒)6.0gを、1日2回に分割して、食前又は食間に12週間経口服用した。

・評価項目:痤瘡の程度(紅色丘疹、白色丘疹、膿疱、開放性面皰、硬結、色素沈着、痤瘡瘢痕)は、2週間毎に4段階(0:無、1:軽度、2:中等度、3:重度)で重症度をスコア化した。全般改善度は、皮膚所見を5段階(1:著明改善、2:改善、3:やや改善、4:不変、5:悪化)、有用度は全般改善度と安全性を総合的に診断して5段階(1:極めて有用、2:有用、3:やや有用、4:有用と思われない、5:好ましくない)で評価した。

・解析計画:調査開始時と服用2週間毎の重症度スコアの比較をWilcoxon signed-rank testで、開始時から12週後までの経時的変化はFriedmantestで検定し、o<0.05を有意とした。

  • 痤瘡の改善効果

 紅色丘疹は、十味敗毒湯服用2週間後から、重症度スコアが有意(p<0.001)に低下し、調査終了時までの経時的な症状の改善(p<0.001)も認められました。

 白色丘疹、膿疱は2週後より重症度スコアの有意(p、0.05)な低下及び経時的な症状の改善(p<0.001)が認められました。

 その他、開放性面皰と硬結は4週後以降に有意差(p、0.05、Wilcoxon signed-rank test)が認められ、経時的な症状改善(p<0.05、Friedman test)も認められたが、色素沈着と痤瘡瘢痕は変化が認められなかったそうです。皮膚所見の改善度は、44例中、著明改善が30例(68.2%)、改善例4例(9.1%)で、改善以上の累積改善率は77.3%でした。

  • 安全性

 調査期間を通して、調査薬剤に起因すると思われる副作用は認められませんでした。

■掌蹠膿疱症

 三澤らは、掌蹠膿疱症(美容通信2006年5月号)患者10例に対し、既存の処方薬に加え、十味敗毒湯を4~8週間投与したところ、掌蹠膿疱症の面積、重症度指数が投与後に7例で減少したと奉告しています。


【掌蹠膿疱症の疾患活動性に対する十味敗毒湯の臨床効果 Mizawa M. et al.: Dermatol Res Pract 2016; 2016: 4060673. doi: 10.1155/2016/4060673

・対象:本研究は、掌蹠膿疱症患者(男性4例、女性6例;年齢59~77歳:平均年齢66.0歳)を対象とした。掌蹠膿疱症の診断は、経験豊富な皮膚科医が、臨床所見に従い実施した。患者は、他の合併症を有していなかった。

・方法:研究は、前向きオープントライアル試験として実施した。掌蹠膿疱症患者に、外用ステロイド薬や経口抗ヒスタミン薬等の処方に加え、4~8週間、1日2回、食事の前に十味敗毒湯(KB-6:6.0g/日)を投与しました。臨床評価は、0週、4~8週で行った。この研究は、富山大学倫理審査委員会(承認番号:25-95)によって承認された。全ての患者に対し、1975年のヘルシンキ宣言に掲げる倫理指針に従って、書面によるインフォームドコンセントを実施した。

・評価項目:掌蹠膿疱症の疾患の重症度(疾患活動性)は、掌蹠膿疱症の面積・重症度指数(PPPASI)を用いて評価した。PPPASIスコアは、面積は0~6のスケール、紅斑(E)、膿疱(I)及び落屑(D)は、0~4のスケールで評価し、次の式から算出した。PPPASIスコア=(E+I+D)×面積×0.2(右掌)+(E+I+D)×面積×0.2(左掌)+(E+I+D)×面積×0.3(右足裏)+(E+I+D)×面積×0.3(左足裏) PPPASIスコアは合計点0(疾患無し)から72(最重症の掌蹠膿疱症)の範囲となる。又、十味敗毒湯投与前後でのPPPASIスコアの変化(%)も評価した。

・解析計画:データは平均±標準偏差として示した。全ての統計解析は、対応のあるt検定を用いた。p<0.05を統計学的に有意であるとみなした。

  • 患者背景及び臨床症状の評価

 十味敗毒湯を投与した掌蹠膿疱症患者の10例中7例は、臨床症状の改善を示しました。2例は不変。1例は悪化しました。

  • PPPASIスコア

 平均PPPASIスコアは、十味敗毒湯投与前は8.34±9.00でした。十味敗毒湯投与4~8週後、平均PPPASIが有意に減少しました(5.46±7.02、p=0.01)。

  • 安全性

 試験期間中、有害事象は認められませんでした。

 

■湿疹・皮膚炎

 十味敗毒湯は、本来は化膿性の皮膚疾患が適応症とされていますが、湿疹・皮膚炎でも臨床現場では頻用されています。二宮は、「体力中等度で、化膿する丘疹に良い。小さくて散発性の化膿巣(フルンクロージス様)に奏効する。軽度の胸脇苦痛のある事もあり、アトピー性皮膚炎では痒疹、丘疹が化膿した場合に良い」と述べています。羽白らは、標準治療により加療中のアトピー性皮膚炎の患者に、十味敗毒湯を併用したところ、皮疹の3要素(紅斑・急性期の丘疹、湿潤・痂皮、慢性期の丘疹・結節・苔癬化)及び面積に対して、いずれも改善効果を示し、中でも湿潤・痂皮が最も改善したそうです。更に、皮疹改善度は、慢性期の丘疹・結節・苔癬化の比率との間に負の相関性を示した事から、慢性期の丘疹・結節・苔癬化の比率とが低いものにより効果的である事が示唆されました。


【十味敗毒湯の皮膚症状に対する作用(マウス) 今村知代ほか: 医学と薬学73(8) :1017-1024, 02016

・実験材料と方法:アダパレン塗布及び十味敗毒湯投与方法

 雄性ICRマウス(8週齢)の頸背部を除毛し、3日後に除毛による赤み、創傷、水分量の低下等の皮膚所見がない事を確認した後、処理を開始した。アダパレン若しくはブランクゲルを、夫々に100μlづつ1日1回除毛した頸背部に塗布し、無処理群には塗布処理を行わなかった。十味敗毒湯は0.5%CMC溶液を用いて調製し、300、600、1200mg/Kgになるように1日1回経口投与した。対照として等容量の0.5%CMC溶液を投与した。

・測定項目

  ①皮膚水分量及び赤み:皮膚水分量はMoisture Checker for Skinにて、皮膚の色は簡易型分光色差計NF333にて1個体につき各3カ所の平均を測定値とした。皮膚の赤みは、分光色差計にて測定し、CIE L*a*b*表皮系のa*値を赤みの指標として用いた。測定は6回目投与の22時間後に実施した。

  ②掻破行動:7回目投与の1時間後に、箱にマウスを1匹ずつ入れ、馴化の後、無人環境下で、ビデオ撮影により1時間の掻破行動を観察した。マウスが後肢を掻破開始の為に上げてから下ろすまでの一連の動作を、掻破回数の1回として計測した。

・統計解析:測定値は、平均値±標準誤差で示した。有意差検定は、2群間の差はStudent’s t-testを、多群間の差の比較にはDunnett’s testを用いた。なお、いずれの場合も危険率が5%未満(p<0.05)の場合を有意差ありと判断した。

  • 皮膚の赤みに及ぼす十味敗毒湯の影響(マウス)

 アダパレン塗布によるa*値の増加を、十味敗毒湯の投与より用量依存的に抑制し、600mg/Kg、1200mg/Kgの投与により、有意な抑制が認められました。

  • 皮膚水分量低下と掻破回数増加に及ぼす十味敗毒湯の影響(マウス)

 十味敗毒湯の投与により、アダパレン塗布による皮膚水分量の低下及び掻破回数の増加を、用量依存的に抑制し、それぞれ600mg/Kgの投与或いは1200mg/Kgの投与で有意な抑制が認められました。

 

薬理作用

■皮脂合成抑制(in vitro

 テストステロンを用いて皮脂合成を促進した、正常ハムスター皮脂腺細胞に十味敗毒湯を添加したところ、十味敗毒湯は濃度依存的に皮脂合成を抑制したそうです。


【十味敗毒湯の皮脂合成に対する作用(in vitro 藤原健志ほか: 医学と薬学73(5); 579-583, 2016

・実験材料と方法:

  ①試料調製:十味敗毒湯は、培地にて所定濃度の試料溶液を調整し、試験に用いた。

  ②皮脂腺細胞の培養:正常ハムスター皮脂腺細胞を9日間、37℃のCO2インキュベーターで培養した。9日後、培地を除去し、テストステロン含培地又はテストステロン不含培地に交換し、所定濃度の十味敗毒湯エキスを添加した。培地は1日おきに新しいものに交換し、エキス添加も同様に行い、14日間培養した。

・測定項目:皮脂合成量は、オイルレッドO染色液を用いて測定した。細胞あたりの皮脂合成量の算出は、下記の計算式で行い、コントロールを100とした時の相対値で表した。細胞あたりの皮脂合成量=皮脂合成量測定値/細胞数測定値

・統計解析:測定値は、平均±標準誤差で示した。有意差検定は、全てStudent’s t-testを用いた。なお、何れの場合も危険率が5%未満(p<0.05)の場合を有意差ありと判断した。

  • 結果

 十味敗毒湯エキスは、濃度依存的に皮脂合成を抑制しており、10μg/ml、100μg/ml及び1000μg/mlの添加で、有意な皮脂合成抑制を示しました。

■好中球抑制(マウス)

 不活性化アクネ菌を皮内注入した炎症惹起モデルに、十味敗毒湯を投与したところ、炎症指標とした皮膚の腫脹や赤味の減少、及び好中球の組織内での集積が減少した事が報告されています。


【十味敗毒湯の好中球炎症応答に対する作用(マウス) 千葉殖幹ほか: 医学と薬学73(10); 1265-1273, 2016

・実験材料と方法:皮膚炎症モデルの作製及び十味敗毒湯投与方法

 雌性HR-1マウス(8週齢)の皮内に、不活性化したアクネ菌(HPA)を140ng/15μl/匹で接種し、十味敗毒湯エキスを朝に1日1回週6回、約2週間経口投与した。対照群は等量の純水を投与した。

・測定項目:

  ①アクネ菌接種部の皮膚の赤み:分光色差計にて測定し、CIE L*a*b*表色系のa*値を赤みの指標として用いた。

  ②病変部位での好中球の集積:病変部位の皮膚薄切片を、好中球マーカーLy6g/6c抗体を用いて染色し、陰性対照に対する陽性率で示した。

・統計解析:皮膚の赤みの測定値は、平均値±標準誤差で示した。有意差検定は全てStudent’s t-testを用いた。なお、いずれの場合も危険率が5%未満(p<0.05)の場合を有意差ありと判断した。

  • 皮膚の赤みに対する影響

 非投与群と比べて、十味敗毒湯(1200mg/Kg/day)投与群で、赤みに有意な低減が認められました。

  • 組織中の好中球集積に対する影響

 アクネ菌接種部位では、好中球マーカー(Ly6g/6c)陽性細胞の集積率が上昇していたが、十味敗毒湯(1200mg/Kg/day)投与群で、有意な抑制が認められました。

■エストロゲン様作用(in vitro

 MCF-7(ヒト由来乳癌細胞株)を用いた評価系で、エストロゲン様作用が認められたそうです。

 

副作用

 使用成績調査等の副作用発現頻度を明確にする調査自体を行っていないので、発現頻度は不明ですが、甘草を含有しているので、偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、四肢の脱力等)、ミオパチー(ミオパチーは、筋肉に異常が生じる事で引き起こされる病気の総称で、障害を受けた筋肉が上手く働かなくなる為、筋力の低下や運動麻痺等の症状が現れます)等の副作用に注意する必要があります。その他の副作用としては、発疹、掻痒、蕁麻疹、胃部不快感、下痢等がみられる事があります。

 

構成生薬について

■柴胡

 Wikipediaによれば、生薬に使われるのはの部分で、ゴボウの様な細長い円錐形又は円柱形で、左図の様に、外面は淡褐色~褐色で深い皺があります。単一または分枝し、長さ10~20 cm、径0.5~1.5 cm。根頭にはの基部を付けている事があります。近年では、乱獲により絶滅危惧種に! 生薬の原料として、日本では茨城県、宮崎県、鹿児島県、熊本県を中心に、又、中国等で栽培されているそうです。

・基原植物:ミシマサイコ(三島柴胡)(セリ科)

・使用部位:根

・主な成分:サイコサポニン類 等

■甘草

 マメ科の多年草。薬用植物であり、根(一部の種類は根茎を含む)を乾燥させたものが、生薬として用いられています。文字通りの「甘い草」である甘草は、ショ糖の約150倍の甘味を有するとされるグリチルリチン酸を多く含んでおり、醤油や菓子、煙草等の甘味料としても大量に消費されています。

・基原植物:Glycyrrhiza uralensis Fischer又はGlycyrrhiza glabra Linné(マメ科)

・使用部位:根及びストロン

・主な成分:グリチルリチン酸 等

■桜皮

 桜皮は日本で独自に使用されている生薬です。中国では、同じサクラ属植物のシナミザクラの果実を強壮薬として利用していますが、樹皮は用いていません。

 因みに、江戸時代の民間療法の書物には、「しゃっくりに桜の樹皮を黒焼きにし、粉にして白湯で用いる」、「疔に,五八霜(反鼻の黒焼き)、桜の皮の黒焼き各等分を胡麻油でといてつけると妙である」など、樹皮を黒焼きにして用いる記載が多く見られます。漢方では黒焼きを霜と呼び、主に動物性生薬(反鼻,露蜂房,文蛤など)に加える修治なんだそうです。

・基原植物:ヤマザクラ又はカスミザクラ(バラ科)

・使用部分:樹皮

・主な成分:フラバノン 等

■桔梗

 桔梗と聞くと、食いしん坊なHISAKOは桔梗屋の信玄餅がぱっと頭に浮かびますが、お隣の韓国では桔梗の根を塩付けやキムチ(トラジ)等にして食べるそうです。

 サポニンを多く含むので、抗炎症作用や去痰作用があり、呼吸器疾患の要薬として有名です。また、桔梗には、他の薬剤の効果を身体上部の病変部に運ぶ働きがあるといわれています。

・基原植物:キキョウ(キキョウ科)

・使用部分:根

・主な成分:サポニン類 等 

■川芎

 中国の古典(「神農本草経」等)には、芎藭(キュウキュウ)と記載されていますが、四川省産のものが良品とされた為、川芎という呼び名に置き換わってしまったんだそうです。この川芎に使われている「藭」や「芎」の字は、葉柄が弓状に曲がった様を表すものと考えられています。

 生薬には、湯通しして乾燥させた根茎を用います。

・基原植物:センキュウ(セリ科)

・使用部分:根茎

・主な成分:クニジリド 等

■生姜

 和名ショウガの由来は、大陸からミョウガと共に持ち込まれた際に、香りの強い方を「兄香(せのか)」、弱い方を「妹香(めのか)」と呼んだ事から、これが後にショウガ・ミョウガに転訛したとする説があります。

 日本薬局方に於いては、単に乾燥させた根茎を生姜、蒸してから乾燥させたものを乾姜と区別しています。生姜は、発汗、健胃、鎮吐等の効能があり、感冒、嘔吐、食欲不振等用いられていますが、乾姜よりも健胃や吐き気止めの効果が高いんだそうです。

・基原植物:ショウガ(ショウガ科)

・使用部分:根茎

・主な成分:6-ギンゲロール 等

■独活

 春・初夏(ゴールデンウィーク頃)に芽吹いた小さな苗は、ヒグマや鹿と争奪戦を繰り返しても、遭難の危険を冒しても、是非ともに食べたい山菜です。根茎や根は薬用に使われ、ジテルペンアルデヒド等の精油、アミノ酸、タンニン等を含んでいいます。

 通例根茎を生薬にしたものを独活、もしくは和独活、或いは土当帰と称し、独活葛根湯等の各種漢方処方に配剤される他、根も和羌活として薬用にされます。生薬にするときは、秋の10 – 11月頃に根茎や根を掘り取って陰干しとし、半ば乾いたところを湯につけて土砂と細根を取り除いて、厚さ0.5 – 1cmの輪切りにしてから、更に陰干しか天日干しして調製します。

・基原植物:ウド(ウコギ科)

・使用部分:根茎

・主な成分:ジルテルペン類 等

■防風

 根および根茎は、防風という生薬で日本薬局方に収録されています。発汗、解熱、鎮痛、鎮痙作用があります。

・基原植物:Saposhnikovia divaricata Schisckin(セリ科)

・使用部分:根及び根茎

・主な成分:クマリン類 等

■荊芥

 シソ科のケイガイの花穂を乾燥したものです。漢方的には解表、利咽、消腫、止血の効能があり、かぜや発熱、咽頭痛、腫れ物などに用いられます。

・基原植物:ケイガイ(シソ科)

・使用部分:花穂

・主な成分:L-プレゴン 等

■茯苓

 松の根に寄生する、サルノコシカケ科のマツホド(松塊)の菌核を乾燥したものです。利尿、鎮静作用等があります。

 Wikipediaに細かい解説が載っていましたので、抜粋しますね。菌核の外層を殆ど取り除いたものを茯苓と呼び、食用・薬用に利用されます。天然ものしかなかった時代は、松の切り株の腐り具合から見当をつけて、先の尖った鉄棒を突き刺して、地中に埋まっている茯苓を見つける「茯苓突き」と言う特殊な技能が必要だったそうです。中国では昔から栽培されていたようですが、1980年代頃から、おがくず培地に発生させた菌糸を、種菌として榾木に植え付ける(シイタケなどの木材腐朽菌と同様の)栽培技術が確立され、市場に大量に流通するようになり、価格も下がりました。現在ではハウス栽培で大量生産されています。

 北京では、茯苓を餅にしてアンコをくるんだ物が、「茯苓餅」または「茯苓夾餅」の名で名物となっているそうです。嘗ては宮廷でも食された高級菓子で、西太后も好物だったとか。現在では、北京市内のスーパーでも購入が可能だそうで、コロナ禍が収束の暁には、ビンドゥンドゥンと万里の長城に腰掛けて、一緒に食したいものだと思っています。

 薬用の物では、雲南省に産する「雲苓」と呼ばれる天然品が有名ですが、天然物は希少である為、殆どお目に掛かる事は難しいのだとか。

 日本はほぼ全量を輸入に頼っていましたが、2017年に石狩市!の農業法人が漢方薬メーカーのツムラ(夕張ツムラ)との協力で、日本初となるハウス量産に成功しています。

・基原植物:マツホド(サルノコシカケ科)

・使用部分:菌核

・主な成分:パキマ酸 等

 

 

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