2016年冬号 | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

美肌姫
季刊『美肌姫』

2016年冬号

あなたの夢をかなえるステップ『美肌姫』冬号が完成しました。寒さと乾燥から肌を守るため、Dr.ヒサコからのメッセージをお届けします。

肌荒れ・くすみ予防には、ビタミンD P.2

 山頂付近が雪で覆われ、白く見えることを「冠(かん)雪(せつ)」といいます。大雪山系の主峰である旭岳に初冠雪が観測されると、季節は、秋から冬へと一気に移行します。そして、7月にピークを示していた紫外線量は激減します。
 ビタミンDのほとんどは、紫外線照射によって体内で合成されるため、色白の人の多くはビタミンD不足の人が多いようです。特に緯度の高い北海道では、これからの時期は要注意です。ビタミンDの不足は、慢性の炎症である「くすみ」や「乾燥肌」の大きな原因のひとつに挙げられます。
 ビタミンDは長らく「カルシウムの恒常性の維持」や「骨量の維持」に必要なビタミンとしか考えられていませんでした。ところが最近になって、ステロイドホルモン様の効果が期待できる免疫調整ホルモンであることが判明し、お肌の乾燥やくすみ、ニキビ・ニキビ跡の改善のほか、花粉症やじんま疹、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患の治療、風邪やインフルエンザの予防、癌の治療及び再発予防など、いろいろな臨床的な効果が知られるようになりました。
 ビタミンDを摂取できる食品は、それほど多くはありませんが、魚類はビタミンDの宝庫です。アンコウのきもやからすみなど内臓をはじめ、かわはぎ、からふとます、にしん、さんま、うなぎ、たちうお、さば、めかじきなど、どれも多く含まれています。魚類以外では、キクラゲや舞茸、卵黄やピータン、鴨肉やすっぽんなども含有率の高い食品です。しかし、穀類、いも類、豆類、種実類、野菜類、果実類、藻類などにはほとんど含まれていません。
 ビタミンDが豊富に含まれた内臓ごと魚や肉を食べるのがベストですが、実際問題としてサプリメントの併用は、ほぼ必須です。あなたのビタミンD濃度は、幾らですか?冬場の肌荒れやくすみが気になる方は、ぜひ、採血して調べてみることをお勧めします。


点滴療法 P.4-6

 クリニックでは、代表的な4種類ベースカクテル(高濃度ビタミンC、マイヤーズ、グルタチオン、プラセンタ)をもとに、現在、32種類の点滴カクテル・メニューが勢揃い。点滴カクテルで不調を整えましょう。

血中濃度を高く保つ、
高濃度ビタミンC点滴療法

 近年、厚生労働省が推奨するビタミンCの摂取量は、壊血(かいけつ)病を防ぐのに十分な量であって、良い健康状態を保つための最適摂取量とは異なると考えられています。ビタミンCだけでなく、他の栄養素も総合的に整えて良い健康状態を保つ、それが、分子整合栄養医学に基づく栄養療法です。実際には、3ヶ月毎に不足している栄養素を血液や尿から調べ、最適な量の栄養素(サプリメント)をオーダーメードで提供します。基本的には、普通の状態ならこれで十分だと思います。 ですが、体調不良や怪我など、何らかのストレスが過度にかかる状況下では、いつも以上に消費がかさむので、通常のビタミンCの摂取量だけでは不足が生じます。
 一般に動物たちは、病気などの多大なストレスに見舞われると、自然治癒力を高めてくれるビタミンCを大量に合成することで、その局面からの回復を図ります。しかし、人間は合成能力がないので、食べ物やサプリメント、注射や点滴で補うしかないのです。高濃度ビタミンC点滴療法は、薬の代わりではなく、負荷がかかった時に自然治癒能力を高める治療法です。
ビタミンCの美容的作用として、まず頭に浮かぶものとしては、メラニン色素の生成抑制による美白です。また、コラーゲンの生成にはビタミンCが必須なので、肌のハリ、シワやタルミの予防のために多くの病院でビタミンCが治療に使われます。高濃度ビタミンC点滴療法が、美容面だけでなく、免疫力を上げることで風邪、疲労時の治療法として、更に最近、米国では、癌の代替治療の一つとして非常に注目を浴びています。
 どうして、点滴なのでしょうか。大量にビタミンCを経口摂取しても、ある一定ラインを超えるともう頭打ちになり、血中濃度は上がりません。150mg以下の微量だと、上部小腸の粘膜を通して血液に良く吸収されて、摂取したら摂取しただけ血中濃度が上がります。ところが150mgを超えると、ほとんど濃度は上がりません。
 しかし、癌の治療や抗アレルギー作用、抗ウィルス作用を期待するなら血中濃度が高いビタミンCが必要です。多量のビタミンCを血管に入れるためには、高濃度ビタミンC点滴療法以外には考えられません。

栄養素だけを配合した、マイヤーズ・カクテル

 マイヤーズ・カクテルは、アメリカの家庭医ジョン・マイヤーズ医師が考案した、アメリカの内科医の定番点滴メニューで、適応が極めて広いのが特長です。
 マイヤーズ・カクテルは、マグネシウム、カルシウム、ビタミンB群、ビタミンCといった人間の体の中に存在している栄養素だけを配合した点滴です。取り立ててすごい内容ではないのですが、急速にビタミンやミネラルの血中濃度を上昇させることで、薬理学的効果を上げる治療法です。クリニックでは、マイヤーズ・カクテルをベースに、患者さんの状況に合わせて成分に微調整を加えています。例えば、喘息、うつ、片頭痛、慢性疲労症候群、心血管疾患といったマグネシウムの必要性が高い病気では、マグネシウムを少し多目に入れます。口内炎がよくできる方ならビタミンB2を追加しますし、アルコールをよく飲む方、疲れ易くて元気がない方にはB1を加えます。下痢ならばB5を加え、末梢神経症状がある方にはB12を追加します。風邪や肌の調子が良くない方には、ビタミンCを多目に入れるなど。この微妙なアレンジができるのも、マイヤーズ・カクテルの特長です。

点滴がおすすめ、グルタチオン療法

 グルタチオンは解毒を促進する作用や抗アレルギー作用があります。しかし、内服薬として飲んでも、腸で吸収されるまでに多くが壊れてしまうので点滴がおすすめです。グルタチオン療法は日本ではほとんど知られていませんが、アメリカでは、パーキンソン病の機能改善と病状進行の遅延を目的に、多くの病院で行なわれている治療方法です。
また、抗癌剤に対する神経障害、慢性肝疾患の治療、デトックス、各種神経系疾患、慢性疲労症候群など多くの疾患に対してグルタチオン療法が行われています。

すべての栄養素が備わったプラセンタ

 プラセンタはとても万能で、さまざまな治療に使われます。
アトピー性皮膚炎やニキビ・ニキビ跡、シミ(美白)、シワ、更年期障害の改善や疲労感、不眠症などに対する治療法として多くの病院で使われています。
人ひとり身体を作り上げる使命を担ったプラセンタ(胎盤)には、生きて行くために必要な、ほとんど全ての栄養素が備わっています。三大栄養素であるタンパク質、脂質、糖質はもちろん、各種ビタミン、ミネラル、酵素、核酸などの生理活性成分が豊富に存在しています。

■主役は、活性ペプチド!

 プラセンタで合成・分泌される活性ペプチドの中でも、〝細胞増殖因子″は、さまざまな細胞の増殖・再生のシグナルとなる大事な物質です。特に、約10ヶ月間という限られた期間の間に、1個の受精卵を赤ん坊までに仕上げる使命を担った胎盤は、いろんな種類の増殖因子(因みに、全ての細胞増殖因子が見つかる組織は、プラセンタだけ)を多量に合成し、胎児に与え続けます。例えば、細胞増殖因子にはこんなものが含まれています。

■上皮細胞増殖因子(EGF)

 表皮の細胞が、新たに出来てから角質化して剥がれ落ちるまでの1周期を、ターン・オーバーと呼びます。日焼けやシミ等のメラニン顆粒の注入された皮膚細胞が、きっちり28日間で角質として剥がれ落ちてくれるのですが、年齢を重ねるとなると、この周期は長くなり、虫刺されや日焼け跡が一向に消えません。これは、表皮細胞の合成を指示するEGFという物質の産生(血中濃度)が、年齢と共に低下し、表皮細胞が合成され難くなったからです。EGFは、注射、点滴、どちらでも可能です。

■線維芽細胞増殖因子(FGF)

 真皮を構成する主要物質は、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸など。これらを産生する線維芽細胞の増殖指示を出すのが、増殖因子のFGFです。
 加齢などによるコラーゲン密度の低下や皮膚の弾力の低下、乾燥肌等は、これらの物質を産生する線維芽細胞の活性が著しく低下することに起因します。FGFは線維芽細胞の増殖を促進することで、紫外線や酸化により傷害を受けた皮膚組織、加齢によるタルミや小ジワの修復を行います。FGFは、局部的、全身的な治療ともに期待できます。
点滴療法の適応は人それぞれですが、不調を整えるには強力なアイテムです。クリニックでは、症状とご予算に合わせて点滴内容をご提案します。