2017年秋号 | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

『美肌姫 秋号』好評配布中
季刊『美肌姫』

2017年秋号

あなたの夢をかなえるためのステップ『美肌姫』秋号が完成しました。

樹氣。 P.2-3

生きている物が衰退し、崩壊してゆくのは至極当然である。

砂澤ビッキという彫刻家(1931〜1989)をご存知でしょうか。彼のプロフィールには、『土産物の木彫から出発し大胆にて繊細、原始的にしてモダンな独自の作風を確立。砂澤自信はアイヌの名を掲げて保護を受けて生きることを嫌い「アイヌの芸術家」という枠にはめられることを嫌った。』との記載があります。
 アイヌとは、アイヌ語で「人間」を意味します。「カムイ」(自然の全て者もに心があるという精神に基づいて自然を指す呼称)に対する概念としての、『人間」という意味です。
 ビッキの作品群は、カムイです。北海道の、それも生ぬるい南方ではなく、空が凛と澄んだ内陸の森林。そこに、ふら〜っと一人迷い込んでしまったような…そんな錯覚に陥ります。
 食欲旺盛なエゾシカの残したディアライン、枝を揺らして木々を移るエゾリスたちの影、クマゲラの乾いたドラミング。それらのリアルな動物たちと混在していても何ら違和感のない昆虫群や樹鳥に、TOH(とう)、そして神の舌。風の音にまで「ラマッ」と呼ばれる魂が宿っています。それらを忠実に再現したビッキは、生粋のアイヌだったのでしょう。
 ビッキという彫刻家の存在は知りながら、彼の作品を初めて見たのは葉山の美術館でした。「木魂(こだま)を彫る〜砂澤ビッキ展」に、知人の所蔵品が出展されたからでした。一色海岸を眺望するおしゃれな美術館で、ビッキはカムイでありました。しかし、同時に、モダンアートとしての値札が付いた素晴らしい商品でしかありませんでした。
 芸術家としての表現衝動とショービジネスにおけるコマーシャリズムを有し、なおかつ、商業的に成功した最大の成功例をデヴィット・ボウイとするならば、砂澤ビッキはなんだったのでしょう。それは、ある意味、芸術家の運命なのでしょうけれど。

 芸術家としての表現衝動とは何なのでしょうか? 記念館を一歩出れば、カムイの森に包まれます。記念館が閉鎖される冬には、記念館もすっぽりカムイに沈むのでしょう。
 なぜ、敢えて、ビッキは彫らなければならなかったのでしょうか?表現衝動?生きている物が衰退し、崩壊してゆくのは至極当然と、その修復を拒んだビッキ。
 音威子府村は、北海道で一番人口が少ない村です。そこに、夏期限定のビッキの記念館があります。正しくは、冬は誰も行かないのではなくて、雪に閉ざされて行けないのですが。音威子府村のエコミュージアム「おあっしまセンター」は、車で旭川から片道2時間半かかります。ぜひ一度、足を運んでみて下さい。ビッキの晩年を過ごした地でその作品に触れなければ、私は、今でも、カシーナのソファと同列にビッキに関する蘊蓄をしたり顔で語っていたと思います。


腸はアンチエイジングの要 ー 腸内環境を整えて、活性酸素を退治しましょう。P.4-6

腸内細菌の数は約1000兆個

最近、腸と腸内細菌に関する研究が世界的に急速に進み、次々と新しい知見が散見されるようになってきました。腸は単に食物から栄養分を消化吸収するだけではなく、腸内細菌が合成したいろいろなビタミン類も吸収し、体全体に運ぶ役割もしています。人が「幸せだなぁ〜」と感じるのは、脳から分泌される脳内伝達物質が深く関与しています。セロトニンは歓喜や快楽を伝え、ドーパミンはやる気を奮い起こす働きがあります。セロトニンが不足すると、キレたり、鬱状態になります。実は、この神経伝達物質のドーパミン、セロトニン、カテコールアミンやヒスタミンなどは、腸内細菌が9割方作っています。それらの前駆物質を、腸管は吸収し、脳に送り続けています。
 腸内細菌の数は、約1000兆個。私達の体を構成する細胞の数が約60兆個ですから、その16倍強の腸内細菌が腸内で生息し、その重量は約1.5キロにもなります。そしてこの腸内細菌の命を受けて働く腸細胞も、腸内細菌の数に匹敵するくらい多く、腸壁や腸粘膜にびっしりと存在しています。これらは、絶えず「生まれては死ぬ」を繰り返しており、死骸は便の約半分を占めています。食物残渣=便のイメージがありますが、実は、食物残渣自体はせいぜい15%くらいにしか過ぎません。

腸管は、多機能なマルチプレーヤー

 腸管は消化、免疫、解毒、これら全てを一手に引き受けています。
 栄養素のほとんどは、腸で吸収されます。つまり、腸管が破綻すると、人は自滅してしまいます。悪玉菌の大好物である油分や糖分の過剰摂取は悪玉菌を増殖させ、硫化水素やアミンなどの毒性物質を多量に生産し、やがて消化吸収能力が低下してしまいます。
 病原菌等の有害物質から体を守るために、腸には強い免疫系が発達しています。腸内細菌が免疫力の、実に70%を司っています。小腸の後半部分5分の3を占める回腸には、免疫細胞であるM細胞、パイエル板などの免疫組織があり、腸管免疫が行われています。また、この腸特有の免疫組織を活性化しているのが、腸内細菌です。腸内細菌の出すシグナルにより、腸細胞は一斉に活動を開始し免疫力を高めます。腸の免疫細胞が防御機能をしっかり果たしていれば、病気にもならず、自然治癒能力も高く保たれます。
 食べ物や腸内の常在菌に対しては、アレルギー反応などの異常な免疫反応が起こらない“免疫寛容”というシステムが作動します。しかし、免疫寛容の機能が低下すると、その食べ物が有害か無害か正常な判断ができなくなります。するとIgGm抗体が産生され、フードアレルギー反応が起こってしまうのです。また、IgG抗体はアレルギーの原因物質と直接結合することができます。こうしてできた抗原抗体複合体は、体内組織に沈着し、多種多様な症状を誘発しますが、痛みや痒みなどの自覚症状がないため、アレルギーだと気付きづらいのです。