溶ける糸でフェイスリフト|テスリフト | 旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2021年9月号

溶ける糸でフェイスリフト|テスリフト

最近は、切るリフトアップ(所謂フェイスリフト)手術が激減し、その代わりにスレッドリフト(糸によるリフト)によりたるみ治療が花盛り。中でも最近人気がじわじわと上昇中なのが、テスリフトTESSLIFT SOFTです。時代は、バーブ型のクラシックなハッピーリフト(美容通信2006年9月号)や、更にその進化系のコグ型の3Ⅾリフト(シルエットリフト)(美容通信2013年7月号)に代表される第二世代へ移行しましたが、テスリフトは更にその進化系。360°の全方向性にバーブを備えた糸の周りを、3Dメッシュ構造の管でぐるっと囲んだ構造で、従来の点だけではなく、面で組織をホールド出来るのが特徴です。ダウンタイムが短く、施術直後よりも時間が経過してからの方がしっかり効果を実感出来る効果的な治療法です。

 重力に負けて下がってしまった脂肪達に、少しでも望ましい位置(少しでも若々しく見える場所?)に移動しして頂く作業、つまり輪郭形成が、スレッドリフト(糸によるリフト)の治療の本質です。ハイフ(美容通信2021年7月号)では物足りない。けど、本チャンに手術は嫌。そんな方に、オススメの治療方法です。

糸によるリフト(スレッドリフト)って何?

糸でリフトと言うけれど、本当は輪郭形成

 スレッドリフト(糸によるリフト)は、たるみを引っ張って何処かに括りつける!モノではありません。しっかりとした効果が出難いだけでなく、作用反作用ではありませんが、後戻りし易くもなります。イメージとしては、重力に負けて下がってしまった脂肪達に、少しでも望ましい位置(少しでも若々しく見える場所?)に移動しして頂く作業とお考え下さい。謂わば、輪郭形成であって、皺取り!じゃないんです。老化により、悲しい事に、骨や脂肪の萎縮と下垂、支持靭帯の緩み、皮膚自体の弾力低下等の様々な寄る年波!ってものを私達に思い知らせてくれますが、糸だけで、それを全て解決出来るなんていうのは、土台無理。様々な変化に対して、様々な治療方法を組み合わせて、長所を生かして、弱点を補いつつが見た目のアンチエイジングの治療の基本なんですね。

 テスリフトだけでなく、3Dリフト(美容通信2013年7月号)も、ファインリフト(美容通信2012年5月号)そうですが、治療効果は直後からある程度は実感は出来ますが、肌の質感が上がった!と感じるのは、実は約1ヶ月後。スレッドの周りにコラーゲンが生成されるのには、ある程度の日数が必要なんです。タイトニング効果に至っては、施術後2~3ヶ月後なんですね。

■スレッドリフトの変遷

 世の中にスレッドリフトなるものが登場した頃は、側頭筋に括りつける固定式やアプトス等の非吸収性の糸が主流(第一世代)でした。アプトス糸が出始めた頃、知り合いの某医大の形成外科の教授が、手術室で、極々普通のナイロンの糸を、ゴボウのささがきみたいにお手製のバーブを付けていたのを思い出します。コツと称して、若い医者達を集めてご指導していただいたんですが…結局は、私、実践しないで終わっちゃったな(笑)。まあ、お手製に限らず、既製品でも、バーブだけでは、バーブに過度の力が掛かり、その為にバーブが破損し、組織の安定性が容易に低下してしまいます。つまり、効果が長続きせず、逆戻りしてしまうって事です。

 ですから、ダウンタイムが長い割に、業者が謳う程には、つまり能書きに掛かれている様な3~5年って長期間は、とてもとても効果が持続しない! 更には、非吸収性で伸縮性のある構造上の特性から、長期経過で感染を起こす例が散見され、しかも糸に沿って感染巣が拡がると言う、正に踏んだり蹴ったりの特性の為、世の中の潮流は、非固定式の吸収糸に。バーブ型のクラシックなハッピーリフト(美容通信2006年9月号)や、更にその進化系のコグ型の3Ⅾリフト(シルエットリフト)に代表される第二世代へ移行します。

 右の図を見て下さい。バーブの代わりに、3Ⅾリフト(シルエットリフト)を始め、第二世代では、円錐形のコーンが多く採用されました。

 溶ける糸、それも非固定性の糸でリフトと言うと…、固定もせずに、劇的に引き上げるなんて芸当は望むべくもないし、第一溶けるんだから持ちだって悪いんじゃないの?と思われがちですが、確かに非吸収糸の固定式の様な、施術直後の劇的な感激はありませんが、数ヶ月過ぎてしまえば、両者の引き上げの程度には差は殆ど認められません(←非吸収糸の固定式は、激しく上がった分、後戻りしちゃうって事なんです(笑)!)。 効果の持続時間も、実は1年前後と差が認められませんしね。つまりは、何も、痛い思いをしてまで、ダウンタイムの長い非吸収糸の固定式を選択する理由はないよ~んってオチになります。

 円錐型のコーンは、単なるバーブよりも遥かにましではありますが、やはり、点としてのコーンに過剰な力が掛かります。そこで、更に改良型として出て来たのが、テスリフトに代表されるメッシュ構造の糸です。点ではなく、面と言う発想です。

 この章の最初に載せた画像は、業者さんのパワポをそのまま頂いたものなので、効果的な接着って表現は○ですが、半永久的な効果は流石に噓っこ(笑)。如何にメッシュ構造を誇るテスリフトと言え、効果は1年位で、現実的には1、2年毎に糸入れてね、です。

■糸によるリフト(スレッドリフト)で使う糸の種類

 糸と一括りにしてしまいがちですが、糸は大きく分けると溶ける糸と溶けない糸があります。

 溶ける糸の素材としては、PDO(ポリジオキサノン)、PLLA(ポリ乳酸)、PCL(ポリカプロラクトン)が主なものです。PDOは一般的に4~5か月程度、PLLAは12~18ヶ月程度、PCLは24~36ヶ月程度で加水分解されて吸収されてしまいます。

 テスリフトは、前述の如く、PDO素材のコグを細いメッシュで包んだ糸です。

■合併症

 所謂、合併症と言われるものは、2つ。

  • ディンプル

 一つは、ディンプル。ディンプルをえくぼと言うか窪みと訳するか、臍!と断言してしまうかは微妙なところです(笑)が、まあ脂肪の萎縮した部位はディンプルになり易いので、なるべくそこを糸が通らない様に回避したデザインは心掛けはしますが、残念ながら、なっちゃう時はなっちゃいます。施術時に、異物攝子でリリースするだけでも引っ掛りを外す事が出来ますが、頑固な時には、その部分を皮膚の上と口の中から指で挟んでマッサージすると、棘(BARB)の嚙み込みが外したりします。しかし、それでも、軽度残ってしまう事は皆無ではありません。棘は何れ溶けてしまうものなので、それまでの時間稼ぎとして、ヒアルロン酸を注入して平坦にするって、目眩ませ戦法を取って誤魔化します。

 余談ですが、北海道で臍と言えば、富良野です。大昔、HISAKOの大学が東日本医学生の総合体育大会のスキー部門を主管した時、開会式で、生まれて初めて、この富良野のへそ踊りの存在を知りました。生まれも育ちも旭川にも拘らず、近隣の富良野市にこんな土肝を抜かれる踊りがある事さえ知りませんでした。コロナ前の中国人が大挙して訪れた遥か以前の富良野は、能天気な女子大生には、スキーとナゥピー(納豆モナカ)と唯我独尊のソーセージカレーと倉本聰様御用達のくまげらのオムカレーのイメージしかなかったからです(富良野ワインは確かに有名ではありましたが、貧乏学生にとっては、結婚式の引き出物との認識しかなく、普段飲む酒ではなかった…)。北海へそ祭り実行委員会によりますと、昭和44年7月に制定された富良野市民憲章には「私達は北海道の中心標の立つ富良野市民です」との一文があり、これを体現する為に発案されたのがへそ踊りなのだそうです。くどくど説明しても、このユニークさは伝わらない。って事で、北海道富良野市商工観光課のホームページから画像引用させていただきました。

  • 感染

 もう一つの合併症が、感染です。一般的に、モノフィラメントの吸収糸で感染する可能性は少ないとされていますが、テスリフトは挿入部位が髪の毛の生え際部分に極めて近い為、髪の毛を巻き込み易く、トラブルを起こしやすいとされています。丁寧に、巻き込んだ毛を救済するだけで、感染のトラブルは激減します。念には念を入れて、抗生物質の予防的な投与と併せて、針穴をテープで塞いでおくのも大事な転ばぬ先の杖となります。唯、まあ、何で感染の危険を承知で生え際に近い所から挿入するのかと申しますと、このテスリフトの効果をより確実なものにする為の工夫=返しの部分が、時に出っ張って目立ってしまう事があるんです。なので、その誤魔化し?として、生え際付近が糸の挿入ヶ所に選ばれるのも理由の一つではあります。

テスリフトの糸はこんなに凄い!

特許PDO性3Dメッシュ&バーブによる自然なリフティング効果

 テスリフトの糸は、人体と100%生体適合性のあるPDO(ポリジオキサノン)製の吸収素材です。

 360°の全方向性にバーブを備えた糸の周りを、3Dメッシュ構造の管でぐるっと囲んだ構造になっています。この3Dのメッシュ構造は、人工魚礁みたいなもの。これを所謂足場として周囲組織がびっしりと蔦の様に絡み込み、バーブ、まあ、バーブとお洒落に言っても結局は氷山を登山する時に履くアイゼンみたいな牙に過ぎませんから、この牙だけに掛かる過剰な点負荷を、面で分散させる事が出来ます。だから、自然なリフティング効果が期待出来るんですね。

 3Dメッシュの穴の大きさの理想のサイズとされているのが、1mm前後です。私達の体は、幾ら生体適合性に優れるとは言っても、メッシュを異物として認識しますから、取り囲んで隔離(境界ライニング)してしまいます。異物肉芽腫って代物ですね。ですから、1mmよりも穴が小さいと、一塊の異物肉芽腫と化してしまって、折角のメッシュがメッシュとしての使命を果たせなくなってしまいます。

 

 人工漁礁ならぬ3Dメッシュの中に、周囲の組織が入り込んで、面で安定的に固定を図ります(←謀るだったりして(笑))。施術後、メキメキと結合組織の癒着が進むので、早々と弛みが再発してしまうのを防いでくれます。

 右のグラフの様に、2週間もすれば、3Dメッシュの中に組織が入り込んで定着してしまいます。下図は、ネズミさんの標本ではありますが、皮下組織の状況です。綺麗に、組織が再生されていますね。

 3Dメッシュが挿入されて数時間後には、組織の反応が始まります。その経過は一般的な炎症反応と同じ(美容通信2021年1月号)(美容通信2021年8月号)で、マクロファージが放出し、壊死組織が自己分解します。成長因子とサイトカインが放出されます。血管新生が進み、新しい肉芽組織が増殖します。メッシュ内にまで、コラーゲン生成が行われる為、通常のPDO糸と比べて引き上げ効果の持続期間が1~2年と、長期間期待が出来ます。

 更には、皮下脂肪との接触面積が広いので、PDOの脂肪萎縮作用がしっかりと出て、施術後2~3ヶ月後に、最も引き締め効果が実感出来ます。

 更に、テスリフトの糸には、もう一つの工夫?(←後付けと言うか…結果的に良かったって気がしないでもないですが…)があります。それは、下図を見て頂ければお分かりの通り、ど真ん中に心棒が通っているので、ふにゃらない!って事です。ふにゃってしまえば、折角の人工漁礁の効果が激減してしまいますから!

テスリフトを挿入しよう!

テスリフトのターゲット部位

 対象年齢としては、20~40歳位。つまり、HISAKOの様に顔の皮下脂肪が足りなくなる(腹回りとの二の腕は、ダブつく位に皮下脂肪はあるのだが…)お年頃?顔立ち?では、顔の動きで糸のシルエットが出やすくなったり、糸の折り返しが出っ張ったり…。人を選ぶ施術でもあります。たるみについても、その程度が軽ければ合併症も起こりにくいものですが、たるみが高度になって来ると、流石にヒキツレ等の合併症が目立つようになってしまいます。

 スレッドリフトでは、豊齢線(鼻唇溝)を改善する効果はあまりありません。フェイスラインから口横の弛みが、一番のターゲットです。特に、重要とされるキーポイントは、顎下の挿入とされています。豊齢線(鼻唇溝)が深い場合は、ヒアルロン酸の注入を併用しないと、満足感を得られない可能性が高いです。首も額も、スレッドリフトの効果が得難い場所です。ゴルゴラインや中顔面のリフトも、ちょっと苦手です。

 何度も申しますが、テスリフトは輪郭形成です。重力に負けて下がってしまった脂肪達に、少しでも望ましい位置(少しでも若々しく見える場所?)に移動しして頂く作業で、所謂皺取りではありません。必要に応じて、ヒアルロン酸を注入(美容通信2018年11月号)(美容通信2005年8月号)したり、ボトックス注射(美容通信2003年10月号)をしたりと、組み合わせでトータルに若々しい顔を目指すって感じでしょうか。無理に引き上げても、ロクな事はないです、はい。

 立ち位置的には、ヒアルロン酸やPRP(美容通信2006年12月号)だけでは物足りない人が、ハイフHIFU(美容通信2021年7月号)に。それでももう一声って思ったらスレッドリフト、それも、痛みや違和感が殆どない分、ちょっとパワー不足だけど3Dリフト(美容通信2013年7月号)で手を打つか、もっとパワフルだけど、それなりにちょっとは痛いテスリフトにまで手を染めるか。最終手段のフェイスリフト手術にするか。と言う感じですかね。まあ、どんな治療法にも、限界がありますから、利点と欠点をどう組み合わせて、許容範囲とするかですね。

 

テスリフトのデザイン

 推奨される糸の本数は、片側に5本、左右入れるので、合計10本とされています(←実は、このテスリフト、一箱10本入りなんですね(笑))。20本くらいまで、予算が許せばですが、挿入するのは全然大丈夫です。HISAKOのクリニックでは、片側4本が多いかな。全体でのバランスを考えると、最低でも片側3本。キーポイントは、顎下の1本なので、これは絶対外すべき肝心要の1本です。

 痛みや腫れは、3~7日位続きます。痛みを軽減するには、頬骨の出っ張りの上下に入れてしまうのが良いのですが…、如何せん…効果は下がる…。頑張れるなら、頬骨の出っ張りを横切る覚悟を決めましょう。

 下図は、50歳男性のデザイン(片側4本合計8本)。

テスリフトの挿入

 テスリフトは、PDO素材の双方性のコグを細いメッシュで包んだ糸が、18Gのカニューラ針に挿入された製品で、下図の様な構造になっています。

 テスリフトの糸についての説明では、糸本体の特性しか触れていませんでしたが、実はテスリフトのしっかりとしたリフト力の一つに、返しがある事も忘れてはいけません。通常のカニューラコグスレッドの場合は、針穴からカニューラを挿入して、カニューラ針を抜去後、針穴からはみ出しているスレッドをハサミでチョッキンして捨ててしまいます。しかしながら、テスリフトの糸に対してこのチョッキンを行ってしまうと、メッシュが解けちゃうんですね。折り返して、皮膚の下に埋め込んどくしか処理のしようがない(笑)。ですが、災い転じてではなく、結果的に良かったと言う後付的な感じではないかと勘繰ってしまいますが、1本で通常のカニューラコグスレッドの2本分の効果が期待出来ちゃうんですね。

 上図のトゲトゲのない、前後20mmと60mmのメッシュ部分の効用って奴ですね。

■糸を入れる

 局所麻酔後に、下記の操作を行います。麻酔は、ちょっと痛いけど、これさえ終わってしまえば、もう殆ど施術の山を越えたようなもの(笑)。

①刺入部から糸を挿入し

②糸が抜けない様に、先端部分をしっかり押さえながら、カニューラ針だけを一旦抜きます。

③針穴からはみ出している糸を、弛みが無いようにしごいてから、はみ出した糸の先っぽをカニューラの針穴に数cmほど突っ込んで、もう一度、針穴に刺し、

④予めデザインした返しの方向に向かって、挿入します。i糸の売り屋さんは、これをジグザクテクニックと称しております。

⑤カニューラ針だけを抜きます。

⑥異物攝子で刺入部を持ち上げて、ディンプルが起こらない様に、組織をリリースします。同時に、髪の毛が針穴に巻き込まれて迷入していれば、それを救出しなければいけません。合併症回避には必須です。

⑦針穴は、シールを貼って封印!

 下図は、向かって左側だけ糸を入れた直後の写真です。麻酔が効いているので、腫れが大きく出ていますし、2~3時間は麻酔した領域が麻痺った感じがあり、「あいうえお」がちゃんと喋り難かったり、目がしっかり閉じなかったりします。人によっては、少し気分が悪くなったりも。でも、局所麻酔なので、2~3時間後にはちゃ~んと元に戻りますからご安心を! 明らかに豊齢(ほうれい/法令)線が浅くなっています。下垂していた組織が、本来あった場所に戻っています。

 

テスリフトの挿入後の経過

 テスリフト施術2.5時間後です。施術を行った事による腫れぼったさが未だ残っており、2~3日は残ります。「眼瞼下垂の手術を行った訳でもないのに、目がぱっちり、大きくなった!」が、彼の、鏡を見た第一声です。「重力に負けて下がってしまった脂肪達に、少しでも望ましい位置(少しでも若々しく見える場所?)に移動しして頂く作業とお考え下さい。謂わば、輪郭形成であって、皺取り!じゃないんです」と最初に記載しましたが、その意味が分かってもらえたかしら? 親子って言っても、違和感がない前後の症例写真でした(笑)。

 テスリフトは、施術1ヶ月後位から肌の質感が上がり、リフトアップ効果は2~3ヶ月後が一番実感出来ます。その後は徐々に下り坂で、効果は1年位で、現実的には1、2年毎に糸入れてね、です。

 施術1ヶ月後です。直後の様なパンパンの腫れが引いて、形態的には自然体に、若返ったと言うか、年相応に戻った感じですが…お肌の質感は全然違います。

 3ヶ月後の経過をお楽しみに!

 

 

 


*註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

 

来月号の予告

成長因子、PRPに代わる新しい細胞活性フィラーです。

<リジュラン>