爪の名前

　爪の端っことか、真ん中とか、先っぽとか、根元とか‥曖昧な言い方をしても、他の人にはちゃんと通じない。先ずは名前くらいは知っておきましょう。

• 爪甲

　所謂、私達が爪って呼んでいる硬い部分。なだらかな凸型の四角形をしています。実は、これ、一枚岩なんかじゃなくて、3層構造（背爪、中間爪、腹爪）なんですよ。


• 爪床

　生爪を引っ剥がすと、下にから痛々しいお肉が顔を出しますよね。あの爪の形通りにプレスされちゃった爪の下の領域（表皮・真皮部分）の事です。


• 爪廓

　爪の両側縁と爪の根元を被っている皮膚。


• 爪上皮

　甘皮の事を偉そうに言うと、こうなります。角質が爪の根元から、爪の上に伸びた角質です。まあ、爪として未だ半人前って証ですかね。生まれたばっかの赤ちゃんが、産室からお家に直行なんて話、聞いた事ないでしょ？　病院の（保育器の）中で暫く暮らして、大丈夫♪ってお墨付きを担当の先生から貰ってから、漸く退院の運びとなるのが普通です。‥爪も同じ。甘皮は、謂わば、病院の保育器。意味のある存在なんです。だから、これを、単に可愛くない！　ペディキュアを塗るのに邪魔!!なんて理由で、無理矢理押しのけたり、切り取ってしまうのは、赤ちゃんを公衆便所に産み落として、そのまま置き去りにしちゃうのと同じ行為なんですねぇ。


• 爪母

　その名の示す通り、爪製造の要・お母さん。

陥入爪＆巻き爪ダイジェスト

　陥入爪＆巻き爪に何でなってしまったのか‥、以前も特集しました。美容通信2004年6月号です。誰が悪い訳でもなく、単に貴女自身の所為です。
　最初の人生の誤りは、爪の切り方。指の形通りに、丸～く切ってなんかいませんよね。正しくは、爪はスクエアに切るんです。教科書には”爪甲先端部の角を圧迫しないように、中央部が凹となる緩やかな弓状に切る”と書かれています。ですから、爪切り自体の形が、既に大きな間違いなんですよね。あれは、あくまでも体重の掛からない指用であって、足用じゃないんです。正しい足爪のケアの為には、爪用の鑢がお約束！
　不適切な形状に整えられてしまった爪、これを巻き爪までに進化させてしまったのは、貴女のその先っぽの尖った華奢な細い靴、ハイヒールです。身の程知らず（笑）の細身の靴は、貴女の足のお肉をぎゅ～とアンパンマンのほっぺの様に盛り上げます。其処にすくすくと伸びるしかない素直な（能がない？）爪が突き刺さり、肉を裂き、痛みに耐えかねた組織は不良化し盛り上がり（不良肉眼組織）ます。其処はバイ菌の子孫繁栄を営むのに適した新居でもあります。水虫持ちだと、更に危険度がＵＰします。‥痛みが深爪と言う悪癖を招き、どんどんと泥沼に嵌った貴女の可哀相な爪は、やがて本当に曲がった根性の持ち主＝巻き爪に。
　更に長時間の立ち仕事で、ずし～んと重みが掛かり、アンパンマン度がＵＰ！　重い体重も、負荷を掛ける元凶。痩せねば！　勿論、足に負荷の掛かり過ぎるスポーツも望ましくないよ～ん。

　治療法は、大きく分けると２つ。保存的療法と外科的療法に分けられます。前者は、根性が曲がった爪をそのままに、地道に矯正を図っていこうというもの。それに対し、後者は、根性が腐った奴に更生の道はない。抹殺（！）しちまえってもの。つまり、曲がった爪自体がもう二度と生えて来ない様に、爪の根元から取り除いてしまう方法です。だから、根治的といえば根治的な方法ではありますが、それなりに侵襲もありますし、元凶が取り除かれる＝爪がその分細くなるのが欠点です。‥さあ、貴女はどちらを選びますか？　
　まあ、どちらにしろ、陥入爪＆巻き爪を創造したのは他ならぬ貴女なんですから、その悪癖を直さない限り、例え外科的治療でリセットしても、同じ事を繰り返すだけですがね。

保存的治療方法

　大リーグボール養成ギブスならぬ超弾性ワイヤーで、痛い思いをせずに、お手軽に、しかし曲がり切った性根を厳しく叩き直しましょう。

　超弾性ワイヤーの詳しい方法を説明する前に、ちょっと爪の矯正の変遷について簡単に触れておきましょうね。そうでないと、何で、HISAKOが数ある矯正方法の中から超弾性ワイヤーを選んだのかが、分ってもらえませんから。
　曲がった爪を矯正する方法は、昔から色々試みられておりました。最初は爪に糸を通して引っ張る事から始まり、金属や合成樹脂、そして現在の記憶合金を用いた手法へと地味に進化をしていたんです。ですが、軽度の陥入爪＆巻き爪相手が精一杯。重症のものはやっぱり手術って、相場が決まっておりました。ところが、超弾性ワイヤーの出現で、状況は一転！　今までちょっと手が出せなかった高嶺の花系に対しても、外科的侵襲を加えずに、お手軽に、同等以上の結果が出せる様になったんです。

　現在日本で一般的に使用されている爪の矯正用具には、以下の様なものがあります。

• B/S brace、オニクリップ
　合成樹脂etc.の板を爪甲に貼り付けて、その弾性により矯正を画策！するものなんですが、如何せん、矯正力が弱い上に、直ぐ装具自体が剥がれてしまうのが、当たり前過ぎる（笑）欠点。


• VHO式シュパンゲ


　金属ワイヤーを両側爪縁にフックで引っ掛け、ワイヤーを爪の中央部分で、捻って捻って締め上げる！　更にその上から、人工爪でカバー♪　手技は‥、他の方法に比べると、煩雑です。
　超弾性ワイヤーの様な爪の先端ではなく、中央からのアプローチなので、より理想的と言えば理想的なポジションではありますが、テコの原理を考えれば明らかな様に、手間隙掛けて苦労した割には報われない。効果を自覚するには、結構時間が掛かる。つまり、それだけ治療費が嵩むって事です、はい。‥それに、適応症例は限られるし、ねえ。


• ゴールドシュバンゲ

　弾性のある金属を両側爪縁にフックで引っ掛け、その弾性だけで矯正しようと目論む方法。当然、前述のVHO式シュパンゲと比べると、捻って締め上げるって駄目押しを省略するだけに、矯正力は劣る。が、フックを引っ掛ける部位は同じなので、適応症例は限られたまま‥。


• 形状記憶合金プレート

　形状記憶合金の板を爪甲に貼り付け、熱を加える事により、その復元性を利用して矯正します。熱を加えるって一手間掛けなきゃいけないのに、簡単に脱落して、本当に、もう、がっかりする‥。


• 超弾性ワイヤー

　矯正力が強くて、適応範囲が広い。HISAKO的には、現在ある矯正用具の中ではピカ一！と評価しております。詳しい内容は、これから!!

　クリニックで使っているのは、ニッケル・チタン合金に特殊処理を施した、超弾性ワイヤー。直径が0.3mm～0.6mmの7種類あるんですが、どのガキんこも、細い癖に、強く曲げても折れたりせず、真っ直ぐ、一直線に、何が何でも戻ろうとする強固な意志の持ち主です。記憶形状合金の鑑みたいな野郎です。唯、残念な事に、この実直過ぎる性格は一生モノではなく、精々数ヶ月程度ですが‥。でも、足の爪は1ヶ月に1mm程度は伸び続けるので、実際問題として、命尽きるまでこの超弾性ワイヤーが働く続けるなんて事はありえませんが、ね。
　陥入爪・巻き爪の治療は、この超弾性ワイヤーを根性が曲がり切った爪にぶっ刺して、直線に戻ろうとする強力な復元力を利用して、爪を平坦化させるものです。下の図を見てみましょう。

超弾性ワイヤー式爪矯正

　超弾性ワイヤー式爪矯正について、詳しく解説しましょう。

並な人々

　基本的なワイヤーの装着方法から、ご説明致しましょう。爪がお肉から2mm以上伸びた状態が、お約束♪　そうじゃないと、爪がワイヤーの力に負けて、矯正される前に、パッキ～ンと割れてしまっては元も子もありませんからね。十分な長さの爪は強度上必須です。だからと言って、爪の先端をお肉から無理矢理剥がして2mmの余裕を作ると、今度はお肉にワイヤーが刺さって、串刺し状態。これでは、痛くて、痛くて、話にもなりません（笑）。下の図を見て下さい。



　え？　これだけ？　そうなんです。とってもシンプル。黄線遠位側の爪遊離部位に開けた2ヶ所の穴に、ワイヤーを固定するだけです。
　しかし、たったこれだけの操作で、軽い陥入爪＆巻き爪なら挿入直後から、重症な巻き爪でも2週間も経てば、爪の形に変化が出始め、痛みも軽くなっちゃうんですよね。凄いでしょ？　爪は、でも、伸びるモノ（足の場合1ヶ月に1mm程度）なので、ワイヤーごとずんずん前に押し出されちゃいます。ですから、1～2ヶ月もしたらワイヤーの入れ替えは必須！　通常は、この操作を数回繰り返す事で、彎曲した爪は先端部だけではなく、爪の根元の辺りまで平坦化して来るので～す。まあ、換言すれば、根元の辺りまで平坦化するまで粘れ！って事ですかね。だから、爪の巻き具合とか、爪の厚さとかetc.で、結構個人差があるのよね、矯正期間は！　ちゃんちゃん。

捻くれ者が得をする？

　超弾性ワイヤー式爪矯正法の本領発揮！　まあ、端的に言うと、並な人々レベルの爪なら、矯正力の差はあるものの、他の矯正装具を用いても十分対応は可能って事ですがね、ははは。それじゃ、超弾性ワイヤーの華麗なるプレー、独壇場をご鑑賞下さい。

　勿論、”陥入爪＆巻き爪ダイジェスト”でも触れましたが、爪が刺さり、その挙句に不良肉芽組織が盛り上がり、更にバイ菌まで加わった悪乗り状態‥不要3兄弟勢揃いだと、教科書通りの超弾性ワイヤーの挿入は出来ません。外科的な処置を加えたり、テーピングで贅肉！を引っ張ったり、当りそうな爪の角っこにシリコン・チューブを挿入したりと、ケース バイ ケースの＋αの小細工を行ないます。

矯正効果は一生モノに非ず‥

　陥入爪＆巻き爪は、謂わば、生活習慣病。悪しき生活習慣を改めなければ、必ず再発します。刑務所で更生しても、再び犯罪を繰り返し、又舞い戻って来てしまう‥。だから、前科者は！と言われちゃうんですよね。。それと同じ事だと思うのです。

嬉しくないオマケ達

　嬉しくないオマケ達、あります。例えばどんなものがそれに相当するのでしょうか？　興味本位に列挙し捲くり！ 　爪が短過ぎたり、爪が脆かったりすると、超弾性ワイヤーの矯正力に爪が耐えられす、パキンと割れて、ワイヤーが脱落！　爪に問題が無くても、金属疲労‥昔流行った言葉ですが、超弾性ワイヤーが、ある日突然、何の前触れも無く、ポキンと折れて脱落!!　爪が開くにつれて、爪縁を超えて側方に伸びたワイヤーの断端が、若しくは出っ張って来た爪の端っこが、図らずとも隣の趾を傷つけてしまうなんて、不幸な事態も!!!　軟弱過ぎる爪の持ち主の癖に、ちゃんと伸びて来た爪を切ってないと、先っぽがフニャ～んと曲がって、趾先を圧迫。如何に柔らかろうと、爪は爪。痛い!!!!　丸まっていたベースにへばり付いていた爪が、超弾性ワイヤーで無理矢理矯正と言う名の自立を促された為、赤い涙を流した（爪甲下血腫）‥でも、これは矯正が上手く進んでいる証拠なんだけど、見た目が痛々しいかな。
　まあ、精々こんな程度で、日常のお手入れをちゃんとして頂ければ、結構回避出来るものも多く、重大な合併症と呼べるものはないです、はい。

ワイヤーではお手上げの陥入爪もある

　この方法は、矯正装具の力学的作用を利用して、爪の矯正を図る治療です。と言う事は、効率良く爪による障害を改善出来る方向に、外力を加えられる事が前提にある訳です。

　例えば、右の図を見てみましょう。四面楚歌。四方を塞がれ、完全に埋もれてしまった爪は、天下の超弾性ワイヤーをもってしても矯正不可能。だって、どの方向に力学的減圧を求めれば良いのか分かんない。手術で、爪の幅を減らさない限り、浮上の方法なんてありませ～ん。 　つまり、爪床、爪溝が下方又は内下方へ圧迫している巻き爪って種族なら、どんなに巻き巻きの蝸牛君だって、上方、外側方へと力学的減圧方向を求めれば、解決のし様があります。ですが、陥入爪に対しては、決してオールマイティの解決方法にはなり得ないって事なんです。画面をスクロールして、もう一度、陥入爪と巻き爪の定義を見て下さいね。きっとご納得頂ける筈。

＊註：HISAKOの美容通信に記載されている料金（消費税率等を含む）・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金（消費税率等を含む）・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。

※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。