自己多血小板血漿注入療法 | 旭川皮フ形成外科クリニック旭川皮フ形成外科クリニック

HISAKOの美容通信2006年12月号

自己多血小板血漿注入療法(PRP/ACR)

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自分の血液(血小板PRP)から採取した成長因子で、貴女自身の素肌を甦らせます。
つまり、自分のモノを使うので、アレルギーや感染症等の心配がない=安全性が最大の強みです。

 自分の力を信じなさい。

 今回は今までとは全く異なる発想、目から鱗の治療法です。最新の再生医療のテクノロジーを駆使したこの若返り治療は、実に画期的なものであり、次世代の美容外科・美容皮膚科の新しい流れを予感させるものです。

 昨今の美容外科・美容皮膚科業界は、IPLの出現から器械一辺倒の風潮に偏りながらも、その限界に突き当たり、悩んでおりました。私も御多分に漏れず、新しい器械は欲しいものの、色んな業者の盛んなセールストークに耳を傾けても、今ひとつ心そそられる製品に出会えませんでした。新しい器械はそれなりに効果はあります。でも、はっきり言って、コストパフォーマンスがあまりにも悪い。うちのクリニックの料金設定は、基本的に、私やスタッフが自腹切ってでもしたい!って思う内容とのバランスで決めています。だから器械が高いとその分だけ、施術料金が跳ね上がり、それが効果と比例しないとなると‥やっぱ却下!だと思うんです。

 この治療法を、10月に横浜で開催された美容外科のランチョンセミナーで聞いた時は、口があんぐり開いたままでした。周りで聞いていたDr.達も、皆、食べるのも忘れ、箸を宙に泳がせたままでした。‥私の、目の下の皺々さんに、何が何でも入れたい!! ボトックスでも、ヒアルロン酸でも、否、どんな知りうる器械でも、攻めあぐねていた私の目の下の縮緬皺に、兎に角入れたい!! ‥異物ではなく、自分の組織で、自分の再生能力を駆使して、若返る。‥私、今、とても幸せです。だって、出来れば、一生手術なんかせずに、プルンプルンの肌で現役張るのが私の一番実現可能な夢なんだもん。へへへ。 

 今回のお題目は、”自己多血小板血漿注入療法(PRP/ACR)で~す。あ、因みにACRって、Autologus Cell Rejuvenationの略だそうです。

実況中継

 前置きが長くなりましたが、先ずは実況中継で解説致しましょう。

2006年11月16日 待望のスイス製PRPキットが届きました。

 お約束の写真撮影で~す。

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 おおと、HISAKOの顔だけじゃなくて、Regen社PRP作成キットの梱包を解いてみましょう。子供の頃、毎月届いたばかりの”学研の科学”をワクワクして開いたっけ。あれに似てますね。

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 ココで目を引くのは、ホルスタイン柄の可愛い採血管♪ 皆さんも病院で採血された事ってあると思いますが、日本の地味な真空採血管と違って、流石、チーズフォンデュのお国柄。ギュ~(牛)な精神がこんな所にも息づいておりますねぇ。ははは。そして柄だけじゃなくて、この採血管はホント凄いんです。核心部分がぎゅ~と濃縮されて詰まってるんです。

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 つまり、このホルスタイン柄の真空採血管を使えば、若返りの素である成長因子たっぷりの血小板だけを効率良く採取出来るんです。上澄み液を取れば良いだけですの、ほほほ(正確には下の手順を踏まないと採取出来ないんだけどね)。因みに、Regen社のこの採血管は、他の会社の血小板採取能力を大幅に上回る95%(他社は30~50%)だとか。だから、企業秘密で教えてくんないんですね、きっと。

 お顔の豊齢線&目の下の窪み位なら、この採血管2本(8cc/本)もあれば十分。額も顎も何もかも顔全部!なら、4本は欲しい所です。HISAKOは折角なので、目の下、頬っぺた、豊齢線、口元とフルコース。4本(32cc)採血しちゃいました。
 唯、幾ら、このホルスタイン柄の採血管が優秀であろうと、採血しただけでは自己多血小板血漿(PRP:自己血液中に存在する血小板を非常に多く含んだ血漿)を得る事は出来ません。遠心分離、遠心分離♪

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 昔は遠心分離機なんて高価な代物が無かったので、採血管の頭にタコ糸を縛り付け、砲丸投げで鍛えた腕自慢の看護婦さんが、3100回転で8分間ブンブン力任せで振り回しました(←人力遠心分離機? 嘘だよ~ん)。重い血球成分は下に沈み、フィルターの上には血小板だけが残る寸法です。
 おや~ん? フィルターの上の血漿部分、良~く見ると、上の方は澄んだ摩周湖の様ですが、下の方は靄った目黒川みたいに濁ってますよね? 

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 上澄み摩周湖は、人口密度ならぬ血小板の希薄な地域なので、これはちょ~っともったいないかなとは思うけど原則破棄。(まあ、施術の際に余った血漿を掻き集めて、顔全体にメソセラピー(美容通信2006年6月号)なんて、裏メニューもありますが‥。これが産廃と罵られながらも、意外と効くんですよね。相乗効果と言うか‥。ほら注入療法は、後で又お話しますが、真皮と皮下組織に行います。メソは血が出ないレベルの皮膚の極々浅い所にしか乱れ打ちませんから、併用すると、3層攻撃? プラス税抜1万円で承ります。今回、は欲張りHISAKOは同時にメソも行いました。) 大体量的には、半分程度破棄って所でしょうか。これで、フレッシュな、貴女だけの自己多血小板血漿をGET!
 人生も、林檎も、男も、ちょっと傷んだ位が美味しい。血小板も同じで、ちょっと固まり気味の方が効くんです。10%塩化カルシウムを0.2~0.3ml垂らして凝固を進めつつ、注入しましょう。おおと、その前に又お約束の記念撮影で~す。本邦初公開、すっぴんのHISAKOで~す。

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 デザインはこんな感じ。目の下と口元が気になると言いつつ、ひょっとして余ったら頬っぺたにも入れたい!と欲をかいたデザインです。コラーゲンやヒアルロン酸と言った人工の注入物の様に、気になる部分だけを盛り上げる訳ではありません。気になる部分を中心に若返らせるのが、この自己多血小板血漿注入法の最大の特徴。ですから、少し広めに注入します。
 先ずは、蕁麻疹みたいにぷっくり膨疹が出来るレベル(皮内)に、さくっと、凝固反応があまり進んでいないものを注入。次に、ちょっと固まり気味の、つまり若返りビームがばりばり出ている熟した(?)ものを、皮下にた~っぷり注入します。用量依存性なので、皮膚全体が盛り上がる位まで、出来るだけ沢山!押し込みます。
 注入直後のHISAKOで~す。

image300  赤いで~す。ぽっぽぽっぽと、火照ってます。血小板の活性が落ちるので、冷やしてません。張ってると言うか、腫れて硬いですね。痛み? う~ん、強いて言うなら、鈍痛かなぁ。痛みを比較する為に、麻酔のシールを右半分に、無麻酔を左半分にして注入してみました。勿論、麻酔のテープを貼ってる所は注入の痛みを感じませんでしたが、実は無麻酔の所もあんま痛くなかったかな。ヒアルロン酸の注入は、ブツがそこそこ硬いだけに、口元とか小鼻の脇、唇なんかは、脳天が痺れる!!って感じがするんですが、これはあの痺れる感じが全くない! まあ、サラサラの液体だからなんでしょうが、でも成分的に痛みに対する何らかの抑制効果もあるのかも。
 大まかに注入量の目安だけ載せておきます。あ、これ採取したPRPの量で、採血量とは違うから注意ね。大体、16ml採血して、5ml前後のPRPをGET出来ます。だから、軽く目の下と豊線齢に入れるとすると、16mlの採血が必要なの。
  下眼瞼:片方につき1ml~
  目尻:片方につき0.5ml~
  眉間:1ml~
  鼻唇溝部:片方につき1.5ml~
  前額:2ml~
  頚部:3ml~
 赤味は、その日のうちに、1~2時間程で消えました。注入3時間後の写真です。未だ腫れていますが、目は随分開くようになりました。

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2006年11月17日 注入後1日目(注入24時間後)。

 腫れはもう残ってません。ちょっと、ごわつくかも(ごわつきは、3日位続きます)。

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2006年11月30日 注入後14日目。

 看護婦の末ちゃんも目の下に入れたんですが、彼女は3日目位には、注入していない目の上までふわふわ。HISAKOはちょっと結果が出てくるのに時間が掛かってしまいましたが、まあ人並みの1週間後位には、何か凄く良いかも♪と実感。遅い人でも2週間後には実感出来るとか。ふわふわの質感が堪らなく嬉しいです。注入した所だけじゃなくて、その周囲のお肌の肌理も張りも出た感じがしますね。因みにファンデーションはつけてません。日焼け止めにお粉をたたいた状態です。

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その後の経過は、貴女の目で判定して下さいね。

 HISAKOの目の下の縮緬皺を、これ程までに改善してくれた治療法はありませんでした。
 因みに、効果のピークは2ヶ月後。その後、徐々に退化して、まあ半年から1年位は持つみたい。従来の手術や注入物(コラーゲンとかヒアルロン酸etc.)、はたまたレーザー等の照射や、ボトックス注射etc.で、物足りなく感じていた人には、朗報だと思います。肌の奥底から湧き上がる若さに、思わずイヒヒヒヒと笑いが零れてしまいます。

自己多血小板血漿注入療法(ACR)は、最新の再生医療のテクノロジーを若返りに応用しています。

 <Regen ACR法は、再生医療の一つのアプローチとして自己多血小板血漿(PRP)を注入し、自己血中の細胞や成長因子を利用して組織再生を促し、もって皮膚等の若返りを目的とする治療法です。>

 Regen ACR法に使われるPRPキットは、スイスのリジェンラボ社が開発し、唯一注入用キットとしてCEマークを取得しているものです。(学術的援助:スイスのローザンヌ大学)

 註:CEマークとは?(Wikipediaより)
  商品が全てのEUの基準を満たすものに付けられるマークで、EEA(欧州経済領域)やトルコ、スイスで販売する際には取得が必要となる。EU本部は、事業者が商品を輸入する場合や輸入した機械を導入する場合などにおいて、CEマークが信頼の証となると捉えている。この基準は欧州の既存各国での基準の調和の象徴である。公式にはCEは何の意味もなく何の略語でもないとされているが、フランス語のCommunaute EuropeenneやConformite Europeenneに由来していると思われる。規定の全商品はマークを付けなければならず、CEマーク使用の許可には商品が所定の基準を充たしているという証拠の文書化が必要となる。外部の検査機関などで評価、文書化を行う場合もあるが、一般的には企業が独自に行う。CEマークを必要とする国は主にEU諸国であるが、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイ等のヨーロッパ自由貿易体を含むヨーロッパ経済体や、EU、EFTAの両方に属さないトルコでも必要となる。


 PRPは、1998年Robert Marxが顎骨再建治療での骨再生の増大目的で使用したのを切欠に、その安全性(自分の血液を用いるんですから、アレルギーや感染症の心配がない!)と優れた自然治癒システムが評価され、今では我が国でも歯科用インプラント等で主に歯科領域では極く日常的に使われています。最近では、PRP中の成長因子が傷の飛躍的な治癒促進に働く事から、アメリカやヨーロッパでは、今まで手術しか方法が無い様な難治性の熱傷や糖尿病性潰瘍の治療等にも応用されています。又、美容外科分野でも、術後の傷の早急な回復と傷跡を目立たなくする目的で使用されています。つまり、まあ、創傷治癒分野では揺るぎない実績を誇るとでも纏めておきましょう。

 英国では、このPRPの利用を一歩進めて、若返りの為に顔の気になる部分に注入するのが只今大流行中! それが、自己多血小板血漿注入療法(ACR:Autologus Cell Rejuvenation)です。自己血PRPを利用して、顔等の皮膚の若返りを図りながら、同時にヒアルロン酸やコラーゲン注入と言ったフィラーの代わりにも使える、画期的な美容再生治療法なのです。  


 眼瞼周囲の縮緬皺、鼻唇溝の弛み(所謂、豊齢線と呼ばれる溝!)、額や眉間の皺、唇周りのくしゅくしゅっとした梅干皺っぽさ、頸の横皺にカサカサとした皺っぽさに効果があります。

何故、皺・弛みに効くのか?

 未だ、完全には解明はされていません。血小板が色々な成長因子を放出するからではないかと考えられています。

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皺や弛みと言った加齢現象=細胞及び組織の異常な状態と捉えると、PRPの血小板が放出する成長因子によって、自然治癒機序が働き、ハリのある皮膚に改善したのではと考えられています。だから、皺や弛みのみならず、くすんで婆ぁ色に黄ばんでしまった肌の色が明るく、一種の炎症性色素沈着と考えられている肝斑も薄くなるんですね。期待すらしてかった酒さ性のニキビが、付録で改善したのも頷けます。(でも、酷いクレーター状のニキビ跡になっちゃうと、キツイかなぁ‥。受付のバイトの高嶋ちゃんのコメカミを見てもらえば分かると思うんだけどぉ‥、注入で多少は凸凹は浅くなったとは思うけれど、良いね!とは朗らかには言えない‥。)

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image297 自己多血小板血漿注入療法(ACR)は、画期的な良い方法だと思います。でも、どんなに良い方法でも100%ではありません。まだまだ、欠ける点はあると思います。”all or nothing”と考え方を硬直的にするのではなくて、今の段階では、足りない所があれば既存のものを併用して良いんじゃないですかね。幾ら目の周りがふっくらとして烏の足跡が目立たなくなりはしても、完璧には消去出来ない。なら、ボトックスの注射を併用すれば良いと思うんです。単独でボトックスいくより、絶対綺麗な筈だもん。
 ‥使えるものは、使って良いんじゃないですかね。それが必要なら。来るもの拒まずの招き猫状態のHISAKOは、今後もフォト(美容通信2003年5月号)も月1ペースのまま続けるし、Vit.A(美容通信2005年2月号)も毎晩塗り続けるだろうし、メソセラピー(美容通信2006年6月号)も偶に‥します(←断言!)。場合によっては、ヒアルロン酸(美容通信2005年8月号)も追加で注入するかもと思ってますし、ボトックス注射(美容通信2003年10月号)は梅干顎に年末打ちたいと思ってます。

image577 *註:HISAKOの美容通信に記載されている料金(消費税率等を含む)・施術内容等は、あくまでも発行日時点のものです。従って、諸事情により、料金(消費税率等を含む)・施術内容等が変更になっている場合があります。予め、御確認下さい。


※治療の内容によっては、国内未承認医薬品または医療機器を用いて施術を行います。治療に用いる医薬品および機器は当院医師の判断の元、個人輸入手続きを行ったものです。

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